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遺伝診療をとりまく社会:チームで遺伝カウンセリング

カテゴリ[科学に佇む2008年] 2008/01/08
◆左表紙

 『遺伝診療をとりまく社会 その科学的倫理的アプローチ』
 ブレーン出版 (2007/3/22)
 水谷 修紀監修
 吉田 雅幸監修
 吉田 雅幸編集
 小笹 由香編集
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 この本は、最初から読むとちょっと目が点になる。
 いきなり整形外科というか、「顔の直し方」の具体的な手法が展開されるんだ。
 正確には、矯正歯科のハードな術式例が、写真入りで数々登場してくる。
 手術前、手術後。
 え? 『遺伝診療をとりまく社会  その科学的倫理的アプローチ』という本なのに?? 歯並びの直し方???

 実はこれ、この本は「歯医者さんの大学が、遺伝病のチーム医療を考えようと、さまざまな分野から専門家をお招きして一連の講演会を行った、その成果をまとめました」という本なんだ。
 いろんな科のお医者さんや当事者が、みんなの知恵を持ち寄って、協力して遺伝病当事者の暮らしを良い方向に手助けするには、お互い何を知っておけばいいのか、お互いの立場やできることは何なのか、それぞれに語りをしてもらった、その記録なんだ。

... 以下つづき...

〓〓〓 EP 〓〓〓

「未来医療の実現のための倫理基盤」
 東京医科歯科大学生命倫理研究センター 吉田雅幸

 平成16年11月15日に東京医科歯科大学の遺伝診療外来が小児科外来を引き継ぐ形で、正式に臨床遺伝専門医制度研修施設に認定され、臨床遺伝専門医を育成する施設として活動をしていくことになった。医師の立場から遺伝診療外来に関わり、自分を含めた遺伝外来スタッフおよび関係診療科スタッフの教育・研修目的でセミナーを行ってきた内容について多忙な講演演者の方々に御願いして原稿にまとめていただいたものが本書である。

 企画の音頭をとったのが歯科大さんなので、まず最初に「歯・顎・顔の整形」が来たわけだ。

 遺伝障害の種類によっては、独特な形に顔が変形することがある。
  → 『 「ヒトの変異」奇形の科学史、ヒト突然変異の博物誌』
 お顔の容貌を少し整えるだけで見違えるケースも、その中にはあるわけで。
 歯医者さんは、歯並びだけでなく、症例に応じて、顔面のリフトアップや顎の削り取りなんかも検討なさる。
 骨を切って顔の真ん中を盛り上げてあげたら、親御さんによく似た顔になられて感謝されたという話も紹介される。

 ええっ、こんな治療もできるのか、おおっ、こんな症例もあるのか、と
  遺伝カウンセリング
  難聴と遺伝
  小児科
  出生前診断と胎児治療
などの現状が紹介されたあと、話ががぜん面白くなるのは第2部からだ。

■第1部 科学的アプローチ
■第2部 倫理的アプローチ
■第3部まとめにかえて
 → 『「遺伝診療をとりまく社会」目次と参加者 』


 第2部 倫理的アプローチ。
 研究者、診断現場、調査、当事者、生命倫理事情、意志決定、多文化的価値観・・・
 治療のためにさまざまな分野の専門家達がチームを組むのはいいとして、そのチームはどこに向けて何をしようとするのか。それぞれの専門家が、食い違った意図で患者さんに接してしまったりしていないか。
 方向性をきめ細やかに反省しながら、事例ごとに頭を冷やしながら、チームとして最善の道を探る、その作業の一助になる良い考察・進言が並んでいる。

「先進医療技術を取り巻く生命倫理事情について」
 独立行政法人放射線医学総合研究所 山内正剛
p.116
 しかし、脆弱X症候群のように事実上は治療法がない遺伝病の原因遺伝子を保有する個人がいぶりだされ、社会の中で行き場を失う個々のケースを目の当たりにすると、ヒトゲノム研究の進展は本当に人々に幸福をもたらすものであるのか疑問に思うのは筆者だけではないであろう。

 この立場の人にこう語ってもらえると「ああ、まともな人はちゃんといるんだな」となんぼかほっとしてしまう。こういう語りができない遺伝疾患専門家もいるわけだし。いや、この文だけを抽出してしまうと、脆弱X症候群とは何か、を知っている場合とそうでない場合で、また読み解き方も少し違ってくるのだろうけれど。

 専門家がチームを組むその作業の手がかりとして記された本だ。
 書き手によっては、専門的すぎて何の話やらついていけない読者はいると思う。
 でも、これだけの広い射程と奥深さがあるのだということが、間口なりとも感じられる、その感得にはいいだろう。医者は医療の専門家であっても、医療問題に関してはしろうとだったりする。そういう「医者という素人に伝えようとしている」関係もあって、シロウトにもわかりやすい論展開になっているパートもある。
 そんなに分厚い本でもないし、一般の入門者にもオススメだ。

 遺伝カウンセリングに関する本は、無理をしてでも数冊は読んでおきたい。
 浅はかな障害者論議をぶって後悔してしまわないためにも。


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