ウェブ上に情報が少なそうだったので、メモ代わりに以下。
放送内容はこれ。
NHK教育『サイエンスZERO』
2007.11.24 第187回 知られざる南硫黄島 25年ぶりの上陸調査
■専門家ゲスト 川上和人(森林総合研究所研究員)
■南硫黄島は、有史以来の無人島。
「原生自然環境保全地域」に指定され、一般の立ち入りは厳しく禁止されている。
■カタツムリの進入ルートに新たな仮説が立てられた。
ノミガイを混ぜた餌をメジロに与え、ふんを調べたところ、生きている貝があった。
この実験によって、カタツムリが鳥に食べられて運ばれる可能性もあることを示した。

離れ小島や離れた大陸に、同じ系統だと思われるカタツムリが分布しているのはなぜなのか、どうやってカタツムリは生きて海を渡ることができたのか、そこが昔々のダーウィンの当時から、生物学的なナゾの一つだった。
カタツムリが海潮に流されてたどりつくのは無理。海水中では塩で水を抜かれてすぐ死んでしまう。
漂流物に乗ってたどりつくのも、やはり塩にやられてナメクジよろしく死んでしまう可能性が高い。
妥協案として、「渡り鳥の体にくっついて海を渡ったのではないか」と長く考えられてきた。海を隔てて分布しているカタツムリには小さい種類が多いわけだし、鳥の足や羽にちょこなんと「くっついて」便乗していった可能性はあるっぽい。
そんなこんなのいろいろな推察が応酬される中、「鳥に食われて海を渡った」可能性を考えた人は少なかったらしい。が。
... 以下つづき...

カタツムリの楽園「小笠原諸島のカタマイマイ」
どのようなやり方で広い海を越えてきたのか明らかではありません。しかしカタツムリは一般にエピフラムと呼ばれる膜で殻口と基質を固着させるとともに殻の内部を密閉することができ、さらに代謝活性を極端に落とすことで、長期の乾燥や飢餓に耐えることができるため、海上を流木などに乗って長距離の分散を行う可能性が高いと考えられます。そのほか、小型の種ならば渡り鳥に付着して、あるいは台風に巻き上げられた個体が気流に乗って、というような分散の手段も考えられます。
ダーウィン的に「空飛ぶカタツムリ」は正しゅうございます
2006/01 news@nature.com The tale of the flying snail
Darwin's theory that snails hitch a lift with birds proves plausible.
ヨーロッパからアゾレス諸島、さらにははるか南大西洋の島々にまで遺伝的に同一系統のカタツムリが分布しているのは、鳥の羽に乗っていけたからだろう。
カタツムリは雌雄同体だから、2個体いれば繁殖は可能だし。
2006/01 Discovery Report Raises Possibility That Snails Fly科学なポッドキャスト:Nature Podcast: 26 January 2006
海を渡るカタツムリ 【MP3 約24分】
あくまで「鳥の体にくっついて」が、カタツムリの渡り手段の第一候補なのだった。

「25年ぶり、山頂を含めた調査はこれでやっと3回目」の南硫黄島(みなみいおうじま)調査。
前回の調査報告書はこちら。
『南硫黄島原生自然環境保全地域調査報告書 (1982年)』 環境庁自然保護局 (1982/12)このたびの「3回目」の南硫黄島調査でも、小笠原からは遠く離れているのに、小笠原のものと近縁種であるノミガイ(数ミリしかないミニミニサイズのカタツムリ)がたくさん生息していることが確認された。
写真ありノミガイ類 小笠原諸島のハワイマイマイ科
小笠原諸島には3属6種のノミガイ類が生息しています。いずれも1-2mm程度の微小で互いによく似た種からなり、分類の難しいグループです。
ノミガイ類は小笠原の陸貝のうち、太平洋地域に起源をもつ要素の代表的なものであるといえます。
どこから、どうやってこのゴマ粒のような華奢なカタツムリは絶海の孤島・南硫黄島までやってきたのか。
やはり鳥の体にくっついてきた?
いやいや、この場合、カタツムリは「鳥に食われて」来たのではないかと。

番組の専門家ゲスト、森林総研の川上和人氏は、本州のミゾゴイやガビチョウ、小笠原諸島のメグロ、八重山諸島のズグロミゾゴイなど、鳥類の生態調査の専門家だ。
具体的にはこの研究が彼のものだったかどうかは覚えてはいないけれど(ウェブを検索しても、このノミガイの渡りに関する情報は欠落状態で確認できない)、川上氏は以下のような実験を紹介なさっていた。
ノミガイを鳥のメジロに食わせて、糞といっしょに外に出てくるまで無事に生きている個体がいるかどうかを調べる。
エサといっしょに食われたノミガイくんたち、哀れ数時間後に糞といっしょに排泄され、そのほとんどは、消化液にやられたのか、窒息したのか、貝の形は残ってはおれども、貝殻から顔をのぞかせることはなく死んでいた。が、その累々とした十数個の死体に混じって、一匹だけ、みごと生きて貝殻から顔を出したノミガイがいた!
排泄されるまでの所用時間は、鳥が海を越えて南硫黄島まで到達するには十分な長さ。
カタツムリが海を越えることができたそのわけは、まさにこれなのではなかったか。と。
鳥の体内を通って海外へ移住する、まるで命がけのリアルミクロの決死圏!
小笠原のカタツムリは天然記念物なので、実験に使うことはできない。まして、死んでアタリマエの、めちゃめちゃ死亡率の高い実験だ。
そんなこんなで、番組では、小笠原や南硫黄島のノミガイではなく、沖縄で取ってきてもらったノミガイを使って実験をなさったんだそうな。
沖縄で取ってきた人。↓
実験でノミガイを食わされたメジロにしても、小笠原メグロなどの代わりの鳥だったと思われ。
「メグロ」は、特別天然記念物に指定されており、しかも、世界中で日本の小笠原諸島「 母島」にしか棲んでいないという「超珍鳥」なのです。
2005年12月「メグロ」・世界的な珍鳥を小笠原まで観察に行った想い出 〜 蝶・チョウ・ゆっくり歩き
ノミガイの中には卵胎生(卵ではなく赤ちゃん貝を産む)の種類もあるので、食われて渡って生き延びた一個がおなかに子どもをはらんでいて、そこで一腹子どもを産んでしまえば、しょっぱな繁殖相手がいなくても、発端の一匹だけでもうどんどん複数に繁殖してしまえる計算になる。

さても、一カ月以上前に放送された番組の内容について、なぜ今さら書く気になったのか。
この、「カタツムリは食われても、生きたまま排泄されて海を渡れる可能性が強いよ」という情報が、ほかに全然見あたらないから。海外からも聞こえてこない。
森林総研さんの研究成果なんだろうか? 『サイエンスZERO』以外では公表したことがない研究なんだろうか? まさか。
何でこの情報が出回ってないんだろう?
もしくはどんなキーワードで検索すれば情報に接触できるのか。
海外の研究者はこの報にどんなリアクションをしたんだろうか/するんだろうか?
ちょっと煮え煮えになったので、ここに書いてみるしだい。
ごくごく単純な発想であり、検証もしやすいであろうのに、国内外含め、いままで「貝が食われて渡りをする」という視点で歩を進めてみた人はいなかった、ということなんでしょうか?
食わせて、糞を調べるだけ。
ぱっと見、素人でもこなしてしまえそうな実験ではある。
そして結果は画期的。
研究の余地は、視点しだいでまだまだふんだんに見つかるのかも。
・研究者は 千葉聡 氏と、川上和人氏
・メジロを使った理由は、南硫黄島に実際に多く生息しているから
・ノミガイはすりつぶしたバナナ(メジロの好物)に混ぜた
・排泄までの所要時間は約1時間
・カタツムリが食われて離島に渡る可能性があることを、おそらく初めて示すことができた成果である
・漂流や鳥の体に付着してのルートに加え、いずれもたいへん低い確率ではあるが、食われて渡る、という可能性もあることを示した
ほか、リンク追記:
・上陸調査の実施は2007年6月


『小笠原ハンドブック 歴史、文化、海の生物、陸の生物』
ダニエル・ロング (著)
南方新社 (2004/09)
![[ EP: 科学に佇む心と身体 ]](http://homepage1.nifty.com/NewSphere/transparent.gif)







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