[ EP: 科学に佇む心と身体 ]

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離婚で止まるな:単身家庭と環境問題

カテゴリ[科学に佇む2008年] 2008/01/02
 千秋・ココリコ遠藤の離婚報道に、「離婚は地球環境に悪影響」の報をくっつけて書いている記事やらブログやらを見かけて萎える。

 元は去年末のこの報道。当時は忙しくてツッコミ入れるヒマがなかったんでスルーしていた。
●右画2007/12 【日本語記事】読売新聞 「離婚も温暖化の一因」米研究者が分析
 http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20071204it06.htm
2007/12 【日本語記事】毎日新聞 <離婚>地球環境に悪影響 世帯数増や電力増で…米大学研究
 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20071204-00000041-mai-int
2007/12 National Geographic Divorce Is Hard on Environment, Study Says
離婚は、環境にとって厳しい仕打ちなのです
2007/12 New Scientist For the environment's sake, don't get divorced
環境保護のためも、離婚するな

 この問題を語るなら、離婚というくくりでは、もの足りないだろう。
 というか、勘違いを招きやすい。
 離婚に限らず、暮らしをともにする人数を減らし、世帯数を増やす行為は、親からの独立や老人の一人暮らしも含めて、のきなみ「環境に悪い」と持って行くべきなのであり。

 離婚という看板は、環境に限らず、暮らしの実感的に
  「悪いこと」
  「不幸」
  「慰謝料、経済的ダメージ」
などのマイナスイメージが多いため、此度の報道では世帯数と環境影響の関係は「離婚するから悪い/離婚は思いとどまったほうがいい」そんな範囲の狭視野で語られるだけで終わりになりやすい気配。

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アンカー【単身世帯はどう語られていたか】


 一人暮らしは環境にやさしくないぞという話は、今始まった話ではない。
 かねてよりおりおり流れている。

... 以下つづき...

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 手元には、2003年から記事がある。
●右画一人暮らしは環境に悪い
生物多様性を左右する家庭力学
人口より世帯数が問題
大家族の減少、単身暮らしや核家族の増加
2003/01 EurekAlert! Peoples' household dynamics crucial to biodiversity
2003/01 EurekAlert! Researchers tie worldwide biodiversity threats to growth in households
2003/01 EurekAlert! Smaller households fuel global housing boom and threaten biodiversity, study finds
2003/01 Nature Science Update  Rising household numbers damage hotspots
 More homes with fewer occupants are endangering plants and animals.
環境:世帯動態が資源消費量および生物多様性に及ぼす影響
2003/01 Nature 421, 530 - 533 Effects of household dynamics on resource consumption and biodiversity
2003/01 ネイチャーバイオニュース 離婚は環境に悪い 世帯数の増加は人口増よりも深刻

人間の一人暮らしは環境に悪いんですよ
2003/12 BBC News Single living 'creates eco woes'


一人暮らしって環境的に最低
2006/07 EurekAlert Solo living is a potential environmental time bomb

 人口のわりに世帯数が多いほど、エネルギーや資源をバカバカ浪費して環境破壊的。
 世帯数なわけだから、一人暮らしはよくない、というだけでなく、そも核家族も悪かったりしているわけで。
 昔の暮らしは、環境によい(資源利用の効率がよい)からこそ「大家族」だった。資源を共有することが、生存への安全パイだった。

 そも、これらは「環境」や「資源効率」で語るよりも、「経済」で語るほうが、生活者には実感的にストレートだろう。
  ・一人暮らしは環境に悪いから(不経済だから)親元で暮らす
  ・単身赴任は環境に悪い(不経済)
  ・離婚は不経済
  ・一人暮らしより下宿のほうが経済的
 そこからすると、いまどきの二世帯住宅も、一軒にトイレ2カ所、台所も2カ所、などという過剰なぜいたく付きで、一見したところは「大家族」っぽくありながら、実際は環境的にダメダメな事例に含まれるかもしれない。

 「世帯数と環境問題の話」は、今回は「離婚」の問題として沙汰されたわけだが、4年前の2003年「世帯数と環境問題の話」報道の当時は、「離婚」ではなくヒッキーやニートの文脈で語られたりしていた。
・親から独立すると環境に悪いから(不経済だから)、ひきこもりの勝ち
・親から独立すると環境に悪いから(不経済だから)、結婚もせずに親元暮らしをしている非モテの勝ち
 そんな自己正当化(へりくつ)のやりとりが印象に残っている。

追記:
 参考までに、このような記事もあります。

親元で暮らすほうが、独立した大人に育ちます
2007/12 EurekAlert Close families raise more independent adults
近いファミリーは、より多くの独立系大人をこしらえる

親元暮らしは独り立ちできていない人間がやることだ、という通念は、マトハズレである可能性。
親元で暮らしている人間のほうが、精神的に大人になりうるという指摘。(ただし海外での話)


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アンカー【経済的な共同生活】


 前世紀末には、縁もゆかりもない人々が共同所帯を持つ、長屋というか、生活共同体アパートの事例がメディアに紹介されたことが何度かあったと思う。
 8世帯用くらい規模のこじんまりしたアパートに住む人々が、全員でモノをゆるく共同所有して暮らしを営む。夫婦もいる、高齢者もいる、若者もいる。共同購入・共同所有で光熱費や生活費が少なくてすむので、勤労する時間が少なくてすむ(!)。おかげさまで余暇を謳歌(おうか)しまくり。
 「週2日だけタコ焼きを売れば十分生活していけますよ」と語る若者のほんわかした顔が印象的だった。
 ゆるいヤマギシズムみたいな。ハウス/アパートシェアのちょい積極的展開、みたいな。

共同生活マガジン
 『共同生活マガジン 気の合う仲間と愉快に暮らす』(大型本)
 主婦と生活社 (2001/04)

 こんな本があった。共同生活にスポットライトが当たっていた当時の本だろうか。


 その後は「経済的な共同生活」の事例は、「お年寄りのグループホーム」めいたジャンルに吸収されてしまったのか、あまりメディアでの紹介は見かけなくなった。
 ひところ怪しいハーレム的事件が話題になったりした、そんなあおりもあったのかもしれない。

 ん?
 検索をかけてみると。いまどきはこんな賃貸物件があるのですね。
●NEWS2007/02 【日本語記事】スラッシュドット ジャパン SNS+アパート=ソーシャルアパートメント
* 敷金礼金はゼロで初期費用は保証金2万+家賃ぐらいでいい
* シャワーなどは共同
* 共有スペースで談話

リンク ソーシャルアパートメント

 所有物共有とまでは全然行かないので、資源利用効率の点では「?」だけれど、選択肢としては面白いかもしれない。

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アンカー【単身世帯が増加するとトクをするのは誰】


●右画 人はなぜ少人数で暮らしたがるのか。もしくは暮らしたがるようになったのか。
 これは資本主義のせいなんだろうか? それともマスメディア?

 モノを売る側は、モノをたくさん買ってもらいたい。買わせようとする。それは往々にして、消費者に不経済な行為を促す方向に流れていく。
 大家族で暮らしていても、一人に一個テレビがあると、これは不経済。だが、モノを売る側には理想的。
 大家族で暮らしていても、一人に一台車があると、これはもろ環境に悪うございます。だが、モノを売る側には理想的。いやいや、もっと買っていただきたい。
 おひとりさま行動を理想的であるかのように描いて表現し、単身暮らしが豊かであるかのようにうたいあげる。
 さらには貯蓄&保守の所帯持ち暮らしよりは「結婚のチャンスに対して攻撃的な投資をしまくる」有職独身層のスタイルが、大量消費的に望ましい行動様式として奨励される。

 世帯数や消費が増加するとトクをするのは、短期的視野で儲けを上げたい層だね。今の収入、今期の成績。
 短期的視野でなら、消費が増加すると景気もよくなるので、儲けた層以外にも、それなりにおこぼれはやってくるかもしれない。
 でも、長期的視野では、消費の増加はダメージになって返ってくる。ダメージがやってくる頃には、短期的視野で儲けを上げた連中はすでに寿命を向かえてあの世にいっちまっているか、年金でのうのうと暮らしていることになるんだろう。わりを食うのは儲け層に踊らされてバカバカ消費を楽しんだ次の世代たちだ。

 環境を第一に考えた基準で生活スタイルを変えていくことはいいことだと思いますか? それは誰にとって?
 一人で自立することはいいことですか? それは誰にとって?

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アンカー【マスメディアも環境を侵食している】


 現代は「自律/自立」を過剰に強調しすぎている気配がある。
 → 『 自律からホームレス、自立と女のホームレス 』
 働き盛りの男のみならず、体がままならない老人でさえ、世話になりたくないと独り暮らしに固執する。
 この傾向は、メディアの特質がもたらした変化だったろうか。

 大手メディアからは、大手メディア産業に就いている層の自己正当化の理屈が発信されやすい。弱者側より儲け層側の、田舎より都市住人側の、自己正当化の理屈が発信されやすい。
 大手メディア産業の関係者には大家族暮らしの人間は少ないわけで、単身暮らしを美化した発信もされやすくなる。
 → 『 孤独なボウリングやヒトカラの必然性 』

社会性が減ってきている 〜カナダ
 すたれつつあるホームパーティ 近所づきあいの減少
 家族との交流さえ減る傾向 増える独りの時間
2004/06 EurekAlert People cocooning more, says study

家族像の変化  いまや一人暮らしや片親家庭が当たり前
 昔ながらの関係構築は困難な社会状況
2002/10 spiked Singleton society

挿画


 メディアから送られてくる都会住人側の自己正当化理屈ばかりに晒さ(さら)れていると、自分の暮らしや自分の土地を賛美する自己正当化の理屈が侵食され、「都会だけがトップ」のような錯覚に陥っていくことがある。
 しまいには田舎側は「こんなとこに帰ってくるな」と徹頭徹尾自己否定をしてしまうほど、自尊心を貶められてしまっていたり。
  ”高齢者が半数を超え、社会的共同生活の維持が困難な「限界集落」”
になるほどの再起不能な衰退に陥る一因にもなっている。
 自己正当化の理屈をヨソから借りたら、その地は死んでいってしまう。
 地元を大事にしたいと考えるのであれば、自己正当化の理屈は地元主体で編み出すべきだ。ヨソから借りるな、ヨソからの価値観に負けるな。
 → 『 ヨソの文化が地元をつぶす 』

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アンカー【記事の書き方で変わるリアクション】


 「離婚は地球環境に悪影響」の話題は、各記事、各書き手によって、どのように記述されていたか。

 例えば。

A●一人暮らしをしているあなたは環境に悪い生活をしているんですよ。

B●あなたは道徳的な人間ですか? そうであれば、より多くのご家族、仲間と暮らすことを考えてみましょう。

 どちらの表現が、読み手の行動を世帯数を減少させる方向に促す効果が強いだろうか。
 どちらの表現で書いてしまいがちになるだろうか。

C●離婚は環境に悪いから、離婚はするな。

D●離婚後もおおぜいで暮らす人は環境にやさしい人だ。

 どちらの表現が、読み手の行動を世帯数を減少させる方向に促す効果が強いだろうか。
 そして、どちらの表現が、コンフリクト(人心の苦しみ)を減らす方向に作用するか。

 離婚がらみでの記述の場合は、
 ・離婚をする奴は環境に悪いやつだ
そのような、もともと離婚にまつわっているマイナスイメージをより強化し、離婚者を貶(おとし)める方向で記述されてはいなかったか。
 離婚をしても、それぞれが親元に帰って大所帯で暮らすなら、それぞれが浮気相手とともに暮らしはじめるのなら、資源効率的には無問題。世帯数が減る方向に展開しさえすれば離婚をしても無問題。
 離婚の心理的影響はさておき、環境に悪いかやさしいか基準で単純に考えたら、そういうことになる。

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 もともとヒトは集団生活をすることを前提にできあがっている生物だ。
●右画一人暮らしはボケを招く 大勢とつきあうと記憶力がアップ
2002/02 EurekAlert! Living in large groups could give you a better memory

周囲の人との心のつながりは高齢者のぼけを防ぎます
 でも伴侶がいる高齢者より独り身の人のほうがぼけにくい
2001/07 EurekAlert! Emotional support keeps brain going into old age

人格障害は都市部の一人暮らしに多めです〜ノルウェー
2001/06 Yahoo! News  Personality Disorders More Common in City Dwellers
心を病ませる都会暮らし@オランダ  都市部はパラノイアや妄想持ちが田舎に比べて多め
 特に人口密集地区で生まれ育った層で顕著
2001/07 Yahoo! News City Living Linked to Risk of Psychotic Symptoms
2001/06 ロイター オスロ住民の7人に1人は人格障害=研究

独り者は短命
2006/08 EurekAlert Never marrieds run highest risk of early death

独り者は循環器系疾患罹患率が倍
2006/07 BBC News Solo living 'doubles heart risk'
2006/07 EurekAlert People living alone double their risk of serious heart disease
2006/07 New Scientist Living alone may double heart disease risk

社会実情データ図録 Honkawa Data Tribune 中年男女の配偶関係別自殺率
 男女とも独り身で高い自殺率。
 男は離婚後の離別者が4倍、女は未婚・離別が2倍以上の自殺率。

 孤立した生活は、ある意味「ハグレザル」のような様相も呈するのかもしれない。

 今、何人で暮らしていますか?
 その人数は、エコ生活指向の強さに比例しているでしょうか?




メタル


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筆者:雨崎良未
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