「発掘!眠れる地質遺産 マチ起こしの目覚まし−ジオパークの試み−」
( 予備リンク )
この講演会の中の、岡田弘(おかだひろむ)先生による講演
「有珠山ジオパークの魅力 活発な地球を学び親しもう」
については、先日
にて記しました。
以下は、岡ちゃん先生以外の講演者さんたちのお話から。
【ジオパークとは何か】
最初の講演者:
「ジオパークで豊かなふるさとづくり」佃栄吉(日本地質学会副会長)
ジオパーク入門。
ジオパーク(地学の公園)とは何か。
いまどきよく世間が騒いでいる「世界遺産」ってありますよね。それと同じくユネスコ主導の地質版観光企画。
「世界地質遺産」を選定し、それを『ジオパーク』と銘打って、世界的に向けて教育・観光・地域振興に役立てていこうという企画。
GSJニュースレター NO.25 2006/10第2回ユネスコジオパーク国際会議出席報告 渡辺真人・宝田晋治
GEOPARKとは (NPO)地質情報整備・活用機構
地質学的重要性だけでなく、考古学的・生態学的もしくは文化的な価値もある1ないしそれ以上のサイトを含む地域。
* 持続可能な社会・経済発展を促進するための経営計画を有する(例えばジオツーリズム)。
* 地質遺産(Geological heritage)を保存・改善する方法を示し、地質科学や環境問題の教育に資する。
* 公共団体・地域社会ならびに民間による共同行動計画を持つ。
* 地球遺産(Earth heritage)の保存に関する最善の実践例を示し、持続可能な開発戦略へ融合していく国際ネットワークの一翼を担う。
研究者的には、おもしろい地質を研究や教育に活用できるとオイシイのだけれど、地元的には認定された地質遺産を「観光の目玉」として客寄せに使うわけかな。
地学観光ツアーのことは『ジオツーリズム』と称される。最近流行の自然生態系を売りにした『エコツーリズム』、それの地学版だね。
地学的お宝を守るために、そのお宝をシロウトさんにもわかってもらえるよう、観光資源化する。この発想はヨーロッパから始まった。
2004年からは(おお、わりと最近だ)、世界各地の地質遺産がジオパークとしてユネスコに登録されるようになる。
そいでもって、ヨーロッパ発祥のこの運動、最もたくさん地質遺産をジオパークとして登録できてしまっているのは、なんと西欧圏の国ではなく、東洋の大国・中国なのだそうだ。
現時点で登録されている世界のジオパーク52カ所のうち、18カ所が中国。
世界のジオパークの三分の一が、中国!

しかも中国のジオパークはみごとに観光地として盛り上がりまくりで、雲台山世界地質公園などは年間800万人(!)も集客しまくっているという。
北京観光--中国、世界地質公園の最も多い国 (2007-08-13)
中国は世界地質公園を最も多く擁(よう)する国となった。
中国は地質公園を最も早くからアピールする国の一つとして、138の国家地質公園を設置している。そのうち、江西省ロ山地質公園、安徽省黄山地質公園、河南省雲台山地質公園など18の地質公園がユネスコの世界地質公園リストに組み入れられている。
講演者・佃栄吉氏のお話によれば、この中国ダントツ状態の原因は、中国のお偉いさん、中華人民共和国中央軍事委員会主席、胡 錦濤(こきんとう)氏(有名だよね)が、地質屋さん出身(清華大学水利工程系卒業)であるからこそなのだそうだ。ひえええ。

... 以下つづき...

まあー。 そんなスゴイお方が日本にもいらっしゃればいいのに。
中国が西欧に比して、水墨〜風景をめでるに強い文化風土だとしても、この成功ぐあいはたいへんうらやましい。
残念なことに、日本からはまだ一カ所もジオパークは登録されていないんですよ。地質遺産後進国だ。

日本では地学の面白さが不当にマイナー扱いされているだけに、地学教育振興の面からも、ジオパーク構想には期待が持たれているらしい。
ジオパーク G-NET 最新厳選★地質特集
地学離れの深刻
日本列島は見所が多い半面、地震や噴火、土砂災害も多い。ところが、地学を学ぶ高校生は減る一方で、いわゆる『地学離れ』は深刻だ。
その背景としては、地学では食っていけない職業的現実がある。それでも、高度成長期には、応用理学と称して、土木工学の裾野で基礎資料を整理・解析する役目を荷い。収入を得てきた。ところが、バブル崩壊後、公共事業が激減すると、新規事業が 無くなり、地質調査の必要性がなくなった。つまり、地学を卒業しても仕事がなく、会社が雇えない事態が生じたのだ。
ええっ! 地学おもしろいのに!
そういえば、北海道の某地質屋さんの会社は、積雪深い冬期の間、地質にも地元にも関係のない仕事、内地(東京)の不動産税調査のための航空写真解析などを請け負って食いつないでいたりしてたっけ・・・。
【日本の地質遺産、ジオパークを目指す】
ジオパークは「世界遺産」よりもゆるい基準で登録ができるらしい。メンテナンス(保全・監視)が「世界遺産」ほど厳密でなくても良くて、そのぶん観光に気軽に活用できる。
で、去年あたりから、日本のあちこちでもジオパーク登録を目指して名乗りを上げる地域が登場しはじめたのかな。
「日本におけるジオパーク認定第一号を目指して!」 雲仙火山/島原青年会議所
ああ〜。糸魚川のおもしろそうだ〜。見に行きたい〜。
糸魚川は日本のジオパーク運動のかなめなんだね。
:新潟県糸魚川市の米田徹市長らが呼び掛け

地学鈍感な日本では、今も昔もたくさんの「すてきな地学資料」が工事でどんどん壊されてきた。
地質多様性とジオパーク 岩松暉[(財)環境地質科学研究所 研究年報 第17号,1-5. 2006年4月]
列島改造で、地質学的に貴重な露頭など日本の地質遺産が次々に消失してしまった。
1997年 『 地山の美しさが消えていく 』
日本の地質遺産はジオパークとして認めてもらえるだろうか。
今現在、ユネスコにジオパークとして認めてもらえているのは、
ヨーロッパ、中国、イラン、ブラジル
と、どれも地殻変動の少ない(地震や火山に縁のない)安定した大陸のものだけ。
それらとは対照的に、地震だ火山だ地殻変動されまくりの日本の地質サイトたちは、世界的にけっこうウリになるのではないかと有望視されているのだそうだ。
北海道からは、現在三カ所がジオパーク登録に名乗りを上げている。と思う。
【北海道のジオパーク候補その1:有珠山(うすざん)】
これに関してはもう、岡ちゃん先生活躍しまくりで。
国道230号が階段状に変動してしまったのはすごい。こういうのは世界中のどこにもないので、こういうのを見にこれからお客さんがたくさん来て滞在してくれれば、地元の復興の役にたつと思う。
〜『2000年有珠山噴火』「有珠山噴火による被災」岡田弘 p.65
長崎町長は、その年の一月 [ 有珠山噴火の数ヶ月前 ]、岡田教授と懇談したときのことを思い出した。町長は有珠登山を観光の目玉にしようと、「有珠山の登山をそろそろ開放したいのだが」と切り出した。
岡田教授は「有珠山を防災や火山学習の場にしよう」と応じた。
〜『2000年有珠山噴火』「第2章 ドキュメント有珠山噴火」p.101
有珠山噴火の熱泥流で流された橋と、被災した団地の建物を、観光用に『金比羅火口災害遺構散策路』の一部としてまるごと保存することができた。 喜ぶ岡ちゃん先生。
〜『 有珠山:観光と防災の両立』
「ここが地球で一番動いた場所」 。
来年サミットが開かれる洞爺湖畔。そして有珠山。
すごいぞ世界の首脳が火山を見に来るぞ。頑張れ地元。

【北海道のジオパーク候補その2:白滝黒曜石遺跡】
講演会で『白滝黒曜石遺跡ジオパーク構想』の話を担当なさったのは、 環境カウンセラーで株式会社レアックス代表取締役の亀和田俊一氏。「白滝黒曜石遺跡ジオパーク構想推進協議会」(平成18年10月発足)なる組織の世話役さんらしい。
オホーツク側の遠軽町、その山奥の白滝周辺には、なんと旧石器時代の石器工房跡がたくさんあるのだそうだ。(うわー、石器時代のオホーツク、想像するだに冬寒そう〜!)
『白滝黒曜石遺跡ジオパーク構想』の推進を支援しています。 日本データーサービス株式会社-地域貢献
北海道遠軽町の白滝・丸瀬布地区には世界的規模の黒曜石鉱体と、周辺に旧石器時代の鉱工業産業遺跡というべき多数の(100箇所以上を確認調査済み)石器工房遺跡群が存在しています。
黒曜石(オブシディアン)はガラス質なので、カツカツ割って、良質の石鏃(やじり)やナイフが作れるんだよね。
白滝遺跡群から出土する切れ味鋭い黒曜石の石器群は、独特の手法「湧別技法」でこさえられている。
地質遺産としてのウリは、その一帯が良質の黒曜石(オブシディアン)の産地であること(黒曜石の埋蔵量は、推定鉱体量約60億トンだそうです)。石器時代の工房が石産地の地元に存在する珍しい例であること。そして、氷河期の名残が地形にみごとに刻まれていること(氷河期の遺産、「周氷河レリック」という。このあたりにはナキウサギもいるよ!)。
黒曜石といえば、札幌テレビ塔の鉱石ショーで「十勝石」という名前のオブシディアンを売っていたお店があったっけ。
おー!
ぐぐってみると、北海道では黒曜石(オブシディアン)のことを「十勝石(とかちいし)」と言うんだってさ!
北海道には黒曜石の四大産地というのがあって、その四大産地:白滝、十勝、置戸、赤井川の、どこで採れても黒曜石(オブシディアン)は「十勝石」と言うんだそうな。

へぇ〜。
「白滝黒曜石遺跡」は、札幌から片道二時間半で観光に便利な位置にある。「日本列島地質事象百選」にも選ばれている。
ジオパーク登録に有望な地質遺産サイトなのだそうだ。
※ 日本の地質百選(日本列島地質事象百選)については、別項目としてこっちに分け書きしてあります。
【北海道のジオパーク候補その3:様似町のカンラン岩】
日高山脈の南端、襟裳(えりも)岬のすぐ隣。
日高支庁・様似町(さまにちょう)は、カンラン岩をウリにしてジオパーク登録を目指すんだそうな。
名乗りの報道は先月ですね。
で、カンラン岩?
講演会のすぐそばで開かれていた
だった。北海道には「緑色のオリビンという砂が採れる」場所があるのか!
展示側のおじさんに尋ねると「これはペリドットだよ」。ああ、あのいわゆる貴石のたぐいのペリドットなのか、へぇ〜! 北海道ではペリドットが採れるのか!
ところが別の展示係の女性に尋ねると「これはかんらん岩ですよ」。 え?
えーとえーと、
カンラン岩=鉱物名はオリビン、宝石名はペリドット ということなのか。
へぇ〜! (橄欖岩、peridotite)
で、結局その「緑色のオリビンという砂」の正体は、どうやらカンラン石を砕いて作った物、だったらしいんだが、とすると、北海道には「カンラン岩」がたくさん採れる場所があるのかな?
そういえば、
北海道には「すごいカンラン岩」があるのか!

北大総合博物館にある、アポイ岳のかんらん岩とその紹介。
【アポイのかんらん岩は学術的にきわめて貴重で「幌満かんらん岩」の名前で世界的に有名です。】
へえええ。
世界的に有名な、ペリドットの里!

さて、講演会での「幌満かんらん岩」ご紹介担当は、様似町教育委員会の水野洋一氏だった。
この人、かわいそうだったんだよ。割り当てられた講演の時間が、たったの5分だったんだから!
でも短時間の中、かなりおもしろいお話をお聞かせ下さった。
北海道内陸の田舎町、様似(さまに)町は、すぐそばの「アポイ岳」がカンラン岩が地上に露出しているという、世界的にたいへん珍しい地学的地域である関係で、頻繁に全国的・世界的な地質学の集会が開かれていた。
この片田舎に、世界から、地学の科学者・研究者が続々と集まってくる。
ところが、地元の人的には「この人たちは、なにがおもしろくてここに集まってくるのだろう?」状態だった。
「みなさんは、ここに何を見に来ているのですか?」

オー! サマニノヒトハ コンナーニ スバラシイ チシツノ マヂカニ イルノニ、 ソノ スバラーシサヲ シラナイデ イルノデスカー!!
地元の人たちに「幌満かんらん岩」の素晴らしさを知ってもらうための講演や、山登り観察会が開かれるようになった。
地質を調査する最新鋭マシンの「バイブロサイス車」を登場させて、かんらん岩体の登山見学会も行った。
水野洋一氏「見学会には町民20人が参加して下さいました。様似町の人口は全部で5000人ですから、これを札幌でやったとしたら、札幌の人口で換算して7000人もの人々が見学会に殺到したことになります!」(会場笑い)
アポイ岳の「幌満かんらん岩」をジオパーク候補に強く推したのは、北海道大学の新井田清信(にいだ きよあき)氏。
新井田氏がアポイ岳にのぼってカンラン岩の説明をなさっている光景はこちら。
いやあ、すばらしい風景ですね。
様似町の役場前には、かんらん岩の大きな塊をゴンゴンあしらった、かわいい前庭があります。
ところで、この様似町は、地質遺産に登録するにあたって・・・登山しないと観光できない状態で行くのかな、それとも今の役場のささやかな前庭以上に豪華な何か、観光施設をふもとにお作りなさるんだろうか。
白滝黒曜石遺跡のほうは、石器遺跡やら、氷河地形やら、ナキウサギやら、観光用のイメージングを広げやすそうなんだけれど、こちらカンラン岩のほうは、・・・どうやってアピールしていくのかな、ちょっと現時点では想像がつかない。
おもしろい展開になりそうなら、ぜひ訪問したいです。札幌から近いし。
北海道からのジオパーク候補三カ所。
有望さはどう見ても、岡ちゃん先生の有珠山がダントツなのでしょう。知名度も、歴史も、施設も人材もそろっている。次は、施設はまだでもイメージングのしやすい白滝黒曜石遺跡? そして様似町・・・あれ?
講演会の時間割では、この三カ所、講演の割り当て時間があからさまに違っていた。
岡ちゃん先生の有珠山ジオパーク計画には50分もたっぷり。
白滝黒曜石遺跡のお話には15分。
そして、様似町はかわいそうに、5分ですよ。
これはもしかして、主催側が「ジオパーク登録に脈がありそうな度合い」をまんま講演時間の割り当てであらわしてしまったんだろうか。
【2008年、国際惑星地球年にジオパークを目指せ!】

ユネスコの、ジオパーク登録は2年ごとなんだそうですよ。
次のジオパーク登録は、来年2008年。
世界の各地が、ジオパーク登録を希望して動きだしている。日本の各地も、登録に向かって走り出した。
そんでもって、2008年はユネスコが定めた「国際惑星地球年」でもあったりします。 なんかものすごく「地球、地球」と盛り上がりそうな気配がひしひしと。(鬼が笑ってます)
日本ローカルでは「地質の日」(5月10日)なんてのもあるそうで、来年のゴールデンウィークあたりになにやらいろいろそれっぽいイベントも開かれるのではないかと思われ。
え、あれ? この「地質の日」を5月10日にすることが決まったのは、今年の春なんだそうですよ。なんだなんだ、地質遺産がどうのと盛り上がりはじめたのはホントここわずか数年のことなのか?
以上、なにやらジオパークが盛り上がっているねというお話でした。
個人的には、なんか、・・・そうなのか?という気もしたりする。
日々見慣れた、いとおしい球状摂理や奇態な砂岩は、そうか全然地学的には価値がなかったんだなぁ、と、夢破られたような寂しさが。
そんな個人的な思いが作りだした地学お宝でなくても、すでに観光で有名な層雲峡や車石など北海道の「珍しがられている」地形は、 日本の地質百選にさえも入ってない。 「地質学的に重要な露頭や場所(地質遺産)」のたぐいでは全然ないということなのか・・・。
観光客がその光景にデフォルトで喜ぶナニカではなく、「地質学的な意味」を説明して初めて成り立つ観光地、を作っていこうということなのか。
・・・自然、でありながら、どこか「作為的」な自然の気配も感じる。少々説明しづらいけれど、直感的な違和感が、んー、・・・観光的価値と学術的価値の、ズレ?
いや、自分の好きだった地形・地質たちが、とうの昔に工事でなきものにされてしまった悲しいひがみで、こんな受け取り方をしてしまっているだけかもしれませんけどね。

その物見遊山が、世界の名所をおびやかす
2007/10 Discovery Tourism Threatens Popular Destinations
世界的な観光ブームは、自滅を呼び込んでいないか
地球温暖化の一因となることによって肝心の観光地を脅かしてしまっている
ジオパークという発想が、ヨーロッパから出てきたという点も、微妙に違和感を感じている。
もしかしたら、「神の意思の表れを読みとれ」めいた、西欧世界的一神教妄想が、構想立ち上げの原動力になっていたりしたんだろうか。
いやまあ、なんだかんだいっても、来年は「国際惑星地球年」だ。
時代は怒涛に今年以上に地学祭に走っていくだろう。
有珠山バンザイ。黒曜石バンザイ。かんらん岩がんばれ。
登録なった暁には、しっかり見に行ってあげるよ。
楽しみにしているからね。
へぇボタン:へぇ〜
と押してみるもよし
『日本列島ジオサイト 地質百選』
オーム社 (2007/10/19)

![[ EP: 科学に佇む心と身体 ]](http://homepage1.nifty.com/NewSphere/transparent.gif)







次の記事
前の記事 

この記事のトラックバック用URL【http://ep.blog12.fc2.com/tb.php/911-500e433f】
フリーの













