[ EP: 科学に佇む心と身体 ]

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岡ちゃん火山先生の講演会とジオパーク構想

カテゴリ[科学に佇む2007年] 2007/10/06
 9月、岡田弘先生(おかだ ひろむ 北大名誉教授)がいらしたイベントにつごう3回出かけてまいりました。
 2000年有珠山噴火の防災ヒーロー、岡ちゃん先生をナマで見るのは初めてです。いずれも札幌。

●〜北海道1回目の 第3回ジオ・フェスティバル(9月2日)は、岡田弘先生の講演会には間に合わず、間近でお姿を拝見しただけ。

●〜北海道9月9日 日本地質学会 市民講演会 「発掘!眠れる地質遺産 マチ起こしの目覚まし−ジオパークの試み−」
 ここでの岡田弘先生の講演題目は「有珠山ジオパークの魅力 活発な地球を学び親しもう」。会場は北大理学部5号館の教室。
 岡ちゃん先生は開口一番「この春ここを卒業したのですが、なつかしいですね」。
 そうか、先生、ここで授業なさっていたんだね。

●〜北海道9月24日、こちらは日本自然災害学会のオープン・フォーラム。
 「災害の教訓は活かされているか 北海道南西沖地震、有珠山2000年噴火後の減災システムを考える」
 岡田弘先生の講演題目は「30年前の有珠山噴火は何をもたらしたか? 自然直視の30年の減災の歩み」。

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 基本的に、岡ちゃん先生のしゃべりはスゴイです。
 伝えたいことをてんこ盛りに抱えていなさる。さりげないながらもマシンガントーク。でもってわかりやすい。
 キャラも立っている。後継(というよりは子供たち)を育て伸ばすことに目をキラキラさせる。たいへん拝みたくなるような仏様系のオーラを発していなさる。
 kampai

... 以下つづき...

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●〜北海道「日本地質学会」の講演会に出向いた人が書いたブログエントリ:
 リンク 新・北海道田園生活
 あまり面白い内容ではありませんでした。噴火予知で実績がある岡田弘教授が堅い内容を真面目に話されたのですが、もう少し話を脱線させても良かったんじゃないかなと思いましたよ。

 ふうむ。
 自分的にはじゅうぶん面白かったし、手練れのうまさと濃密な知識・経験・視野がにじみ出ていて、いくらでも話の背景を想像して味わい楽しめる内容だった。
 まえふりの謙遜がいやみに思えるほど。(「ジオパーク」構想について語れとのことですが、今年春からたずさわることになったばかりのまだ数ヶ月の浅い経験でどのくらいお話しできるか心もとないところですが、的なことわりを冒頭で述べられていた)
 「日本地質学会」の講演会は『ジオパーク』を市民に紹介することが主題。『ジオパーク』(観光開発)は、岡ちゃん先生的には本来の仕事(観測と防災)からはちょっと方向が違っている。で、そのまえふりの謙遜は、【急に違う路線をふられて、とりあえずそれに沿った形は整えてみますが、】 …めいた照れ混じりのセリフのように聞き取った。

 日本地質学会の市民向け講演会の後、札幌で「日本地質学会」の本番。
 そして3週間後には日本自然災害学会の市民向け講演会の後、同じく札幌で「日本自然災害学会」の本番。

 日本自然災害学会のほうの講演では、防災こそが自分のフィールドであるからか、前置きも何も最初からアクセル踏んでぎっちりお話。
 ペース配分を損なわないよう使い慣れたパワーポイントをパッパとさばいていく手並みが頼もしい。

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■岡田氏side■
アンカー【岡ちゃん先生】


 2000年の有珠山噴火で岡田氏がテレビに頻出していた頃、サッカー日本代表の監督が”岡ちゃん”で、その延長で我が家的には岡田氏は完全に「岡ちゃん先生」になっている。

 岡田弘(おかだ ひろむ)先生。

 火山研究のプロ。「有珠山の主治医」。長野出身、札幌在住。
 今年の春に、北海道大学を定年でしりぞく。

岡ちゃん先生の最後の授業
 リンク 岡田弘北大教授の最終講義 〜坂の町南沢

 現在は北大名誉教授、NPO環境防災総合政策研究機構理事(この組織は理事がたくさんいるんだね)、そして壮瞥町(そうべつちょう)の防災技術アドバイザー。壮瞥町は有珠(うす)の火山の地元。
 リンク [CeMI] 環境防災総合政策研究機構


■岡田氏front■
有珠山噴火の当時。
真夜中、火山性微動の連絡でまっさきに駆けつける岡ちゃん先生。初動の記録がなまなましい。arama
 リンク 火山活動開始(3/27)深夜の記録 2002年、壮瞥町有珠火山災害対策本部が立ち上がるまで 

◆有珠山噴火現地対策本部長奮闘記◆2000年有珠山噴火
 『三日で解決せよ 有珠山噴火現地対策本部長奮闘記』 増田 敏男 (著) 時事通信社 (2001/03)
 『2000年有珠山噴火』 北海道新聞社 (編集) 北海道新聞社 (2002/07)

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アンカー【観光と防災の両立】


 『ジオパーク』は、市民に「地質遺産」の存在を知らしめ、保護保全を奨励し、さらには観光資源として地元のお役にたてましょう、というような趣旨の・・・国際的企画?らしい。

 火山観測と防災のプロであり、現場に密着した視点に立つ岡ちゃん先生が、「『ジオパーク』観光開発」の路線で講演を依頼されると、話は「防災教育自体が観光資源になりうる」という地に足をつけた展開になるのが頼もしい。(石炭村やロボット館のような絵空事の観光企画に陥ったりしない)

 実際に、岡田氏は洞爺湖〜有珠山の観光と防災の両立に、防災アドバイザーとしてたずさわっていらっしゃる。git

●Ю【熱泥流で流された橋(!)が2階にぶつかった(!)団地が保存された】
泥流で流された橋が団地にぶつかってできた傷。地殻変動も大迫力。
 リンク 火山若手の会2001有珠山巡検

 例えばリンク このページ下から2〜3段目の写真
 写真に見える橋の右にある板状のものは、その橋より上流からリンク 熱泥流に押し流されてきた「木の実橋」 です。
 その木の実橋のなれの果ては、火山弾でボコボコに穴があいた団地や温泉施設の廃墟とともに、災害を記録する実物として保存されることになったarama。その決定を語る岡ちゃん先生はなんともうれしそうだった。これぞ防災教育と観光がみごとに合体&結実したたまものだね。
『金比羅火口災害遺構』
 2000年噴火の泥流によって押し流された木の実橋や、被害を受けた町営温泉浴場「やすらぎの家」が、当時の姿のまま保存されています。
 リンク 洞爺湖温泉エリア  〜洞爺湖ビジターセンター
 リンク 金比羅火口災害遺構散策路  〜洞爺湖周辺地域エコミュージアム:トレイル & サテライト


●Ю【噴石で穴だらけの「洞爺湖幼稚園」も観光に保存】

 ここは自分も、一般公開後間もない頃に見に行った。goo
 建物がもう火山弾でバリバリの穴だらけ。灰ですすけた廃墟になっているそれが「幼稚園」なわけで、かなりのインパクト。庭にころがる噴石もそのままに保存されて、その後、間近で見学できるように造成されたらしい。
 見学用に整えられる前はこんな感じの光景です。悲惨。
 リンク CLUB CRUZEプチオフin中山峠〜洞爺湖
 どでかいボックスカルバートのせりあがりには自分もびびった。
 リンク 洞爺湖幼稚園の廃墟
 けっこうガクブル。

アンカー【まだほかにも保存したい地形がある】


 悪い冗談のように、棚田状にガックンガックンにされてしまっているけれど、もとは一本のすなおにまっすぐな道路だった場所。
 リンク 断層状に隆起した国道230号 suji
 車が走っていた場所だとは思えない。この迫力満点な光景(グラーベンのダイナミックさ)を今、なんとか保全して後世に残していけないか、観光資源にできないか、岡ちゃん先生たちは検討中なのだそうです。
 いいな、ここ観光地として成立するならぜひ記念写真撮りに行きたいですぞ。スペクタクルだ。
 写真の道路に転がっている巨石は噴火で飛んできたもの。
 例えばリンク このページ一番下の国道写真も。

●岡ちゃん先生のお話:こんなに大きな噴石がころがっていて(飛んできたんですよ!)、保存しておきたかったのだけれど、こういうときは役所の仕事は早いですね、あっというまに片付けられてしまいました。(会場笑い)

 火山屋さんとして興味惹かれる光景が、残しておきたいレアアイテムが、うまくすれば観光と防災のために、地元のために保存してもらえるという、その方向に『ジオパーク』と仲良くできれば、これはたいへんおいしいめぐり合わせだ。

●Ю【保存しないと光景はさまがわりしてしまう】

 当時の面影はどの程度の規模でどう残せばいいのか。

 例えば、噴火の影響でハゲ山になってしまっても、月日が経つと、いつしか緑に覆われ、ただのお山になってしまう。
 今の昭和新山、訪れた観光客はてっぺんのハゲ山だけが昭和新山で、そこだけが当時の噴火で隆起したのだろうと勘違いしたままお帰りになられることが多いらしい。
●昭和新山●昭和新山
 実際は、ハゲ山の麓(ふもと)のうっそうとした森の部分まで含めて、昭和新山は平たい農耕地からググイムと盛り上がって来なさった。これ全部が、昭和新山。

 例えば上で紹介した「棚田状にガックンガックンの国道」も、ほっておいたらすぐに草木に覆われて何が何だがわからなくなってしまうだろう。

 ほっといたら緑の風景に溶け込んで、シロウトさんにはわかってもらえない状態になってしまう。そんなクロウトならではの悩ましさもないまぜに、さてさて、災害の規模を正しく把握してもらえるような保存とは・・・。

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アンカー【有珠の地元は防災教育が盛んなのです】


 岡ちゃん先生が強調するのは「一昔前に比べたら段違いに防災意識は高まってきた」。
 防災意識が高まる前の、一昔前とはどんな時代だったのか。

・ほんの十数年前まで「こんな被害が予想されます」と町や村に伝えると、「そんなことが知れたらパニックになる! 被害予想など絶対公表しないで下さい!」というfaint なリアクションが返ってくるという、今にしてみれば言語道断なたいへんお寒い状況が普通だった。

・研究者は、どんな災害がどこに起きうるのか、予想することができるようになっていた。でも、その予想はみんなに知られていなかったため、結果見殺しの悲劇が起こってしまった。gakbul
 南米コロンビアのネバドデルルイス火山の1985年噴火では誘発した泥流が2万5千人の生命を奪いましたが,じつは噴火前にその泥流の危険域を正確に予測したハザードマップが関係機関に配布されていました.しかし,このマップは不幸にして緊急避難に使われず多数が犠牲となったのです.この災害はハザードマップの信頼性を高めるとともに,その有効性について教訓を残しました.
 リンク 火山 その活動の明暗 北大名誉教授・勝井義雄 日本火山学会第4回公開講座

 この事件は火山学会のトラウマになったらしい。tear_flow
●右画
 どんな災害が起きるか予想ができていた、まさにそのとおりに、ネバドデルルイス火山の泥流で数万人もの人が死んでしまった! 一部の人間しか災害予想を把握しておらず、全然避難をしていなかった。
 避難は可能だったのに!
 → 『 過去の火山災害と防災の歴史を見ておこう 』

 前世紀末に流行ったアメリカン・パニック映画では、「そんな情報が知られるとパニックが起きてしまう!」と危機情報をアホ市長がもみつぶしにかかるという筋書きがよくあるベタ展開だった。で、それがもうシャレにならない規模で、ネバドデルルイスの悲劇として現実化してしまった。

 これで、過去に十勝岳の火山泥流で多数の死者を出した富良野の地元がびっくり。
 大正泥流とそっくりだ! 被害範囲が予測できていたのか!! 予測さえあれば、あの悪夢のような火山災害は防げるぞ!
 で、地元はハザードマップ(災害予測地図)の作成を北大に依頼する。
 この十勝みたいに、ネバドデルルイスの悲劇を目の当たりにして、真っ青になった自治体関係者は世界中にいたらしい。「災害予想を隠すのはいけないことだったのか!?」

 ネバドデルルイス以降は、災害の予測公開と事前の避難が積極的に行われるようになり、大規模な噴火でも「死者ゼロ」の記録が多く出されるようになる。(その大転換は、わずか20年前のことなんだねsobtears
 予想どおりのとてつもない被害を出した、そのひどい経験があってこその、被害ゼロ。

 そして岡ちゃん先生は、有珠山の地元では2000年噴火のわずか2ヶ月前にも、地元の子どもたちが火山災害と防災を劇で上演するなど
 「どこで、何が、どう起きるか」の情報を地元の人たちが積極的に把握していたのです と強調する。
岡田弘氏は、有珠山の噴火を予知したことだけでなく、火山の静穏な時期から地元に密着した住民への啓発活動等によってスムーズな事前避難をうながしたこと、自治体職員など防災機関の人たちと常に連携した活動をして有珠山の噴火期に的確な防災対策について助言をしたことに対して、非常に評価が高い。この功績により、平成13年(2001年)度防災功労者内閣総理大臣表彰を受賞した。
 リンク 岡田弘氏について〜ウィキ


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アンカー【被災する場所には住まない】


 有珠山〜洞爺湖の地元では、過去噴火した近辺、被災した地域、ハザードマップで危険性が高い場所には、そもそも住居を置かない、住みません、という方策が普通に採られている。
 そこが危険な地域だとわかれば、団地も思い切ってまるごと移転させるのがあたりまえ。

 気になったのは「危ない場所には住まない」それが普通であるという感覚は、 『奥尻島(おくしりとう)』ではまた違っているのかなと。
 → 『奥尻島の今と、安心ゆえの危険』
 もしかしたら、地元の産業の違いが、防災感覚の差につながっていたりするのかもしれない。
 もしかしたら、だよ。奥尻(おくしり)の生業(なりわい)は漁業でありイタコ一枚下は地獄。保険料も高めのリスクを覚悟して生活をするのが当然の世界。
 かたや、有珠山(うすさん)や洞爺湖(とうやこ)は観光の地。安全あってこその観光業、わずかでも危険だというウワサは命取り。

 ・・・奥尻のメイン産業が観光であったならば、いや、観光を産業として強く視野に入れていたのであれば、奥尻島の復興計画はもうちょっと違ったものになっていたのかもしれない。

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アンカー【地元の子どもを見守る岡ちゃん先生】


●右画
 地元の子どもたちを引き連れて、昭和新山を登る岡ちゃん先生。
 「ここが地球で最も動いた場所だよ」
 変化する地球をどう認識するか。
 壮瞥町(そうべつちょう)では1982年から、子ども防災教室をはじめとして啓発活動を行っており、2000年噴火も、2ヶ月前に子どもたちが防災の演劇を上演したばかりだった。

 どんな被害を受ける可能性があるのかをまず明らかにして、ふだんから対策を考えておく。
 専門家が知っていることをいかに伝えるか。専門家の責任だ。
 ためらわずに適切な指導をする。
 迷わずにはっきり専門家が言う。
 そして、災害に対応可能なシステムを構築し、予想される災害と、地球とつきあう仕組みを考えていく。
 すでに防災教育を受けて育った子が二人、成人して地元の役所に入ってくれている。

 まあ、そんなこんなの、ルーティンにとどまらない生き生きとした弾丸トークの岡ちゃん先生。
 引退するウツワじゃない。そんな印象バリバリ。
 どっちかというとまだまだ若い学生をひっぱって火山と対峙し盛り上がりたいんだよ。
 研究対象が内にこもらず、この世にしっかと別存する幸せというか(え〜と、なんだ、例えば、ドーキンスなどのトンデモ戦線が延々応酬する口先三寸の世界とは違う、厳とした実効力を振るまえる幸福)、露出も著書も少ないけれど、存在感抜群な、存在自体の体当たりの人。
 何より「子どもたちを育てる」「後継者を導き巣立たせる」そこにたいへん生きがいを感じていらっしゃるとお見受けした。

2007札幌ジオフェスティバルにて岡田弘氏(右端)

 岡ちゃん先生(右端)の柔和なたたずまいに、思わず拝んでしまう。


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 → 2007/10 『 有珠山2000年 西山火山の噴火 』
 → 2007/10 『世界地質遺産:ジオパーク構想と北海道』
 → 2007/10 『日本自然災害学会:岡ちゃん先生が語る火山防災の歴史』
 → 2007/10 『日本自然災害学会:津波で逃げない北海道人』
 → 2007/09 『奥尻島の今と、安心ゆえの危険』

◆北海道の活火山◆火山噴火◆有珠山◆Q&A 火山噴火
『北海道の活火山』  勝井 義雄、岡田 弘、中川 光弘著 北海道新聞社 (2007/01)
『火山噴火 予知と減災を考える』 岩波新書 新赤版 鎌田 浩毅 (著)  岩波書店 (2007/09)
『有珠山 その変動と災害』  門村 浩, 新谷 融, 岡田 弘 (著) 北海道大学図書刊行会 (2000年)
『Q&A 火山噴火 日本列島が火を噴いている!』 日本火山学会 (編集)  講談社ブルーバックス (2001/04)




メタル

◆新刊 岡ちゃん先生の単著が出た!!kampai
 『有珠山 火の山とともに』
 岡田 弘著
 北海道新聞社 (2008/10)

>1977年有珠、1988年十勝岳、2000年有珠…。
>自然のメカニズムと予知・防災の攻防を綴ったドキュメント。


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筆者:雨崎良未
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