オウムのアレックス(と「ンキシ」)について、エントリを書こうと思いつつ、日本側の情報が少ないこともあって春から後回しにしていたら…
アレックスが死んでしまいました。享年(きょうねん)31才。

2007/09 news@nature.com Farewell to a famous parrot
有名なオウムへのさよなら
Alex, who could talk and count, dies at 31.
話し、数えるアレックスは、31才でお亡くなり。
2007/09 New York Times Brainy Parrot Dies, Emotive to the End
2007/09 Discovery Gifted Parrot, 'Alex,' Dies
才能のあるオウム『アレックス』死ぬ
いかんよ、追悼エントリになってしまったよ。
大型のオウムの寿命は30〜50年くらいらしいので、旅立ちの時節としては妥当な範囲なんでしょうか。

アレックスはペットショップの出身。
種類としては、 ヨウム(psittacus erithacus) というオウムの一種にあたります。
教えられた言葉のオウム返しはもちろんのこと、他人の動作パターンから自発的に(研究者が予期せぬことをも)学習したり、独自に言葉の組み合わせを考えて自分の意志を伝えたり、相手の意図の裏を読んだりと、トリアタマをバカにしていた研究者達のドギモを抜いて、動物研究のその道では世界的に名をとどろかせた超有名オウムだったのでした。
2005年7月【日本語記事】ワイアード ゼロの概念を習得した「天才」オウム↑
この記事は、アレックスという存在が何であったのか、その業績と意味について、濃くコンパクトにつかめて便利です。アレックス29才のときの記事ですね。
当時の論文からの記事。
オウムのアレックス、ゼロ概念がわかっているかも
2005/07 EurekAlert African grey parrot is first bird to comprehend numerical concept akin to zero
去年のアレックス。
オウムのアレックスが30回目の誕生日(孵化記念日)を迎えたよTシャツ
本物の「アレックスの羽イヤリング」も売ってるよ!
2006/08 Retrospectacle: A Neuroscience Blog African Grey Parrot Apparel for a Good Cause
アレックスのグッズがいろいろ買える「アレックス基金」のサイト

アレックスが、今年残していった成果。
2007/01 National Geographic Manatees Have "Long-Distance" Sense of Touch, Experts Say
言われたことを真似もできるし新語も作れるアレックス
2007/01 Discovery Parrot Talk More Clever Than Thought
すごいや、発音できない音は「無音」で表すんだね!
2007/01 ABC@オーストラリア Alex the parrot makes up words
アレックスの本は一冊出ています。

『アレックス・スタディ オウムは人間の言葉を理解するか』
Irene Maxine Pepperberg著
共立出版 7000円 2003年
内容は専門家向けにお堅くて残念。
物事を分類して語を選択できるアレックスの賢さにびっくりだね。
[ Amazon ] [bk1]

原書
The Alex Studies: Cognitive and Communicative Abilities of Grey Parrots
オウムはオウム返しをしているだけじゃない
オウムのアレックスとおしゃべり研究
by Irene Pepperberg
Harvard University (January 2000)
書籍情報と書評:アマゾン日 米 英
原書の書評 2000/01 NEW YORK TIMES So, This Parrot Comes Into a Bar and Says . . .
う〜ん、アレックスの成果は、書籍としては7年前の一冊きりで、最近の成果はまとまった形では出ていない…。のかな。
アレックスを研究しているペッパーバーグ博士は、2年前に一度来日しています。
2005/05
その時の博士のお言葉は「特殊な訓練の結果です、一般家庭で鳥がアレックスのようになるとは期待しないでください。」

... 以下つづき...

ペパーバーグ先生のインタビュービデオ。
アレックスの動画がおいてあります。
こんなDVDも出てますね。

『ことばの歴史 アリのことばからインターネットのことばまで』
スティーヴン・ロジャー・フィッシャー
研究社 2001/07
(1999/A History of Language)
p.18-19
アレックスは、うわべは上級レベルで人間とコミュニケーションがとれているように見えたが、人間どうしでするような「話」を、トレーナーたちとすることはできなかった。類人猿とは違って、アレックスは前日に自分がしたことや、翌日に何をしたいかを話すことはできなかった。しかしアレックスの例から、おそらく鳥類も創造的に言語を使えるだろうということと、それゆえに鳥類にも類人猿(オランウータン、ゴリラ、チンパンジー、ボノボ)やクジラ類(クジラ、イルカ)に匹敵するくらい複雑な論理的思考ができるだろう、ということがわれわれ人間に明らかになった。

ペパーバーグ先生は、アレックスの後継オウムは育ててないんだろうか。
アレックスより20才くらい若いグリフィンというオウムはラボにいるけれど、アレックスが到達したレベルには全然及ばない状態らしい。

アレックスとはまた別に、この世界では過去、「ンキシ」というオウムも話題にのぼりました。
世界で最も雄弁な動物
オウムの「ンキシ」、使える単語は約1000語
偶然より3倍の率で適切な語を選択
ユーモアセンスだってあるんです
2004/01 BBC News Parrot's oratory stuns scientists
ンキシの音声ファイル:THE N'KISI PROJECT
3年半前の記事です。
この「BBC News」記事は、今クリックすると、全然違う内容の記事が表示されます。
その差し替えられた記事の末尾には、「ここにあった記事には、修正しようのない間違い/事実かどうか確認不能な内容が含まれていたため、仕方なく別内容の記事に差し替えました」と注釈が記してある。
消えたダメ記事の痕跡
つまり、「ンキシ」の能力は、テレパシーの才能(!)も含めて、飼い主と研究者の妄想だった。orz
そして、アレックスの研究成果にも、
「それって気のせいじゃないの?」
という疑念がつきまとっている。
「それって実はただの 「賢いハンス効果」 どまりで、全然知能じゃないんじゃないの?」
「賢いハンス効果/りこうなハンス」=ハンスという馬のいろいろな行動が、実際はそうではないのに天才的だ!と都合よく解釈されてえらいことになった事件に由来する
…アレックスの言動にしても、いちいち人間の側が勝手に「知能が高そうに凄そうに解釈してしまっているだけじゃないの?」という懐疑論者からのツッコミ。
アレックスに続く研究が滞っている気配は、うさんくさすぎるンキシ事件のとばっちりが来ているからだったりするんだろうか?
アレックスは、アレックスの才能は、アレックスとペパーバーグ博士の間でしか生じないものだったのか?
訃報の動向を見る限り、アレックスは天才的なオウムであったと疑念なく報道されているけれど。
そういう、ヒトのもとに一生を置いた動物の数奇な生きざまへの、追悼の仕方であるのかもしれない。

![[ EP: 科学に佇む心と身体 ]](http://homepage1.nifty.com/NewSphere/transparent.gif)







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