そのうちのひとつ、「デスモスチルス」の異様さに、すみません、眠れません。

足がねぇ、どうもわけわかんないんですよ。
ちょっと描いてみますけどね。

※【ここに画像が表示されない場合は】
図体は、もう「カバ」のたぐいのボリュームだと思ってくれていい。重量漢。
その重量漢が、なぜか、なんかめっちゃむりがありそうな「つま先広げ立ち」の骨格で復元されているんですね。
四肢は横に踏ん張る形。それはいい。
踏ん張って、でかい図体を支える指先が、なぜああなるのか。
おかしいやん、ものすご「突き指」か、逆関節が決まるか、脱臼してしまいそうやん!
見ているだけでも痛そうで。
で、骨格だけなら、「もしかしたら指の下と掌部分にたっぷり厚くて堅い肉が盛り上がっていて(要するにゾウみたいな)丈夫な足先になっていたのかな」(上図の下段右)と納得できないこともないのだけれど、なんか、化石に添えられた復元図では、人間の三つ指ついた状態の手みたいな(下段左)、いやこれ絶対グッキリ突き指するでしょう、思わず心配まくってしまうような足先に描かれていたりする。


…復元の加減や、絵の描き方のかげんにもよるのかな。
こちらの復元骨格は、そこまで痛そうな状態にはなってない。
〜 岐阜大学 総合情報メディアセンター
こちらの復元図は、掌を分厚めにこさえて整合性をなんとかしようと工夫している感じ。

いやまず、「デスモスチルス」って何。
【 日本を代表する絶滅哺乳類 】
【 北海道はデスモスチルス化石の世界的大産地 】
ほおお!
なんと知られていない「代表」であることか!
調べてみると、この「デスモスチルス」の形態復元は、これまでたいへんモメたり見解が変わったりと、いろいろ困難であったらしい。
ということは、この「足先」はもしかしてまだ全然決着がついていない状態…??
... 以下つづき...

【地質標本館 特別展】
つくばにある
09月26日〜12月02日【つくば】地質標本館 特別展
「デスモスチルス歌登標本 世界一の全身化石発見から30年」
…うわ、ポスターの「デスモ君」、キャラ立ちすぎ。

このリンク先にあるポスターに描かれているデスモスチルスの足先!
これこれ、このたぐいの復元図が、妙に不自然で痛そうなんですよ。写っている化石の足先も、やけに痛そうだ。
岐阜大の「足先が痛そうではない全身化石レプリカの画像 」とご比較どうぞ。
歌登(うたのぼり)ということは、このデスモスチルス君は北海道出身の化石ですね。
金田一産のデスモスチルス類 〜岩手県立博物館
全身骨格が見つかっているのは、パレオパラドキシア属が岐阜県、埼玉県、岡山県、福島県で、デスモスチルス属は先程挙げた樺太の気屯(けとん)で、そして1977年に北海道の歌登(うたのぼり)で見つかっていますが、各地の博物館で展示されている樺太産のものは地圧で押しつぶされ、歌登のものはほとんど完全な標本ですが、子供のものと見られます。
つくばの展示に登場するのは、この歌登からのお子さん化石なわけですね。
北海道・歌登のデスモスチルス発見場所には「デスモスの里」という名が付けられて、目印の看板もこさえてあるそうな。
太古の珍獣デスモスチルス〜歌登町
上徳志別というところがあり、この寿橋の近くがデスモスチルスの化石の発掘の地です。「デスモスの里」という表示板があるので、太古の昔この動物がこのあたりで暮していたということがわかります。

【復元の苦労の歴史】
デスモスチルスくんの研究史を拾ってみた。
けっこうなドラマがあったらしい。というか、まだ続いている。
デスモスチルスの頭部化石・関節可動式骨格模型(歌登標本)
〜東京大学コレクションII 動く大地とその生物
デスモスチルスの全身骨格はこれまでに世界で2体しか発見されておらず、いずれも日本にある。
系統関係は1世紀以上にわたってまだ論争中。
体の骨の形も、臼歯の形の奇妙さに劣らず、ほかの動物に見られないほど風変わり。
日本を代表する化石であるくせに、
・デスモスチルスに似た生き物がほかにはいないのです
・ほかの動物にはない独特な骨を持ってます
・七不思議くらい簡単に挙げられます
どうにもわかんないことだらけのデスモスチルスくん。
もしかして、化石の研究は哺乳類より恐竜のほうに偏ってしまっているのかな。
デスモスチルスの七不思議
いったい何モノなのか?/不思議な骨は何のため?/海生? 陸生?/食べものは?/北方系か、南方系か?/先祖はいつどこに?/なぜ絶滅したのか?
↑のサイトには「犬塚則久」氏による復元図が掲載されています。
「犬塚則久」氏は、この謎のデスモスチルス解明に大きく貢献して下さった大先生であるらしい。
『絶滅した日本の巨獣』
井尻 正二 (著), 犬塚 則久 (著)
築地書館 (1989/10)
『デスモスチルスの復元』
犬塚則久著
海鳴社 (2003/05)
「北海道の主なデスモスチルス産地」の地図も収録
(旧版は1984年)
1980年代に犬塚先生が、現在の基礎となる(カバワニみたいな)復元決定版を出すまでは、なにやら「手足伸ばしいの」バージョンや、「イルカっぽいカバ」バージョンだの、いろんなデスモスチルス想像図が栄枯盛衰していなさった。

さまざまな研究者が描いたデスモスチルスの姿。
デスモスチルスのことなら「足寄動物化石博物館」へ
博物館にはデスモスチルスの研究の変遷、世界中の化石標本や資料がズラリと並んでいる。
デスモスチルスはナゾの多い生物だけに、生きていた時の骨格復元がとても困難だった。1936年にサハリン産の化石が初めて復元されてから、同じ化石が3人の研究者によって、それぞれ違った体形に組み立てられている。
いいね。 北海道の足寄(あしょろ)博物館、グッジョブ。


●さても、犬塚先生によって形がだいたい今の形に定まった1980年代以降は、デスモスチルスの研究は、進展はないんだろうか?
形態の復元にはコンピュータシミュレーションが活用される時代になりました。
【デスモスチルスの生体力学的復元】 (’96〜98)
1500万前の絶滅哺乳類デスモスチルスの全身骨格を3次元計測し, 全身で16節の骨格と98の筋と靭帯を持つ3次元筋骨格モデルをコンピュータ内に作りました. このモデルを用い,様々な姿勢による体重支持負担と歩行の容易さを評価した結果,デスモスチルスは四肢を側方に張り出した姿勢をしていたことがわかりました.
そのシミュレーション成果も含めて、前世紀末にデスモスチルスがテーマの学術集会があったらしい。
「"まぼろしの奇獣"デスモスチルス(Desmostylus)とは何か」
1998年には北海道足寄で頭蓋発見100年を記念し,Desmostylusに関するシンポジウムが開かれた.
形態の復元は進んだが,近縁な動物が現生に存在しないため化石の形態に直接残されない食性や生態は未だに明らかになっていない.
ほらほら、まだ全然ナゾのまんまらしい。
このナゾをどうやって解いていけばいいのか。やるべきことはいっぱいありますぞ。

●デスモスチルスには会えないのかな?
まだデスモスチルスの化石は、この世に2体ぶんしか存在していない。
でも、化石ということは、まだ今もどこかにこっそり埋まっている可能性があるわけだ。
下手な「恐竜の化石」を狙うより、有名な発見ができてしまうかもしれないね。
お、北海道で、お子さんも込みのデスモスチルス発掘イベントが開かれたりしていたよ。
デスモスチルスの複製化石は、日本各地の博物館で拝見することができるらしい。
何の化石はどこの博物館で見ることができるのか、どこかに一覧表があると便利かもね。
不格好な姿勢に驚き デスモスチルスの復元
〜 ふしぎ新発見 − 富山市科学文化センター(現・富山市科学博物館)
デスモスチルス類も日本各地に産出し、多くの博物館で骨格標本の復元が展示されている。
関東ではこれから年末にかけて、つくば「地質標本館」でデスモスチルスが展示されます。
化石の足先が痛そうになっているかどうか、機会があればチェキどうぞ。

2007/12追記:
NHK教育「地球ドラマチック」のカバ特集でカバの足先骨格を拝見。ついでに、その方向でいくつか検索してみた。
例えばカバの骨格
http://commons.wikimedia.org/wiki/Image:HippoSkelLyd2.png
例えばカバ〜海獣〜クジラの骨格
http://www.edwardtbabinski.us/whales/evolution_of_whales/
カバもRodhocetus も、指の骨は一束になって足先を形成している。デスモスチルスのような見た目痛そうな足先にはなっていない。
こちらにはサイの骨格。
http://www.skullsunlimited.com/newsletter/sept2006/newsletter-index.html
マンモス、カバ、サイの足先比較ができる。
http://donsmaps.com/animals3.html
マンモスの足の骨
http://donsmaps.com/images3/mammothskeleton.jpg
デスモスチルスの足先は、水掻きつき指広げタイプだったのか、指一体化カバ足タイプだったのか。アシカやクジラのような指一体化ヘラタイプではなさそうだね。
水掻きつき指広げタイプであると想定した場合に、デスモスチルスの足先は見た目に痛そうな復元になってしまうのかな。

![[ EP: 科学に佇む心と身体 ]](http://homepage1.nifty.com/NewSphere/transparent.gif)







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