
「蛇」
吉野裕子
シリーズ・ものと人間の文化史
法政大学出版局 1979年
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めっさ面白い。
30年前の書物なので、当時は新しい見解であったけれど今はもう常識、という部分もあるし、当時はそれで通ったかもしれないけれど、今では見解は変わっている、という部分もあるだろう。でも、それをよっこしても、いわゆる「物語作り」の作業として見れば、「ああ、こう世界を見て取ることができるのか!」とパズル・推理の楽しさが随所で味わえる。リアル推理小説もしくは伝奇小説やファンタジー構築だと思えばいい。
古代、縄文世界から神道の世界まで、ヒトが抱える畏怖心や幻惑を一身に集めて信仰の対象として君臨した、大きな物語「ヘビ」世界のお話。
蛇信仰の原点と由来、
そして、ペニス的ヘビの姿形とヘビのウロコ模様を兼ね備えて、絶大なる蛇の力を持つとされた神聖なる植物「蒲葵(びろう/びらう)」。
蒲葵の画像集 蒲葵(これも中国南部由来かな)は南国の植物であり、蒲葵の入手が難しい北の地では、蒲葵の代用品が神格化され祀られることにもなる。
蒲葵の代用品? 夏場に今でも重宝されている和風アイテムに、神のパワーが込められる。
... 以下つづき...

風を送るだけのごとき一介の道具が、ご神体として大きな力をはらんで共同体の上座に鎮座する。
この見解は今ではけっこう普及しているらしい。といっても、ほとんど検索ヒットしないけれど。
扇子:
蒲葵の葉の代用といわれ、蒲葵は神木で、幹は「生命の種」を宿す男性シンボルの形にそっくりで、生命力を表す。悪・災いを扇ぎ、払う。
上関神明祭
びろうとヘビ信仰、そして物部氏との関係について
物部氏の首領とその系譜 ニギハヤヒ ウマシマヂ 〜kihitsu ほか、
●「ミソギ」とはすなわち「身殺ぎ」であり、蛇の脱皮(生まれ変わり/生命力の刷新)をあらわす。
へぇ〜! そういえば、そんな話は聞いたことがあるなぁ。
●蒲葵(びろう、南国の植物)の葉は繊維状になり、衣服、屋根の材料、扇子などの多様な(聖なる)用途に用いられた。
蒲葵が育たない日本本土では、蒲葵の代わりに菅(すげ)や藁(わら)が、蛇の力を持つ植物として重宝された。
ほ〜!
チガヤは?チガヤの類は蒲葵とは別に中国南部ですでに聖性を帯びていたりしなかったっけ?
●聖なる存在や妖怪として現れやすい「一本足」。
これは二足・四足歩行が当たり前の日常世界の対比として、聖なる「一本足」ヘビを由来にするものではないかという推察。
おお〜。 たたら神や山彦ね。
もののけ姫のシシガミは、タタラの神ではないので二足〜四足であった、のような解釈遊びも可だ。
●なんか今、日曜朝の「螺旋(ラセン)の力」が流行っているけれど、古代も、いや、古代こそ、「螺旋の力」は強大だった。
だって「蛇はとぐろを巻く」!
らせん/トグロや「円錐形」に異界の力(神のパワー)を見出す事例は枚挙に事欠かない。
縄文土器のらせんと円錐。
古代の黄泉の国はイコール「山」。山こそは、最大級の円錐形であり、この世の盛衰を司る聖なる「蜷局/トグロ」、天然の神殿。
神の山には「ハヤマ」という名が付けられるが、これは「蛇山/ハヤマ」から来たものだと推察。
神事を執り行う聖なる「円錐形の竪穴住居型」も、トグロ/螺旋/円錐形。この住居は「グロ」(むろ:室)と呼ばれるし、神事の飾り物(たいがい蛇パワーの代用植物でできている)を集めてこさえる円錐形は「トンド」と呼ばれる。(トンドの室で、トグロ?)
お正月の「どんど焼き」は、そのまま蛇神様のパワー植物をたきあげるミソギ(新年生まれ変わり)の儀式。
…なんかさ、このまま天元突破グレンラガンの裏世界にドリル突入してしまったらもっとおもしろいんだけど、それはさすがに「蛇足」かな。

ちょっと楽屋向けっぽいお気楽夏休みネタでした。
他情報:
ポール・バーバー「ヴァンパイアと屍体:死と埋葬のフォークロア」 p.337
蛇と吸血鬼との関係はユーゴスラヴィア独特のモティーフ。
「縄文人の世界 日本人の原像を求めて」
小山修「縄文人の生活 おしゃれな縄文人」p.172-173
アボリジニ(オーストラリアの先住民)は、アワビ貝の内側が、虹のようにぎらっと光るのは蛇の肌だと言うんです。 [〜中略〜]
宗教の中心となっていたのは縄文は蛇、弥生時代は鳥ではなかったか。
エドワード・O.ウィルソン著 『生命の未来』 p.183
ヘビ、クモ、昆虫、コウモリに対する生得的な嫌悪感の遺伝率は、それぞれ約30%と算定されている。これは人間の行動特性一般に共通する数字である。人ごみや広い場所に極端な嫌悪感をもつ広場恐怖症の傾向の遺伝率は約40%である。
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