世の中、いろいろなノウハウ本があるもんですねぇ。


『うまい!と言われる科学論文の書き方 ジャーナルに受理される論文作成のコツ』 Bj¨orn Gustavii 丸善 (2005/03) [ Amazon ] [bk1]
『完璧!と言われる科学論文の書き方 筋道の通ったよみやすい文章作成のコツ』 John Kirkman 丸善 (2007/4/26) [ Amazon ] [bk1]ぱっと見、同じような内容の本か(両方買わなくてもどっちか一冊で間に合うか)と思わせるようなタイトルと装丁になってしまっていてもったいない2冊。
中身は全然ちゃう。
サブタイトルのほうが、本の中身をよく現している。
「論文をこさえる立場」になる人には、これ2冊ともが手元にあるとたいへん心強いのではないかと。
「うまい!」のほうは、論文雑誌に載せてもらえるような「体裁」の整え方ノウハウ。
ふだん、英語の科学記事を閲覧する機会が多い「読む」人にお勧めだ。
『うまい!と言われる科学論文の書き方 ジャーナルに受理される論文作成のコツ』
タイトルの付け方から、参考文献の作り方まで、科学論文を執筆する上でのノウハウを一から紹介。さらに、プレゼンの仕方、原稿をどのジャーナルにどうやって投稿したらよいか、校正の仕方まで網羅。
「完璧!」のほうは、論理的でストレートな文章の作り方。科学論文用の英作文指南。
英語を「書く」人向けの、ビジネスにも使える「伝える英語」の書き方だ。
『完璧!と言われる科学論文の書き方 筋道の通ったよみやすい文章作成のコツ』
誤解を与えない、読みやすい科学英語の書き方を一挙公開。科学論文に的を絞り、ハンドアウト、そしてウェブやパワーポイントに載せるような文の書き方を丁寧に解説。基礎的な英文の書き方のノウハウも伝授する。
自分はもっぱら「読む人」なので、
『うまい!』のほうがたいへん面白く。おおお、こんなしきたりの枠の中で彼らは科学のご報告をなさっていたのか!みたいな。
... 以下つづき...

『うまい!と言われる科学論文の書き方 ジャーナルに受理される論文作成のコツ』からいくつか。●伝えることをしぼれ
少ない言葉で的確に伝えろ
読み手はみんな忙しいんだから、ぱっとわかるようにコンパクトに書け。
冗長厳禁、いろいろ枝葉を書きたくても抑えろ。
「持っているデータをすべて盛り込みたいという欲望と戦え」。
はいはい、こちら毎度枝葉冗長なブログで申し訳ございません。m(__)m
●優先権を主張するのは避けろ
「優先権」?
要するに、「世界で一番**である研究です」とか自分で言うのはやめたほうがいいよ、というご忠告。
「今回の自分が一番だ」と論文の中でぶち上げてしまうと、そうじゃないだろとツッコミが入って、みっともなく訂正するはめになることがあるので、「一番」を自称するのは考え物だよと。
この広い世の中、自分より先に誰かがやってしまっているのに、自分のデータよりすごいモノがあるのに、それに気がつかないまま走っておりました ってことはよくありますからね。
一番といえば、過日「えー? 世界最小はそれとちゃうやん!」みたいな悶着があった。
「世界最小の魚を発見した」という報告に、「いやいやもっとちっこいのはいるぞ 最小の魚の座は誰に!? 」と各方面からツッコミが入ってね…。
●要旨に必要な要点を確認しろ
この4つを揃えろ
背景(Background:研究目的を含む)
どういう状況から何をしたいと思ったのか
実験(Methods)
何をやったのか
結果(Results)
その結果、何が起きたのか
結論(Conclusions)
結果は何を意味するとみなしたのか
ご報告にはこの4つを揃えなさい。
ブログ含むウェブに調べものの報告を載せるときにも使えますね。
・どういう状況から何を調べたいと思ったのか
・どこでどう調べたのか
・その結果、どんな情報が得られたのか
・それら情報から、自分はどんな意味・意義を読みとったのか
科学記事ヲチャーの自分的には、報告内容をこの4つの項目にきっちり揃えて書いてある(学術論文まんまの)記事は、ぱっと見読んでわかりやすい。けどつまらない。かといって、散文でおもしろ興味深そうに書いてある科学記事であっても、この4項目がちゃんと織り込まれていないものは読んでいて微妙にちゃんとせえやと腹が立つ。
一番嬉しいのは、ぱっと出た画面にスクロール不要で見える範囲に、1〜2行で拾える要点が含まれていること。例えばBBCニュースに見られるタイトルとサブタイ。
タイトル「**が##だ」
サブタイ「+++が〜〜をして##することがわかりました」
ぱっと的確な要点をクリップしてメモしておける。
EurekAlertのタイトルとサブタイは、それに比べると素人仕事というか、読み手サイドに立っていないものが少なくない。
タイトル「**が##だ」
サブタイ「+++病の治療に希望を拓くものだ」
サブタイが、本論無関係の「自分たちは投資に値することをやっているのだぞ」めいたあさって方向の宣伝になっていることが多く、サブタイ無視して別途こいつは要するに何をやったわけなんだ、と本文のほうを彷徨わなければならないこと多々。どうもめんどうでかなん。英語ネイティブではない漢字文化圏の人間にとっては、漢字というアイコンがない英字ばかりのアルファベット文面は、要点がどこにあるのかぱっと見で把握しにくくてなぁ…。サブタイがダメでも、本文のほうに小見出しがあればまだなんぼか助かるんだけどなぁ…。
参照

●年齢表現
自分的に「へぇ〜」度が高かったのは、年齢表現のお約束があるらしいというこの話。
例えば2002年1月「MEDLINE」推奨の年齢表現は以下のとおり。
| All infants | 乳幼児 | 誕生-23ヶ月 |
| All children | 子供 | 誕生-18才 |
| All adults | 大人 | 19才以上 |
| Newborn | 新生児 | 誕生-1ヶ月 |
| Infant | 幼児 | 1-23ヶ月 |
| Preschool child | 就学前児童 | 2-5才 |
| Child | 子供 | 6-12才 |
| Adolescent | 青年期 | 13-18才 |
| Adult | 大人 | 19-44才 |
| Middle aged | 中年の | 45-64才 |
| Aged | 老齢の | 65-79才 |
| 80 and over | 80才以上 | 80才以上 |
すべてがこれに沿っているというわけではないだろうけれど、毎度「infant」ってどの範囲だ、「teens」って訳しにくいゾ、などとうろうろしやすいもんで、書き手側ではこんなお約束っぽいものを下敷きにしていたりすることがあるのだという情報に、「へぇ〜」。
●パーセント数
良い論文として成り立ちたいならば、数字の表現の仕方にも心配りが欠かせません。
悪い例として挙げられるのは、
被験者が十数名しかいないのに、結果を%で表現いたしました
これはいかんですよ、%はふつうそういうレベルでは使わんですよね。

ということで、いくつか「数字の表現で心すべき点」が挙げられている。
(1)全体数が小さいときは(具体的には25以下のときは),パーセント数は絶対に使わない.
(2)全体数が25から100のときは,パーセント数は小数点なしで表す(7.2%としないで7%とする).
(3)全体数が100から100000のときは,小数点を一桁まで出す.一桁以上出さないこと(7.23%としないで7.2%とする).
(4)全体数が100000を越えるときに限って,小数点を二桁まで出してよい(7.23%のようにする).
(5)常に生データを書き記すこと.
Death occurred in209(7.2%)of the 2901 patients.(2901人の患者のうち209人(7.2%)が死亡した.)パーセント数を括弧の中に入れて,生データを優先させること.したがって,7.2%(209)のようには書かないこと.
(6)生データを決してスラッシュを用いて表さない.つまり,209/2901(7.2%)とはしないこと.
おお〜。そうかそうか。
たしかにこれを遵守するとわかりやすい。ニートだ。
他に、英語圏の科学記事でよく目にする表現としては、「三人に一人」「100人中5人」のような表し方がある。
英語圏には「*割」という表現はないのかな。
自分的には「*パーセント」より「*割」のほうが表現としてわかりやすいんだけどなあ。
でも、それ以前にテレビの「ヘキサゴン」とか見ていると、「*パーセント」も「*割」もどういう数値なのか把握できていない人が確実に今そこいらに存在するという事実があったりするわけで …ああもうそんなこと言われたら世の中どうしてくれましょう。


そんなこんなで、
『うまい!と言われる科学論文の書き方 ジャーナルに受理される論文作成のコツ』は、書き手の裏事情や裏配慮みたいなものがいろいろ読みとれて面白く。
『完璧!と言われる科学論文の書き方 筋道の通ったよみやすい文章作成のコツ』のほうは、また全く趣の違った「作文指南」。裏事情や慣習ではなく、主語がどうの、言い回しがどうの、なんか重箱の隅のような(大上段に立った概観がない)作文教室。「英語で論文を書かねばならない立場」の人には切実に必要な知識が詰まっている。確実に作文力はアップします。
2冊合わせてご覧いただくと、大変便利でございます。



『科学者のための法律相談 知っておいて損はない25の解決法』 京都第一法律事務所 化学同人 (2007/4/2)
『今日から役立つ!医師のための英会話フレーズ500 学会発表編』 日本医学英語教育学会 (編さん), 大井 静雄 (編さん) メジカルビュー社 (2007/07)
『今日から役立つ!医師のための英会話フレーズ500 外来診療編』 日本医学英語教育学会 (編さん), 植村 研一 (編さん) メジカルビュー社 (2007/07)
ほか
![[ EP: 科学に佇む心と身体 ]](http://homepage1.nifty.com/NewSphere/transparent.gif)







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