
『マンモスを科学する』
鈴木直樹 (著)
角川グループパブリッシング (2007/3/27)
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●p.30からひとしきり「マンモスの分類学」について述べてある。
マンモスの画像集 mammoths
ゾウやマンモスのご先祖: メリテリウムの画像集 Moeritherium
次のご先祖 ディノテリウムの画像集 Deinotherium
マンモスを代表する二種の祖先 メリディオナリス画像集 mammoth Meridionalisp.30
今から約五〇〇万年前のアフリカ大陸がその舞台となる。ゾウ科は、初期の進化として、ロクソドンタ属、エレファス属、パレオロクソドン属、そしてマムートス属の四つに分岐した。
ロクソドンタ属はアフリカ大陸にとどまって、今日のアフリカゾウとなっていく。
エレファス属とパレオロクソドン属は、アフリカからユーラシア大陸へと出て、大陸の南寄りで生息域をアジアとヨーロッパに広がっていく。エレファス属は広くインド、東南アジアの比較的暖かい地域で生息を続け、これがアジアゾウとして現在まで生き残ることとなる。他方パレオロクソドン属は絶滅してしまう。
さて、マムートス属はというと、こちらはエレファス属と違ってアフリカから北へまわり込むような形でユーラシア大陸の北部に進出し、やがてべーリンジアを経て、当時地続きであったアメリカ大陸へと渡る。この過程で、「メリディオナリス」、「トロゴンテリ」、「ケナガマンモス」、「コロンビアマンモス」など、多種に分化していく。
この本の主役ケナガマンモスの画像集 Wooly Mammoth primigenius 最近ではこんな報もあったし。
柔毛におおわれたマンモスの消滅をたどる 古代のDNA
2007/06 EurekAlert Ancient DNA traces the woolly mammoth's disappearance
骨、歯、そして、牙からのDNA解析で見る、間氷期以後の「遺伝学的なサイン」
渡りの後、マンモスの個体数は明白に横ばいになり、やがて2つの血統のうちの1つは滅びた。
黒マンモスと白マンモス マンモスの毛の色がわかるよ
Mc1r遺伝子から推察
2006/07 BBC News Gene reveals mammoth coat colour
2006/07 National Geographic Picture in the News: Mammoths Came in Blond, Brunette?
マンモスにも古今大小白黒いろいろあったんですね。
●化石の定義
p.48
古生物学上では便宜上、一万年を過ぎた生物の遺骸を、すべて「化石」と呼ぶ。
なもんだから、凍土から出土した柔らかい解凍マンモスの心臓をメスで切開して解剖するシーンでは「化石を解剖する図」てなことになる。
●さても、この本自体は。
一連のマンモス計画を率いた「冒険家兼科学者」の思い出語り。
彼個人の視点で述べてあるわけで、なんかインナーワールドというか、熱い語りにも関わらず、静謐(せいひつ)な印象を受ける。
単一視点のモノローグのよう。本人ののめり込みとは裏腹に、外野が静かすぎる。
いや、つまり、このマンモスプロジェクトや著者のスタンスに対する評判が見えないというか、描写の中に環境音がない状態になっている。シーンとした中、彼一人が世界を見ているような。
これはハタからジャーナリストがまとめるべきだ。環境音を含めて、多角的に描き出すべきだ。だってかなり世間を右往左往させた、さんざてんやわんやがあったはずの顛末なんだから。
... 以下つづき...


マンモスプロジェクトについて、著者がどういう位置にいたのか、関係者はどう巻き込まれたのか、それぞれの思惑 夢、評判、問題、反感、懸念、熱意、企み…
巨大CTを提供した日本の会社はどんな面白い思いをしたのか、ロシアの古代獣動物園妄想支持者は何をどうして欲しがっていたのか、愛知万博側では計画変更に伴ってどんな目に遭ったのか、ほか、周囲のリアクションを逐一見せて欲しい。 インタビュー欲しい。 それぞれの場面で、それぞれの立場の人がどんな顔をしていたのか。祭が終わったあと、どんな感想を漏らしたのか。
多角的に。
著者は本人も認める「のめりこみ」屋さんらしい。ゆえに、こう、環境音が静謐な語り(没頭状態)になってしまっているのかな。
この本は彼の冒険の記録でもあるわけで、しかも主題はマンモスでしょ、つい「カラー口絵」を期待してしまうのだけれど、それもなし。
それなら、カラー写真がたくさん堪能できるこのプロジェクト関連のムックを宣伝してくれてもいいのに、それもなし。
静謐。
あと、個人的に興味をそそられるのは、資金。
冒険家はそもそも、資金調達の才能がなければやっていけない。
で、実際、「科学者兼冒険家」である著者は、巨額の資金を左右してしまっているわけで、これどう金を集めたのか、どう金が集まるよう(金が使えるよう)になっていったのか、ん、やはり誰かジャーナリスト方面の人がひととおり絵を描いてくれると嬉しいな。
結局、このプロジェクトで得られたものは何だったのだろう。
解剖学的興味どまり? あと、愛知万博(2005年)の入場者数アップ?
…なんか、こう、大きな、客観的絵を見てみたい。
この本じゃ、見えない。
昔、「マンモス復活計画」があったはずなんだが、当該書には言及なし(私が見逃しただけ?)。
この著者が噛んだ話ではなかったんだろうか?
少し検索してみる。
マンモス計画に関連する書籍…年代順

『1万8000年の時を経て甦るマンモス 最先端医用技術が太古の巨獣にせまる』
鈴木 直樹 (大型本 - 2005/6) ニュートンプレス (2005/06)
世界初公開のユカギルマンモス3次元画像を多数掲載
カラー写真はこっちのムックで堪能してね
CTスキャンしまくりです

『マンモスが蘇る日 遺伝子パワーと先端科学が結ぶ夢』
双葉社 (1998/08)

『マンモス復活プロジェクト』
後藤和文 講談社 (1998/08)

『マンモスが現代によみがえる 驚異の遺伝子研究が生命の再生を可能にした』
後藤和文 河出書房新社 (1997/03)

『マンモスへの旅 いかに冷凍マンモスを発掘し研究するか』
マンモス発掘プロジェクト、鈴木直樹、 橘田幸雄 日本テレビ放送網 (1996/11)
へ? 橘田幸雄(挿画)氏はこんな仕事もしてたのか。
前世紀には「マンモス復活計画」がのしていた。
今世紀になると、なりをひそめる。(出版がない)
当該書の著者が言及しなかったのは、
・なかったことにした
・彼の研究とはつながりのない流れだった
どっちなんだろう。
過去記事庫『古生物学』から、マンモス復活計画関係の記事を拾ってみる。
2006/12 【日本語記事】毎日新聞 米サイエンス誌:今年の10大科学ニュース発表
マンモスの遺伝情報解読もランクイン
マンモスの遺伝子、解析できたぞ
2005/12 BBC News Extinct mammoth DNA decoded
2005/12 Discovery Woolly Mammoth Genome Partly Mapped
2005/12 EurekAlert Scientists sequence DNA of woolly mammoth
2005/12 National Geographic Woolly Mammoth DNA Reveals Elephant Family Tree
アフリカ象よりアジアゾウに近いね
2005/12 ScienceNews Mammoth Findings: Asian elephant is closest living kin
遺伝子解析に成功したというのに、「復活への足がかり」系の論調は低調。
マンモス復活計画、資金難で頓挫
マンモスのDNA解析も完了したのに orz
2006/11 New Scientist Ice-age genome project faces cold storage
「マンモス復活計画」は、大きく分けて
・ロシアの「マンモス版ジュラシックパーク計画」+日本や韓国
・北アメリカの古代獣復活計画
の二つがあるのかな。
何やら去年の末にアメリカ版は「資金難で頓挫」の報が流れている。
「資金難」。
要するに、徐々に見込みが薄れてきて、いまや前世紀末ほどの妄想盛り上がりはありませんよ、皆さんお熱が冷めましたよ、ということなんだろうか。
2006/08 読売新聞 冷凍マウス精子でベビー、マンモス再生夢じゃない!?
2006/08 朝日新聞 凍結マウスの精子から子ども マンモス復活も?
15年間丸ごと冷凍されていたネズミから取り出した精子
2006/08 【日本語記事】毎日新聞 マウス:15年凍結、精子から子ども 将来マンモスに応用?
2006/08 New Scientist Sperm from frozen mice yield healthy offspring
ジュラシックパークも夢じゃない
2006/08 Discovery Frozen Sperm Revive Jurassic Park Dreams
2006/08 news@nature.com Deep-freeze mice become dads
2006/08 BBC News Frozen mice 'have healthy pups'
日本ですぐ「マンモス再生」と短絡するのは、まだ夢を捨ててないということか?
英米では「ジュラシックパーク」になるんだが。
マンモス版ジュラシックパーク計画@日本
2005/04 National Geographic Woolly Mammoth Resurrection, "Jurassic Park" Planned
マンモスを展示した愛知万博は2005年。
その展示は「マンモス版ジュラシックパーク計画」の一環であったと。
ともあれ、当該書著者・鈴木直樹氏がこの動きを知らなかったはずはないわけで。
「マンモス復活プロジェクト」の主体は近畿大学か。
鈴木直樹氏のほうは東京慈恵会医科大学教授。
2004/03 共同通信 DNAでマンモスと確認 「損傷激しく復活は困難」 「マンモス復活プロジェクト」
2004/03 時事通信 凍土で採取の肉片はマンモス=クローンでの復元は断念−近大など
2004/01 読売新聞 シベリアのマンモス発掘し愛知万博に展示で合意
2003/07 時事通信 マンモス復活、クローンで実現?=シベリア凍土で肉片採取−近大など
マンモス発掘計画、8月初旬に第1次調査団派遣 愛知万博展示へ
シベリアで発掘のマンモス肉片公開
DNA解析でマンモス復元クローンへ 岐阜県・ロシア
2003/07 朝日新聞 毎日新聞
2003/07 Guardian Japanese scientists take first step towards cloning ice age beast
2003/05 共同通信 氷漬けマンモスの展示検討 愛知万博協会
日本の「マンモス復活計画」熱は前世紀からあるのだけれど、海外からのツッコミは2002年に見られる。
日本人がシベリアにマンモスつき自然公園を作ろうとしているぞ
DNAでマンモスを復活させるらしい
2002/08 CNN.com Wildlife park to add mammoth attraction
2002/08 Yahoo! News Japanese researchers dream of recreating mammoths for sanctuary in Siberia
2002/08 毎日新聞 マンモスの肉片発見か DNA鑑定へ−−露・シベリアの永久凍土の調査 /岐阜
2001/11 毎日新聞 氷点下35度で凍結、牛胎児の細胞でクローン牛誕生 山口大グループが成功
2001/10 毎日新聞 牛の胎児の凍結組織からクローンウシ作成 マンモス復活の可能性も
著者・鈴木直樹氏は、1991年頃にロシア側と協力関係を取り付けている。p.42
そこを端緒に、ロシア=日本間のジュラシックパーク妄想がじわじわ花開いていったんだろうか。
(ちなみに「ジュラシックパーク」原作は1990年、映画は1993年)
韓国がらみでは、このへんが初耳だったのかな。
ごく新しい去年の報だけれど、関与は数年前から。
ファン黄禹錫先生、マンモスのクローンを計画していたとき、ロシアのマフィアにポケットマネー渡していたよ!
2006/10 ABC@オーストラリア Korean scientist paid mafia for mammoth
2006/07 【日本語記事】中央日報@韓国
黄禹錫氏「マンモス・虎も複製しようとした」
マンモスのクローンは3回失敗。虎は韓国産、マンモスはロシア産。
…まだ日本では「マンモス復活計画」に引導は渡されておらず、継続中? それともかなり見放されている?
以前(愛知万博の頃?)は「マンモス復活計画」を看板に掲げたりっぱなサイトがあったと思うんだが、閉鎖されたのかな?
〜Yahoo!辞書 - マンモス復活プロジェクト
1万年以上前に絶滅したマンモスを、クローン技術で復活させようという計画。
近畿大学生物理工学部教授の入谷明が、岐阜県やロシアの研究機関と組んで進めている。
(これの日付は2004年だから、愛知万博の前だ)
2004年の記述岐阜県畜産研究所飛騨牛研究部 ロシア共同マンモス復元プロジェクト 〜冷凍マンモスのDNAからマンモスを復活させる計画はどうなりましたか? - Yahoo!知恵袋
使えそうな冷凍マンモスが見つかったが,かなり高額をふっかけられ,日本の大学の研究室レベルでは買えなかった
(2006年の回答)
ひとつ知りたいのは、「かつてマンモス復活計画に熱を上げていた」ことを隠したくなるほどの、当時と今の何かお熱のギャップ(もしくは諸般の都合)が、どこかにあったり…する?

【古代の死体と巨大CTスキャン】
追記:
2007/07 【日本語記事】読売新聞 シベリアで凍結マンモス発見…ほぼ無傷・生後1年ほどの雌2007/07 【日本語記事】毎日新聞 凍結マンモス:「無傷」、日本で検査へ 専門家「最高の保存状態」−−シベリアで発見
史上最高の保存状態の凍結マンモス:生後約半年のメス仔。
日本に持ち込み、東京慈恵会医科大・高次元医用画像工学研究所(鈴木直樹所長)の指揮の元に、CTスキャンで体内構造を解析する予定。
年内に日本に移送されるらしい
2007/07 BBC News Baby mammoth discovery unveiled
…巨大CTスキャンは、慈恵会医科大にあるわけじゃないよね?
2年前の件は、巨大CTスキャンがないから、自動車メーカーの超強力マシンを使うか、福島の牛用のを使うか、で当時もめたんだよね? 〜『マンモスを科学する』
その後新たに専用巨大CTスキャンを建造した?
ユカギルマンモスは昨年11月、4000キロの空の旅を経て万博会場に到着。
その後、頭部だけ、福島県西郷村にある独立行政法人、家畜改良センターにいったん運ばれた。
同センターにある家畜向けの大型CTスキャン装置を使って、長さ2メートル、重さ250キログラムの頭部の内部構造を解析するのが目的だった。
〜2005年 ニュース特集 // 日経 愛・地球博 特集

![[ EP: 科学に佇む心と身体 ]](http://homepage1.nifty.com/NewSphere/transparent.gif)







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