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守るに足りる知恵を下さい:保全鳥類学

カテゴリ[科学に佇む2007年] 2007/06/12
 水草の保護も、人手不足。
 寄生虫研究も、人手不足。
 粘菌の探索も、人手不足。
 地球温暖化の検証も、資金しょぼい上に慢性的な人手不足。  → 『地球温暖化や生物多様性の発見』
 海洋微生物の二酸化炭素吸収力についても研究発展途上中。 → 『海洋性ウズベンの光合成量』



 そんな『生態研究の人手不足』シリーズに、これも加えておこうかな。

◆保全鳥類学

 『保全鳥類学』
 山階鳥類研究所 (著)  京都大学学術出版会 (2007/4/2)
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■序章 わが国における野生鳥類の保全に関する問題点
 レッドデータブック(RDB)を中心として (山岸哲)

●右画
 コウノトリやトキ、日本はもう国内では絶滅決定子孫無理!になってから外国の鳥をあわてて補充してなんとかしようとしなさった。そんなていたらくではもう、その種の遺伝的多様性はダメダメ状態だし、野生の先輩ゼロで野にもうまく帰せない…。
 本当なら、「絶滅寸前」になる前に保護をはじめるべき。個体数が危険な数になるよりずっと前に、うまいこと繁殖を助けてあげておくべき。だのに、なぜ「もうダメだ!」と手遅れになるまで手を下せずにいたんだろうか?
 国に、まともな案がないんだそうだ。
 鳥だけの話に限らず、特定の種については「保護増殖事業計画」はある。しかし「どの種を優先して保護するのか」というかんじんの部分がぐだぐだっぽいらしい。実際の「絶滅しそうだ度」や「生態系のカナメだ度」をうまく反映できてない???
 どうも、行政での判断は、科学的な根拠を折り込み損ねたまま、やりやすいもの(関係組織間で話がつけやすいもの)や、騒がれたもの(市民や研究者の趣味偏向が反映されてしまう)から優先してしまっているらしい。「すべての野生生物について,どれからどのように保護したらよいのか,国家戦略に欠けている p.4」これが日本の野生保護。
 …野生生物保護の国家戦略??? 国が、どの生物は生きていて良いのか、決める?

 そも、レッドデータブック(「絶滅しそうだ度」の一覧)自体、あまりうまいこと状況の変化を反映できていないっぽいらしい。ここにも研究者の趣味偏向「私が少ないというのだから希少種なのだ、といわんばかりの決め方 p.7」がでしゃばってきたりしているわけで、ふつうに反証不可能な非科学的物言いが横行してしまっているのだと。
 …う〜ん。 かといって、正確な科学的判断を下していくには、調査の資金も人手も手法も、ほとほと不十分。いきおい、誰かのごり押しで、保護の優先順位ギャンブルに走ってしまう、いや、走るしかないことになる。

... 以下つづき...

〓〓〓 EP 〓〓〓

◆保全鳥類学
<目次>
序章 わが国における野生鳥類の保全に関する問題点
 レッドデータブック(RDB)を中心として (山岸哲)
第1部鳥類保全の単位
  1鳥類の保全と分類学(山崎剛史)
  2鳥類の保全における単位について 生態学的側面からの考察(高木昌興)
  3クマタカの遺伝的多様性(浅井芝樹)
第II部絶滅の危機に向き合って
  4大型海鳥アホウドリの保護(長谷川博)
  5ライチョウの現況と保全に関する展望(中村浩志)
  6希少鳥類の野生復帰(大迫義人)
第III部群集と生態系の保全
  7鳥類群集の保全(村上正志・平尾聡秀)
  8陸上生態系と水域生態系をつなぐもの 海鳥類の物質輸送と人間とのかかわり(亀田佳代子)
  9日本の外来鳥類の現状と対策(金井裕)
  10鳥類は環境変化の指標となるか?(永田尚志)
第IV部鳥類保全にハイテクを使う
  11ラジオトラッキングを用いた猛禽類の研究(山崎亨)
  12人工衛星で渡りの追跡(尾崎清明)
第V部鳥類保全と人間生活
  13鳥類保全と重金属研究(市橋秀樹)
  14鳥類と感染症(高崎智彦・伊藤美佳子)
  15油汚染と海鳥(岡奈理子)
  16保全鳥類学における「人間の心」 ハシブトガラスを例として(松原始)


関連リンク:
 ●ネット 山階鳥類研究所
 ●ネット 2007/06  「保全鳥類学」 shorebird氏による書評

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アンカー【鳥類の保全と分類学(山崎剛史)】

●右画
 どの生物を保護するか。その判断の前提には、正確に生物種の分類ができていなければならない。区別がまともにできていない状態では、適切な判断も望めやしない。でもなかなかこれも、調査の資金も人手も手法も、ほとほと不十分でたいへんなんですよと。
 この科学技術が発達し、GPSもケータイもSNSも繁栄しているという世の中なのに、リアル世界の調査はほとほと不十分。つい数年前にも、沖縄のウグイスをmtDNA検査してみたら、実はすでに絶滅したと思われていた希少種だったじゃないか! そんなスクープが流れていたようなこの現状。
 ●ネット 絶滅鳥ダイトウウグイスが復活?〜ワークショップ「ダイトウウグイスとは何者か?」 2004年2月5日 山階鳥類研究所
 おまけに、分類学の中の人の間でも、種の分類をどうするのか、その分類を生態系保護に適用する場合、進化的経緯と齟齬をきたすのではないか云々と、さまざまに意見の相違があったりしている。


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アンカー【ライチョウの現況と保全に関する展望(中村浩志)】

 そんなことを言っている間にも、たとえばこのライチョウは、地球温暖化による環境温度の上昇や、ニホンザル・ニホンジカの進出によって、まじもうすぐ絶滅してしまう、棲める場所がなくなってしまうぞ。ギャンブルをためらっているヒマはない。
 「トキとコウノトリの例から,絶滅寸前になって保護に取り掛かる場合に要する莫大な経費と労力を考えると,ライチョウがある程度の数がまだ生息している今の段階から人工飼育技術の確立に取り組んでおくことが重要である。p.124」 でも、人工飼育がなかなかうまくいかなかったりしている。
 おまけに、絶滅しそうなのはライチョウが棲める高山がなくなるからだというのに、人工飼育できたとしても、その後は…? どこに住まわせる? 海の保全の”高くなった水温でも生きていけるような別の種類のサンゴを移植する”作戦のように、もしかしたらライチョウを”より北の高山に移住させる”とか? …どこの山へ???

 もう自然界には棲める環境がなく、人工の環境でしか生き延びることができない運命に陥った、→ 『ポリネシアマイマイ』 たちのことを思い出してしまうのだけれど。

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アンカー【油汚染と海鳥(岡奈理子)】

●右画
 北海道的にはこの項が一番リアルだった。去年(2006年)の冬、オホーツク・知床沿岸に、おびただしい数の海鳥の死骸が流れ着いた。それら鳥たちの死骸は、みな油まみれ。どこかで大規模な石油流出事故があったらしい!
 海流を逆算すると、それらの死体は、どうやらサハリン(ロシア)のほうから流れて来たのではないかと。ロシアで何か事故があったのだろうか。海鳥の死骸は、たいがい漂着する前に沈んでしまうだろうに、これだけの数が流れ着くということは、想像を絶する数の海鳥が、海鳥の繁殖地が大打撃を受けたのではないか。
 衛星写真を解析すると、サハリンの南端で座礁事故、もしくは石油パイプラインの事故と結びつく気配。が、船の所有者も、パイプライン側も、重油流出はなかったと主張する。現地を取材すると、知床への死骸漂着に先立つ数週間前に、地元にも油まみれの鳥の死骸が漂着していたらしい証言が得られる。
 が、サハリンからどのくらいの期間で鳥の死骸が知床にやってきうるのか、また、沈まずに漂着する死骸の割合はどう算出すればいいのか、研究がふじゅうぶんなこともあり、いまだ流出元の真相も、自然への被害規模も闇の中のまんま…
 ●ネット 知床に海鳥5000羽の死骸 9日、原因究明へ一斉調査  朝日新聞
 ●ネット 油汚染鳥〜"ロシア側"の言い分  地球に何が?鳥大量死骸の謎2
 ●ネット 知床半島沿岸・油汚染海鳥漂着の経過について(斜里町 環境保全課)

 そんなこんながあった関係で、岡氏が紹介するデータは興味深かった。鳥の死骸の「1日当たりの死体の沈降率」。浮いている死骸が、いつ沈むのか。鳥の種類によっても大きく違うし、気温にも左右され、さらにはいったん流れ着いてもまた波にさらわれていくケースもあり…。
 「以上をまとめると,海鳥は死後,早ければ1週間から2週間で沈降し,遅くとも3週間までにはほぼ沈降する。一度沈降した死体は2-4日で再浮上し,その後,再沈降する。仮に漂流中に体が損傷すると沈降は格段(2.5倍)に早くなる。p.334」
 真冬のオホーツク海では、より長く浮いていたんだろうか。
 去年の事故ではいったい何万羽の海鳥が命を落としたのか。そして、そんなことさえも確認できないままでいる程度の調査能力で、こんな無力さにもかかわらず、生態系保護の施策や優先順位決定のギャンブルをしていかなければならない状態に置かれている我々。

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 環境保護では往々にして、おのおのてんでの「これが大事だ」信仰がぶつかりあう。なかばゲームのように、世論操作ごっこ、他者を巻き込むにはどう表現すればいいのかゲームも繰り広げられて。→ 『生物多様性という信仰』
 どれがどの点で「大事だ」とみなが同意できるのか、そしてそれはどの程度科学的にも「大事だ」と支持されうるのか、素人には簡単に見定められるものではない。
 正しい見定めをしたいのであれば、正しい見定めにつながるような手助けをすることはできないか。非力な人間の判断能力の中、どうせ誰かのギャンブルに参加させられるのであれば、より的確なギャンブルをなせるように助力ができないか。
 データを集める、調査をする。そういう「参加の窓口」「助力のすべ」をうまく提供し、回していくことができればいいのだけれど。そこらじゅうで、生態系保護・調査は人手不足なのだし。若いうちに生態系に関わるナラティブを心根に刷り込んでおければ、一石二鳥?

中学までに自然に親しんでないと環境問題に無関心な大人になりますよ
2006/03 EurekAlert  'Wild' nature play before age 11 fosters adult environmentalism


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 ああ、ついでに。鳥と生態系といえば。”自然界”の鳥だけでなく、都会の鳥も、おもしろいことになってますね。
 田舎の鳥に比べて都会の鳥たちは、せわしなく、夜更かしで、やたら声がかん高いんだそうな(出川?)。というか、そんな都会ッ子にならないと、鳥は都会では生きていけなかったりしている。もしくは、そんななんないと、人間とは暮らしていけない鳥たちってことかな。
 これに関しては、楽屋のほうに情報ひととおり置いてありますのでどうぞ。
 → 『都会の鳥と田舎の鳥』





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筆者:雨崎良未
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