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DNA伝説:イコンとしての遺伝子

カテゴリ[科学に佇む2007年] 2007/05/28
 自分が「DNA伝説」と言うときは、科学的であるか否かにはおかまいなく市井でふつうに通じてしまうほど一般化してしまっている「DNA・遺伝子にまつわるイメージや意味、イコン扱い」の総称を指すつもりなのだが、人によっては「DNA伝説」は、『DNA伝説』という特定の著作を著した著者”ネルキン&リンディ”の主張を指す、という扱いになっていることもあるらしい。
 う〜ん、『DNA伝説』を読んだのはもうずいぶん昔の話になるので、…”ネルキン&リンディ”は何を言っていたんだっけ? どう唱道していた? ase
  (「イコン」とは、この場合、偶像とか象徴とかカリカチュアとか、なんかそんな感じのもののこと)

DNA伝説 文化のイコンとしての遺伝子

 『DNA伝説 文化のイコンとしての遺伝子』
 ドロシー・ネルキン (著), M.スーザン・リンディー (著)
 紀伊國屋書店 (1997/03)
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 この書籍『DNA伝説』、原題は『The DNA Mystique』。
 邦訳があることを知らないまま『DNAの秘法』として言及しているサイトもある。

◆左表紙

 『The DNA Mystique: The Gene As a Cultural Icon』
 (Conversations in Medicine and Society)
 Dorothy Nelkin, M. Susan Lindee
 W H Freeman & Co (1995/03)

 邦訳が出る前、NHK教育の森岡正博氏との対談でだったかな、この本のことを柴谷篤弘氏は『DNA神話』と呼んでいた、そんな記憶がある。

 『DNA伝説』は、アメリカのメディア(科学啓蒙番組ではなく、大衆のイメージを惹起・操作するような広告や番組など)に登場したいろいろな「DNAが持つイメージ」や「このようにDNAは表現上使われている」その実例をたくさん紹介列挙し、それがどういう経緯で、どのような系統にはいるものかを、考察してくれている本だったと思う。

... 以下つづき...

〓〓〓 EP 〓〓〓

●右画
 けれども、これいかんせんアメリカの本でアメリカの話なわけで、アメリカローカルのCMや、アメリカでしかやってない番組など、日本人が知らない例ばかり。まんま日本で話に使いまわすにはかなりつらい。
 イメージ自体に関しては、あちらもこちらもかなり似たり寄ったりなんだけどね。
 例えば、「走りのDNA」だの「民族のDNAが語りかける」だの、この手のたぐい(良く言えば「言葉のあや」)は日本でもゴロゴロしている。

 科学者の側には、そういう市井に流通している「非科学的」イメージを「間違っている、正さねばならない」と、はなから否定的にくくってよっこしているケースが見られることがある。
 それでもいいけれど(確かに間違っているし科学の場では放置できないわな)、科学の土俵の外に出て、世に広く「DNAとはそうではないのだぞ」と語りかけようとする場合、その広い相手がすでにどんな「DNA伝説」を持ち、どうDNAという存在を受け取っているのかを把握しない状態で「科学的に正しいDNAとはこれこれじゃ」とやっても…
 例えば。

 人間は、物事を思い通りに理解してくれるとは限らない。
 酸性のお酢をたくさん飲ませても、体液が酸性になるわけじゃない。
 むやみに液体をかけても、リトマス試験紙が赤になるわけじゃない。
 情報を投げたときに、それが受け手の場でどう変化するのかしないのか、その感触や機序の把握をないがしろにしていては、思い通りの結果にはならない。相手の受け皿を見損なうと、いいネタもすべってしまう。正しい知識がどこでどう「大衆的なヘンテコイメージ」に変身するのか、勘所を掴めていないと結局またへんてこなDNA伝説ニューバージョンの再生産にしかならなかったりしてしまう。
 まずは相手を知らねば。


●●●小玉7●●●

◆左表紙
 マスメディア vs 科学について、めっさ面白い本goo
  ●本ミニ  『アメリカの政治と科学  ゆがめられる「真実」』 マイケル・ガフ (著)
    昭和堂 (2007/3/16)  原書2003/ Politicizing Science


●●●小玉7●●●

●右画
 とはいえ、いちいち「世間はどうなんですか」とリサーチしているヒマがないまま、大衆に向けて語らねばならない立場の人もいる。そういうときに、なんとかこの線くらいは見ておいて、と示すのに『DNA伝説』は便利なんだよね。
 ほんとうなら、うちの周囲にいるような「食品添加物と遺伝子組み換えの違いがわからない」おばさんとか、「統合失調症患者にオフダの黒焼きを飲ませる」おっちゃんとか相手でも、ふつうにご教示してしまえるような、ふところドンとしたスキルを期待したいところだけれど、そこまで高望みはしてられない、せめて世間の「DNA伝説」は見ておいてよと。元は正しい情報が、このように変形する、そこを見ておいて。

 が、見ておいて、と言うにしても、書籍『DNA伝説』は中身はアメリカもの。解釈も戦略もアメリカの話。日本物じゃない、即戦力の助けとするにはちとつらい。
 そこで、「日本版DNA伝説を集めた資料はどこかにないのか、あったら便利なのに!」という話になる のだけれども:

●玉井真理子氏の●遺伝医療とこころのケア 『遺伝医療とこころのケア』 によれば、日本のDNA伝説収集者は京都大学名誉教授・近畿大原子力研・武部啓(たけべ ひらく)氏。

●また、安藤寿康氏経由、佐倉統氏談では、●操作される生命 『操作される生命 科学的言説の政治学』 の林真理(はやしまこと)氏が、日本のDNA伝説をコレクションしているとのこと。

    〜〜→ 『「遺伝教育学」はどう展開するのか』 のコメント欄

 いまんところ、このへんしか情報ゲットできていない。
 蒐集者の存在がわかっただけで、その伝説コレクションがどこかに開陳してあるよという情報はない。
 特にDNA伝説を集めて編んだサイト、もしくは書物は、…ないのかな? どこかにない?

●●●小玉7●●●

 はい、とりあえず言いたいことは一個出したので、あと補足ちょこちょこ。

 「非科学的なDNAイメージ」をふりまわしているのはメディアや大衆だけじゃない。
 フツーに学者もやっちまっております。
 某所で医療人類学系の人に「日本の**学はどうして○○なんですか?」というような話を振ったら「○○のような言説のクローン氾濫をなくすには_日本人のDNA(遺伝型)を改造_するしかないでしょう」みたいな返答をしらっとされた。
 で、さらにそのDNAネタがらみで別分野(宗教研究)の専門家から普通にノリツッコミが…。

 → 某メーリングリストで目が点になった話
 どうしたもんでしょうか。

●●●小玉7●●●

 書籍『DNA伝説』の著者について:

●ドロシー・ネルキン
 ニューヨーク大学社会学部・法学部教授。社会と科学の関係を追い続け、著書多数。
 邦訳は2冊のみ。『DNA伝説』のほかに、法律家と組んだ著作
●本ミニ 『人体市場 商品化される臓器・細胞・DNA』 L.アンドルーズ&D.ネルキン
に日本語版がある。
 2003年没。 享年69才 〜New York Times

●M.スーザン・リンディー
 元ジャーナリストの科学史研究者。
 日本語のサイトで、1998年当時のインタビューが読める。
 ●ネット ABCC研(現報影研)は核戦略用に設置?米の研究所、治療はせず






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