調べて数値・傾向は把握していたけれど、ただ対策しきれていなかったということなのでしょうか?
2007/04 【日本語記事】毎日新聞 入院患者自殺:一般病院の3割で 対策に遅れ−−医療団体調べ
過去3年間に入院患者の自殺があった病院:
一般(総合)病院29%
精神科病院(精神科病床がある病院を含む)66%
このアンケート調査を行ったのは「認定病院 患者安全推進事業」。
結果は同団体のサイトにて、PDFファイルで公開されています。
2007年4月17日 病院内における自殺予防 【精神科領域における医療安全管理検討会】 
この「病院内における自殺予防」において、どのような提言がなされているのか。
・自殺を、重大な医療事故であると認識せよ
・病気や健康問題は、自殺の主要な動機であるとみなすべし
・ほとんどの自殺は、心の病に見舞われている者で発生する
・病気や健康問題以外の、患者の過去リスクや家族歴も把握しよう
・自殺企図のサインを見逃すな
・患者の立場になって心のケアに配慮して
・心のケアの専門家に相談しよう
・自殺に使われるような環境要因を排除して
・自殺を連鎖させない
・なにかあったときの関係者のメンタルケアも忘れずに
・自殺予防について学習を重ねるよう努める
精神病院なら、そもそも自殺予防や患者の異常行動対処が大きなウェイトを占めている場でもあり、まだ自殺予防についての心得・配慮はなされている。
ところが、精神科を備えない一般病院になると、それこそ自殺予防についての研鑽は放置状態でお留守である病院がほとんどになるらしい。
往々にして、精神科ではない一般病院では「身体の異常に対処する」「心は患者の問題であって」というレベルに終始してしまいがちになる。
でも、入院患者は体のみならず、心に混乱をきたす暮らしを病院において強いられている。
病院は、異常事態に見舞われた存在が入院する場であり、非日常であり、否定的な<呪>を背負って暮らさねばならない異界であり、外では救われない存在として奇態な扱いをされる場、おのれならぬ自分に陥る場。
心の危機を迎えやすい事態に陥った人間を、非日常に迎え入れるのが病院側であるからには、そこで発生する自殺は、「患者側の問題による結果」ではなく病院側の問題とみなしうる。
人間を救う場として機能することをヨシとするのであれば、一般病院での自殺の発生は恥ずべき汚点。

末期の患者が医者のせいで「早く死にたい」と思う場合
患者の心理面について配慮を欠く医療機関ほど、患者は「早く死にたい」になりがち
2006/06 EurekAlert New study shows the life and death importance of the doctor-patient relationship
患者の不安度をうまく測れていない例 不安度に合わせた対処ができていない例
2003/03 Ohio State University ANXIETY POORLY MANAGED IN HOSPITALIZED PATIENTS, STUDY REPORTS
全ての病院スタッフが、患者に上手な心理的ケアをほどこすことができればいいのにね
2003/01 BBC News Patients 'must receive psychological care'
救命救急センターに精神科医がいれば、自殺未遂患者の再自殺を予防できそうだよ
2006/08 【日本語記事】薬事日報社 精神科医の介入で自殺予防

【自殺を図る人間の8割は、心に異常をきたしている。】
『人はなぜ自殺するのか 心理学的剖検調査から見えてくるもの』
張賢徳 (ちょう よしのり 著)
勉誠出版 (2006/12)
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この本はスゴイ。
「剖検(ぼうけん)」とは。 死体を解剖して、死因を探る、それが剖検。
心理学的剖検調査とは、死者の生前の言動を調査収集し、どのような心理で死に至ったのかを推し量り明らかにしていく調査…。 死者の心の解剖。
自殺者の関係者に会いに行っている。直接切り結んでいる。
... 以下つづき...


現場の言葉。現場にたずさわった者の言葉、そして反省。
家族に死なれた遺族の元を直接尋ね、自殺が発生するに至る記憶と経緯を、記録して廻った。
転居して連絡がつかない遺族もいる。当時と同じ住所に残っている遺族は、お金がなくて引っ越せず仕方なく住み続けている場合が多い。遺族の心の傷は深い。父の自殺を子どもに隠している母もいる。会いたくないと拒絶する人もいれば、話すことができて救われましたと涙する遺族もいる。遺族を苦しませるばかりの調査では倫理的にたいへんまずいわけで、どんなに心が苦しくても専門家に心の手当を求める遺族はほとんどいないという実態からも、調査と合わせて遺族の心のケアが、しかとなされていくべきだとの提言もあり。
結論として、自殺を図る人間の8割は、心に異常をきたしていた、もしくは心の悲鳴をあげていた。そのきざしが認められた。
張賢徳氏がものしたこの研究成果を、この「8割」という数値を前面に掲げて日本自殺予防学会は自殺予防キャンペーンを張ってきた。
きざしをどうやって掴み取るか。汲んでやるか。
ことは入院患者に限らない。
自殺する人間は8割が心の病に見舞われており、その多くは精神科を受診せぬまま死んでいる。
だが、精神科ではない一般医療の場には、自殺の前に姿を現していることが少なくない。
外来診療の場で、患者のメンタルヘルスに問題がないか察知できれば、これはかなり心強いことになれる。
お医者さん、気をつけて診て
高齢者は自殺の直前に医者を訪ねている割合が高い
2001/05 AMNews Surgeon general unveils strategy for preventing suicides
精神医療に対する忌避と偏見が強い場合、「救い手」のイメージの中に精神科医はいない。
そのかわり、医者は広く「救い手」のイメージの中に現れがち。
どこかにSOSを出そうとする場合、それが心の危機からくるSOSであっても、患者は心の医者・精神科ではなく、体の医者の門を叩くことを選んでしまったりする。
『人はなぜ自殺するのか 心理学的剖検調査から見えてくるもの』 p131
精神科受診率は年齢とともに減少したが、逆に精神科以外の受診は増えていることである。これらの精神科以外への受診者は大部分がうつ病を患っていた。そして、殆どにおいて、身体疾患のためにうつ病が増悪する傾向にあった。ここで重要なことは、精神科以外への受診者の大部分が、精神科受診をしていなかったということである。したがって、精神科以外の診療現場でのうつ病の発見が重要になる。 [〜中略〜] 「具合はどうですか?」の代わりに「ご気分はどうですか?」と問うと、うつ病の発見率が上がるとも言われている。
心の危機は、睡眠の変調を伴うことが少なくない。
眠れない、異様に眠い、眠れる時間が異様に減る…
外来の場ででも、ちかごろの睡眠時間を一言問うてみるのもいいかもしれない。
自立神経失調症や不眠症などで1カ月以上薬を服用している患者は、うつの可能性が
2005/09 薬事日報社 「うつ見逃しの恐れ」GSK調査で判明
2006年8月 グラクソ・スミスクライン発表 20〜50代の睡眠薬服用者の36.7%が“うつ症状”あり
冒頭にあげた「認定病院 患者安全推進事業」の提言書には「自殺のリスクがあるかどうかのチェック表」が記されている。
このチェックに該当する項目がある患者には、さらなる注意を注いだほうがいいだろう旨述べてある。
さらなる注意。
例えば、これまでの生活経歴は、既往症は、家族関係は、何か悩みを抱えているのか…
小児癌の経歴を持つ者、往々にして自殺念慮強め
2006/08 EurekAlert Cancer survivors at risk for suicidal thoughts, attempts
エイズ患者が直面する心の危機 うつ病や認知障害にも見舞われる
もとよりエイズに罹患する層にはメンタルヘルスに問題を抱えている人間が多め
2005/11 Psychiatric Times Vol. XXIII Issue 13 Psychiatric Manifestations of HIV Infection and AIDS
豊胸手術の女性、死亡率は普通だが自殺率が高い
2006/09 EurekAlert Same mortality but higher suicide rate among women with breast implants
歯医者が恐いという患者に対して、まともに歯科治療が受けられるよう、恐怖を解消する「心のケア」つき歯科診療を掲げている医療機関もある。
心をケアする歯医者さん 口腔心療科や心療歯科に関心 2002/02 asahi.com
心療歯科情報 ホームページで提供 2002/04 asahi.com
心療歯科のホームページ
これを、「精神科が恐い」にも応用していくことはできないだろうか。

【精神医療や、心の病について、正しい理解と対処をしてもらうには。】かつて、10年連続で自殺率ワーストを記録した県がありました。
それは秋田県。
住民は、自殺に関する偏見や誤解を抱えたまま、親族知人の死にさいなまれ…。
そこを一念発起して、秋田県は「自殺最小の県」を目指す試みに挑戦しはじめる。
2005/09 朝日新聞 「自殺率10年トップ」返上へ 秋田県が緊急対策
追記:
2008/04 【日本語記事】朝日新聞 自殺者、再び増加 ワースト秋田は改善、減少数トップ
http://news.goo.ne.jp/article/asahi/nation/K2008041102690.html

『自殺が減ったまち 秋田県の挑戦』 本橋豊 岩波書店 (2006/12)
[ Amazon ] [bk1]
この本では「メンタルヘルス・リテラシー」について述べてある。
『自殺が減ったまち 秋田県の挑戦』 p90
メンタルヘルス・リテラシーとは
地域住民が心の病気についてどれだけ知識を持っているのか。また、心の悩みを抱えた人に対して適切な行動をとることができる人が、地域の中にどれだけいるのか。
「メンタルヘルス・リテラシー」、心の健康に関する知識、教養、能力。検索してもほとんどヒットしないけれど、重要な概念なのでもっと露出が増えてもいいのでは…
いや、カタカナ語ではダメなんだろうな。日本語で、「うつ病は心の骨折です」みたいな表現のほうが結局いいのかな…?
それはそれとして、
自殺と、自殺を引き起こす心の病について、地元の人々に正しく理解してもらい、的確に対処してもらうにはどうすればよいのか。
地元の人々は心の病や自殺をどうみなしているのか。
どのくらい医療側の通念とかけ離れているのか。
例えば、調べてみると、こんな誤解がポロポロ観察されますよと。
・自殺は個人の人生の選択だ、防止だの介入するべきことではない
・高齢の男性はうつ病患者をはげましたがる

・自殺自殺と騒ぐとよけい自殺が増えるからそっとしておけ
『人はなぜ自殺するのか 心理学的剖検調査から見えてくるもの』 p132
特に高齢群では、「死にたい、死にたいと言うような人は、本当は自殺しない」という俗説が誤っていることを知らされた。「死にたい」と漏らす人で自殺しない人も多いとは思うが、60歳以上のうつ病者の80%が自殺をほのめかす発言をしていたことは重大な知見である。
まず実態を調べ、正しい知識を把握してもらうにはどうすればよいのか。
メディアや地域のつながりを活用して、自殺発生最多地区の汚名を返上することに成功した秋田県内各地の、自殺対策取り組み実例とその成果を紹介した『自殺が減ったまち 秋田県の挑戦』 は一読に値する。
※ その後
2007/06 【日本語記事】読売新聞 「自殺予防学」来年度開講へ 秋田大が国内初 専門家を育成
http://www.yomiuri.co.jp/iryou/news/kyousei_news/20070626ik09.htm
2007/09 【日本語記事】goo/共同通信 国内初の自殺予防学コース 秋田大が08年4月に開設
http://news.goo.ne.jp/article/kyodo/life/CO2007090601000590.html

『人はなぜ自殺するのか 心理学的剖検調査から見えてくるもの』で示された調査結果を活用して、
『自殺が減ったまち 秋田県の挑戦』という実際の成果が現れた。この作業を、メンタルヘルス・リテラシーの獲得を、精神科以外の医療現場でも行ってもらえるのであれば。
今一度、「認定病院 患者安全推進事業」の提言要旨を見ておこう。
・自殺を、重大な医療事故であると認識せよ
・病気や健康問題は、自殺の主要な動機であるとみなすべし
・ほとんどの自殺は、心の病に見舞われている者で発生する
・病気や健康問題以外の、患者の過去リスクや家族歴も把握しよう
・自殺企図のサインを見逃すな
・患者の立場になって心のケアに配慮して
・心のケアの専門家に相談しよう
・自殺に使われるような環境要因を排除して
・自殺を連鎖させない
・なにかあったときの関係者のメンタルケアも忘れずに
・自殺予防について学習を重ねるよう努める
死ぬか生きるか以前に、そもそも医療現場で心のケアをするとしないとでは、傷病の治りの良し悪しまで変わってきてしまう。
手術を恐がったり強い不安を感じたりしている子、快復しづらい
痛みもひどいし、薬も効きづらい 事前に不安をやわらげておいてあげないと
2006/08 EurekAlert Anxiety before surgery complicates recovery in children
患者と医者の間を取り持つメンタルケアの専門職、そのポジションをになってくれる人のこと、職業名はなんだったかな。ちょっと度忘れしたけれど、活躍できる医療現場が多くなって欲しい。
その後 追記:
2007/09 【日本語サイト】週刊医学界新聞
【interview】 上條吉人氏(北里大学医学部救命救急センター)に聞く
「心も身体も救える」医師をめざして 精神障害のある救急患者にどう対応するか
救急患者の3割に精神障害、そのうち最多は自殺企図患者
自殺企図者の90%以上は何らかの精神障害を持っている
「理性的な自殺」などほとんどない、自殺念慮は「症状」である
![[ EP: 科学に佇む心と身体 ]](http://homepage1.nifty.com/NewSphere/transparent.gif)







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