
『眼の誕生 カンブリア紀大進化の謎を解く』 アンドリュー・パーカー (著) 草思社 ; (2006/02/23)
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原書 瞬く間に:生命史上、最も劇的なイベントの原因
『 In the Blink of an Eye: The Cause of the Most Dramatic Event in the History of Life』
Andrew Parker
Free Press (2003/05)
Perseus Books Group (2003/04)
去年刊行されて以来、怒涛の売れ行きを誇っている、近年出色の進化本。
要は、バージェス頁岩などのカンブリア紀ワンダーランドの出現は、特定の感覚器官の進化によって引き起こされた必然的な現象であったのだと解く、まさにエポックメーキングな科学推理本。
一部で「この本の内容はむずかしい」と評しているケースが見受けられたのだが、そんなこたない。「この本に記されている仮説の是非を検証し論駁するには現況の科学ではむずかしいだろう」ということであって、単に読むぶんには「こんなにわかりやすく面白い本はなかなか見つからないぞ!」。イケイケドンドン。
「虹の解体:いかにして科学は驚異への扉を開いたか」リチャード・ドーキンス 2001/03(原書1998) 早川書房
p276
カンブリア紀には、本当のところいったい何が起こったのか。 [〜中略〜] 主要な動物門の大多数がカンブリア紀において初めて化石記録として見られるようになったということは疑いようのない事実なのだ。多くの人が、すぐに次のような仮説に思い至った。おそらく、それぞれの動物群が同時期に、そしておそらく同じ理由によって、かたくて化石化しやすい骨格を進化させたのだろう、と。
「それぞれの動物群が同時期に、かたくて化石化しやすい骨格を進化させた」その理由はなんなのか。
『眼の誕生』でパーカーが提示する説は「光を感知・解析する器官が登場したから」「見て」「襲う」という行動様式が出現し、いきおい「鎧」をそなえた生物が突然化石上にぞろり登場するハメになったのだよと。
眼は、あっというまに進化する。その可能性は前世紀の昔から指摘されていた。
「心の仕組み 人間関係にどう関わるか 上」 スティーブン・ピンカー著 日本放送出版協会 2003/06(原書=How the Mind Works /1997) p249
コンピュータ画面上の皮膚片は、複雑な目に進化するという満足すべき結果が得られた。皮膚片はくぼみ、ついでくぼみが深まってカップ状になった。透明な層は厚くなり、カップを満たしたうえにふくれだして、角膜を形成した。カップを満たした透明な層のなかでは、屈折率の高い球面レンズが、あるべき位置に出現した。工学的に優れた設計をもつ魚の目に、こまかいところまで似ている。目が完成するまでに、コンピュータ時間ではなく現実の時間でどのぐらいかかるかを推定するために、ニルソンとピルジャーは、遺伝率、個体数変動、選択優位の幅などを悲観的に予測し、シミュレーションに織り込んだ。突然変異が、各世代で「目」のある一ヵ所でしか起こらないようにさえした。にもかかわらず、平らな皮膚片が複雑な目になるまでには、わずか40万世代しかかからなかった。地質学的にはほんの一瞬である。
話は、古代地球における目の進化・眼の発祥はどのようなものだったのか、というものなので、いきおい古代生物の生態や形態の話、もしくは推理とその手がかりがいろいろ登場します。

... 以下つづき...

【カイアシ類】●古代地球、カンブリア紀当時の生物が持っていた「色彩」(つまり眼対策)を考える上で欠かせない「構造色」。
その考察の過程で登場するカイアシ類に興味を持たれた方は、ぜひこの本もご参照下さいませ。

『カイアシ類・水平進化という戦略 海洋生態系を支える微小生物の世界』
大塚攻 日本放送出版協会 (2006/09)
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ほかならぬ、『眼の誕生』著者のパーカー氏も登場するんですよ。パーカー氏と『カイアシ類・水平進化という戦略』著者の大塚氏は『深海性カイアシ類の「眼」に関して共同研究をした』仲なのだそうです。パーカー氏の「新説-光スイッチ仮説」も紹介されますし、パーカー氏によるカイアシの構造色分析も語られます。
カンブリア紀から延々地球上で繁栄してきているカイアシ類、寄生虫になったりプランクトンになったりしている奇態な生態、その進化研究はやたら面白い。
カイアシ類で読みたいなと今狙っている本がこれ
『カイアシ類学入門 水中の小さな巨人たちの世界』 長澤和也編 東海大学出版会(2005/08) この長澤和也(長沢和也)氏は水棲動物の寄生虫研究で有名なお方。

【アノマロカリス】●p309、日本のNHKが再現したアノマロカリスの画像が登場。
同じアノマロカリスでも、
バージェス頁岩のアノマロカリス
中国から見つかるアノマロカリス
不恰好なオーストラリア産のアノマロカリス
などとそれぞれ種の違いがあって、それぞれに獲物の取り方など生態が違っていたらしいこと、へぇ〜!
NHKアノマロカリスの画像は『カイアシ類・水平進化という戦略』にも登場します。
アノマロカリスといえば、「アノマロカリスに食われた三葉虫!?」なスゴ化石画像は↓にありますよ。
『眼の誕生必見!三葉虫スゴすぎ画像!!』 
【恐竜/羽】●いまどきは「恐竜には羽根があってあたりまえ」な感覚が横行しておりますけれど、パーカー氏は2003年の時点で「羽毛恐竜の決着はついていない」旨、きちんと言及なさっていてたいへん好感度高し。
『眼の誕生』 p104
正確なところ恐竜と鳥がどういう関係にあるのかについては、いまだに決着がついていない。最近になって中国で発見された恐竜の化石には原始的な羽毛らしきものがついていたが、それを羽毛とは認めていない研究者も多い。 [〜以下言及は続く〜]
羽毛恐竜の決着はまだだぞ本は、こちらにも

【ウォレマイパイン】●p189に挙がる「ごく最近発見された生きた化石ウォレミマツ」。
これはウォレマイパインのことだと思われ。けたはずれにご長寿な植物。
ウォレマイパインの画像集 あれま。ウォレマイパイン、最近はガーデニング用の商品になってしまっているとは。

なんか、ロマンを求めるとすぐにロマンが商業主義に墜ちるような気がするのは、気のせい?

さまざまな生物の生態・進化の考察を踏まえた上で展開される、『眼の進化』話。
目配りが行き届いているおかげで、いろいろな方面にもイモヅルできてしまう。
ついでに、『眼』に関わる最近の記事をくっつけておきます。
ハコクラゲは24個も目を持っているんだけども、実際見るときはそのうちのいくつかだけの情報をコントラストとして処理しているっぽい
2007/04 Discovery Box Jellyfish's Many Eyes See Contrast
遺伝子組み換えで、ヒトと同じ極彩色を見ることができるようになったマウス
2007/03 news@nature.com Mice made to see a rainbow of colours
2007/03 【日本語記事】Science日本版 ヒトの錐体光色素を発現させたマウスは新規の色覚を獲得した
Emergence of Novel Color Vision in Mice Engineered to Express a Human Cone Photopigment
2007/03 【日本語記事】Science日本版 フルカラーの視覚を手に入れたマウス
These Mice Might Want Their Kodachrome
2007/03 EurekAlert Making mice with enhanced color vision
2007/03 EurekAlert Genetic studies endow mice with new color vision
一般に、霊長類以外の哺乳類は色弱。完全に色がわからないわけではないけれど、色の見分けが苦手。だのに、遺伝子組み換えで「同輩が見ることができない物を見られるようになってしまった」ネズミ。
…脳裏をよぎるのは、数十年前のSF映画 「X線の眼を持つ男」だったりする。
いや、なにはともあれ、『眼の誕生』と『カイアシ類・水平進化という戦略』、この2冊、読み合わせオススメです。古代生物かわいい。
へぇボタン:へぇ〜
と押してみるもよしこんな「眼の進化」はいかが?
![[ EP: 科学に佇む心と身体 ]](http://homepage1.nifty.com/NewSphere/transparent.gif)







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