『アポカリプト』についてのエントリ:
1:発端 2006/12
(アポカリプトはジャレド・ダイヤモンドに影響を受けている)
2:本編 2007/01
(アポカリプトはマヤの歴史をねじまげている)
3:駄目押し 2007/01
(アポカリプトは人種差別映画である)
4:マヤ文明の書籍資料 2007/01



メル・ギブソンの新作映画『アポカリプト』、
メルの前作同様(?)、一部で大顰蹙(だいひんしゅく)
【白人来襲前のマヤ世界を、マヤ語と現地民で描いた大作だという話なのだが・・・】
●リアルに再現したと喧伝しながら(史実にない)残虐行為でマヤ文化を汚しまくっている
●マヤ帝国没落の原因は、西欧とは無関係なものだったのに、堕落したマヤ人は敬虔なスペイン人(キリスト教徒)に征服され潰えたのだと、わざわざ時代をねじ曲げてこじつけている
★マヤ人は消え失せたわけじゃない。今も大勢現存している。
★彼らの生活はものすごい不当に虐げられているんだぞ。
★しかも、ついこないだまで、キリスト教徒がマヤ人を何十万人も惨殺しまくっていたのに。
★そんな厳しい状況にある彼らの、かつての先祖までをも、この映画は謂われのないウソッパチで踏みにじる気か。

『アポカリプト』
出演: ルディ・ヤングブラッド
販売元: ポニーキャニオン
DVD発売日: 2007/11/21
時間: 138 分
『パッション』のメル・ギブソンが放つサバイバルアクション。
R-15作品。グロシーンに注意。 .
でたらめすぎて、学生といっしょに笑うっきゃなかったよ 〜歴史学者
2006/1213 Boston.com Historian doesn't buy 'Apocalypto'
歴史家は、『アポカリプト』を買わない
マヤ世界に狩猟採集民はありえない
スペイン人が見たマヤ世界は、牧歌的な狩猟採集民と血に飢えた大量虐殺者たちだったという、ダブルウソ!
2006/1211 San Francisco Chronicle 'Apocalypto' does disservice to its subjects
「キングコング」や「パイレーツ・オブ・カリビアン」の悪質なバリエーションだ
ギブソンのアポカリプトは想像以上にひどい
2006/1211 Gibson's new Apocalypto worse than I could have imagined Flores_Man : Messages
・キャスト全員マヤ人と宣伝しながら、メインの4人はちゃうんちゃう。
・偏見と傲慢な無神経さは「インディアンとカウボーイ」映画レベルだ。
なんとなくヤノマミスキャンダル祭を思い出す。

ハリウッドが、マヤ世界を描いたのは初なのかな。
要するに、この映画のひどさがどんな状態なのか、日本だったら、と置き換えて考えてみるとわかりやすいか。
●お江戸の近くの密林(!)に住む狩猟暮らしの原始的な主人公。
●幕府の人間が奴隷狩りに来たぞ! ハラキリのイケニエを集めてるんだ!

●これまでお江戸やお役人のことなど聞いたこともなかった主人公!
●野蛮なお江戸の人間はみんな豪華な裃(かみしも)と十二単(じゅうにひとえ)を着ているよ!
●お江戸の街はものすごい退廃的に堕落した人々でいっぱいだ!
●源氏物語絵巻に、残虐なハラキリ儀式のシーンが加筆されているぞ!
●お江戸の町中では非情な奴隷売買が行われているよ!
●ハラキリ儀式の舞台は古墳の上だ! 一度に数百人もハラキリさせられるよ!!!
●ハラキリの死体は、町人たちが八つ裂きにして楽しむんだよ!
●そんな野蛮なお江戸の日本人を救うのは、ほかならぬ我らが黒船のキリスト教徒たちだ!
●映画のウリは『キャストは全員日本人だ!』
でも実際には、メインキャストの日本人役は中国人や北米インディアンで、全然日本人には見えないよ。
●映画のウリは『キャストは全員日本語をしゃべる!』
でも実際には、セリフがある役にはネイティブスピーカーは一人もいないので、ぐだぐだな日本語だらけだよ。
これが、全世界に公開されるわけだ。
「日本ってどんな国か知らなかった」人達もご覧になる。
2006/12 Salt Lake Tribune/Los Angeles Times Scholars say accuracy is first casualty of 'Apocalypto'
何百万人もの観衆が、はじめてこの映画でマヤのことを学ぶことになると想像してごらん!!
「アポカリプト」が描くマヤは、汚い下水と奴隷制度、落ちぶれつつある社会に暮らす、
下品な踊りと流血ざたにかまけるチョー残酷でサド趣味な人々。
あ・り・え・な・い!

追記:2006/12/15 日本語のポッドキャストで『アポカリプト』をどうぞ!
ポッドキャスト
「第11回『APOCALYPTO』」 MP3ファイル 31分
映画秘宝.com 町山智浩のアメリカ映画特電 2006/12/14
・もんのすごい残酷 全編血まみれ 内臓ずるずる
・スリル&サスペンスのシナリオはうまい
・差別主義的カソリック原理主義でマゾグロ大好き変態のメル・ギブソン
・世界中のアニメをぱくるディズニー同様、世界中の神話を自分の作品で塗り替えようとする男
... 以下つづき...【以降適宜追記】

●「アポカリプト」はマヤの昔の暮らしをゆがめすぎ

物語全体に影を落とす構図は、いわゆるノーブル・サベージ「高貴な野蛮人」幻想。
参照:
「良いインディアンは、森に住む野蛮人でした」
「都会に住む者は堕落退廃したソドムの住人だ」
西欧的ベタ価値観で塗り込められた、あわれなマヤ世界。
マヤ文明も、マヤの都市生活も、描かれない。
この映画を見る限り、マヤ世界に知性、洗練、高技能があったと思えない状態だ。
マヤ世界は、農耕が非常に発達し、森林も所有・管理されていた。
主人公が管理者のいない密林に逃避行するのも、農作しない狩猟採集民が出てくるのも、ヘン。
マヤ民の住居は広場に礎石(そせき)を置いて建てられ、果樹や家畜をともなうのが普通。
映画のようなジャングル奥地の狩猟採集民村落があったりはしない。
主人公が聞いたこともなかった「都会」を知るという設定だが、マヤ時代はやたら栄えていたので、どこの地も10〜20kmも歩けばピラミッドや街にぶちあたる。
政治ネットワークもたいへん発達していたので、帝国の中枢を耳にしたことがないというのは無理。
マヤで珍重された翡翠(ひすい/ジェード)はたいがい王族専用。
そこらじゅうの民が翡翠でゴージャスに着飾っていたわけではない。
「アポカリプト」は、マヤ文化における暴力を誇大表現しすぎ。
中には「実在する壁画に残虐なシーンを描き加えて」こしらえているセットも!

主人公の村をいきなり襲うマヤ(そんな習俗はない)、これはアマゾンをいきなり乱伐開発した西欧企業のうつし絵。
古代世界の人間捕獲は、ふつう政治抗争・いくさの際に発生していたのであって、映画のように生贄(いけにえ)や奴隷(どれい)目的で帝国が無垢(むく)の民を狩っていたという証拠はない。
奴隷にするために現地民を一方的に襲って拉致(らち)しまくる、これは欧米がアフリカ(太西洋貿易)でやっていたことだよね。
奴隷を売買する市場(そんな習俗はない)も、欧米がやっていた醜態をマヤ世界に押し付けただけじゃないか。
時代考証がテキトー。古典期前と古典期後期、または離れた地域の文化がごっちゃ。
白人に征服されたのはアステカ。マヤ世界は、白人が来るよりはるか昔に潰えている。この二つをゴッチャにするという大変ご都合主義的に無神経な失礼さ。
生贄(いけにえ)の首切り台が、アステカ様式。
アステカの人身御供は有名だけれど、マヤではそんなものは確認されていない。
そも、首切りの習俗は、現地民に対して行ったスペイン人の所業じゃないか。
映画では、一度に数百人もの人々が首切りイケニエされるというハデハデな設定、アステカでさえそんなことをやったかどうかわかっていないのに、ましてマヤでは…。
マヤで行われていた供犠(くぎ)は、公開ではなくひそやかに、いきなりぶち殺すのではなく血抜きで徐々に死なせたものと推察されている。
・監督と広告屋はこの映画を「真実を正確に描いている」と誇大宣伝しまくった
・いかに商売であろうとも、売っているものの中身について売り手は責任を持つべきだ
・ドキュメンタリーっぽいフィクション映画が、「史実」として一人歩きし多大な影響を与えた悪例は過去あまたあるわけで
●「アポカリプト」はマヤの今の暮らしをゆがめすぎ

マヤ世界は、西欧人や支配階層からたいへんひどい扱いをされ続けている。
ついこないだも、キリスト教徒によって20万人以上のマヤ人が殺されまくっていたんだぞ(グアテマラ内戦)。
マヤ人は100万人も現存しているのに、なぜメディアは「跡形なく神秘的に消えうせたマヤ人たち」と繰り返すのか。
今現在、アメリカで強く差別されているのは女性や黒人ではなく、マヤ人たちを含むヒスパニック系の人々。
参照:
なにより、「人間を生贄にするような野蛮な文化は滅びて当然、保護や尊重をする必要はない」とうそぶいて、アステカなど彼ら先住民をしいたげていた数百年前の植民地ノリ、それをこの映画はまんまひきずっている。
大切な伝統や、自分たちのマヤ語さえ、子孫にろくに教えることができないような、ひどい状況に押し込めて捨ておかれてきたマヤの人々。
最近ようやく権利の主張をできるようになってきて、これまでめちゃくちゃにされてきた民族の歴史を編み直していこうとしているところなのに、その苦労をでたらめハリウッドがぶちこわすわけかよ。
英語原文や図版など詳しく見てみたい人はどうぞ。

2007年7月のNHKスペシャル関連書:




『マヤ文明を掘る コパン王国の物語』 中村 誠一 日本放送出版協会 (2007/06)
『アンデスミイラ』 恩田 陸 NHK「失われた文明」プロジェクト 日本放送出版協会 (2007/06)
『マヤ』 恩田 陸 NHK「失われた文明」プロジェクト 日本放送出版協会 (2007/06)
『インカ』 恩田 陸 NHK「失われた文明」プロジェクト 日本放送出版協会 (2007/06)
【『アポカリプト』を見た巷の人々のリアクション】2007/01/04以降適宜追記:
アポカリプトを「史実」だと鵜呑みにしてしまっている例。
2006/12
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「映画を見て歴史を知るというのも悪くありません。
しかし今回の『アポカリプト』を見て、ぞっとしました。
とても面白かったですが、映画を見て十代の時にメキシコの太陽のピラミッドへ行ったときの事を思い出しました。
エジプトのピラミッドのように同じものかと思っていましたが・・・・
頂上でピースしながら写真を撮っていた自分が本当にばかでした。
さらに歴史を知らないというのは、恐ろしいと思いましたね。
あんのじょう、改悪捏造された壁画までもが、モノホンだと真に受けられてしまっています。
2007/062007/06 夢のつづき : 2007.06映画鑑賞総括
「アポカリプト」も史実に基づいています。壁画に描かれた儀式の様子を実際に映像化しているのですが、これが残酷極まりない。
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R-15作品。 .
![[ EP: 科学に佇む心と身体 ]](http://homepage1.nifty.com/NewSphere/transparent.gif)







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