メル・ギブソンの新作映画『アポカリプト』 、メルの前作同様(?)、一部で大顰蹙(だいひんしゅく)
【白人来襲前のマヤ世界をマヤ語と現地民で描いた異界大作】
「アポカリプト」はマヤの暮らしをゆがめすぎ
2006/12 National Geographic "Apocalypto" Tortures the Facts, Expert Says
アポカリプト自体はいつの時代のことかは特定していないが、おそらく古典期末期の紀元900年頃がモデル。
※参照 マヤ文明における古典期(Classic);B.C.100(または B.C.0)-900
メソアメリカ建築
●農耕が非常に発達し、森林も所有・管理されていたので、主人公が密林に逃避行するのも、農作しない狩猟民が出てくるのも、ヘン。
●マヤ民の住居は広場に礎石(そせき)を置いて建てられ、果樹や家畜をともなうのが普通。
映画のようにジャングルの中にぽつんとしてはいない。
●人間の捕獲はふつう政治抗争・いくさの際に発生していたのであって。
映画のように生贄(いけにえ)や奴隷(どれい)目的で帝国が無垢の民を狩っていたという証拠はない。
●主人公が聞いたこともなかった「都会」を知るという設定だが、マヤ時代はやたら栄えていたのでどこの地も10〜20kmも歩けばピラミッドや街にぶちあたる。政治ネットワークもたいへん発達していたので、帝国の中枢を耳にしたことがないというのは無理。
●マヤで珍重された翡翠(ひすい/ジェード)はたいがい王族専用。
そこらじゅうの民が翡翠でゴージャスに着飾っていたわけではない。
●生贄の首切り台が、アステカ様式。マヤではそんなものは確認されていない。
●一度に数百人もの人々が首切りイケニエされるというハデハデな設定、アステカでさえそんなことをやったかどうかわかっていないのに、ましてマヤでは…。
マヤでの供犠(くぎ)は、公開ではなくひそやかに、いきなり殺すのではなく血抜きで徐々に死なせたものと推察されている。

追記:2006/12/12
ん。たしかに「全員マヤ人だ!」と喧伝しておきながら、主人公は北米インディアン系の役者だ、という話があったり「?」だったんだよな…。
ギブソンのアポカリプトは想像以上にひどい
2006/12 Gibson's new Apocalypto worse than I could have imagined Flores_Man : Messages
・キャスト全員マヤ人と宣伝しながら、メインの4人はちゃうんちゃう。
・偏見と傲慢な無神経さは「インディアンとカウボーイ」映画レベルだ。
・マヤ人の観客も落胆はしていたが、私ほどの憤慨は示していなかった。
…メソアメリカの現庶民は、かつてのメソアメリカ文化についての知識と記憶を継承していないというか、過去から断絶させられているというか、西欧が記録した歴史をはんぱに教えられているていど、みたいな状態が多いとは聞き及んでいるが、… いや、上記文中の「映画を見たマヤ人」がどういうポジションの人かわからないけれど、いやしかし。

... 以下つづき...

2006/12 National Geographic Video: "Apocalypto" Exaggerates Maya Violence, Expert Says
アポカリプトの画像
On Mel Gibson's Maya movie & Apocalypto, is it Oscar worthy? | Anthropology.net画廊: 今現在わかっているマヤ帝国のかつての姿
2006/12 National Geographic Gallery: Beyond "Apocalypto" -- What Maya Empire Looked Like
映画公式サイト
APOCALYPTO -- The Official Movie Website 
『アポカリプト』
出演: ルディ・ヤングブラッド
販売元: ポニーキャニオン
DVD発売日: 2007/11/21
時間: 138 分
メル・ギブソンの「アポカリプト」 ≒ ジャレド・ダイアモンドの「文明崩壊」
2006/12 John Hawks Anthropology Weblog : Apocalypto and Collapse
この映画、賛否両論で侃々諤々、要するに…
・役者たちをマヤのネイティブで固めているのは:たいへんよろしい。
・首切りの儀式を想像ででっちあげてしまっているのは:たいへんけしからん。
・登場人物たちがマヤ語をしゃべっているのは:たいへんよろしい。
・植民地主義的偏見丸出しを売りにしようとしているのは:たいへんけしからん。
しかし、レビューを見る限り、これは「ジャレド・ダイヤモンドの『文明崩壊』を映画化したもの」に思えるんだが。
凋落(ちょうらく)に直面して、巨大建築物の造成や生贄(いけにえ)儀式にかまけていくという…。
The Last Americans
Environmental Collapse and the End of Civilization
by JARED DIAMOND / Harper's Magazine (Jun 03)
メル・ギブソンは環境要因よりも政治的・人的要因にスポットを絞ったわけだ。娯楽映画だからね。
もとより、枝葉を廃して単純化された議論である「文明崩壊」に、さらに輪をかけてポップに単純化してしまったのが「アポカリプト」か。
これは確実に、「文明崩壊」なくしては生まれなかった映画だよ。
『文明崩壊 上』
『文明崩壊 下』
ジャレド・ダイアモンド (著) 草思社 (2005/12/15)

『アポカリプト』についてのエントリ:
1:発端 2006/12
(アポカリプトはジャレド・ダイヤモンドに影響を受けている)
2:本編 2007/01
(アポカリプトはマヤの歴史をねじまげている)
3:駄目押し 2007/01
(アポカリプトは人種差別映画である)
4:書籍資料 2007/01
(マヤの本当の姿とは)
![[ EP: 科学に佇む心と身体 ]](http://homepage1.nifty.com/NewSphere/transparent.gif)







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