[ EP: 科学に佇む心と身体 ]

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男の子の脳、女の子の脳:だまされるなよ

カテゴリ[科学に佇む2006年] 2006/11/18
 この本はうさんくさいぞと思ったのは私だけ?

◆左表紙

 『男の子の脳、女の子の脳 こんなにちがう見え方、聞こえ方、学び方』
 レナード・サックス
 草思社 (2006/05)
 [ Amazon ] [bk1]

原書:cover
Why Gender Matters: What Parents And Teachers Need To Know About The Emerging Science Of Sex Differences

●ジェンダーが重要なわけ:性差の最新科学について親と教師は何を知っておくべきか
Leonard, M.D. Sax (著), LEONARD SAX (著)
ハードカバー: Doubleday ; ISBN: 038551073X ; (2005/02/15)
書籍情報と書評:アマゾン    
原書の書評:2005/05 City Journal Can We Make Boys and Girls Alike?


★1:性染色体 まず、遺伝子(性染色体とか)が、女のセットになっているか、男のセットになっているかで、どのくらい性質が違いうるのかの例証を並べる。
 遺伝子が男か女かによって、人間の性質が異なってくることには異論はない。オケ。

★2:ホルモン つぎに、胎内(母親のおなかの中にいるとき)や産まれてからの性ホルモンの出方で、どのくらい性質が違ってきうるのかを並べる。
 性ホルモンの影響によって人間の性質が変わってくることにも異論はない。オケ。
 性ホルモンで影響されない脳構造もある。オケ。

   → 記事庫『脳の男女差、心の男女差』
   → 記事庫『ジェンダー』

 が、問題は。
 いや、もしかしたら私が読み間違っているだけなんだろうか。

 著者は

性ホルモンや成長過程の諸条件での変化を過小評価するような持って行き方をして、
男と女は遺伝子的に決定的に違うんだから別の教育と別の育て方をするべきだ

と説く。

 わかる?
 別の書き方をしよう。

遺伝子が女でも成長過程の条件によっては男っぽく変化して育つ子もいるし、
遺伝子が男でも成長過程の条件具合で女っぽい性質に育つ子もいる。
その諸条件をも「遺伝子だけで男か女かの性質が決まるぞ」と読めるように持っていき、
男と女は生まれつき決定的に違うんだから別の教育と別の育て方をするべきだ、と説く。

 人間の成り立ちに関わる因子はとても数多い。
 それを微妙に「遺伝子がもたらす脳の性質さえみていれば」と単純化して…

 たぶんこの先生には先に結論がある。
 「男子と女子は、分けて違う育て方をしろ」と。
 「それぞれに向き不向きがあるんだ、
  同じ教育をほどこすと男の子に不利だ、男の子にかわいそうだ。」
 それがゆえに、
 女の遺伝子ならすべて女の性質におさまる人間になるような書き方、
 男の遺伝子ならすべて男の性質におさまる人間になるような書き方、
 科学的例証でメクラマシしながら、うまいこと持論に沿うように加減しながら演出している気配がある。
 たとえば「脳タンパク質が決定的に異なる」ことは示すが、それが行動や性質の差になっているとはいえないことは明示していない。p.33
 たとえば「空間把握に使う脳部位が男女で違う」ことは示すが、それが遺伝子のせいか性ホルモンのせいかはわかっているのかいないのか、明示していない。p.50

 私の読み間違いなんだろうか。なんか姑息だ。

 遺伝子ですませちゃまずいよ。
 個々の子供の個性や性質を、科学的知見を参考にしながら尊重するのはいいよ。
 でも、なんでもかでも男か女かに分けてすませたら、それは性差別だよ。思考停止だ。
 加減や尊重は常に留意されるべきだよ。

... 以下つづき...

〓〓〓 EP 〓〓〓

当該書の特設サイト
 ●ネット Why Gender Matters.com
半陰陽は、どれくらい一般的か?:アン・ファウスト-スターリングへの返信
 〜レナード・サックス
2002/08 Journal of Sex Research How common is intersex? A response to Anne Fausto-Sterling ~ Leonard Sax


 男子女子の教育環境については、全然結論を出せる段階にはないと思う。
 参考になる情報はどんどん積もってきている。
 でも、そこを急いで安直に結論を出せば、それは結局「性差別」どまりに終始しかねない。
   → 記事庫『脳の男女差、心の男女差』
   → 2004/06『数学の才能は女性にもたっぷり』
   → 2004/10『指の長さと脳みその性別』
   → 2006/02『心と性染色体  ゲノムインプリンティング』
   → 2005/10『男脳・女脳・自閉症@バロン=コーエン』

 それでも、今も多くの児童が”今の教育”でなんぼか人生を損なわれてしまっているのではないかという、事件やら悪い見本やら疑心暗鬼やらで世間の不安は煽られまくりだし、下手すると必要以上に「何か変えねば」と焦燥感煽られていたり。
 その延長だか便乗だかで、日本でも「男と女は別の育て方をするべきだ」「男女共学はやめさせろ」ともめていたりする場面がある。
 それ以前に私的には コミュニケーションの断絶 のほうがおっかないんだが

 それに加えて。
 こういうのはどうだ? 男女は分けて育てないほうがいいんじゃないのか?
 いや、「差別を教えずに」育てたほうがいいんじゃないのか?
 特に男は。
  → 2004/03『男は死ななきゃ治らない場合』
  男は、女性差別をする環境で育つと一生その傾向が染みついたまま治らない
  女は、成長後でも教育しだいでけっこう男女不平等感覚を治せるのに

 ん? なんかややこしいな。
 男のほうが、三つ子の魂百までというか、育った環境の規範が刷り込まれやすいので、男と女を分けへだてした環境では育てないほうがいいぞと、…男だけが**だから男女を分けるなという、差別をするなと言いながら差別をする、みたいなミョーな自己矛盾?にブチ当たる。
 不思議。

 この先も論争は続く。結論は遠い。
 その中で育つ子は、自分の不出来を安直に教育環境のせいにできるという浅い解決に安住する事なかれ。

 とりあえず、当該書に関しては、
   論争の材料レベル止まりであって、従うべき水準には達していない
というのが私的結論。

 ん…? 日本の男女別教育論者には性差別感覚を抱えている人の割合は高めなんだろうか?
 もしくは自分の性別アイデンティティ執着が強い人間が多い?
 男の性差別論者はやはり男尊女卑環境でお育ちになった方々?
 誰か調べてみる?

〓ガラス棒〓

追記:2006/11/29

 遺伝子が女でも、男の知覚を持つケースがある。
 同様に、遺伝子が男でも、女の知覚を持つケースがある。
性差のリアル、最新知見 +バロン=コーエン
2006/08 The Economist  The mismeasure of woman
 Men and women think differently. But not that differently
子どもが好むオモチャの性差 ブレンダと呼ばれた少年
デフォルトの脳セッティングは雌。そして男はホルモンで男脳になる
胎内で高テストステロンにさらされた女の子は、知覚が男に近くなり、男の子遊びを好む個体になる
女性の脳は男より小さくても、コンパクトなぶん稠密でハイスペック
体格で劣る女性は、暴力をふるう代わりにゴシップと策謀で隠微に攻撃する


追記:

男子校、女子校を選ぶのは良し悪し
●NEWS2008/04 EurekAlert Keep boys and girls together, TAU research suggests
 男女の学習パターンは異なるけれど、肝心の部分はいっしょです
 「共学のほうがデキがいい」
 クラスに女子が多いと、成績が良くなる
 55%以上が女子のクラスは、暴力も少ないしテストも好成績





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