[ EP: 科学に佇む心と身体 ]

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フリン効果と思考の枠

カテゴリ[科学に佇む2006年] 2006/11/17
 このエントリはぼ〜っとしたつれづれ書きです。
 形にまとめるにはかなり調べたり推敲したり再構成したりせねばならない主題だけれど、そこまでしていられないので、じゃあそんな中途半端なメモ書き状態のものをなぜ人様にさらすのか、逡巡もあるけれど、
  ・意味を固めきらずに「読み手しだいで受け取り方が玉虫色になるリトマス試験紙」
   みたいな記述はよく混ぜてんじゃん
  ・情報のメモ置き場には使っているじゃないか
 まあ、いっか。

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アンカー 【フリン効果】

 「フリン効果」と呼ばれる現象があります。(この呼称の初出は 「ベルカーブ」だったのか!)
 近代に限ると(知能指数検査は大昔にはなかったから近代に限ると)、のちの世代ほど知能指数が高くなる、というもの。
 つまり、祖父や母の世代より、子の世代のほうがIQ検査のお点が高い。
 我々の世代より、子や孫曾孫のほうが、知能指数が高く出る。
    ●ネット フリン効果
    ●ネット Flynn effect
    「不倫効果」じゃないよというベタな注釈がつきがちnandakana
 おおざっぱに言うと、人類の平均知能指数は、数字の上では20年ごとに2〜3ポイントずつ上がっている。
 この数字の変化はなんなのかと。
知能指数検査をもっと難しくしないと
 フリン効果で知能がアップした世代には検査が簡単すぎてないか
2003/10 EurekAlert Renorming IQ tests due to Flynn effect may have unintended consequences
 Making IQ tests harder has educational, financial, legal and military recruiting implications

 流行りメディアの妄想から「人類が進化している証拠だ!」と安直断定する輩もいらっしゃいますが、
  ・栄養状態の向上
  ・核家族化
  ・教育の充実
  ・環境の複雑化
  ・混血
などいろいろ要因は推測されているし、複合要因でもあるだろうし、でも決定的な「これで納得できる」という総体的合意はなされていない状態で論争が延々続き。
 知能指数の測り方自体まちまちなのではないか、高齢者の数値を抜くともっとアップしてるんじゃないか、とか、いろいろツッコミが錯綜した末に…。
  ・平均してしまうからややこしいのであって、よく調べると
   知能指数がアップしているのは最下層が中心であって、
   頭の良い層は高止まったままだ。
   生活レベルの向上で最下層が救われていることが示されているだけじゃないか。
長期スパンでアップした知能指数、最近下がっているよ
 生活レベルが上がりきったのかな
2005/05 Personality and Individual Differences  doi:10.1016/j.paid.2005.01.029 A long-term rise and recent decline in intelligence test performance: The Flynn Effect in reverse


 そも、「知能検査の数値は賢さを表せているのか? テスト慣れを示しているだけなのではないか?」という基本的な部分からして微妙だったりしているけれど。
   → 『「知能指数:IQ」って頭の良さのことじゃないの?』

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アンカー 【テスト慣れという目隠し】

 で、基本的に「頭が良くなりうる範囲」というか、「頭のキャパシティ、許容範囲、能力の伸ばせる余地」というのはそんな大きくは違っちゃいないだろうし、じゃ、

 例えば
  ・多大な能力を割り当てねばならないめんどうな人づきあいをシンプルに処理できれば、
   他のいろいろなことにかまけて能力を伸ばすことができるぞ。
  ・多大な能力を割り当てねばならないめんどうなシャドウ・ワーク(炊事洗濯会計育児)
   をシンプルに処理できれば、
   他のいろいろなことにかまけて能力を伸ばすことができるぞ。

 近代は、こんな「はしょり方」の発達史ではなかったか。

 他者との物資交換かけひきのめんどうさを、「金」という記号ではしょる。ああ簡単。
 千変万化の複雑な自然を、「分類」というカードで切り分ける。ああ簡単。
 測りようがない深遠な概念「生命」を、HPで表す。オニ簡単。
 クラスメートとのリアルなお友だちづきあいでさえ、 『ネギま!?』にかかればただのモンスターカードデッキだ。
 mixi et al.SNSでも他人が自分の手持ちフダ状態。そう考えるとこれけっこう失礼なシステムだよな


 「ここさえ見ておけば、ほかの微妙な情報は切り捨ててもやっていける、処理しなくていい」
    そういう情報の簡便さがどんどんエスカレートしていく状態。
 「ここさえ見ておけば」
    その手の「はしょり方」のひとつには、知能指数検査をはじめとする「テスト」があるわけで。

... 以下つづき...

〓〓〓 EP 〓〓〓

 時代を経るごとに、どんどん身の回りから「まだ処理されていない情報」は減っていく。
 昔は「まだはしょられていないナマな情報を自分で分析処理せねばならない」必要が多々あった。
 自分で、それがなんなのかを察知して、自分なりの方法を編み上げる。
 それには多大な経験と察知力が必要で。
 例えば、観察を重ねた末に、ジャンピング・ジーンの挙動をトウモロコシの斑入りに見抜いた マクリントック、例えば「技を盗み見ろ」と弟子に伝える伝統職人。
●本ミニ ダニエル・ネトル、スザンヌ・ロメイン著 『消えゆく言語たち:失われることば、失われる世界』  2001年 p.24-25

 海洋生物学者R・E・ヨハネスは、長くパラウで漁民生活をしてきた一八九四年生まれの老人にインタヴューしているが、彼は300種類以上の魚の呼称を把握しており、世界中の科学文献におけるあらゆる記述の数倍にもおよぶ種の魚の産卵周期を熟知していた。

 今目の前にある多様な事象の中から、生活に必要な特定のパターンを見抜いて生かす能力。まだ誰も見抜いていない何かを見出す能力。それを元来我々は持っている。
 持っているけれど、生かす機会を奪われている。
 特に、「はしょり方」だらけの現状ではことさらに難しく思われ。

 今あふれているのは、
  1・すでに微妙さをそぎ落とされ、伝達用にはしょられた加工済みの情報
  2・微妙さに手を焼かずにすむはしょり方の指南
  3・自分の生きざまや地元に関係のない情報大杉

1:ネットには加工済みの情報しかない。
  テレビも、新聞も、メディアが伝達する文面は「誰かの頭のフィルタを通った処理済みの情報」ばかり。

 人の手が入りつくした環境である都市部、人がこしらえた居住区、処理済みの情報を伝えるメディア、右を見ても左を見ても、他人によって処理済み加工済みの情報ばかり。
 処理済み加工済みの情報を、処理するのはそりゃうまくなるわな。
 すでに微妙さやイレギュラーはかなりはしょられて料理済みなんだから。

 でもって。
2:他者との物資交換かけひきのめんどうさは、「金」という記号で「はしょれる」
  千変万化の複雑な自然は、「分類」というカードで「はしょれる」
  測りようがない深遠な概念「生命」は、HPで「はしょれる」
  クラスメートとのリアルなお友だちづきあいでさえ、モンスターカードデッキ扱いで「はしょれる」
  mixi et al.SNSでも、何十人もの他人さまを自分の手持ちフダ状態にして「はしょれる」

 …はしょったぶん浮いた能力は どうなってるんでしょうね。
 よりたくさん、キャパシティいっぱいまで「はしょられた情報」を詰め込んで「情報/友人処理能力がこんなにある!」と悦に入るためいに費やされるんでしょうか。

 いわゆる「テスト」のたぐいも、はしょり。
 複雑多様な現実の中から、特定の条件だけ不自然に抜き出してこしらえられた、処理済みのはしょり情報。
 いきおい、知能検査のようなテストは「はしょり処理済みの情報の範囲内でおこなわれる判断力テスト」でしかない。
 で、フリン効果は… このへんどうなんでしょうね。

 こう、どうも脈絡がつききっていないところが、冒頭に記した「中途半端なメモ書き状態」であるゆえんなんですが。

3:については、『消えゆく言語たち:失われることば、失われる世界』の後半に記しています。
 「その土地には有用ではない文化や情報が、ヨソからもたらされて荒廃していく」というお話。

●●●小玉7●●●

アンカー 【差異が通じない!】

 なんでこんな「中途半端なメモ書き状態」を書く気になったのか。

 実はこないだの『クローズアップ現代』を見てひどくびびったからゆえ。
  ●ネット どうする若者の日本語力
 工場の従業員、ライン作業において、指示に「差異が生じたら連絡せよ」との旨明確に一文あったのに、

  「差異」という言葉の意味を知らなかった

ので結果的に百数十万円の損害を出しちゃった。ohyo

 えええっ! まじ!?
 生粋日本人が「差異」という二文字の熟語の意味をご存じない…!

 とすると、するとさ、もしかしたら、私が

 差異 とか 生粋 とか 旨 とか 留意 とか 曖昧 とか 偏向 とか 錯綜 とか 暫定 とか

書いても読み手には …とんちんかんだったりするのか ぁ ぁ ぁ ぁ

 ふだんの伝達がメールの短文と絵文字オンリー生活の層には、もう漢字自体が無理ぽだと。

 ま〜も〜、そっだらこどなんつったらもうウェブ上の伝達はどしたらいいんだべかと途方に暮れたり。あ、いや、途方(とほう)に暮(く)れたり。

 読めてます? いや、読めないなら無理(むり)して読まんでいいんですが。tear_flow

 まあ、その、混乱しついでに、「フリン効果」が頭をよぎってまとまりつかず、と。

 思い返して整理してみるとこんな感じ。

・うわ〜、「ネギま」じゃもう架空のモンスターどころか、クラスメイトが手札扱いなんだもんな。
 クラスメイト(リアル知人)を、こいつはこの能力、あれはこのパラメータ、みたいに
 ものすごい単純な認知枠で処理してすませる、みたいなロールモデル。かなりキモい。
・友人との関わりは、全人的コミットメントみたいな脳力を使うもんじゃなくて、
 社交ゲームの手札として、あくまで浅い「リストアップ」止まりの処理がラクな状態にしといて、
 その個々の処理がラクになったぶん、たくさん手持ちに飼うわけかな?
「飾りマイミク」みたいな。 友人というバトルカードコレクション?
・しかし、友人関係を簡便にして、読書どころか漢字も読めてないってぇなら、
 いったいどこで脳力使ってんだ? 広く浅く、の広さが広すぎているのか?
 簡便なぶん、たくさん抱え込みすぎて浅いままどまり?

・そういえば「世代を経るにつれて人類は賢くなっている」というフリン効果ってあったっけな。
 近代〜現代的な「情報処理をはしょるコツ」に慣れるから賢い点が出るだけだという経緯じゃなかったっけか。
・なんだ調べてみたらフリン効果は「はしょるコツ」としてのテスト慣れてなもんじゃなくて、
 単に「生活水準の向上によって最下層が人並みになれた」だけのことだったのかい。
・しかも「最近知能指数が下がってきている」という報告が出てるじゃんよ。
 じゃあ、クローズアップ現代の結論のまんま、
 「最近はメールやネット、ゲームなど浅いデジタルしかやってないから」、
 要するに頭使ってないから世代を下るほど賢くなるどころか「バカになってきている」のかよ。
・メール交信では難しい漢字不要、構文力不要、相手の顔色を察知する必要なし、TPO無関係。
 ゲームでは「結果のその後を配慮する」必要なし、脳トレも考慮要素が少なすぎ(リアル比)。
 ネットにある情報は、すでに誰かが頭の中で取捨選択した加工済みのインスタントばかり。
 「総合察知力を使わないから、知能指数が世代を経るごとに下がってきているぞ」

 フリン効果の終焉ってか。abon

追記:

2008/06 ScienceDirect Preliminary Real-World Evidence That Average Human Intelligence Really is Rising
人類の平均知能が本当に上がっているという予備的な現実の証拠
Robert W. Howard
University of New South Wales, Australia


◆ダメなものは、タメになる  テレビやゲームは頭を良くしている
追記:
フリン効果についてぶちあげている本
 『ダメなものは、タメになる  テレビやゲームは頭を良くしている』
 スティーブン・ジョンソン (著)
 乙部一郎 (監修), 山形浩生, 守岡桜 (翻訳)
 翔泳社 (2006/10/4)
 (原初:2005 「Everything Bad Is Good For You」)



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アンカー 【思考の枠、その外からのいざない】

 例えば、ネットにはないものはないと言ってしまえるような神経。
 最近はこの手の発言はあまり見かけなくなったけど、2000年前後はIT関係のおっさんあたりが得々とこんなこと言っていたような気がする。
 いやネットにないもんはぎょうさんありまっせ。



 例えば、同文化の同年代だけや、若年層だけ、同業者だけ、で交流している関係で、異文化や異時代、異なる立場や視点の存在を考慮できるような相対的視点が欠落してしまっている例。他者に接っせていないゆえの失礼。
  → 『わかりやすさの本質、見たことがないゆえの壁』
  → 『集団成極化現象』

 なんだろうなぁ、情報が多様なような気がするだけで、実際には貧弱な種類の情報にしか接っせていない可能性。

 未処理の情報とはどんな状態のものなのか、想像を広げられるか。
 自分が接っせていない情報にはどんなものがありうるか。
 自分の思考枠のそとにはどんなものがありうるか、踏まえるにはどうすればいいのか。

 いったん「命」が「HP」という思考枠にさらされると、「命」には戻りづらいし「命」だったころは想像しづらいだろうし。
   → 『死の変貌 デスについてのノート』
 全人的友人づきあいが、いったんmixiやカードゲームのリストにされてしまえば、全人的つきあいには戻りがたいこともあるだろうし、そういうつきあいを想像するのも困難になるのかもしれない。

 例えば、有名なダルメシアンのだまし絵。
 ●ネット Richard Gregory's Dalmatian 〜 The Artful Brain: BBC
 犬だとわかると、他のものの見方がしづらくなる。
 処理済みの情報を、「こう見ろ」と提示されると、ものの見方が限定されてしまう。思考の可能性が摘み取られてしまう。

 または、処理済みの情報を浴びることと、手持ちフダの友人メンテにせいいっぱいで、未処理の情報を見抜く醍醐味、見抜く発見の楽しみがしづらくなっているとか。

 未処理の世界に人生を注げば、先に挙げた「300種類以上の魚を把握し、世界中の科学者より魚の産卵周期を知り尽くしている個人」がふつうにありえるのに。そんな民間の知がありえたのに、

 例えば、某魚類の分類にたいへん貢献くださった今世紀初頭のアナログ研究者たち。その労のなんたるかをも考慮せずに、無粋に遺伝子解析の結果で従来の分類を蔑み捨てるデジタル分子生物学の研究者。
 例えば、生態系研究者の見識を考慮せず、安直に自分野内の知恵だけで「遺伝子組み換えで問題を解消できる」と結論したがるデジタル遺伝子解析屋さん。
 例えば、未処理情報の宝庫、自然に向きあうアナログな調査・観察・記録にたずさわる研究。デジタル研究屋さんのような金に直結しやすい分野ではないことと、未処理情報をかき分けなければならない苦労から、そこでは人材が払底していて全然、魚の研究も、寄生虫の研究も、育種学も、解剖学も、生態系の研究も新種探しも人間の研究もろくにできてないよ、まだ全然なんだよ、みんな頼むから来てくれよ、

   でないと どんどん地球がダメになっていくよ。

 そんな救いを求める声がいろいろな本の中から聞こえてくる。
 ●本ミニ 『解剖男』  講談社現代新書 遠藤秀紀著 講談社 2006/02
 ●本ミニ 『フィールドの寄生虫学 水族寄生虫学の最前線』  長沢和也編著 東海大学出版会 2004/01
 ●本ミニ 『消えゆく言語たち:失われることば、失われる世界』 ダニエル・ネトル&スザンヌ・ロメイン 新曜社 2001年
 ●本ミニ 『これからの両棲類学』  松井正文編; 裳華房(2005/08)
 ●本ミニ 『魚の形を考える』 松浦啓一編 東海大学出版会 (2005/08)
 ●本ミニ 『魚の心をさぐる』  益田玲爾 (著) 成山堂書店 (2006/06)
 ●本ミニ 『“自殺する種子”― 遺伝資源は誰のもの?』  河野和男著 新思索社 2001年

 ああ、でも、そういう本は普通の人は読まないんだよな…。
 それ以前に、 醍醐味も、払底も、蔑みも、終焉も、見識も、解剖も、まず普通の人はこれらの日本語が読めてなかったりするんだったよね。通じてないんだよね…

 …今週、ふだんにくらべてこのブログへのアクセス数が1.5倍くらいかさんでいたんですが、なにがあったのやら。
 どっちにしろ、こんなに世の中日本語が通じていないのなら、アクセス数の大半は人間さんじゃなくてクローラロボットさんたちのご訪問にすぎないのではないかと。

              んなわきゃないけど。smiletang

 ふだんからうちとてわかりづらい文や曖昧な言い回しで書き散らすこと多々ですんで、全部わかれと要求する気はございませんです。

 ただ、やっぱ「差異」や「曖昧」の段階ですでに_大人に_通じていない可能性があるとなると、ちょっとこれは予想外で、

   かなんな〜 achar2




メタル

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* * *

→ 上掲のお話についてのコメント

0833 #- コメントアンカー A骨 さんのコメント 【2007/01/09】

知能指数テストと社交能力をからめて考察なさってますが、
そもそも全く別モノなのでは?

0926 #MJWiGxv6 コメントアンカー 雨崎良未 さんのコメント 【2007/01/09】

「全く別モノ」ではないですね。なんぼかかぶる。ゆえに混乱するわけで。
しかしすごいハンドルですね。ちょっとツボ ('_^)

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筆者:雨崎良未
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