[ EP: 科学に佇む心と身体 ]

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パパラギの正体

カテゴリ[科学に佇む2006年] 2006/11/07
 先日『パパラギ』に感動してほめそやしているブログに遭遇して、あまりのその真に受けたほめそやし方に「あれ???」pachikri

 たしか『パパラギ』は白人が異民族のふりをしてこさえた創作だったと思ったんだが、ちょっと検索してみると、『パパラギ』のことを「ホンモノの酋長が現代文明を批判した感動の語り」「古き良き酋長の、ありがたくも深いおことば」と持ち上げをしている記述ばかりがずらずらと…

  げげ、もしかして私のほうが思い違いしているのか?suji

と不安に…。

◆左表紙
エーリッヒ・ショイルマン著 
1981●本ミニ 『パパラギ―はじめて文明を見た南海の酋長ツイアビの演説集』  [bk1]
2002●本ミニ 『絵本 パパラギ―はじめて文明を見た南の島の酋長ツイアビが話したこと』 [bk1]
1988●本ミニ 『パパラギ―はじめて文明を見た南海の酋長ツイアビの演説集』
1982●本ミニ 『パパラギ―はじめて文明を見た南海の酋長ツイアビの演説集』


 こう、著者の正体や、ウソ内容であることなどを隠した出版物がベストセラーになり、純朴な読み手さんがウソを見抜けないまま真に受けてしまっている痛い例ってのは、世の中けっこうあったりする。

たとえばロブサン・ランパのチベットもの 『第三の目』。(読んだときは感動したよ)

たとえばなりきり博物学ごっこの 『鼻行類』。(読んだときは感動したよ)

パパラギも、(読んだときは感動したよ)。

あと、イザヤ・ベンダサンとかさ。

 で、この手の「ウソ効果によって売れた本」は、フェイクだから価値が落ちるのかとか、読み手を騙すなよとか、だまされるほうがどうのとか、そういう話ではなくて、今回ここでは要するに、

whatパパラギは、当時の白人がおのれらのツボを突くようにうまく編み上げた「なんちゃってエッセイだった」というのは …私の思い違いだったんだろうか?
 調べてみた。

... 以下つづき...

〓〓〓 EP 〓〓〓

 昨今はスローライフブームで『パパラギ』がもてはやされているのかな。
 「パパラギ」で検索すると、モト本に無関係な、イメージ的な命名の店舗や団体、商品類がずらずら出てくる。
   ●ネット パパラギ
 たいへん『パパラギ』について検索しづらい状態だ。
 どんなキーワードで洗えば『パパラギ』の「真贋」についての情報が拾えるんだ?

「パパラギが本の作者の創作だという話しもあるようだが、その辺は重要ではない。仮に本書がとあるヨーロッパ人が創作した本であるとしても、そこに書かれていることには十分な意味がある。」
 ●ネット パパラギ - ときどきエコ

 まあ、そりゃそうなんだけどさ、でも、どっかこっか「異文化なめてねぇか」みたいな気持ち悪さがふつふつと。
 海外ではどうなんだ。
 『パパラギ』は、もとは洋書なんだから海外のウェブのほうが詳しかろうに。

 …いかん、海外でパパラギはどう綴られているのかわからない。
 paparagiと入力しても、papalagiでも、日本語のページばかりが出る。
 海外でも評判の本じゃなかったのか?
 『パパラギ』は、日本だけでもてはやされているローカルな物語なのか?

 ああ、やっとこれが出た。
 パパラギは「PAPALAGI」。
 ツイアビは「TUIAVII」だ。
 パパラギ全文の英訳が紹介されている。
   ●ネット SPEECHES OF TUIAVII OF TIAVEA A SOUTHSEA CHIEF THE PAPALAGI
 これによると1920年の原書タイトルは「Die Papalagi」。
 英語じゃない。ドイツ語?
  ●ネット Erich Scheurmann  ドイツ人だ。
 そいでもって、世界中の各国で翻訳され出版されてきているのに、なぜかこの『パパラギ』本、ながらく英語版がなかったんだそうな。
 英語圏では、『パパラギ』はそんなにもてはやされてはいないらしい。無名。

 で。
 そのリンク先では、きっぱり「パパラギ」は、サモアにお住まいだったドイツ人の Erich Scheurmann が、架空の酋長に仮託して記した創作だぞ、と述べてある。
 ジョナサン・スイフトの「ガリバー旅行記」みたいなもんだよと。
 今でいえば「猿の惑星」だ。
    → ティム・バートン版「猿の惑星」のエンディングが…
 異界にかこつけて、おのれの文明批判を繰り広げるという、延々昔からよくある、あのパターン。寓話。フィクション。ファンタジー。

 ああ、喉のつかえが取れたぁぁ。tenki

 結局、異文化におのれの姿を勝手に逆照射する オリエンタリズムのパターンに「真贋はともかく」みごとにはまってしまった作品であり、信者のごとき過剰な美化が伴って「『パパラギ』はホンモノ」というファンタジーが流布してしまっているという、…微妙にジャレド・ダイアモンドが 『文明崩壊』上巻でくさしていたあの香りがし…。

●情報庫:  オリエンタリズム

『文明崩壊』上巻  p.23
 この論争における両方向の極論 −− 差別主義と過去賛美主義 −− はどちらも、過去の先住民を(劣っているにしろ優れているにしろ)現代先進国の住人と根本的に異なる人間と見る過ちを犯している。


 今の日本には「『パパラギ』は、本当に酋長さんが書いたんだ!」と思い込みたがる、どういう要因があるんだろう?
 異文化や異なる立場に対する無神経さと傲慢さが、こんな隠微な情報歪曲(敢えてフィクションだよとは指摘しない風)を許す形で現れているのかな?

 いや、読むと感動するけどさ。
 いいよ。
 夢に浸るには。

 うちにも昔から一冊あるもん。
(家族があまりに感動してくれたもので、贋作だとはなかなか教えてあげられなかった…)



メタル
[カテゴリ 科学に佇む2006年] : 2006年11月07日 
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