[ EP: 科学に佇む心と身体 ]

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最近のお魚の本、いろいろご覧じろ

カテゴリ[科学に佇む2006年] 2006/11/04
 去年〜今年に出版されたお魚の本をいろいろ読んでみた中、一番のオススメは、
はいこちらのご本。lappy


◆左表紙
 『魚の子育てのひみつ』
 鈴木克美文
 Nature discovery books
 山と渓谷社 2005/07


 ぱっと見、お子さま向けのようなタイトル、大判で絵本のような体裁、なもんで、読む必要ないかな〜と思いつつ一応持ち帰った、みたいな一冊だったんだけど、
 いやこれが一番すてきな本だった。zokkon
 ごめんね、みくびって。


 まず収録されている写真群がどれも大変美しい。眼福。
 そして内容は、「魚類の性淘汰入門」に最適。
 難しい内容を、たいへん的確にわかりやすく、おもしろく開陳してくれている。
 読み手をなめてない。かなりまじ。それでいてすっと頭に入る内容。
 適宜ルビもふってあるのでお子さんから大人まで、これは楽しめる。
 ご家庭に一冊あると、生き物に対する興味と基礎知識をしっかり醸成してくれますよ、な感じ。

 ・オスメスの見た目に差がある魚と見た目おんなじの魚があるのはなぜ?
 ・魚には目にたよって行動する種類と鼻にたよって行動する種類があるよ
 ・魚はどういう場合に性転換するの?
 ・お魚で子育てをするのはたいがいお父さんです、お母さんではありません。
 ・魚には雌雄同体の種類は多いけれど、サメやエイには雌雄同体はいないんです。
 ・よく映像で登場する「サンゴの卵」は卵ではありません。精子と卵が詰まった袋です。
 そのほか、繁殖様式をメインにしてトリビアがてんこ盛り。
 広くオススメできます。

 ああ、これページを開いてリビングに飾っておくのもいいかもしれない。
 写真がすてきだ。
 なごめる〜。

〓ガラス棒〓

アンカー

◆左表紙
 『魚の変態の謎を解く』
 乾靖夫
 成山堂書店 (2006/06)  
 [ Amazon ] [bk1]

 
 カレイやヒラメ、幼いときと成長したときの形が全然違う魚を中心に、なぜ、どう、魚が、生き物が形を変えながら成長していくのかを研究している先生のご本。
 自分のフィールド、専門分析の顛末が大半。


 ・海と川を行き来するサケやウナギの身体の変化、その塩分変化適応の秘密。
 ・河川生活をする稚魚は「パー」、降海型「銀毛(ぎんけ)」になった魚は「スモルト(銀化)」と呼ばれる
へぇ〜!
    → 『スモルト、銀化(ぎんけ)』
 ・甲状腺ホルモンを抑える薬(チオウレア)を与えると、縦に泳ぐヒラメができた!
 ・ウナギも甲状腺ホルモンのぐあいしだいで姿を変えるね。
 ・変態をしないウーパールーパーに甲状腺ホルモンを与えると変態するよ。
 ・逆に、ヤツメウナギ(無顎類)では甲状腺ホルモンは変態のじゃまになるらしい。
 ・昆虫の変態はアラタ体と前胸腺から出る成分が調節しているよ。
 ・魚より高等な脊椎動物でも、甲状腺ホルモンは、幼い身体ができあがっていくときの
  いろいろな組織や器官の形や大きさを調節してくれているんだね。
というような話が、ちょっと難しめに詳しく書いてある。

 虫がサナギになったり、オタマジャクシがカエルになったり、シラスウナギがりっぱな蒲焼きになったり、受精卵から人間の身体ができあがってきたり、そんな「生き物の変身」に興味ひかれる人にお勧めの一冊。

... 以下あと4冊...

〓〓〓 EP 〓〓〓

アンカー

◆左表紙
 『魚の形を考える』
 松浦啓一編
 東海大学出版会; (2005/08)
 [ Amazon ] [bk1]

 
 魚の「形」について、成長につれての形の変化、進化による形の変化、いろいろな研究者がそれぞれのお話を披露してくれます。
 小難しいけど、読み解けばいろいろ面白い話がたくさん詰まっているので、もっと図版・写真を盛り込んで図鑑っぽく持っていっても良かったかもしれない。
 カレイの各科の紹介、ふつう気にもとめないようなミクロな形、見えない形を頼りに進めていく分類学、興味しんしん。


1章 形に見る魚の多様性 松浦啓
 「魚類」はけっこう無理めなくくりらしい。
 無顎類(ヤツメウナギなど)も魚にされているけれど、有顎類とは大きく性質が違う動物。
 かといって、有顎類にはカエルや哺乳類まで含まれてしまうわけで…
 「魚類」=「無顎類」+「有顎類から四足動物を引いたグループ」
なんだそうだ。
 脊椎動物(われわれ)
  ┣無顎類(ヤツメウナギ、メクラウナギ)
  ┗有顎類(われわれ)
    ┣軟骨魚類(サメ・エイ)
    ┗条鰭類(われわれ)
      ┣【一般の魚類】
      ┗肉鰭類(われわれ)
        ┣有羊膜類(われわれ)
        ┗両生類及び肺魚類・シーラカンス類

2006/11 【日本語記事】 Science日本版  無顎類の獲得免疫受容体の多様性と機能
 有顎類と無顎類では、非常に異なる形式の抗原認識が進化してきた

2章 魚類化石の形を考える 籔本美孝
 化石の取り方の紹介あり。goo

3章 多様な形がどのようにできあがるか:コイ科魚類の咽頭歯 中島経夫
 「金魚の歯」咽頭歯の分類研究で有名な中島経夫さんもラインアップ。
   → 『金魚にゃやっぱり歯があった』

4章 両眼が片側にある魚たち:カレイ目魚類:その多様性と進化 星野浩一
 同じカレイでも、ボウズガレイ科の魚は、右側目と左側目が半々!
 ヌマガレイになると、アメリカ西岸では左側眼と右側眼がほぼ半々なのに、日本沿岸ではほぼ100%が左側眼なんだって。へぇ〜。ma

5章 形から考えるカサゴ目の単系統性 今村央
 魚の分類は形にたよってなされてきた関係で、 →収斂進化 のいたずらで形がそっくりになった遠縁の魚が「近縁だ」と分類されてしまっていることが少なくない。
 カサゴ目にしても、DNAを調べたら「あんた誰よ」みたいな魚まで含めてしまっていたことがわかってびっくり。遺伝子調査のおかげで「カサゴ目」という分類上のくくりはかなり無意味なシロモノになってしまった…。

6章 顎が出る話 白井滋
 金魚もそうだし、もっとすごい深海魚とか、魚が口を開くと「ガバーッ」とアゴ全体がでっかく前に出るよね。その構造とメカニズム、そしてアゴの進化に注目したお話。

7章 子供から大人へ大変身する魚たち 塚本洋一
 生まれたばかりの時は、むっちゃありえないや〜ん的に異様な形をしている魚がいるよと。
  ●ネット 目玉びろーんとした小魚が成長するとこんな深海魚に @深海水族
  ●ネット これも目玉びろーんが成長するとひっこんでいく
 なんでこんな目玉びろーんの子になるのか、ナゾらしい。

8章 形態による分岐図は何を表す?:タンガニイカ湖産シクリッドを例に 高橋鉄美
 タンガニイカ湖のカワスズメ研究、その歴史と最前線。
 ※●本ミニ 堀道雄/編 『タンガニイカ湖の魚たち 多様性の謎を探る』  平凡社 1993年
 ※●本ミニ ティス・ゴールドシュミット 『ダーウィンの箱庭 ヴィクトリア湖』  草思社 1999年(原書:1994/Darwins hofvijver/Darwin's Dreampond)

 などなど、小難しい話でも「魚を知るなら!」と読書意欲がわく人におすすめ。

〓ガラス棒〓

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◆左表紙
『魚の心をさぐる』
 ベルソーブックス
 益田玲爾 (著)
 成山堂書店 (2006/06)
 [ Amazon ] [bk1]

 
 息抜きにおすすめの軽い一冊。
 好きこそものの、みたいな、能天気お気楽「魚類心理学」。


 そも設定が…魚の心さぐってないし。ase
 行動訓練っぽいとこで、少しだけ教育心理学が登場するけれど、もともと世の中には魚類心理学なんてものは無かったところを、魚類行動学とどう違うのか、そんなに気にしないままノリで「魚類心理学:Fish Psychology」と称してみましたぁ、あまし心理学してないけど気にしてませ〜ん。みたいな。
 著者さん、共感過多タイプというか、ノリで日々楽しいんだろうな。smiletang
 いろいろなお魚トリビアも披露されてます。

〓ガラス棒〓

アンカー

◆左表紙
 『図解雑学 魚の不思議
 絵と文章でわかりやすい!』

 松浦啓一
 ナツメ社 (2006/06)
 [ Amazon ] [bk1]


 う〜ん…。
 「図解雑学」を期待する読者を想定するなら、おこさま向けにフリガナ・ルビを入れておいてほしい。
 前半はお魚トリビア集。
 後半は、お魚おもしろ図鑑。
 前半に登場する数々のイラストは、後半の写真のまんま模写というのが、かなりさびしい。


おいおい、p.46のリードシクティス復元図は正しいのか? という話はこちら。
 → 『史上最大のお魚「リードシクティス」がちょっと手抜き』

〓ガラス棒〓

アンカー

◆左表紙
 『海の環境100の危機』 東京大学海洋研究所DOBIS編集委員会  東京書籍 (2006/07)
 [ Amazon ] [bk1]


 海の環境問題を紹介してくれるご本。
 しょっぱなのツカミはエチゼンクラゲ。
 たくさん情報は詰まっているけれど、これあまり強くお勧めはしません。
 レイアウトのセンスと内容が見合っていない、アンバランスだし、平気で専門用語を連発するなど(一応説明はあるが…)一般向けに表現を噛み砕ききれてないし、そこに脱力系挿画が加わって、やるせなさ倍増…。

 全体を3つに章分けして、前半でむやみに狂信的自然保護観念を煽っているだけのような「ではどうすればいいのか」ほったらかしのような、無粋な記述が延々続いてしまう。
  第一章 海の生態系の危機
  第二章 海の環境の危機
  第三章 環境保護・人と社会の取り組み
 最後の章で、海の環境保全への取り組みの具体例と、該当施設・団体のアクセス方法紹介などが並ぶんだけど、でも、「え〜、結局私たちにはこんなことしかできないの???」みたいな、ねぇ、やるせなさ倍増…。

 もっとなんとかできたんじゃないだろうか。
 企画力、編集力が足りなかったんだろうか。
 ほんとに将来に向けて、こんなことしかできないんだろうか。
 今週、こんなニュースも流れているのに…。achar2
海がダメになるまであと数十年ぽっきり
2006/11 EurekAlert Accelerating loss of ocean species threatens human well-being
Current trend projects collapse of all currently fished seafoods before 2050
2006/11 EurekAlert By 2048 all current fish, seafood species projected to collapse
2006/11 【日本語記事】 Science日本版 2048年以降、海の幸は消えゆく? Impacts of Biodiversity Loss on Ocean Ecosystem Services




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筆者:雨崎良未
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