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反共有地の悲劇/アンチコモンズの悲劇

カテゴリ[科学に佇む2006年] 2006/10/20
参照用、情報メモ置き場。

●反共有地の悲劇
 アンチコモンズの悲劇
 (tragedy of anticommons / The Tragedy of the Anticommons)

「共有地の悲劇」=おおぜいが権利を共有しているがゆえに、共有対象が濫用されてワヤになる悲劇。
 → 『共有地の悲劇』

「反共有地の悲劇」=共有されるべき対象なのに、それぞれの持ち主が”ほかの人には自由に使わせない”権利を持っているために、宝の持ち腐れになってしまい、救われるべき人も救われなくなってしまう悲劇。

 「共有地の悲劇」では、共有財産の使いすぎ、過剰利用が問題になり、
 「反共有地の悲劇」では、共有財産の持ち腐れ、過少利用という問題になる。

◆90表紙
『民主化するイノベーションの時代』

 エリック・フォン・ヒッペル (著)
 ファーストプレス (2005/12/9)

「反共有地の悲劇」=おおぜいの所有者がそれぞれ他者を排除する権利を持っていて、だれもそれを使用する効果的な特権を持たないときに、共有されるべきものが十分に活用されなくなってしまうという困った状態
 〜第8章「ユーザー・イノベーションへの適合政策」


... 以下つづき...

〓〓〓 EP 〓〓〓

◆左表紙
 『バイオテクノロジーの経済学
 「越境するバイオ」のための制度と戦略』

 小田切宏之著
 東洋経済新報社 (2006/07)



 p132から、「反共有地の悲劇」の項目をもうけてひとしきりバイオ産業における権利問題について述べてある。

 さまざまな研究分野からの知識・技術を総合してなされる技術開発や医薬品開発。
 遺伝子情報、解析技術、薬品、装置…、それらにいちいち独占権がはさまれ、なにをするにもいちいちそれぞれの権利者に許可を求めに行かねばならず、のみならず高額な使用料も払わねばならなかったりするわけで…
 『バイオテクノロジーの経済学』 p132
集積型技術の場合には,ライセンシー[特許を利用したい人]が払わなければならないロイヤルティ[特許使用料金]はこれだけではない.仮に5つの技術が必要であり,それぞれの特許権者が10%のロイヤルティを要求すれば,合計50%のロイヤルティ支払いが必要になってしまう.

 1本につき製造に100円かかるジュースを売って、1本あたり10円の利益を出したいと考えよう。
 このまんまなら、1本110円で売れば問題なく10円の利益が出る。
 110円なら、ふつうに消費者にも手が出る金額だ。
が。
 ジュース搾り機の特許を持つ人が、「売上げの10%をくれないと使わせない」と言ってきた。
 ジュースを入れる瓶の特許を持つ人が、「売上げの10%をくれないと使わせない」と言ってきた。
 ジュースの殺菌方法の特許を持つ人が、「売上げの10%をくれないと使わせない」と言ってきた。
 ジュースの色を保つ技術の特許を持つ人が、「売上げの10%をくれないと使わせない」と言ってきた。
 ジュースのフタの特許を持つ人が、「売上げの10%をくれないと使わせない」と言ってきた。
 え!?
 売上げの50%を払って、原価100円払って、その上で10円の利益を出すには…
 1本220円で売らなきゃならないわけ!?
 220円の50%110円を、特許権利者にお支払いして、残り110円が原価と利益…

 ジュース1本220円じゃ、お客さんに買ってもらえないじゃないか!
 体にいいジュースだとしても、身体を壊して生活に困っている人には、こんな値段では飲んでもらえないじゃないか!
 しかも、220円のうち、作り手の利益はたったの10円。
 どんなに良い製品でも、かなりやる気がそがれてしまう…

 …いや、50%ならまだましなほうだ。
 『バイオテクノロジーの経済学』 p132
製品化にあたり10種類の技術が必要で,それぞれのライセンサーが10%のロイヤルティを要求すれば,売上げはすべてロイヤルティに支払われてしまうから,製品化はありえない.

 「売値の10%くれ」という権利者が10人いたら、それはすなわち「売値の100%くれ」。
 すごい。
 ありえない。
 売れないよ。
 「売値の100%」。なにこの計算。

「反共有地の悲劇」=共有されるべき対象なのに、それぞれの持ち主が”ほかの人には自由に使わせない”権利を持っているために、宝の持ち腐れになってしまい、救われるべき人も救われなくなってしまう悲劇。

 つまり、こんな「反共有地の悲劇」が、「命を救う技術」「医薬品開発の現場」などで起きてしまっているわけで。

●右画

 医薬品の開発、バイオ技術の開発にはものすごくたくさんのお金が必要。
 多くの研究、テスト、のみならず、結局開発中に使用する機器や技術の「特許使用料」もかさんでいる。
 で、そのかさんだ経費の元を取るために、「特許」を取得するし、「特許」が取れることを見込んで多額の資金も投入してしまう。
 特許料金スパイラル。
 特許料金の雪だるま。

 そのうえにさらに、「特許を取って何が悪い」という開発側のたちの悪いカンチガイがあったりすると、かなり目もあてられない状況に。
 このあたりは3年ほど前にひとしきり。
   →2004/01 『特許を取って何が悪い:これが悪いんですよ』

 また、この「反共有地の悲劇」は、「特許料金を支払わなければならない側」だけが損するわけじゃない。
 「特許を持つ側」「特許料金を支払えという側」にとっても、マイナスになるのだと指摘されている。
 特許のがんじがらめがすぎると、特許技術を使おうという人が減って、結局あてにしていた収入が得られなくなってしまう。
 肝心の、特許開発費用がペイしなくなっちゃうんだよと。
 骨折り損になるよと。

 かといって、特許を放棄してもペイしない。
 特許をアテにせずには開発もできない。
 どうすりゃいいのか。

 →『バイオ産業の「反共有地の悲劇」はどうやったら解決できる?』

 「多額の資金がなければ開発ができない」「命の選択肢が多額の金をかけるか否かに直結しがち」という、なさけなくもあさましげな隘路に迷い込んでしまっている私たち。

●情報庫: 共有地の悲劇  囚人のジレンマ、ゲーム理論





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