
『児童虐待と動物虐待』
三島亜紀子著
青弓社ライブラリー
青弓社 (2005/06)
[bk1]
ちょっとうんざりする。
ムリヤリ現象をこじつけられているような気もするし、それぞれのパーツの火の通し具合が、まだナマすぎないか、おなか壊さないか、スパイス間違ってないか、みたいな妙にいごこちがわるいフルコース。
…論をぶちたい、という意欲が、なにか論として姿を現しきるより前に「私なりの物語を編むんです」みたいな感じに低空飛行してしまっているというか。
論をぶつ、というスタンスで、「私なりの物語/こじつけの押し付け」になっている例は世の中枚挙にいとまはないわけで、個人的には、あんたの都合であんたの物語でこっちの物語に落書きされたりペンキぶちまけられたりするのはかんべんしてぇな、とか思ったりする。
男は女を殺し、女は子どもを殺す
子殺しだの虐待だのは昔っからあったのに、どうして近頃はこんなに風当たりが強くなったんだか
2005/09 Mywesttexas.com Child murders not a modern phenomenon, but society is getting tougher in response
虐待言説の変遷はあったと思う。
児童虐待の扱い・解釈の変遷も、動物虐待の扱い・解釈の変遷も。
でもその二つの和え方は、これでいいのかというと、なんか違和感が強くて受け入れにくい。
アブグレイブ刑務所での拷問を、虐待と言い換えるそのダブルスピークを話の枕に持ってくるのは適切だったのか。
... 以下つづき... ラストに現代的怪談を一個置いてあります。


・大家族時代に
・虐待を経験し
・虐待の結果は神経衰弱にとどまり
・経験を多くは語らず社会的コミットメントを目指す
という一時代前の手記を取り上げ、それを現在と対比させるそのやり口も、広範な視点や公正さよりはまず、なにかとても「私なりの物語を編むんです」的な香りを強く漂わせている。
千夜一夜物語のような、物語に塗り込まれる物語のような、多重に塗り重ねられた、意味操作、みたいな。
自分史をどんなに編もうとも、あっけなく他人から別の物語で勝手に役ふられて意味づけられて、手持ちの物語を壊される恐怖、蹂躙される恐怖。
物語の壊し合い。
どんどん壊して押し付けて壊して押し付けていつまでもいくらでも。
そんなスタンスの社会学な装いの言説が増えるにつけ、よけいに人心が頼るよすがの「個人的物語」が、なんというか、個人的物語の多様性が芝刈りされていくような、か弱い言説踏みつぶしまくり、みたいな…
一種、陰謀観の極端ケース?
言説の変遷、「社会問題の流行」、例えば
・飲酒運転
・触法精神障害者の処遇
・大量輸送交通機関での大規模事故死…
じゃあさ、それを問題にするブームになる前の、個々の交通事故死亡者や殺人事件の被害者、マスコミにスルーされていた時代の収拾もつかないほどにあまたある個々の死はどうなるのよ、とか思ったりする。
時代が違えば、祭にはならない、ただスルーされるだけの…
逆に言うと、もしかしたら、時代のどこが違うか、これは「その状態に適切な解決を付与する意味体系が壊れてしまったから、よってたかって”答はどこだ”状態」に陥ってしまうのではないか。
「新たな答の納めどころを共通認識として何かこしらえなあかんな騒ぎ」になってしまっているとか?
で、下手すると、新たな共通認識でこしらえたおさまりどころも、”どんどん壊して押し付けてなスタンスの社会学な装いの言説”がすかした目をしながらあっさりいくらでも蹴り壊してなおさらに 答がないよ〜荒んでいくよ〜 しまいにはモラル以前の欲剥きだし… てな煉獄状態?になってしまうのかもしれないけれど。
動物愛護運動が日本に導入されて、のくだりにしても、仏教的輪廻感と
追記2006/10/08
「動物愛護」概念の導入期については、
木村功『「件」の系譜学』(『日本文学』2005年11月 VOL.54)
件は農業における厄除けと豊作祈願に起源があり、牛頭天王信仰と関わりながら、産業構造の変化に伴って民衆の意識が仮託される存在へと変化して行った。ついには人間と牛の関係が社会の中で希薄になった事で、殆ど消滅したのである。
ほか
など、『児童虐待と動物虐待』にみられる勇み足のような書き方よりは、もっと正確さを期して彫り込むことができれば面白いかもしれない。
それと、痛覚の「苦痛」と、仏教で言う「苦」を混同している気配もあったりする。ていうか、ここが一番気持ち悪かった…。
他者との意見交換不足なんだろうか。
他者との研鑽しだいで当該著者は今後もっと伸びるのかな。
…いい研究成果か否か、という点をよっこすると、「物語創作欲」の強さと度胸は感じるし、この線でドラマ数本書くほうがインパクト面からも商売面からもおいしいかもしれないな、とか思ってみたりする。


【児童虐待】●関連ポッドキャスト
科学なポッドキャスト
「偽りの記憶と幼い心」 MP3ファイル 27分
False memories and young minds 2006-08-05 All in the Mind 〜 ABC@オーストラリア
その性的虐待は妄想か事実か 植え付けられた過去なのか
歪む幼時の記憶、そして悲惨な裁判沙汰
この音声ファイルは内容をテキストで読むことができます。All in the Mind
「読みながら聞く」ことができて、英語のヒアリング練習に持ってこいです。
●関連サイト

『児童虐待の社会学』
上野 加代子
世界思想社 (1996/11)
「社会問題」としての児童虐待:社会構築主義からのアプローチ 〜野村知二(京都市児童相談所) 平成10年
・上野加世子のまとめによる「児童虐待」の言説
┣アメリカにおける児童虐待問題の経緯
┣定義の変遷とパフォーマーの役割交代
┗アメリカにおける児童虐待「問題」をめぐる議論
しまね子どもの虐待防止マニュアル 〜島根子どもの虐待防止研究会 編 平成15年 島根県
●関連過去記事
児童虐待から統合失調症になる場合
2006/06 EurekAlert Manchester academic to tell conferences: Child abuse can cause schizophrenia
2006/06 New Scientist Are child abuse and schizophrenia linked?
虐待を受けた子は否定的感情に過敏&過剰反応する 自分に関係のない感情であっても
2005/09 EurekAlert Study: Abused children stay highly attuned to anger
2005/09 EurekAlert Physically abused children highly distracted by anger
過去から推察できる将来の虐待発生リスク
虐待の中でも特にネグレクト; 家庭内暴力を含む親のいさかい; そして親の心の病
2006/07 EurekAlert Warning signs for potential re-abuse of children identified
早産・未熟児・低体重出産児、虐待を受けやすい
2006/03 BBC News Small babies' 'higher abuse risk'
虐待で死ぬ児童の数、血のつながらない大人が同居しているとあからさまに50倍
2005/11 EurekAlert Unrelated adults in the home associated with child-abuse deaths
性的児童虐待を受けた人にみられる成長後の性的障害
2005/10 EurekAlert Study finds gender differences in reported childhood sexual abuse
幼児虐待は学習連鎖であって遺伝ではない
2005/06 EurekAlert Infant abuse linked to early experience, not genetics
2005/04 時事通信 虐待予防は出産前から=母親へのケアが効果
おばあちゃん的接し方を・医師調査
出産前から精神療法などに基づくケアを十分に行えば、未然に防げる可能性が高い
心理的介入で児童虐待やネグレクトは減らせます
2005/03 EurekAlert Psychological interventions can reduce child abuse and neglect
虐待経由 躁鬱病行き
2005/02 The British Journal of Psychiatry (2005) 186: 121-125 Impact of childhood abuse on the clinical course of bipolar disorder
●関連書

『子ども虐待の歴史と理論』
ブライアン・コービー (著)
明石書店 (2002/10)

【動物虐待】
『ペットと生きる ペットと人の心理学』 B.ガンター (著)
北大路書房 (2006/05)
原書1999年
p.131
動物に火をつけたり,動物どうしの尾を結んだり,ペットを殺したりといった行為が見られたら,それは問題が確実に生じていることを示すものであり,当然,精神医学的な診断を行うべきである。なぜなら,そのような行為は,子どもが必死で助けを求めていることを示すものだからである。
これも時代が変われば「当時的解釈」として済まされてしまうのだろうか?
いや、虐待が文化的に受容されている行動だというならともかく、そうではない社会ではやっぱどう考えても「問題があるきざし」なわけだよね。
現状を改善するために行う、儀式だ。
現状を改善するかもしれない、手段なわけだから。(結果的に適切な効果はえられなくても、インパクトのある手段を行うこと自体に、心的緩解のような意味効果があったりする)
例えば。
打開の手段。
小児期の動物虐待行為と人格障害
2002/09 Psychiatric News Volume 37 Number 18 Researchers Explore Link Between Animal Cruelty, Personality Disorders
動物虐待:非常に多いネグレクトパターン
2005/07 BBC News Animal neglect cases 'up by 78%'

あああ、ネグレクトといえば、ものすごいいやな思い出がよみがえってしまう。
とある夏の日。
近所のホームセンターの裏に、ハムスター用のカゴが捨ててあった。
当時はうちもハムスターを飼っていたもんで、「あ、粗大ゴミならうちのハムスター用に使えるかも!」と、いそいそと覗き込んだのが間違いだった。
そこにあったのはハムスターの死骸。
しかも一匹じゃない。
死骸が2体。
それも。
一匹はガリガリに痩せこけて、死んでそんなに日も経っていない。
もう一匹は。

食われていたんですよ。
骨がむき出しに。
毛皮食い破られて。
そこから浮かび上がる絵は。
夏休み、飼い主がエサをやらずに旅行に出た。
ハムスターは飢えてともぐい。

帰宅した飼い主は、 捨てた。
ヨソのホームセンターの裏に捨てるな!!!!!
いや、怒りどころの焦点もブレブレに合わなくなるほどこれはショックだった…
へぇボタン:へぇ〜
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