[ EP: 科学に佇む心と身体 ]

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男は女より?痛みに弱いのは男か女か科学者か

カテゴリ[科学に佇む2005年] 2005/07/08
【男は女より痛みに鈍感】

1:2005/07 BBC News Women feel pain more than men

2:2005/07 EurekAlert Women feel more pain than men, research shows

3:「痛み」に弱いのは、実は男性より女性
2005/07 【日本語記事】 UK Today (JAPAN JOURNALS LTD.)
 従来の見解:女性は出産の痛みに耐えられるほど男性より痛みに強い
 今回の結果:女性は痛みに敏感で男ほど耐えられはしない


●日本語の記事、なんか内容ヘンじゃございません?
UK Todayの記述内容は不十分、というかはしょりすぎ&誤訳混じりでワヤっぽい。
 ”体質的な性差から女性は男性より痛みを感じやすいように
 なってはいるが、それ以上に女は痛みの感受に感情が
 からむため、痛みに弱いのだ。”
  〜エド・キーオー(Dr Ed Keogh)心理学博士@バース大学

モトは
 「痛みにはネガティブな意味あいが伴う。
  その感情効果も加わるため女性は痛みをよりひどく感じるのかも」
という解釈で記述されている。

いろいろと今回の報道はバカじゃないかと思ったり。

●最初に女側をマイナスに表現したのはどこのどいつ。
 【男は女より痛みに鈍感】は私がつけた訳題。
 ほかの記事(上掲1,2,3)はのきなみ「女は痛みに弱い」「女はより痛がる」だったりしている。
 「女は痛みに弱い」という表現では、研究結果に関係ない部分で、女性に「マイナス」の意味づけを伴う表現になります。
 同じことを【男は女より痛みに鈍感】とすれば、男に「マイナス」で女は「プラス」の表現ですね。
 どっちにもプラマイでない適正な表現ってないもんでしょうか。

●女が痛みに強いという”従来の説”はどこで従来だってのさ?
 ずいぶんまえからもともと「痛みに強いのは女じゃなくて男」ってのが相場でしょう???chitchit
...以下...

〓〓〓 EP 〓〓〓

男が痛みに鈍いのはテストステロンのおかげ
2004/06 Nature Science Update Why it hurts less to be a man
「男は鈍感」を実証  男性ホルモンの鎮痛効果をスズメで確認
2004/06 ▲日本語記事 ネイチャーバイオニュース

男のほうが高い苦痛耐性、社会的ジェンダーか生理的性差か  お金と冷水を用いた調査
2003/04 EurekAlert  Higher pain tolerance in males can't be bought

なぜ男はよく痛みに耐えられるのか
2002/12 New Scientist Why males bear pain better
2002/12 The Globe and Mail  When a man is feeling no pain, blame GIRK2
2002/12 BBC News Sexes 'feel pain differently'

女性, 男性より痛症に敏感
2002/07 中央日報

男は痛みに鈍感
2000/02  THE INDEPENDENT Women are far more sensitive to pain than men


●出産の痛みと冷水による痛みを同列に扱えるのか?
 女のほうが痛みに強いという”従来の説”の論拠は「女は出産とか痛いことをたくさん経験するから痛みに強いはず」。
 なんだそりゃ。(実際こんな巷説はあるの???)
 出産の痛みは非常に強いものではあるが、傷病で生じる痛みとは性質が大きく異なるもの。
 基本的に出産の痛みは「(生理上)避ける必要がない」痛みであって、脳内の自然な鎮痛作用&痛覚耐性閾値の変化も伴うかなり特別な痛み。
 傷病の痛みは「(生理上)避けるべき」痛み。
 特に、傷病が繁殖率に直結しやすい女性性においては、必然的に痛みに対する感受性は高くなることが考えられるわけで。

Dr Beverly Colletteによれば、
 「女性はただでさえ月経周期で痛みの閾値が上下するし、ジェンダーバイアスもあるし、複雑な主題だからもっと検証は必要です」
天然の体内鎮痛剤を左右する女性ホルモンと遺伝子
2003/02 EurekAlert! Pain and the brain: Sex, hormones and genetics affect brain's pain control system
 Brain's natural painkillers are influenced by women's hormones and genes

カフェインは女性に鎮痛効果あり 男には効かない
2002/09 BBC News Coffee knocks out women's pain
2002/09 Ananova Coffee can help a woman withstand pain

ここちよい香り、痛みを鎮めます ただし女性の場合だけ
2002/06 Ananova Smell may be painkiller - but only for women
2002/06 BBC News Pleasurable smells reduce pain


●ほかの研究事例はどうなのさ

もとより痛みの【性差】以前に、痛みの【個人差】のほうがでかかったりしてます。
女だからぁ男だからぁ、みたいなことやってると、かなり失礼なことにもなりかねない。
いわゆる【性差別】ってやつですね。
痛覚が過敏な人、にぶい人  感じる痛みの強さは人によって差が大きい
2003/06 EurekAlert  Brain imaging confirms that people feel pain differently
2003/06 BBC News Brain scans prove pain responses differ
痛みの個人差を脳スキャンで検証 米研究チーム
2003/06 cnn.co.jp
痛みの個人差
2003/07 ScienCentral Painfully Real

「痛がり」は遺伝子のせい? 米研究 ドーパミンの代謝に関わる酵素「COMT」の遺伝子
2003/02 cnn.co.jp
2003/02 NATIONAL INSTITUTES OF HEALTH Alcohol Researchers Identify a Genetic Basis of Pain Response
2003/02 New Scientist Tiny gene changes means big differences in pain

短気な人、感情をこらえる人は痛みを強く感じがち  お気楽な人は痛みに耐えやすい
2002/08 United Press International  Hot tempers can make life painful

痛みを感じる機序@脳  痛みを抑える脳内物質レベルは個人差が大きい
2001/07 EurekAlert!  Study gives first glimpse of human brain's natural painkiller system in action
2001/07 BBC News 'Torture' study gives pain insight


痛覚の男女差を調べる際には、血中マグネシウムの濃度性差もおとりになると、よりよろしいのではないかと。
痛み: 血中マグネシウムに関係 痛がりの人は濃度低く
2004/07 毎日新聞


こんな面白い結果もございますよ↓
両性共に女に甘い?  同じ痛みでも、女がやることは痛くない
2004/02 BBC News Pain from a woman will hurt less
2004/02 New Scientist Men inflict greater pain than women
2004/01 Health Behavior News Service  PAIN MAY INTERFERE WITH DEPRESSION IMPROVEMENT


え〜と、男が「驚くと痛みに弱くなる」というのはどうよ。
かなり興味深い報告ですが。
騒音に鈍感な男
 女性は騒音におびえやすく、同時に痛みに強くなる
 男性は騒音に驚きやすく、同時に痛みに弱くなる
2001/03 Yahoo! News  Women More Sensitive to Noise Than Men


これも微妙ですわな。
腰痛の痛みは同じでも、女性は男性より我慢して出勤
2005/06 【日本語記事】 UK Today (JAPAN JOURNALS LTD.)

心理状態で左右される腰痛
2004/05 EurekAlert Psychological factors may be root of back pain
2004/05 EurekAlert Animal studies show promise treating severe chronic pain

追記:
音楽で緩和される慢性痛やうつ
2006/05 EurekAlert Listening to music can reduce chronic pain and depression by up to a quarter

痛みが取れない? ではこの名作を一日三回、ご覧下さい
2008/09 New Scientist In pain? Take one masterpiece, three times a day
 美術でやわらぐ痛み

追記:暗示しだいで痛みが変わる

2008年度イグ・ノーベル化学賞
『高価な偽薬(プラセボ)ほど、安い偽薬よりも効果が高い』
 米デューク大学のダン・アリエリー行動経済学教授は入院した際に、やけどの痛みで夜に飛び起きる患者が、看護師から鎮痛剤を受けてすぐ 眠る様子を何度となく見かけた。看護師から注射は単なる生理食塩水だと聞かされ、偽薬とその効果に注目。
 〜【日本語記事】 cnn.co.jp


そもそも「痛み」は感情と密接に関わる感覚。
パニくれば無痛になったり、音楽に鎮痛効果があったり、イヤなヤツといると痛みがひどくなったり、ものすごいとらえどころのないような変化をしてくれる。
恐怖は痛みを軽くします 不安は痛みを増大させます
2001/06  eurekalert.org  Fear, anxiety affect pain

緑の光景やせせらぎ… 自然画や自然音は苦痛を和らげる
2003/05 EurekAlert  Nature sights and sounds ease pain during common lung procedure

お笑いで鎮痛
2003/04 Ananova Billy Connolly 'a useful painkiller'


「研究者を女性がキモがってより痛みを強く感じていました」みたいなあられもないオチが発覚したりしませんように。

この箇所へのリンク【追記】

その後の記事 追記:
2008/11 PhysOrg Probing Question: Do women have a higher pain threshold than men?
女性は男性より痛みに強いのか?
 いかなる固有の生物学的要素よりも、痛みに関しては社会・文化的要因と心理的な影響のほうが大きい

2008/11 EurekAlert Pain is in the eyes of the beholder
疼痛は、見る人の眼しだい
 慢性痛の患部の見え方を変えるだけで、痛みが増減するんです
 痛む手を動かすときに、手を拡大して見せると、痛みが増大する
 小さく見せると、痛みが軽減する

痛みの経験は、誰かのせいか否かによって大きく左右される
2008/12 EurekAlert Pain hurts more if the person hurting you means it
 ランダムに自動的に引き起こされる痛みと、誰かがスイッチを押して引き起こされる痛み
 同じ程度の刺激であっても、誰かによる痛みはやたら痛い





◆痛みと身体の心理学 新潮選書
 性差医療の情報庫
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[カテゴリ 科学に佇む2005年] : 2005年07月08日 
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