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幻のハンマー、ウシコロシ:牛殺しの木とサンカ、セブリ

カテゴリ[科学に佇む2006年] 2006/09/23
 「牛殺しの木」と呼ばれる木があります。ウシゴロシ。
 いまこれ探しています。
[ [ [  2006年当時の話です。その後の情報は 末尾のコメント欄 をご参照ください  ] ] ]
 「牛殺し」とはいえ、これ、べつに毒がある木の名前だというわけではありません。

 ハンマーに使う木です。
 はつり屋さん(建築物解体業)が仕事に使う、ばかでかいトンカチ(大ハンマー)の柄に最適なんです。

 ヤナギハンマーとも言いまして、ヘッドはふつうの大ハンマーよりスリム。
 それを、適度にしなってしかも強靱な細身の木の柄で思いきり

    ブン!

と振ると、スパン!と目標を叩き抜くことができる。
 確実に目標を絞って壊すことができる。
 柄の材質しだいで、大変優れものな破壊ハンマーになるのです。

 ヤナギの木も、牛殺しの木も、
  細身で、年輪が詰まっていて、強靱で、よくしなる
 通に言わせれば、ヤナギよりも「牛殺しの木」が欲しいと。

 「牛殺しの木」。
 おそらく、大ハンマーで牛の頭を

    パン!

と屠殺する、それに使われていたために、そのような恐ろしげな呼称がついたのだと私は推察しているのだけれども。

 で、「仕事で牛殺しの木を使いたいので、なんとか入手できないか」とはつり屋さんに頼まれているのだけれど、いや、はつり屋さんがその道で入手できない状態のものを私が入手できるんかいなと。ase2
 とにかく、検索かけてみても全然それらしい情報が出てこない。

 はつり屋さん的にはけっこう常識なアイテムらしいのだが、そも、はつり屋の情報がネット上に少ないわけで。
 ネット上の情報はほんと偏っている。
 ネット上の情報が、オフラインとどう違って偏ってしまっているのか、「牛殺しの木」もまたその実例の一つかもしれないが。

●●●小玉7●●●

 はつり屋さんは、ヤナギの枝も欲しがっているけれど、やはり呼称に強く惹かれるのか「牛殺しの木」が欲しいとおっしゃる。
 実物は手元にあるらしい。でも、ほんの数十センチの断片しか残っていないんだそうだ。
 ハンマーに使えそうな長さは残ってない。
 今代用で仕方なく使っているのは、アクリルかプラスチックか何かの人工材料でできた柄らしいのだが、しなり具合がヘナヘナで、どうもいただけないとのこと。

 さても「牛殺しの木」。
 実際はなんていう植物なのか、…わからない。 orz
 検索しても全然出てこないし。

 ネット検索でヒットした中から。
●ネット KumanolifeGuestbook
尾張の国知 - 2002/10/20(日) 11:50
大井川サンカの事  アーの事

大井川の第1回目の調査から帰ってきました。
セブリバは、河岸段丘の下位の面が多かったです。そこには、シノ竹、姫真竹、牛殺しの木、川ヤナギ、やまふじ が植栽?されていたらしく逆に、かってのセブリバを探す目安にもなりました。信濃・三河・遠州・・・など交流や季節型移動?もしていたようです。


 あ! セブリバ!
   →2005/03 『山窩・ホームレス・漂泊とアフリカ 』
   →2006/04 『「創られた伝統」の系譜:サンカとひとのみち教団』
 セブリバとは慥か、河原の漂泊民がおりおりたむろう場所。
p.130
さんか:
現代まで定住することなく、山間水辺を漂泊する特殊民群の代表的なもの。ミツクリ・ミナホシ・オゲ・ポンなどとも言う。西は九州から中国山脈、近畿中部から東は関東地方にも分布している。単純な生活様式で、セブリと称する仮小屋または天幕によって転転と移動し、男は泥亀、鰻などの川魚を捕えて売り、女は
笊・籠・筬・箕などの竹細工をする。これらによって山農村と多少の交渉をもっている。……
〈民俗学研究所『民俗学辞典』一九五一)

p.112 セブリは世探/よさぐ/りのことで、瀬踏みの意味もある
礫川全次著「サンカと説教強盗 闇と漂泊の民俗史」批評社1992年

p.102
サンカの種類だが、セブリ、ジリョウジ、ブリウチ、アガリという四種に区分されると言う。
1のセブリは、「野外に小屋を作り魚を捕り、ササラ・箒・籠・草履などを作りて売る」者で、これが通常のサンカである。その数は最も多い。
沖浦和光著 「幻の漂泊民・サンカ」文芸春秋 2001年

 サンカ、もしくは河原の漂泊民が、彼らのテリトリーに、彼らの仕事に使える植物を、植えていたわけだ。

彼らの生業として、箕や籠を編んでこさえて行商するとか、
   :材料はシノ竹や姫真竹、やまふじなどだね
屠殺を生業として皮革業を行うとか、
   :屠殺に「牛殺しの木」が出てくるわけだ! 川ヤナギもソレかもしれない。

... 以下つづき...

〓〓〓 EP 〓〓〓

 「牛殺しの木」は北海道には自生してはいないと思われ。
 さて。
【上の情報にある、静岡県大井川方面で「牛殺しの木」と呼ばれている植物の種類は何ですか?】

 その植物の幹を、ハンマーの柄として販売している業者はありませんか?

●●●小玉7●●●

 もひとつ、検索結果の中から、「うしごろしの木」について、ソレが何かわからない状態で言及しているページ。
●ネット 有限会社豊測量 よくある質問

■境界木
 多摩地区、山梨県で一度探した事があります。地域の慣習によりますが、私の経験上、最も多いのは『桑の木』で次に『うつ木』このうつ木というのは木の種類を示すものかは不明ですが、農耕地に多いですね、その次に『さかき』ですね、また『お茶の木』というのもあります。やはり自然にはない木を植えるのが多いようです。
 山梨県で桑の境界木について地元の方にお伺いしたところ、桑の木というのは極端なはなし、切ってしまっても、数年経過してもそのまま腐りにくいのだそうです。
 一度山梨の境界確定の時、「もう何年か前に間違って刈っちゃったけど桑の木残ってるから・・・」というので、おおががりな伐採作業と捜索作業末、桑の木を見つけたことがあります。
 実際測ってみたら、むかしの公図にピタリと符合するではありませんか!これには驚きました。
 こんな事もあるのでなかなか馬鹿にしたものではありません。
 余談ですが、境界木には地域によっては「ねじり木」、「結び木」というのもあるそうです。
 呼び名もさまざまで『うしごろしの木』という裁判例があるのには驚きましたが・・・

 驚かれてしまっています。
 境界木の名前がうしごろし、なのではなくて、牛殺しの木が、境界に使われていたのだと思われ。

 「うしごろしの木」は、境界にふさわしかったでしょう。
 マージナルな人々が、屠殺に用いる木ですから。 そういう、いろいろな意味で。

 上掲引用の中に見える境界の「桑の木」。
 「桑の木」と言えば、今度はこれ「首切れ馬伝説」を思い出したり。

    佐々木高弘「記憶する〈場所〉 - 吉野川流域の「首切れ馬」伝説をめぐって」
    (所収:「記憶する民俗社会」

 首のない馬の姿をしたモノノケが、ほかならぬ「境界」を走り抜ける。
 その舞台には、「東桑上」や「桑島」などの養蚕にまつわる地名が登場する。
 そして古来よりよく知られている蚕と馬の密接な関係…。




メタル

追記2008/08:
コメント欄で紹介いただいた九州のお店「猪原金物店」のマップを置いておきます。


大きな地図で見る
[カテゴリ 科学に佇む2006年] : 2006年09月23日 
* * *

→ 上掲のお話についてのコメント

1549 #- コメントアンカー nanashi さんのコメント 【2006/09/26】

カマツカかと。
ウシコロシという和名があります。

0755 #MJWiGxv6 コメントアンカー 雨崎良未 さんのコメント 【2006/09/27】

おおっ。そうか!
濁点を取って検索するという手を思いつかなかった。orz

「ウシコロシ」ならたくさん情報が出てきますね。ありがとうございます。

バラ科:カマツカ(鎌柄)
  ・落葉低木 北海道〜九州、朝鮮・中国に分布
  ・丈夫で折れにくい あまりの硬さにのこぎりの歯が欠ける
  ・枝を鎌の柄に することから名付けられた
  ・石筒(石工用ハンマー)の柄に用いる(ほかに南天やグミの木も柄に使える)
  ・太鼓のばちに最適
  ・よくしなるのでムチ(牛追い棒)に用いられた

ウシコロシ
  ・枝が柔軟で、牛の鼻輪にするから
  ・この木で牛の鼻に穴をあけたから
 和名の由来はこの2説(動きを殺すからウシコロシ)、とされているようだが、それで「コロシ」となりうるのか、ちと腑に落ちきらない。
 もとより「カマツカ(鎌柄)」なので、やはり屠殺用のハンマーから、という線が濃く思える。

 古来、畜獣の屠殺にはどんな道具を用いていたのか。
 ハンマーで頭骨を打ち抜いたという図も想像し得るけれど、皮革業に於いては「革をなめす」材料として馬や牛の(さらには人間の)脳漿が貴重な材料だったわけで、頭骨を打ち抜いた場合、「脳漿を採取するのに便利」だったのか「脳漿がこぼれてもったいない」みたいなことはなかったのか、どうなんだろう…。
 屠殺には儀式が付帯しやすいので、そのあたりのプラマイはさしおいても殺し方はこれ、みたいなコダワリの中にあったかもしれないけれど。

 屠殺に用いる木だからこそ、牛を御する鼻輪にする、という呪術的意味合いからきた使用法なのだという可能性もありえるし…。

いやそれより 肝心の「販売サイト」が見つからない…。
北海道にも自生しているってことは、山まで刈りに行かねばなんないのかな。
石山あたりの石工さん方面にたずねてみるほうが早いのかな。

あ、これはなんだ。
http://plaza.rakuten.co.jp/midorinoyama/diary/200601220000/
 ・シデとも言う
 ・年輪のきめが細かく硬いので備長炭クラスの良いスミが採れる
 ・ハンマーの柄によい
 ・この木でこさえた槍で牛の眉間を突くからウシコロシ
(ウシコロシの別名にシデがあるとする情報は他サイトには見あたらない)
現場の伝承は又聞き流言より使えることがあるが… この場合はどうなんだろ。


1715 #81/lD5GQ コメントアンカー はたや さんのコメント 【2008/08/20】

はじめまして。
「牛殺し」で検索してこちらに来ました。

仕事で「石屋玄能の柄」を探しているところでした。

元来は通称「ネソの柄」という自然木もので、昔は在庫していたこともあったのですが、最近あまり流行らないようで。

木の種類はわかりませんが、まだ扱いはありますよ。

こちらは逆に「鋼線入りのゴム柄」を探しているところです。

1854 #cKjIa1.Y コメントアンカー amasaki さんのコメント 【2008/08/20】

 ご教示ありがとうございます。ハツリ屋さんに伝えておきますね。

 ツウな現場の道具で、ネット上でたぐりにくい品物はけっこうありますね。
 老舗の小さな業者を統括して、一括してオンライン窓口で販売してくれる業者さんがあれば便利なんでしょうけれど。
 いくらロングテール商売に適したネットだとはいえ、職人交渉や商品管理、仕入れ手配等の手間が業態的にペイしないのかもしれないな、などと思いつつ。

0038 #ec/VABik コメントアンカー ウミユスリカ さんのコメント 【2008/08/24】

はじめまして。

以前長崎県の町立の郷土資料館で学芸員をしていた者です(現在札幌市在住)。

「牛殺し」の棒ですが、おそらくカマツカの材だと思うのですが、長崎県島原市の老舗金物店である「猪原金物店」で扱っているのを見たことがあります。

0645 #cKjIa1.Y コメントアンカー amasaki さんのコメント 【2008/08/24】

おおせの「猪原金物店」は
http://www.inohara.jp/ ですね。(中身が不思議なサイトだ(@_@;))
情報ありがとうございます。ていうかすごいなー、日本列島縦横だ。

1549 #- コメントアンカー ウミユスリカ さんのコメント 【2008/08/29】

そうそう、この店です。

サイトからだとわかりにくいのですが、この店は地域の昔からの景観資産などを活用した地域づくりのコアになっている店なんです。

1041 #cKjIa1.Y コメントアンカー amasaki さんのコメント 【2008/08/30】

本文の末尾にお店のマップを置いておきました。
グーグルマップにはストリートビューのお店外観まで表示されますね。島原駅のすぐそばかぁ。

0103 #- コメントアンカー 関東圏で辺牛殺しの木販売店 さんのコメント 【2008/12/13】

茨城にある石材加工用の鑿やハンマーを扱ってある店。名前は忘れた。場所はつくば市の北部?筑波山がたしか近かった。

そこで牛殺しの木を買った。

1822 #MkgAoDiE コメントアンカー 石工 さんのコメント 【2009/02/11】

自分は牛殺しの木を静岡県の某所で年に一回採りに行きます。
何故、某所と地名を伏せているかとお思いでしょう。其処は、立ち入り禁止区域だからです。
買えば、1m50cm程度で200円位する牛殺しの木
稼ぎは良いですが買う気は有りません。W
年間に20本前後変えるので捕まる可能性はありますが、採りに行きます。
仲間の石屋も皆、そこで採ってます。後は、自力で探して下さい。

1038 #nxvDvu7A コメントアンカー 石拾い趣味 さんのコメント 【2009/02/21】

石拾いが趣味で子供が小さい頃から一緒に茨城県内の鉱物採集に出かけておりました。石拾いに興味の無い子供のために雑木を鉈で切って刀(木刀)を作ってやるのが毎回の決まりでした。小さい子供に都合の良い太さの木で作っているうちに特定の木が丈夫で堅いことに気づきました。その後はいつもこの木で木刀を作るようになりました。その丈夫で堅くバネの強い木が気になり、植物図鑑で調べると鎌柄(ウシコロシ)らしいことが分かりました。茨城県の低山の稜線上ならみつけられる筈です。
大ハンマーについて検索してこちらを見つけました。
狩猟をやっている私の意見ですが、普通動物を屠殺する場合には喉の頚動脈か、または暴れてそれができない時には脇腹から心臓を突いて処理するのが一般的だと思います。肉の臭みを無くすためには血抜きが原則だからです。生きている牛の頭を固定して大ハンマーで一発で叩き潰すのはかえって手間が掛かる様に思えますが・・・。
私は牛の鼻輪を取り付ける為に鼻に穴をあけている様子があたかも牛を殺している姿に似ているからウシコロシと呼ばれる様になったのかも知れないと解釈しておりました。また、もしかしたら乾燥したこの木なら先をとがらせて脇腹を突くことも出来たかもしれません。

1122 #MJWiGxv6 コメントアンカー 雨崎 さんのコメント 【2009/02/21】

>石拾い趣味さん

 情報ありがとうございます。

●頭骨を打ち抜く例
『世界屠畜紀行』という本だったか、うろ覚えですが、現代の屠畜ではウシの頭骨を機械でスパン!と打ち抜いて即死させてから血抜きをすると紹介されており、そして我が家ではウシコロシ=ハンマー。
ゆえに上掲本文のように記しておりました。

●死体の用途
狩猟では薬膳など肉の需要が大きかったこともあり扱いの段取りが丁寧だったようですが、家畜であるウシを「食用に殺し」ていたかどうかは定かではありません。ウシの場合は皮や脳漿の需要はあっても、もしかしたら肉の流通はごく限られた範囲のみで、市場には狩猟肉ほどは出回らなかったかもしれません。このあたりは勉強不足でなんとも言い難いのですが、マタギさんたちがウシを扱っていたかというと、なんか違う気もするんですよね。山の神の管轄でもないし。
牛馬を河原者が扱うとしても、おそらく屠殺ではなく、自然死・病死・事故死が主だったのではないかと。
このあたりどこかに資料や先見があればいいんですが。

●ウシの動きを殺す鼻輪だから
この解釈はきれいでいいですよね。おどろしさがなくて好ましい。

●カマツカの写真
http://shinrin.cool.ne.jp/sub143.html
http://www.rokko.kkr.mlit.go.jp/rokko/vegetation/sp/073/index.html

●日本へのウシの導入は仏教伝来とほぼ同時期(?)
●初期から殺生戒の縛りで牛肉食は少なかったと思われ
●山の木であるカマツカが平地や河川の境界に植えられている
●河原に漂白する民は、生業にカマツカの木を必要としたらしい
●屠殺や牛馬の解体は河原者が行っていたことが少なくない
●牛馬の処理にカマツカが用いられていた可能性
 そして、もちろん牛馬処理をしない人は、カマツカをウシコロシには用いることはない

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