[ EP: 科学に佇む心と身体 ]

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強姦の進化:人はなぜレイプするのか

カテゴリ[科学に佇む2006年] 2006/08/10
 きわどい新刊です。(原書はもう6年前の本だけど)
 どうせ出すならもっと早く出しておけばいいのに。damn
 出ないもんだとすっかり諦めもする年月。
 6年もたちゃ、いいかげん海外での祭騒ぎも遠い思い出にセピアってる。
 すでに既刊各種邦訳書で当時の昔話もいろいろ読める状態になってたりする。

人はなぜレイプするのか
『人はなぜレイプするのか 進化生物学が解き明かす』

 ランディ・ソーンヒル&クレイグ・パーマー
青灯社 (2006/07)
 [ Amazon ] [bk1]


 「ヒトにはなぜレイプする個体がいるのか」
にさえせず、
 「人はなぜレイプするのか」
とするセンスの悪さ…(もしくはあからさまな売名煽動&喧嘩売り?)

 そもそも原題は「A Natural History of Rape(強姦の自然史)」。

 あー。「青灯社」ってできたばかりの出版社?
 青灯社が出した本は、覚えている限り一冊も読んだことがない。
 …ああ。 設立してまだ2年目 らしい。
 うわ。
  既刊リスト が…。
 冒険してまんなぁ。komatta

●●●小玉7●●●

アンカー 【既刊書で読める当時の話】

 覚えている限りでは以下のとおり。
 ほかにも掘り返せば数あると思われ。

「進化」大全
「「進化」大全 ダーウィン思想:史上最大の科学革命」

 カール・ジンマー著 光文社 2004/11
 ※ 「カール・ジンマー」
 原書:2001年 Evolution

p.383-384 大意
『レイプの自然史学』という本で彼らはレイプを一つの適応的行動であると主張した。
モテない男が自分の繁殖成功度を高めるにはこの強姦が有効なのだと。
速攻「ネイチャー」誌上で進化生物学者二人:ジェリー・コインとアンドリュー・ベリーが反証を展開。
「ある現象に関して、別の説明のほうが説得力がある場合でも自分好みの説明をごり押しするその姿勢は、著者たちの旗色を鮮明に映すものである。『レイプの自然史学』は、科学ではなく、単なる主張にすぎない」

ネイチャー掲載のジェリー・コインとアンドリュー・ベリーによる「A Natural History of Rape」論駁とその論争
2000/03  AUGUSTA CHRONICLE  Two scientists assail book on the biology of rape
ジェリー・コインとアンドリュー・ベリーの反論内容
2001/06 Rape as an adaptation ? Coyne-Berry
ドーキンスvs.グールド
「ドーキンスvs.グールド 適応へのサバイバルゲーム」

 キム・ステルレルニー著 狩野秀之訳 ちくま学芸文庫 筑摩書房 2004/10
 (原書2001年 Dawkins vs. Gould

p.153-154
進化心理学の研究のなかには、馬鹿馬鹿しく思えるものがあることは確かだ。たとえば、ランディ・ソーンヒルのレイプについての研究などはまったく説得力を欠いている。性的に疎外された男性は、ある状況下では、レイプ行為によって適応度を高めることができるとソーンヒルは主張している。だが彼は、性的暴力が適応度に及ぼすコストを考慮しようとすらしないし、レイプヘの志向が適応であるというアイデアが引き起こす明白かつ深刻な問題に目を向けようとしない。それを考えると、ソーンヒルの『レイプの自然史(Natural History of Rape)』は意図的な挑発にすぎないと判断したくなってくる。

 で、すなおに「意図的な挑発である」と判断して、青灯社は「人はなぜレイプするのか」という煽動的タイトルで商品にしたわけか?

... 以下たくさんのつづき...(11日微妙に更改)

〓〓〓 EP 〓〓〓

アンカー 【自然主義の誤謬】

 強姦犯は、出産年齢の女性だけでなく、男性、女性を問わず、子供も老人も襲う。強姦は、戦争や少数民族を服従させる際には、「武器」として使うこともでき、実際に使われてきた。それが、進化の上での何らかの役割を果たしているという提案は、不快であり、不必要だ。
 〜「巡査どの、これは遺伝子のせいなんです」  進化心理学の乱暴な議論 強姦の歴史
2000/07 【日本語記事】 ネイチャーバイオニュース

 筆者は「ネイチャー」誌のヘンリー・ジー。
人間の本性を考える
「人間の本性を考える 心は「空白の石版」か 中」

 スティーブン・ピンカー著 NHKブックス 日本放送出版協会 2004/08
 原書:2002年 The Blank Slate

p.55
 自然主義的および道徳主義的誤謬の擁護者は架空の論者ではなく、なかには著名な学者や著述家もいる。
 [ 〜中略〜 ソーンヒルの文章に対し、フェミニスト研究者のスーザン・ブラウンミラーからのツッコミに見られる誤謬 ] 
もし何かが生物学で説明されると、それは「是認」されたことになり、適応的であることが示されると、「威厳」をあたえられたことになるというのだ。

 レイプが「適応的である」とか「戦略を用いて成功した」とか。
 強姦が「役割を果たす」、繁殖率アップに「貢献する」。

 いくら「科学的に正しい」研究であったとしても。
 まちがった解釈を煽る表現をするなよ。chitchit
 価値判断を必然的に巻き込むような語句表現を用いておきながら、「読み手が勝手に → 『自然主義の誤謬』 で曲解しているだけなのだ」とのたまい却下する。
 戦略がどうのと言いだした先達にしろ今の研究者にしろ、誤解を招かないほうがおかしいんであって、市井に合わせた表現を勘案するようなセンスはなかったのか。みたいな。

 「適応的」などと言わずにさあ。
    → 2004/08 セックス依存症komari
に置いたような表現は研究者的にはどう? ダメすか?

挿画


 …もとより。
 進化に関しては科学側は自画自賛をやめるべきだ。
   進化してきた我々は素晴らしい。
   こんなに一所懸命生き延びてきた種なんです。
 進化という「ナリユキ」の結果にバラ色ナルシスムな自画自賛を塗りたくる科学番組、市井、そしてほかならぬ科学側の連中。

 進化に自画自賛を投影し続ける限り(進化の結果は素晴らしいだの、生き残りは勝者だの、そして神や母なる自然のみわざだの)、「強姦が進化の結果」「殺人が進化の結果」「浮気が進化の結果」であることが「ありえない」状態で吹き上がられるわけで。
 善悪を越えて、おのれの立場を善とすることさえも捨てて、市井を誤解させない語句を用いて進化現象を叙述しろよ。blaming
 これは進化を誤解する側に対してではなく、進化研究者側とメディアに対して言っている。

〓ガラス棒〓

 以下は問題の本が出るはるか前の話。
 強姦本を出す前にすでにソーンヒルらは何度も同様の論戦の戦火をくぐってきているわけで。
性の人類学
「性の人類学:サルとヒトの接点を求めて」

 高畑由起夫編  1994/05  世界思想社
第8章 生物学とフェミニズムの交錯 - 霊長類研究を中心に 宮藤浩子

p.255-257 大意
「レイプは男性の代替繁殖戦略の一つ」という、社会生物学がすべての行動を説明できるという確信にもとづいた無邪気で危険な研究。
 あらゆる現象の正当性を説明しようするような一連の研究のなかでももっとも衝撃的なものが、ソーンヒルの「レイプ」研究。
 フェミニストから猛烈な攻撃を受けたソーンヒルの論文。
 人間社会で明確な価値観が付随したレイプということばを生物の行動説明に用いるという顰蹙さ。
 繁殖だけでヒトの性行動は説明しえない。


タブーの謎を解く
「タブーの謎を解く:食と性の文化学」

 山内昶(ひさし) ちくま新書 筑摩書房 1996年

p.57
社会生物学者のソーンヒルによると、親子間、キョウダイ間のインセストを規制するルールをもたない社会は、世界の一二九民族のうちで、実に五六パーセントにも達しているらしい。


〓ガラス棒〓

アンカー 【原書情報と書評】

 海外サイトには丁々発止の痕跡や誤読、挑発、だだこねなど賛否両論がこんなに。
 年月が経っているのでこれ以外に消えたページも多々。

 → 『性犯罪の洋書』

◆90表紙
原書 A Natural History of Rape : Biological Bases of Sexual Coercion

レイプの自然史 生物学から見る強引な生殖行動
 by Randy Thornhill, Craig T. Palmer
 (January 2000)  MIT Press
 書籍情報と書評:アマゾン  

電子書籍バージョンとユーザ評

性犯罪研究 全ての男は潜在的な性犯罪者
2000/02 Salon.com Born to rape?
上の記事へのレスポンス集:進化は、強姦者の生き残りを確実にしたか?
2000/02 salon.com Has evolution ensured survival of the rapists?
 Plus: Kiddie sales force is exploitation; hot and bothered over RealDolls sexdolls.

強姦者の末裔 By FRANS B. M. DE WAAL フランス・ドゥ・ヴァールによる書評
2000/04 NEW YORK TIMES Survival of the Rapist

ダーウィン信奉者的、強姦、性、戦争の見方
 〜ジェーン・グドール・リサーチセンターのCraig B. Stanford
2000/06 AMERICAN SCIENTIST July-August 2000 Scientists' Bookshelf Darwinians Look at Rape, Sex and War

進化心理学的おとぎ話をごろうじろ 悪行と男性
2000/09 Evolution / THE NEW REPUBLIC The fairy tales of evolutionary psychology.  Of Vice and Men

2000/11  Animal Behaviour Vol. 60, No. 5, pp. 705-707

ランセット掲載の書評
2001/02 THE LANCET Volume 357, Number 9257  Debating rape
2001/02 THE LANCET Volume 357, Number 9257 Dissecting Room Debating rape

リアル・オーディオで聞ける著者講演:ソーンヒルが語る「強姦の理論」 48分
2000/01  npr.org Theories of Rape RANDY THORNHILL  Audio

●●●小玉7●●●

 すでになんぼか はてぶ 入っているので旧聞かもしれませんが、こちらもご参照ください。
 ●ネット 訳書出現 人はなぜレイプするのか―進化生物学が解き明かす  〜shorebirdさん





メタル
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* * *

→ 上掲のお話についてのコメント

1701 #z8Ev11P6 コメントアンカー momoko さんのコメント 【2008/09/14】

このエントリではソーンヒルや進化学/人間社会生物学への言葉遣いに焦点が当てられているみたいだけど、言葉の問題なんでしょうか。

他人の言説に(意図的にしろ無意識にしろ)政治的色合いや道徳的色合いを付けて解釈しようと熱情を持っている人がいるかぎり、どんな用語を用いても「強姦の進化」については誤解される余地があるのではないかな。そしてそう言う人たちが声高にわら人形批判をする限り、多くの人の誤解は深まるのではないだろうか。というか、声高な批判者だってほとんどは本書を読んでないよね。「性の人類学」の宮藤さんの主張なんかはまさに印象批判だ。用語を慎重に選ぶくらいで問題が解決するとは思えないな。

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