[ EP: 科学に佇む心と身体 ]

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美人って「平均顔」のことでいいの? 中間顔研究にまつわる誤謬

カテゴリ[科学に佇む2006年] 2006/08/04
  強引マイウェイ翻訳でおなじみの ●ネット山形浩生氏的にはサトシ・カナザワはお初だったらしい。(あちらさんにはツッコミ記入欄はないのかな)

 サトシ・カナザワ →2004/05 『進化は美人を賢者にするか』 Satoshi Kanazawaについて

 日本側の元ネタはこのあたりから
2006/07 【日本語記事】 スラッシュドット ジャパン | 美しい親からは女の子が生まれる

 これ受け手的には擬似科学か否か
   ●ネット「遺伝学を巡り意見が真っ二つに割れております」 〜 2006/08 人間外部
とのこと。

 仕事がいっぱいいっぱいなので半端な亀書きでごめん。

●●●小玉7●●●

●右画
 そもそも、サトシ・カナザワさんや翻訳紹介側さんがたが、安易にこれを「美人」と称して巷にまで持ち回るので、ややこしなってるのではないかと。

 進化心理学の連中が「美人」をいじる場合、実際は「外見的魅力の平均」を指す場合が多く、「魅力の平均」は「その人種の平均」だったり、「見た目が好ましい」とされた顔の「平均」だったりしている。
 「平均」はあくまで「凸凹全部ならしてみれば」であって、個人の好みの差はつぶされる。

 で、なんで「美人」として平均顔をもてはやしたがるかというと、
   ・「平均的」な外見を持つ個体
   ・平均からはずれた特徴を持つ個体
これを比較した場合、

  平均からはずれた特徴を持つ個体は病気や障害を持っている率が高め
      ↓
  「平均から大きくはずれた外見を好む」個体は、病気を障害を持っている伴侶を選ぶ率が高め
      ↓
  「平均から大きくはずれた外見を好む」個体と、
  平均からはずれた特徴を持つ個体は、繁殖率で劣ってしまう

だろうので、いきおい現存者がはらむ「好ましさ」が「平均値」のほうに偏りがちになり、すなわち「好ましさ」が集中する「平均的外見」を、平均的な「美」とみなし、それがなしくずしに
  「美人やハンサム」の話だ
と持っていってしまわれているわけで。

 ※ 「繁殖率で劣る」を、イコール「不幸や劣等」とするのは正しくない。
   「繁殖率で劣る」=「不幸や劣等」という誤謬が蔓延しているのもこの分野。
●● 『幸福になる科学的方法』
●● 『世界の幸せ比べ:幸福度の各国間比較』

●わかるかな?
 女性の「平均顔」日本・韓国・中国 どれがどれクイズ goo
 ●ネット 2006/03 Dienekes' Anthropology Blog: Chinese, Korean, Japanese

魅力的な顔は、男か女か判別されやすい
2006/02 Perception. 2005;34(12):1459-74. The role of facial attractiveness and facial masculinity/femininity in sex classification of faces.
2006/02 Discovery Study: Sexual Orientation Affects Perception

女性はシンメトリカルな男性ダンサーを好む傾向
 女に対しては男はそのへんあまり気にならないらしい まるでレックじゃん
2005/12 news@nature.com Dancing advertises sexual quality
2005/12 EurekAlert Rutgers researchers scientifically link dancing ability to mate quality
2005/12 【日本語記事】 Nature@日本 魅惑のリズム:性選択におけるダンスの役割

”審美顔”の進化心理学
2005/12 Dienekes' Anthropology Blog: Evolutionary psychology of Facial beauty
2005/12 Annual Review of PsychologyVol. 57: 199-226 (doi: 10.1146/ annurev.psych.57.102904.190208) THE EVOLUTIONARY PSYCHOLOGY OF FACIAL BEAUTY

2004/11 Evolution and Human BehaviorVolume 25, Issue 6, Pages 355-370 Populational differences in attractiveness judgements of male and female faces: Comparing British and Jamaican samples
 I.S. Penton-Voak, A. Jacobson and R. Trivers トリヴァース

新生児は美しい顔がお好き
2004/09 BBC News Newborns prefer beautiful faces
2004/09 New Scientist Babies prefer to gaze upon beautiful faces

ヒトメスの伴侶選択とオス顔の左右対称@受胎可能期
2002/09 Animal BehaviourVol. 64, No. 2, August 2002 Are human female preferences for symmetrical male faces enhanced when conception is likely?

2001/11 cnn.co.jp 美人はごちそうや麻薬と同じ 男性の脳内反応
2001/11 EurekAlert! Study finds beauty can be its own reward

欧州各国女性の平均顔
2006/03 ●ネット Composites of Greek and European Female Athletes by Dienekes Pontikos

'中間顔'が好感与える…目・鼻・口完全に対称であればあるほど健康
 丈夫な連れ合い選ばれようとする遺伝的本能
2002/08 中央日報@韓国


追記:●ネット 2007/01 合成顔ギャラリー:人類学的顔研究(日本人学生の平均顔)田村智

〓ガラス棒〓

 で、これらはあくまで「平均」の話をしている。
 (上の中央日報の「中間顔」という表現はいいな)
 でもって、「平均」と「現場の実態」はけっこうかけはなれていたりするわけで。

●女が選ぶのは美男ではなく…
 育ての父親(たとい血のつながりがない父親であっても)と似た容貌を伴侶に選んでいる
  →2004/04  『育児のうまい相手を選ぶには 父さんあなたは偉かった 』


... 以下つづき... 関連情報を追記(2006/08/04)

〓〓〓 EP 〓〓〓

見慣れた顔ほどいとおしく
2005/08 EurekAlert Brain remembers familiar faces when choosing potential mate

見た目の近しさが醸す信頼感は、魅力とはまた別の話で
2005/03 BBC News Same face builds trust, not lust

見慣れた顔こそ親しげに されど異性の顔ではやや疎げ
 そこにはインセスト回避機構が作用している気配
2004/09 BBC News Familiar faces seem more friendly

他者に対するルックス評価は知人か見知らぬ人間かで異なりうる
2004/04 University of Wisconsin PHYSICAL BEAUTY INVOLVES MORE THAN GOOD LOOKS

生物学的ネポティズム&ルックスの進化心理学
 見た目が自分に似ているほうの人の言うことをひいきしがちな私たち
2002/06 Ananova Humans more likely to trust those who look like themselves
「赤ちゃんになった私」はかわいいか?  人間は自分に似た人が好き
2002/07 【日本語記事】 ネイチャーバイオニュース

顔の好み、親の年齢に影響される
 高齢の両親から産まれた女性、オヤジに抵抗少なめ
 男がオバサンの顔を好むかどうかは母親の年齢に相関
2002/05 Proc Biol Sci. 2002 May 7;269(1494):873-80. Facial attractiveness judgements reflect learning of parental age characteristics


●●●小玉7●●●

 「魅力の平均顔」=「美人」=「繁殖成功度」=「しあわせ」
 ここにならぶイコールのどれが正しくどれが飛躍なのか。

 端的に言えば、「美人、美男」は欲をそそりをするが、信頼は保証しない。
 「似たものどうし」は、信頼と安心をかもしだし、人間関係補強に貢献する。

 「美」にそそられた欲の結果が繁殖になることはあるが、「幸せな家庭」を望むなら、「美」よりは「似たものどうし」がカギになってくる。morning

 いいドラマが流行ってくれたよね。cuteangel
   ●ネット 『ブスの瞳に恋してる』

〓ガラス棒〓

 この手のと似た誤謬に、前世紀末に流行った「免疫の型でしあわせな恋愛ができる」誤謬があったよね。
  → 『幸福にまつわるよくある誤謬:法と遺伝と進化心理学』
  →情報庫: 「恋愛」 恋愛遺伝子で相性がわかるか?

〓ガラス棒〓

 加えて、「美の基準」は各々の集団の規範に左右されること多々。
 メークもファッションもしょっちゅう流行りすたりまくってますし、メークやファッションをよっこしても「美人」タイプは時代時代で揺らいでいる。
 繁殖適応度も、時代によってマッチョな女、優しい男、いろいろ起伏変遷しております。
科学なポッドキャスト:美しさの科学 【podcast 音声】【英語】その3MP3ファイル 5分
Science of Beauty- Part 3 Discovery Science Channel
   魅力の力学
   カメラマン、メイクアップアーティスト、ヘアスタイリスト…
   進化心理学的には 美=若さ
   「日本を見ろ、コギャルが西海岸みたいなファッションだ」crazy
   美の文化的多様性


追記:
●女性における眉の位置と魅力には大きな多様性
2008/03  Dienekes' Anthropology Blog Eyebrow position and attractiveness in females
 女の眉、どんな位置と形が魅力的なのかは、見る人の年齢しだい。
 「理想の眉」は、過去の数十年間だけでもえらい変化しています。


 「平均」に固執した上にそれを「美」だとしてぶちあげると、現場感覚から乖離して冒頭のように擬似科学扱いされるてぇわけで。

〓ガラス棒〓

 さて、問題の元ネタに戻る。
 「美しい親からは女の子が生まれる」
 これはつまり、
 「平均顔の個体は第一子に女を産みがち」

 女を産みがちである条件にはこれまでどんなものが沙汰されていたか。chitchit
 これを見てみよう。

概して「良い条件に置かれた女性」は男子出生率が高め。
 ●栄養が足りているお母さんは男の子を孕みやすい
 ●暖かい土地では微妙に男の子が産まれやすい
 ●独居より同居で男子を生む確率が微妙に高め

ストレスを受けている女性、逆境に置かれている女性、不安を抱えている女性は、女を産みがち。
 ●経済状況が新生児性別も左右 ストレスを受ければ男児出産率が減少

裕福=良い環境=男出生多め 貧乏=逆境=女出生多め
なんでかというと、男児は女児より逆境で死亡しやすいため。
 ●お偉いさんは男の子の出生率が多め  庶民は女の子の出生率が多め
  これは進化的に適応的なのです
 ●悲観的な女性が産む子供は女の子  将来を楽観視している母さんは男の子をはらみがち
 ●女の子をご希望であれば春にどうぞ 秋は男の子を受胎しやすい季節
  男の胎児は逆境に弱め  ゆえにサバイバルが難しい季節には男を多めに受胎する

  詳しくは →2004/11 『男が欲しけりゃ女を大事に:男女産みわけ性淘汰』


 ということで、ここまで見ると、あっさり以下のような結論が出てきうる。

 平均顔の個体は第一子に女を産みがち。
   ↓
 平均顔(美人)のカップルは、女子を産みがちになるほど当初逆境ストレスのもとにあるのか。不和なのか。
   ↓
 美人のカップルは、美人ではない場合と比較すると、見た目にそそられて勢いでくっついただけのケースが多いため、ストレスの多い結婚になりがち。
   ↓
 美人のカップルは離婚率が高いので二人三人とまで作らずに別れちゃったりして、結果「第一子が」、という話になっちゃってんじゃないのぉ? みたいな。heehee

 美人カップルであっても、裕福で安定した関係(妻にとって逆境ではない生活)なのであれば、男の子の出生率も普通でありうるわけで。
 「はてな」んとこの 「え、じゃあ、なんでベッカム夫妻んとこは男ばっかりなんだ…」というツッコミもむべなるかな。

 元記事のカナザワの見解では、
美親が女を産むのは「容姿の美しさ」を最大限に生かせるのが「女性」だから。
平均女性の容姿が平均男性の容姿よりもより美しいのは、美しい親がより多くの美しい女子を作り出した結果だから。
 〜2006/07 スラッシュドット ジャパン「美しい親からは女の子が生まれる」

であるとのこと。
 いかにもこれは「彼の趣味」が丸出しな解釈なのでありました。

挿画

同日午後追記:サトシ・カナザワに関するほかの記事・論文。
 なんかものすごいこの路線で突っ走っている人物だということがよくわかる。

●図体のでかい親からは男の子が産まれがち
2005/03J Theor Biol.2005 Aug 21;235(4):583-90. Epub 2005 Mar 31.  Big and tall parents have more sons: Further generalizations of the Trivers-Willard hypothesis.  〜Kanazawa S.

●若い女とのつきあいが多い職場、男の離婚率が高くなる
 女生徒を教える男の先生、離婚しやすい 〜Satoshi Kanazawa
2004/05 FuturePundit: Humans Maladapted To Relationships In Modern Society?
2004/05 The Age School for scandal

 これはなんだろう。 逆境で男児の出生率が高いという結果を出しているぞ。whoa

●夫から暴力を受ける妻は男の子を産みがち
2005/10 WORLD SCIENCE Battered women have more sons, study finds 〜 Satoshi Kanazawa of the London School of Economics and Political Science



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