[ EP: 科学に佇む心と身体 ]

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心理学者の研究倫理がずぶずぶ…

カテゴリ[科学に佇む2006年] 2006/06/05
一部でこれは大変重要な本で、心理学をやる上で大事なことがたくさん書いてあって… みたいな紹介をなされていて、

左◆表紙[ Amazon ] [bk1]
 『事例に学ぶ心理学者のための研究倫理』
 安藤寿康・安藤典明編 日本パーソナリティ心理学会
 ナカニシヤ出版 2005/07



そうなのかと思って読んでみたら、逆の意味で腰を抜かしてしまった。
 なにこれ。
 すごい。
 ものすごい ゆるゆる な印象を受けたんですけど。suji

なぜだろう。

●失敗事例や劣悪な事例を挙げて、それを検証するという体裁にしているからか。
 ダメダメな事例をとりあげて、なぜ何がダメだったのかどうすれば良かったのか考察している、考察の仕方を示している、こんなドツボに陥ることがあるよと示している、けど、お手本はない。どうすれば正解かのような明確な示しはない。

 いや、倫理問題は簡単に答は出はしないものであってこそ倫理問題なんだけど、それだけ(明答のなさ)のせいではなくずぶずぶなゆるさを感じてしまったのはなぜだろう。

●失敗事例や劣悪な事例がマジにダメダメすぎるからだろうか。
 ダメダメすぎる例に対してきっぱりした対策も明答もないんじゃ、ずぶずぶ感倍増?

●昔は存在しなかった倫理問題が、時代の変遷に伴って新しくそれとして立ち現れたことを我々はじゅうぶん考慮していかなければならない、みたいな口上が冒頭の章で述べてあったけれど。
 ということは、まだ心理学者は「このたび遅まきながら倫理考察はじめました」状態???

で、一晩うなされて出た(私的に出してみた)答がこれ。

●そうか、心理学者の「被験者の心知らず」爆裂状態だからちょーダメダメっぽいのか!crazy

 心理学研究において倫理的にダメな事例としていろいろ挙がるのが、「結果的に被験者が怒ったから問題になった例」。
 あいやー。まじっすか。
 心理学者がなすことは、被験者が心理学者に期待するものと齟齬きたしまくりですか。

 なんでこんなことになるんでしょう。
 被験者の心理をあらかじめ想定し損なっている?
 心理学者の心理知らず?
 人間扱いできてない?
 何?
 そして、なんでそれらに対して明答、定石、対策などの基準がずぶずぶなんでしょう。

... 以下つづき...

〓〓〓 EP 〓〓〓

●前口上みたいになっている冒頭の章(序章 研究者倫理とは何か/黒沢香・青柳肇)もなんか読んでいて少し眩暈が。
  「自由意思」の話を出すんですよね。
 「自由意思」とは何か、「自己決定権」とは、の考察もろくに踏まえていないようなぬるぬるのお茶濁しのような述べ方で。
 新しい時代に即して倫理を考えようよと唱道しているこの序章が、まさに「まだ考えれてません」と吐露してしまっているような。そんなずぶずぶな印象。

●編者・安藤寿康氏の筆によるコラムのタイトルが、「行動遺伝学の正義」。
 正義。
 ああ、もう相対的に倫理的に考えた場合どこから「正義」という言葉が出てくるのか。ase2
 まさにそこが、もうずっと前から(いや最初っから?)ズレ続けているような気がする。 
 当該コラム締めくくりのセンテンス、
p.173
そしてそのことに貢献することが, 行動遺伝学のささやかな正義はなかろうかと考えている。
 という悲しい(皮肉な)誤植(たぶん「正義_で_は」の「で」が抜けている)というオチがついている。

●当該書の中、gooと目を惹かれたのが p.208-211の、心理学者はどのような問題について倫理的に厳しく見做しているのか調査結果一覧。
  厳しい:著作権扱い、被験者の人権扱い、被験者への想定外負担
  ゆるい:遺伝子研究、被験者の非人格化、被験者の集め方、研究活動の自由
 ゆるいほうに属する遺伝子研究に該当する設問は以下。
   ・人格関連遺伝子の研究
   ・知能関連遺伝子の研究
   ・反社会的行動や犯罪に関する遺伝子研究
 心理学者的には、これらに関する倫理的抵抗は、少なめだと。
 ふむ。
 これに対してなにをか言わんや。
 何か言いたいお方は、ぜひ当該書をお読みくださいませ。

〓ガラス棒〓

目次:

序章 研究者倫理とは何か 黒沢香・青柳肇
第1章 研究についてどう伝える? 杉森伸吉
 第1章コメント[1]研究がもたらす知見とインフォームド・コンセント 南保輔
 第1章コメント[2]研究倫理の意味を不断に間うことの大切さ 都筑学
 第1章コメント[3]契約としてのインフォームド・コンセント 黒沢香
第2章 どこまでやって許される? 小堀修
 第2章コメント[1]実験者としての礼儀 伊藤義徳
 第2章コメント[2]研究者として当然行うべきこと 丹野義彦
第3章 報告はどうすればいいの?松岡陽子
 第3章コメント[1]家庭訪問による研究での育児相談 近藤清美
 第3章コメント[2]フィードバック・トラブルを予防する二種の手立て 北原靖子
第4章プライバシーはどう守られる?安藤寿康110
 第4章コメント[1]個人情報と「人間の尊厳」 神谷信行
 第4章コメント[2]情報公開への倫理:まっとうな配慮と同意を 秋田喜代美
第5章 研究者とどうつきあったらよいのか? 木島伸彦
第6章 人のものを借りるには? 木島伸彦
第7章 研究結果をいかに表現するか? 安藤典明
第8章 論文はどのように審査されるのか? 杉山憲司

コラム目次
 1研究者がストーカーになるとき 藤永保
 2人間が人間を研究する 古澤頼雄
 3こうして心理学は現場で嫌われる? 上村佳世子
 4縦断研究における研究協力の承諾と分析結果の報告 岡本依子
 5 One-way Mirrorの向こう側 鹿毛雅治
 6日記を1週間持ち歩いた参加者たち 村井潤一郎
 7研究成果のフィードバックのあり方 尾見康博
 8シンデレラ・エクスプレス研究での葛藤 松岡陽子
 9「個人情報保護法」の射程距離 神谷信行
10面接調査などにおける倫理問題の不確定について 川野健治
11クライエントからみたカウンセラーの守秘義務 瀧本孝雄
12縦断的発達研究における倫理的配慮について 菅原ますみ
13行動分析学と倫理 坂上貴之
14行動遺伝学の正義 安藤寿康
15動物行動研究と進化心理学における倫理問題 長谷川寿一
16心理療法の立場から思うこと 大河原美以
17「データ」と「事実」の間 サトウタッヤ
18論文審査は検閲か:ある著名な事例 黒沢香

【第6章 人のものを借りるには? 木島伸彦】は、ほかの心理学者が作った心理学調査の検査項目が、使える場合使えない場合、みたいな。倫理? 異国の検査シートのツカエナイ翻案とか他者の検査の不用意な流用とか、孫引き曾孫引きとか、いろいろずぶずぶな話が。
【コラム1 研究者がストーカーになるとき 藤永保】は、偏執的な内部関係者につつき回され揚げ足とられ大変困りました、みたいな。これは… 倫理問題なのか??? さすがに焦点ずれてないか? 話としては面白いけど。


追記2006/07:
【コラム1 研究者がストーカーになるとき 藤永保】について。
 よく考えると、これは「情報守秘倫理に鈍感な研究者の、事態を軽視した言動の典型」と見えなくもないじゃん…。gakbul
 双方の言い分を精査せんとなんも言えんわな。


〓ガラス棒〓

当該書末尾に掲載の倫理関係URLをメモ置き。
これらの内容が、厳正に見えるか、ゆるゆるに見えるか。
●心理学関連団体の倫理規定●
日本心理学会
  「社団法人日本心理学会倫理綱領」(『心理学研究』68巻3号,1997年,223頁)
日本臨床心理士会
  「倫理規程」( PDF ) 「倫理綱領」( PDF
日本心理臨床学会
  「倫理規程」「倫理綱領」( 日本心理臨床学会倫理規程
日本発達心理学会
  『心理学・倫理ガイドブック −− リサーチと臨床』(日本発達心理学会監修,有斐閣)
日本教育カウンセラー協会
  「教育カウンセラーの職業倫理」( PDF
日本学校教育相談学会
   「学校カウンセラー倫理規定」( PDF
日本社会福祉士会
   「ソーシャルワーカーの倫理綱領」( 社団法人日本社会福祉士会の倫理綱領
日本介護福祉士会
   「倫理綱領」( 日本介護福祉士会倫理綱領
日本催眠医学心理学会
   「倫理綱領」( 日本催眠医学心理学会倫理綱領
日本産業カウンセラー協会
   「個人情報の取り扱いについて」( 協会事務局からのお知らせ
日本行動療法学会
   「倫理綱領」(案,2003)(リンク切れ、今現在「倫理綱領」は存在しないわけなのか?)

●医療と看護の倫理規定●
日本医師会
  「医師の職業倫理指針」( PDF
日本看護協会
  「看護者の倫理綱領」( PDF
  「ICN看護師の倫理綱領」( PDF
  「ICM助産師の国際倫理綱領」( ICM 助産師の国際倫理綱領

●ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針●

「ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針」 ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針ホームページ


〓ガラス棒〓

●ところで、心理学の話ではないんですが、昔話を一つ。

 阪大の体育だかなんかの研究室で、子どもの体力とその発達を調べるという長期研究をやっていたんだと思うんだけど、その被験者を、近所の某マンモス小学校の生徒からお選びになられまして。その選ばれた数名の中の一人がたまたま私でして。
 クラスの中の出席番号10と20と30と、てな調子のごくごく無作為ランダムに選んだんだろうと思います。
 もちろん、被験者の了解なし。
 数カ月ごとに「今日は**ちゃん体育の検査がありますから」みたいになんだかわけわかんないうちに阪大につれていかれて、なんか身体にコードぺたぺたくっつけた状態で自転車こげと命令される(据え付けの体力検査用のヤツ)。
 私は当時も今も自転車に乗れないんだが。
 根っからの運動音痴でもある。 (「同調」不得手)
 で、あんのじょう、「このペースで漕ぎ続けて」とか阪大の兄さん姉さんに言われても、そこらのガキンチョと同じペースで漕ぎ続けられるわけもなく、なにこの子異常じゃない、みたいな扱いされたあげく「運動したほうがいいよ、運動不足でしょ」とか言われてわけわかんないまま子供心に異様な不当さを感じた覚えがあったんですが。

 いまは、…どうなんでしょうねぇ。
 なんぼかましになっているんでしょうかねぇ。ijike





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