おいおい、地域のみんなで4800万円も無駄金にしちゃったわけ?
[ Amazon ] [bk1] 「イノシシから田畑を守る おもしろ生態とかしこい防ぎ方」
江口祐輔著
農山漁村文化協会 2003年
おもしろい わかりやすい 的確&イラストがグー
たまたまこの著者さんが、別の番組、数ヶ月前のTBS系日曜夕方(「夢の扉」だったかな?)で特集されていたのを拝見して、ご本人のキャラの高好感度と対処の的確さに感じ入ってこの本ゲット。
説得慣れしている、イノシシ愛にあふれてる、それに加えてわかりやすいイラスト!
説明的確、要領よく実際的にちゃっちゃと片づけていく、現場の行動力。
なにより、イノシシ無関係な人にも面白い読み物になっているのがすごいし。
著者のメッセージは「敵を知れ」。
元々は動物行動や生態の研究者さん、あれやこれやとよく敵の性質を教えてくれる。
みなさん敵を誤解しまくっていませんかと。
もひとつのメッセージは「無駄金にするな」。
冒頭の電気柵@由良町にしてもそうなんだけど、高価な資材も「ダメな使い方」をして「効かないじゃん」と諦められているケースが大杉で。
電気柵@由良町の映像を見た限り、(画面に映ったのがその電気柵なのであれば)電気柵に植物が接触しすぎ。雑草むらがりすぎ。
あれじゃ電気が地面に逃げてしまって、さっぱり効きやしないんでは。
電気柵@由良町は「地面を掘られてくぐられる」のだそうだが、くぐられない設置のコツも、最も効果的な電気柵のセッティングも、当該書を読めばばっちりなのに。
…由良町はまだ江口先生をお招きになったことはないんでしょうか。
ていうか、4800万円はたく前に、この本一冊仕入れておけば…

…由良町の電気柵を設置したのは誰? 専門の業者? 当事者の試行錯誤?
業者だとしたら、使い方・設置方法の指南はなされなかった?
ちょっと検索してみた。
こういうのが出た。
防護柵の設置補助事業 実績 一覧(県単独補助事業) 和歌山県エコ農業推進室
・平成14年 由良町 38戸対象 イノシシ対策の防護柵 全長3,165m ¥3,350,287
・平成15年 由良町 76戸対象 イノシシ対策の防護柵 全長6,870m ¥5,138,385
・平成16年 由良町 25戸対象 イノシシ対策のトタン 全長2,800m ¥2,325,624
イノシシ対策の電気柵4800万円はこれよりもっと昔に設置されたのか。
それにしても毎年かなりの支出。
鳥獣害のページ 和歌山県エコ農業推進室
野生鳥獣による農作物の被害面積の推移(単位不明)
イノシシ:
H10年度 312
H11年度 1038
H12年度 1553
H13年度 310
H14年度 733
H15年度 472
H16年度 460
平成12年以降に減少しているのは、もしかしたら平成12年に電気柵を設置したからなのかな?
で、14年にイノシシが電気柵突破しまくったさらなる対策に、14/15年の防護柵で…みたいな?
でもそれじゃ平成10年の数値は何よ、みたいな。
「びっくりしたのは「過去の被害記録を見せて下さい」と役所に行くと、慣例だか規則だか「5年以上昔の記録は保存していない」と返答されたというくだり。すごい。お役所仕事っ。」
イノシシでも似たような状況だったりするんだろうな…
…コレは何だ?事例11 「電磁式鳥獣害防止柵が威力発揮」 和歌山県由良町
「共生をめざした鳥獣害対策」平成17年9月刊行 全国農業図書
「威力発揮」したらしいけど、地元の評判と違うぞ…?
実際、効果は出ているけれど、「完璧」を期待する住人の思いにそぐわない結果であったので、住民側からは落胆されているとか?
「イノシシから田畑を守る」 は 2003年 の出版。つまり平成15年。
電気柵設置のころはまだ出てなかったのか。
で、設置後、住民に対する”使用方法のメンテナンス”というか、指南フォローがふじゅうぶんなままに放置されている気配が、昨日のテレビに出ていたんだろうか。
設備は「設置すれば効く」わけじゃない。
正しく使わないと効かない。
イノシシ対策が不首尾に終わる原因として、「イノシシから田畑を守る」 では、
・正しい使い方を住民が把握していない
・使い方がまずくて、「効かない」例が出る
・「効かない」情報が不適切にクチコミで広がる
・よけいメンテナンスされなくなる
という悪循環があるので困るよ、との旨、記されている。

クチコミといえば、こういうのも拾った。
その他こまごました工夫 NOSAI全国(全国農業共済協会)各地の鳥獣害被害者が、「こんなアイデアでうまくいきました」報告を持ち寄っている。
おそらく動物行動学者から見れば玉石混合。
「イノシシから田畑を守る」には、
・当初うまく行くように見えても動物がなれてしまって効かなくなった例
・効くかどうか気にしているうちは人も来るので動物は近づかない
効くとわかって安心すると、人が来なくなるので動物が寄ってくる
みたいな事例があげられているし。
クチコミもよしあし。
クリティカルシンキングができてないと、ただのデマになる。

イノシシ対策にはご先祖さんたちも頭を悩ませていた。
いろいろな設備と知恵で、イノシシが作物を食い荒らさないよう対策を立てていた。
が、
明治に入って「肉食解禁」により乱獲で野生獣が激減。
↓
イノシシの害も大幅に減る。
↓
イノシシ対策の必要がなくなる。
↓
イノシシ対策の知恵が伝承されず途絶える。
↓
昭和50年代から急にイノシシ害が増大。
でもかつてのイノシシよけの知恵は失われてしまっている。
という、…なんとも子孫的になさけない経緯があるらしい。
...以下つづき...

著作権利者の許可をもらわずに勝手に使うのはよしましょう。
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著作権フリーのイノシシ画像 
[ Amazon ] [bk1] 『動物民俗 1』
長沢武著
ものと人間の文化史 法政大学出版局 2005/04
この本については 4月の読書 でも評す。
昔の人たちが行っていた対策
・猪垣(ししがき)
「猪垣」の画像集 「猪土手」の例@長野県 ・寝ずの番
・狩り、罠
などが万全の対策であったとはいいきれない。
でも、「どんな対策が有効か」的確な知恵の蓄積が、近代にいったんとぎれてしまってそれきりな気配はいなめない。

イノシシを里に呼び込んでしまう大きな原因の一つとして、「ヤブ」があるらしい。
耕さなくなって草ぼうぼうになった畑が、イノシシのエサも、イノシシの隠れ場所も提供してしまう。
●イノシシ飢饉
「イノシシから田畑を守る」 p.129
今から約250年前の八戸藩領内(今の青森県八戸市周辺)で、イノシシのために15000石の被害が発生し、3000人以上も餓死した、いわゆるイノシシ飢饉である。
ここに挙がるイノシシ飢饉、本来は
猪飢饉 ・ 猪飢渇
(方言によるんだろうけど読み方さまざま:いのししけがじ/いのししけかじ/イノシシけがづ/いのししけがち/いのししけかち/いのししきかつ)
と言うらしい。
このイノシシ害が発生した原因は「地元が焼き畑栽培を行った関係で、休耕中の畑がイノシシのいいエサ場になり頭数が増えた」ということらしい。
休耕中の畑。
ヤブ。
なによりイノシシはかなり神経が細い動物なので、刈り込まれて見開けた場所にはなかなかおっかながって出てこない。
ヤブがなにより心地よい。
冒頭の和歌山県由良町のシーンでも、けっこうなヤブが見て取れた。
イノシシにとって居心地がよくなってしまっているっぽい。

●なぜ電気柵のメンテナンスはないがしろにされやすい
まず、「電気柵の効果」というものが、どういう機序でどう扱うべきなのかが、人心的に把握しにくい(適応的ではない)だろうと思われ。
なんというか、人心に対するアフォーダンス?
わかりづらい。
基本的に、わかりづらいもの、自分たち以外からもたらされるものには、不信がまつわりつきやすい。
それはともかく、まず、電気柵のまわりのヤブを一掃してもらわないと。
ふと思ったんだが、神社の鳥居マークはどうだろう。
もしくはミニチュアの鳥居さん。
ぽんぽん電気柵に沿って置いてみる。
電気柵の杭の上に乗せてみる。
そう、 「粗大ゴミの違法投棄が鳥居を置いたら激減しました」の応用。
鳥居さんが、山神(ししがみ)様を押しとどめてくださる。
鳥居さんのまわりは、ヤブがしげらないよう、刈り清めておかねばならない。
農村的に、高齢者的に、それなりにしっくりくるんじゃないかと。
どうだろ。
やってみて損はないんじゃないかな。
掘り返されない工夫も、「鳥居の世話」にかまけるようになれば自然と気にするようになるだろうし。
電気柵用の鳥居さんのことを「山の雷神さん」と名付けてしまうのも一興かもしれない。

「イノシシから田畑を守る」 のイノシシ先生、江口祐輔氏 関係サイト
専門家からの提言(江口祐輔さん) 山村地域住民と野生鳥獣との共生
イノシシを知ろう 生態を知って賢く防ごう 鳥獣による被害:JAレーク伊吹(滋賀県)
2004 イノシシから農地を守る「金網忍び返し柵」 近畿中国四国農業研究センター
「イノシシ博士」奮戦中 5人、中国地方で研究重ねる 中国新聞
2002〜2003 猪変(いへん) 中国新聞
雑誌『生物の科学 遺伝』2005年11月号 江口祐輔「イノシシ 誤解の多い動物」
●イノシシ料理
なお、「イノシシから田畑を守る」 の末尾では、獲ったイノシシの解体方法とその肉のおいしさがひとしきり述べられている。
『動物民俗 1』のほうにもこれこのとおり。
『動物民俗 1』 p.171
肉の味のよい獣を一般に_しし_と呼んだ。鹿は「かのしし」、猪は「いのしし」、カモシカは「かもしし」と呼んで、味のよい順序では一番がイノシシ、二番がカモシカ、三番がシカで、そんなところから猪は「いの一番」だと言われ、「ししの肉を喰わぬうちは、うまいもの喰ったと言うな」という諺もあるくらいおいしい肉だった。
さしみはもうめっさおいしいんだそうだ(「イノシシから田畑を守る」)。
…鳥獣害対策の猟で獲られたイノシシは地元に還元は… されてないのかな?
どうなんだろう。
![[ EP: 科学に佇む心と身体 ]](http://homepage1.nifty.com/NewSphere/transparent.gif)







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