[ EP: 科学に佇む心と身体 ]

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なぜ「まね」をするのか@サルまねイルカまね

カテゴリ[科学に佇む2005年] 2005/06/16
文化伝承と、模倣能力と、道具使用と、動物行動。

霊長類から人類を読み解く
「なぜ「まね」をするのか 霊長類から人類を読み解く」

 明和政子著/松沢哲郎監修
 河出書房新社 2004/02



●当該書の内容は表題のとおり。
 チンパンジーの行動研究から、チンパンジーと人間では「模倣」はどのようになされるのか、同じ模倣でも異なる点は何か、模倣対象の何に反応し学習しているか、その違いはなぜ生じているのか。
 抑えた堅実な筆致で、平易かつ的確に研究の最先端を紹介している好著。
 学徒におすすめなのはもちろん、「育児」経験者で「動物」に興味がある人はこれ手にとってみると吉な一冊。

右画
●人間の模倣機序と、チンパンジーにおける模倣機序は、比較すると大きな差異が認められるとのこと。
 人間では、他者の体の動きが主な模倣対象になる。
 チンパンジーにおいては、模倣対象が、他者の身体の動きではなく、物体(道具)の動きになるとのこと。(p.108)
 加えて、「何を」は把握できても、「どうやって」はすっぽ抜けがちらしい。
 「何を」さえ把握できれば、あとは試行錯誤で「なんとかして」正解にたどりつくのが常だという。もしくは教え手(母)が生徒(子)に手取り足取りの教示をすることもある(チンパンジーの話ね)。
 人間は、相手の「体がどんな動きをしたか」について、幼いときから敏感に記憶再現しようとする。人間における”身ぶりコミュニケーション”の重要さも漏らさず指摘あり。

 チンパンジーが「模倣で劣る」、人間のほうが物真似がうまい、云々という浅薄な上下階層付けではなく、
...以下...

〓〓〓 EP 〓〓〓

p.140 -141
 チンパンジーの学習方法のメリットは、その効率性にある。細かな他者の動きを正確にサルまねしなくても、他者の行為に含まれる物に関する情報、たとえば物と物との因果関係、物の属性や機能などの情報によって、他者の行為の目的をまず理解して、あとは自分自身の試行錯誤によって行為の目的に達するほうが学習の効率がよい場合が多いだろう。
 一方、「ヒト」の学習方法では、行為のなかに含まれる目的とは関係しない余分な情報もサルまねしてしまうため、効率が悪い場合も多い。【中略】
 しかし、ヒトの学習方法にもメリットはある。先ほども述べたが、ヒトは他者の行為に含まれる体の動きに注目し、心的な枠組みというまとまりで捉えるようになるため、他者の心の状態を理解することにひじょうに敏感になっていく。こうした違いが、チンパンジーらしい行為とヒトらしい行為に反映されていると考えられる。

と、それぞれのありようをそれぞれに相対視する方向にまとめている点は充分賞揚されてしかるべき。

●今月の報道で、イルカの「母系文化伝承」が報告されていた。
イルカでも子孫に文化を伝えうることをこのたび確認いたしました
2005/06 New Scientist Dolphins teach their children to uses sponges
2005/06 BBC News Sponging dolphins learn from mum
 海獣哺乳類で初確認。
 野生のイルカにおいて観察された「海綿を道具として使う行動」は主に母系でのみ見られるとのこと。
 メスのほうが親のしぐさを早く学習する傾向はチンパンジーでも見られる現象。

2005/06 news@nature.com Dolphin mothers pass tool use to daughters
イルカにも道具使う文化? 豪大学などの研究チーム確認
2005/06 【日本語記事】 asahi.com

文化伝承は血縁度で「母系」である旨は、霊長類ではどの程度の範囲で確認できているのだろう。
単に「メスのほうが」止まりで充分であって「母系文化」のごときくくりで見るには不適切?

その後の記事 追記:
イルカと教育行動の進化
2008/08 WorldScience Dolphins and the evolution of teaching
"Pointing" motions, oddly repetitious behavior seen as possible attempts to pass on knowledge to young
 奇妙な反復行動は、若いイルカに知識を渡そうとする「お手本」動作


挿画


●イルカと霊長類とでは、模倣機序はどう違ってくるだろう。
p.111
チンパンジーは「エミュレーション」をし、ヒトは「模倣学習」をする、というように、両者の再現行為をまったく異なる別のものとして扱うことは、私には意味のないことのように思える。両種における他者の行為を認知するプロセスのある部分が異なるために、結果的に再現される行為のタイプが違ってくると考えることができるからだ。

霊長類は、地上や樹状でさまざまな物体と相互作用しながら、つかみ、踏み、持ち、選び避けながら、生活している。
いや、霊長類に限ったことではないな、文化云々でなくとも、模倣学習はゾウあたりにもあるかもしれない。
で、それら地上の生物と、四肢もなく首も目もさほど動くわけではない海中の流線型であるイルカとでは、視覚情報から「動作」を抽出する場合にしてもエコーで抽出するにしても、水中と地上、かなり様相が異なるのかもしれない。
物体の動きを検知するよりは、水中生活では相手が操作する物体に注目するよりは、相手の「行動」を抽出するほうが便利なのではないかと思えたりもするし。

左サムネイル
「イルカが知りたい どう考えどう伝えているのか」

 村山司著
 講談社選書メチエ
 2003/02
 [bk1]

 イルカが示す三段論法や物真似、イルカの同性愛行動等、さまざまなイルカの行動・知能研究が紹介されているコンパクトで手軽な一冊


●模倣してくれる者に対して警戒心が解除される、もしくは信頼の意欲がアップする傾向は、かねてより指摘されている。(信頼と警戒は表裏一体)
 セールストークとか、営業サラリーマンとか向けの本でも、動作の模倣を売り込みのコツとして指摘しているものもあったろうし。
 好きな人と同じ服を着たい、同じものをみたい、相手の意見を受け入れたい…
 同じ趣味をしている、似たもの同士は惹かれあう…
 人間は、信頼対象もしくは好意対象の行動を、無意識のうちにけっこう模倣してしまう。
 人間は、無意識のうちに自分に近しいものに対して好意を抱いてしまう。
 人間は自分の相貌、もしくは家族親族の相貌に似た人間に対して好意・もしくは信頼感をいだく傾向があるという報告もかねてより。
バーチャル・エージェントでマインドコントロール
 人間の同調研究:
  被験者の動作を4秒遅れで真似る
  被験者の顔をデジタル処理で4〜6割ほど混ぜた相貌
2005/06 【日本語記事】 ワイアードジャパン


愛着対象と、模倣意欲の、連動。
警戒感が抑えられると、発動する模倣学習。
基本的な愛着対象と言えば、哺乳類では母子間。
「母」という愛着惹起キーを持つ対象に対して、自動的に「模倣」意欲がわいてしまうような、生得的機序。

p.160から、ミラーニューロンについても言及。
p.161-162
 残念ながら、ミラー・ニューロンが模倣能力と密接な関係をもつと断言することは、今の段階ではいえない。


ついでにミラーニューロン関係の記事を以下。
自閉症はミラーニューロンの不具合ではないか
2005/03 EurekAlert Autism linked to mirror neuron dysfunction

ミラー・ニューロン
2001/08 OrlandoSentinel.com  Seeing isn't always needed for believing, study indicates

ミラーニューロン、心の理論と自閉症
2001/07 Trends in Cognitive Sciences Vol. 5, No. 8  Through the looking glass

脳の物まね担当部位
 ミラーニューロンから読心力(心の理論)の進化を探る
2001/01  New Scientist magazine  Read my mind

心の理論とミラーニューロン
2000 Trends in Cognitive Sciences, 2000, 4:7:252-254  Theory of mind and mirroring neurons

Gallese, V. and A. Goldman. 1998. Mirror neurons and the simulation theory of mind-reading. Trends in Cognitive Sciences, 2: 493-501.

左サムネイル
ミラー・ニューロンと脳や言語の進化 意識研究の進展
Mirror Neurons and the Evolution of Brain and Language (Advances in Consciousness
Research, 42)
 Maxim Stamenov , Vittorio Gallese (著)
 ハードカバー(2003/12) ペーパーバック(2002/12)

書籍情報と書評:アマゾン   日2   


キルト〓〓〓〓〓〓〓〓

アンカー 【新生児微笑と空笑】


●先月気にかかった「計見氏が言うところの新生児微笑と空笑の連関推察は早計ではないか」の件、
  → 『精神医学を救う暖かなノリツッコミ』
やはり新生児微笑(原始反射や初期模倣)と成長後の表情反応・模倣行動は、経路からして別物である旨、当該書に明示あり。(「なぜ「まね」をするのか 霊長類から人類を読み解く」のp.42前後)
計見さんよろしければご参照下さい…と言っても、私のような巷の部外者に言われずとも、もうとうにどなたか指摘なさって下さっているとは思いますが。




メタル

[カテゴリ 科学に佇む2005年] : 2005年06月16日 
* * *

→ 上掲のお話についてのコメント

2308 #LSu6nEsQ コメントアンカー みゆ さんのコメント 【2005/06/17】

愛があるから真似をするというふうにも考えられると思います。
妹が姉の真似をし、弟が兄の真似をする、みたいな。
好きだから真似をする、すなわち愛があるからなんですよね。

1951 #- コメントアンカー 下穂 さんのコメント 【2005/09/02】


「愛」とは何であるか ということについて
どのくらいとんちんかんな発言をしてしまっているのか、
わからないんでしょうね。
さらしておくのは かえってかわいそうではありませんか?

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