[ EP: 科学に佇む心と身体 ]

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ゲノム創薬

カテゴリ[科学に佇む2006年] 2006/02/25
ゲノム創薬2冊。 どちらもコンパクトで入門に手軽。

◆新刊◆新刊
 『ゲノム創薬 個別化医療とゲノムデータマイニング』 野村仁著 新・生命科学ライブラリ バイオと技術 サイエンス社 2005/07 [bk1]
 『ゲノム創薬』 坂田恒昭著  薬事日報社 (2005/10)  [bk1]

 ゲノム創薬、もしくは遺伝子創薬、遺伝子医薬。

本ミニ野村仁著『ゲノム創薬』:民間の製薬会社を経て現職東京大学先端科学技術研究センター特任教授薬学博士である著者。
 ゲノム創薬時代に至るまでの、遺伝子組み換えなどの技術史が記してある。
 専門的な記述と一般向けの記述が平行して配置してあり、それぞれに読みやすい。
 ふむふむ。
 「オーファン受容体」とやらが熱いんですか。
 ていうか、いろいろ見込まれる創薬手法の中、話として比較的わかりやすい。
p.58 野村仁著『ゲノム創薬』
貧欲なサイトカインハンター達は瞬く間に既存の生物活性検定系を利用した新規サイトカインの探索を終え,次に目を向けたのは何をしているのか皆目見当が付かないが何らかの未知のサイトカインの活性発現を媒介しているに違いない所謂オーファン受容体である.

 細胞膜の表面には「鍵穴」(受容体)がたくさんあって、その鍵穴にハマる「鍵」(作用因子:リガンド)が来ると、細胞内の工場の特定のスイッチが入る。
 健康状態の向上に必要な特定のタンパク質をこしらえさせることができるスイッチ、「鍵穴」があるならば、それに合う「鍵」(作用因子:リガンド)を用意すれば「治療効果」が期待できるはず。
 今は
  ・「鍵穴」はあるのに「鍵」がどれだかわからない
  ・この「鍵穴」を作動させることができれば新しい効果が期待できるかも!
  ・見つけた「鍵」で新薬を作れるかもしれない!
  ・治せなかった病気が治せるようになるかもしれない!
ということで、鍵がわからない鍵穴「オーファン受容体」の鍵をさがす研究が熱いよと。


右画
ネット 医薬品の研究開発 武田薬品工業株式会社
 細胞膜表面にある受容体のうち、作用因子(リガンド)が未知のものが「オーファン受容体」
ネット 研究内容 学習院大学理学部生命分子科学研究所
 ヒトのGタンパク質共役受容体(GPCR)約1000種類のうち、内在性リガンドが分かっていないものをオーファン受容体(孤児受容体)と呼ぶ。

 サイトカインとは
細胞間情報伝達分子ネットサイトカイン最前線 ワイス株式会社
細胞から体液中に分泌される蛋白質ネットサイトカインとは 東京都臨床医学総合研究所

 リガンドとは
ネット 薬学用語事典
 受容体と結合する能力をもつ物質。元々生体内にあるものは「内因性リガンド」。

 それはそれとして、
p.130野村仁著『ゲノム創薬』
 現在,薬価基準に収載されている医薬品の数は約12000品目にのぼるが,これらの多くは同一成分のものが異なるメーカーで製造されていたり,あるいは同じメーカーで製造されたものでも,異なる剤形や規格のものが多数含まれていて,実際にはせいぜい数百種の異なる成分が用いられているのが現状である.

 ええっ!?
 そうなのか。
 世の中使われている薬は「実際にはせいぜい数百種」くらいなもんなのか…!

...以下つづき...

〓〓〓 EP 〓〓〓

この箇所へのリンク【製薬会社の相次ぐ合併】


本ミニ坂田恒昭著『ゲノム創薬』
 製薬業界事情、DNA解析手法、遺伝子組み換え手法、プロテオミクス、プロテオーム解析、そして特許事情、各種ゲノム創薬手法などが、わかりやすく開陳されている。

 ただでさえ医薬品開発にはとんでもない大金がかかるところ、ゲノム創薬にはさらに輪をかけて巨額の資金が必要になるため、最近、製薬会社の合併があいついでいるとのこと。

 あ〜、それでかぁ、なんか聞いたことがないような会社がつぎつぎ出てきていたのは。

  グラクソ社 + スミスクライン・ビーチャム社 = グラクソ・スミスクライン(GSK)社
  チバガイギー社 + サンド社 = ノバルティス社
  ヘキスト社 + ローヌプーラン・ローラー(RPR)社 = アベンティス社
  アベンティス社 + サノフィ社 = サノブィ・アベンティス
  三菱東京製薬 + ウェルファイド = 三菱ウェルファーマ
  日本ロシュ + 中外製薬 = 中外製薬
  山之内製薬 + 藤沢薬品 = アステラス製薬
  大日本製薬 + 住友製薬 = 大日本住友製薬
  グレラン + 帝国臓器 = あすか製薬
  三共 + 第一製薬 (共同持ち株会社を作り、その子会社に第一と三共が入る)

 ええっ、山之内製薬も藤沢薬品も、今は名前が変わっちゃってたのか…!

p.22 坂田恒昭著『ゲノム創薬』
 基礎研究から製造承認を経てくすりが誕生するまでの医薬品の開発期間は10-18年という長い歳月を必要とする。その、間途中で開発を断念したものの費用までを含めると、1品目あたりのくすりの開発費用は800-900億円にも達すると計算される。

ネット ミドリ十字と吉富製薬の合併 (1997年 Hiroyuki Uchida)
 大手10社の平均研究開発費は、日本は320億円なのにアメリカ9億ドル(約1000億円)と桁違い!

 いきおい、合併して資力をでかくしないと生き残っていけないと。

 ゲノム創薬の中でも、「核酸医薬品」としてくくられるものがあり、「いずれも研究開発段階ではあるが、アンチセンス医薬品、デコイオリゴ医薬品、RNAi医薬品など」(p.116 坂田恒昭著『ゲノム創薬』)があるのだと紹介されるのだけれど、この中の「RNAi医薬品」のくだりで、
図67リボザイムの原理 [東京大学工学部多比良誠教授より]
とあるのがなにやら物悲しい。
   研究開発段階の。
   RNAi医薬品。
   多比良誠教授。
 こないだからRNAiに関する 「論文捏造」でずいぶん報道されていた多比良和誠教授ではございませんか。しかも、名前間違い…?

細胞:ヒト細胞での低分子干渉RNAによるDNAメチル化の誘導と遺伝子サイレンシング
2004/09 Nature 431, 211 - 217; doi:10.1038/nature02889 Induction of DNA methylation and gene silencing by short interfering RNAs in human cells
 Hiroaki Kawasaki and Kazunari Taira


〓青棒〓

ゲノム創薬2冊。 どちらもコンパクトで入門に手軽、それぞれに特色があり読み合わせると吉。

左サムネイル
 『ゲノム創薬 個別化医療とゲノムデータマイニング』
 野村仁著
 新・生命科学ライブラリ バイオと技術
 サイエンス社 2005/07

左サムネイル
 『ゲノム創薬』
 坂田恒昭著
 薬事日報社 (2005/10)


〓青棒〓

アンカー 【新薬の探究】

 おくすり。
 そして金。
 新薬の探究は人の欲と密接につながっているため、いつの世も熱いのだけれども。

 もう普通に探せるようなモノは探しつくされているので、
  1・バイオのような特殊技術があってはじめて探せるモノ
  2・古来の知識や異民族の文化から使えるモノを掘り出そう
  3・未知の生物からいい成分がゲットできないか:生物資源開発(バイオプロスペクト)
あたりに狩り手は群がっている。

 2・異文化の知識を拝借してもうけてしまうことにまつわる問題は
  → 『民族の古来の知識を搾取する企業やバイオ屋さん』
知的所有権法と伝統的知識 伝統的知識保有者のための効果的な法的保護はいかに
2006/02 EurekAlert Intellectual property law and the protection of traditional knowledge


 3・環境破壊で未知の生物が絶滅してしまうと、そのぶん未知の医薬品を探し出せる可能性が減ってしまうぞという声も多く。
 全然動物愛護でも自然賛歌でもなく、人間側の自己保身欲から出た物言いだけれども、「確実にヒトの欲をくすぐる」という点では、自然保護施策に活用できそうな言説。

 ヒトの無明な「健康欲」は尽きることなく。
 → 『日本人の健康執着』
 死や非健康に対して、必要以上に負の意味を押し付けて、いずれ必ず訪れるおのれの宿命に、むやみに呪いを重ね塗る。
 医療現場においては一部で確実に「死は敗北ではない」という構えが共有されているのに、患者が「死は敗北であり避ける以外ありえない」固執状態で、逆に救いようがない事態に陥っているという皮肉。

挿画


 ヒトの欲を表した記号、「金」。
 「金」を栄養にして存在する企業という枠の中で、求められている新たな希望、新薬。
 創薬現場では、末端の「人を救う」という感覚とはかけはなれたエートスでものごとは動きがちであり。
〜はじめに 野村仁著『ゲノム創薬』
筆者が現職に就く以前は永年にわたって民間の製薬企業に在籍して創薬活動に従事していた関係からその頃の経験に立脚した逸話もかなり含まれており商業的色彩が強く出てしまっている部分も多い.反発を覚える諸氏には予めご容赦を願っておく事とする一方で,これに刺激を受けてかつ別の視点から商業化を発想される方も居るのではないかと密かに期待している次第である.

 いたしかたないとはいえ、「救いとは何か」、そも「欲」とは何なのか、見失う事なき歩みを、こちらとしても淡く期待をいだきつつ。




メタル
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筆者:雨崎良未
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