[ EP: 科学に佇む心と身体 ]

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ヒトはなぜ「〜〜のために」するのか

カテゴリ[科学に佇む2005年] 2005/06/12
…とても頭が悪そうに見える人だ。

左◆表紙
 「ヒトはなぜするのか」
 ナイルズ・エルドリッジ著
 講談社インターナショナル 2005/03 [bk1]
 
原書;2004/Why We Do It


いや、読み手の私が頭が悪いんだろうな。
頭が悪い人が書いた本がわざわざ邦訳までされるなんてことはないだろうから。
ごめんよ。

エルドリッジは市井の誤解にマジレスしているように見える。
巷の表現と科学的認識の遊離に過敏反応しているように見える。
進化心理学にまっこう勝負をいどんでいるつもりになっている。

「遺伝子のためじゃない、繁殖のためじゃない、セックスのためじゃない」
「セックスと生殖、生殖と経済、そして経済とセックスとの相互作用なのだ」

どっちにしろ「〜〜のために」と言い出す時点ですでにアウトじゃないか。
同じ穴の貉。

...以下...

〓〓〓 EP 〓〓〓

 エルドリッジはいったい誰の何を相手にしているのか。
 例えば遺伝子繁殖に「駆り立てられている」 …誰のセリフよ。
 日本で言えばNHKのふしぎ大自然?(うむ、ひどい表現を平気でやる番組だよな)
 TBSどうぶつ奇想天外?(この手の言い回しは常識でいいのか?)
「ヒトはなぜするのか」p.14
遺伝子をめぐる妄想はどこから生まれたのか
 遺伝子にまつわる一種の強迫観念が文化に浸透したのは、マスコミや娯楽産業のせいではない。テレビや雑誌はただ現代の生物学で主流となっている考え方を極端に単純化して私たちに見せているにすぎない。黒幕は、多くの進化生物学者たちであり、彼らが、半世紀以上にわたって遺伝子こそが進化を推し進める第一の力と見なし、環境要因よりも重視してきた張本人なのだ。


 そうか。
 市井の誤解はぜ〜んぶ学者が悪いのか。
 学者の製造者責任など言いがかり&「DNA伝説」はトンデモ本だ呼ばわりしていた安藤氏あたり即激高しそうな。
 相手の低レベルな部分ばかりを目の敵にして戦いを挑むと、解決にいたらないどころか自分のレベルまで地に落ちないか?

 DNA伝説の進化心理学バージョンをやるなら、それなりにカルチュラル・スタディーズを援用するというような頭も使うべき。
 どこで、だれが、何を言い、それはどこからきて、どこに何を及ぼすのか。
 そういう実例列挙も省いて自分的な十把一絡げで印象相手に反論しているような、水準以下のぼやきに終始していてどうするよ。
 これで「慎重に検討」(p.14)しているつもりらしいからなおのこと使えない。
「ヒトはなぜするのか」p.22
利己的な遺伝子の概念を動物の社会システムに応用したことに目くじらを立てるものはいなかった。しかし、人間もそうだというのか? それは話が違う!
【中略】
 私はこの遺伝子を中心にすえた進化へのアプローチ [進化心理学のこと] を「ウルトラ・ダーウィニズム」と呼んできた。それが文化全般にもたらした影響は軽視できるものではない。

 進化学がらみの巷説と進化心理学巷説と進化心理学関係研究者を十把一絡げらしい。

 ヒューマン・トライアングルでも進化心理学でもどうでもいいだろう。
 どっちにしろただの還元主義ではないか。

なににかこつけるか。
何を元に考えるか。
それぞれで見えるものが異なる還元主義。
 脳ですべてがわかるぞ
 遺伝子ですべてがわかるぞ
 占いですべてがわかるぞ
 合理性ですべてがわかるぞ
 神ですべてがわかるぞ
 進化ですべてがわかるぞ
 経済ですべてがわかるぞ
曼陀羅を何色のメガネで見るか、その色をどれにするかでもめている輩
赤をかけている人間には日の丸は黒に見える。日の丸は赤だというのは間違っている、と言ってもせんないこと。

 しかし、当該書の物言い、なにやら新しい本とは思えないのに出版年月は新しい(原書2004年)。
 う〜ん、もしかして進化心理学の学者が馬鹿な物言いをしているってのはマジなのか。
 そういえば先日紹介した洋書情報にあったバラシュ親子の本(ボヴァリー夫人の卵巣:2005年4月)、ありゃ市井側にしてみれば悪ふざけにもほどがあるってなひどいコンセプトだし。

cover
●ボヴァリー夫人の卵巣 古今の文学を社会生物学的に読み解いてみました
 デビッド・バラシュ&ナネル・バラシュ(父&娘)
Madame Bovary's Ovaries
David P. Barash (著), Nanelle R. Barash (著)
ハードカバー: Delacorte Pr ; ISBN: 0385338015 ; (2005/04/26)
書籍情報と書評:アマゾン    
オセロの妻は自然淘汰で殺された
2005/05  Los Angeles Times  Natural Selection Killed Desdemona
2005/05  San Francisco Chronicle  Animal instinct's wordy realm
2005/05  The Seattle Times


 そうか、 ピンカーもアレだし、その後の新刊書さえもがかくのごとき状態だからか…。
 マジとっちらかっているのか、アメリカは。
 進化心理学にたずさわる者ども自体がやはりまずいのか。いや、非難されてしかるべきなのか。

 エルドリッジも悪しき進化心理学も、どちらも異なるレベルの価値観を混同して勝手に混乱を招いている。
 人心と日常生活にしっくりきて安寧な物の見方(価値観)と、特定の基準でものごとを見たときに生じる重要度の、混同。
 進化心理学は市井の心の安寧を無粋に蹴り壊して歩き、エルドリッジは何を壊されているのか十分把握せぬまま不快さにまかせてむやみに筆を走らせている。
 どっちの言い分も同じタライの中、もうどーでもいいですみたいな。

 エルドリッジは人類学者(文化人類学)とは言葉は交わさないのだろうか?
 文化との共進化。そして文化や宗教の、人心と日常生活への適応性。
 そこをふまえてから出直してきてくれ。
 でないと→ 『インテリジェント・デザイン』 のたぐいに執着する連中とどう違うのかわからなくなってくる。
 わからん確執だ。進化観に抵抗のない、縁と因果とおかげから成り立つ東洋的世界観の住人には。

 グールド派か・・・
   と称するにはエルドリッジは小粒すぎるのかもしれないが

 (はた目に)むやみなハイプをやってしまう進化学側&進化心理学側、それに対する(はた目に)下手な異議申し立てを重ねてしまう「進化心理学に神経逆撫でられました」側(それこそ創造論もグールド崩れも含む)、これはアメリカが(イギリスもなんぼか)「教育の場で進化論をどうするか」ともめているからこそ、ことさらにおのれの正当性と相手の不当さをいさんであげつらうことに終始してしまう?

 日本的には、創造論以前に進化論もろくに教育現場で教えてない上、わけわかんない進化言説が世にはびこっている現状(政治や経済理論のほうで進化論をトンデモ援用した言説がフツーにもてはやされてたりするぞ)、敵うんぬんではなく、進化学のヒルコを野放しにしている、進化学側の声のかぼそさと過剰な寛容さ、そっちを気にしたほうがいいかもしんない。


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