[ EP: 科学に佇む心と身体 ]

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アイスマンと妄想

カテゴリ[科学に佇む2006年] 2006/02/07
 またアイスマンがらみで妙な推察が披露されています。

 アイスマンとは: アルプスで発見された、5000年前の氷結ミイラ。

 以前のアイスマンがらみの妄想はこちら。
 →2006/01  『なぜ今アイスマン(エッツィ) 』  ミイラの呪いで人が死ぬ妄想

 仲間に謀殺されて、ずっと野ざらしミイラで、いいかげんたったころに見知らぬ連中にこづき回され、呪い呼ばわりされ、のみならず、今回の「ひとでなし(outcast:仲間でなし)」のレッテル。
2006/02 【日本語記事】 Excite エキサイト : ニュース(ロイター) アイスマンは社会のはみ出し者だった!?

アイスマンのミトコンドリアハプロタイプK
2006/02 Discovery Oetzi the Iceman Infertile Outcast?

 短絡です。
 男において 「子無し」=「ひとでなし」 という発想はアリエルのか?


...以下つづき...

〓〓〓 EP 〓〓〓

  ・女は自分で子を産むので不妊か否かが明白
  ・男は生まれた子が自分のものかさえ定かではない
 女は繁殖能力の有無で待遇に天地の開きが生じるが、男ではさほどの格差はないのが普通。
 男においては「ひとでなし」扱いか否か「地位」の上か下かは繁殖能力では決まらないのが普通。逆に地位で繁殖率が決まりがち。
  ・夫の子じゃなくても妻が生んだ子は育てる
  ・世継ぎ云々のような血脈にはとんちゃくしない社会
  ・「仲間」の子なら共同で育てる集団生活
           →  文化人類学
 たいがいの民族では、こういう形式は普通なのであって、まして妊娠機序さえつまびらかではなかった古代の話だぞ。
 エッツィ(アイスマン)のミトコンドリアDNAタイプから、いきなし「ひとでなし」(仲間でなし)と短絡させるのは、現代人的繁殖至上盲信な横暴じゃあございませんか。

 …なんかアイスマンってとことん浮かばれないですなぁ。tear_flow

 で、この「ひとでなし(outcast:仲間でなし)」説は、歴史家の故・コンラート・シュピンドラー(Konrad Spindler)の主張からきているらしい。
 (シュピンドラーは、アイスマンの呪いで死んだとされる5人目。
  そして本ミニ 『5000年前の男 解明された凍結ミイラの謎』の著者)


 …呪い殺されてもさもありなん?
 なお、これは不妊であった「可能性」でしかないのであって、アイスマンにはしっかりお子さんがいらしたかもしれないのです。

アイスマン、子種がなかったかもしれない:ミトコンドリアDNA解析結果
 ハプログループとしては、Kの中のK1に属す:欧州では少数派だが、アイスマンの地元ではよくあるタイプ
2006/02 BBC News Infertility link in iceman's DNA

 男の不妊症についてはこちらもご参照を。 → 『男の不妊とその呪い』





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* * *

→ 上掲のお話についてのコメント

1313 #- コメントアンカー うえぽん さんのコメント 【2006/02/07】

私のブログへコメントありがとうございます。

アイスマンの件ですが、「outcast」は「ひとでなし」と訳していいのか疑問です。
意味合い的には「身寄りがない」あたりがちょうど良いと思います。
「アルプスの少女ハイジ」のおじいさんと同じ身分と言った方が分かり易いですね。
当時は年金などないはずですから、養ってくれる子供がいないと生活も大変だったんじゃないでしょうか。

1512 #cKjIa1.Y コメントアンカー amasaki さんのコメント 【2006/02/07】

子なしイコール老後が大変かどうかは一概には言いきれないかとおもいます。
そも、当時「子が親を養う」観念があったかどうか。
http://am.tea-nifty.com/ep/2005/04/dead_2cca.html
解剖ではそれなりに衣食は足りていたようです。

多くの旧来文化では、「仲間」以外は「人間」ではない扱いをうけます。
というか、「人間=仲間」という観念しかなかったりする。
現代的意味では「ひとでなし」は違う意味を含んでしまいますが。

「小辞郎32」によれば
■outcast {名} : 捨て犬、捨て猫、追放{ついほう}された人、追放人、落ちこぼれ、落伍者{らくご しゃ}、浮浪者{ふろうしゃ}、のけ者

 なお、抑えた筆致のBBC記事(「outcast」なる安易な表現は登場せず)では、今現在
  「古代の世界では男性不妊は認識され得たのか、
   そうであればそれは地位を低める方向に作用したか」
を文化人類学・医療人類学・考古学の識者陣に問い合わせているところだと述べられています。

 つまり、当時の暮らしの専門家による見解ではない。
 分野違いの素人による推察が報道されたわけで。
  ・アイスマンは不妊なのだ (かどうかわからない)
  ・エッツィは子がないのだ (かどうかわからない)
  ・だから「outcast」なのだ (かどうかわからない)
そこらをすっとばしたいさみあし解釈がたくさん流れてしまいました。

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