[ EP: 科学に佇む心と身体 ]

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祖父母の健康、孫の代までたたります

カテゴリ[科学に佇む2006年] 2006/01/08
右画 因果はめぐりますか?
 ご先祖さまの行いはたたりますか?
 じいちゃんが重ねた悪行苦行や、ひいじいちゃんの栄養失調は、子・孫・曾孫にまで影響してしまいますか?

●NEWS幼いときの栄養状態や副流煙、男は三代たたります
●NEWS祖父のお食事、孫までたたる 思春期までの栄養状態が三世代後の発病率を左右

 似た環境に育つから、だけではないというご報告。
 じいちゃんが、遺伝子が壊れるような経験をしたから、というケースもあるけれど、
大気汚染による遺伝子損傷、子孫にまで尾を引くかもしれない
2004/05 WebMD Inherited Mutations Linked to Air Pollution
2004/05 Genome News Network Air Pollution Causes Genetic Mutations

<放射線>孫の代まで影響 マウスを使った動物実験で判明
2002/05 ヤフージャパン(毎日新聞) Google
 遺伝子損傷は恐いよね。

 しかし、遺伝子に損傷がなくても、同居してなくても、一度も会ったことがなくても、じいちゃん世代の経験が、子や孫の健康状態にまで影響するという。
●NEWS祖父母の代の化学物質汚染、孫の代までたたります
●NEWSタバコの害は三代たたる 妊婦が副流煙を吸うと孫のゼンソク率が高くなる
●NEWS妊婦に良かれと与えられている薬、孫の代にまで影響するかも
 これはなんでなんで?what

 遺・伝・の・よ・う・で・遺伝じゃないデンデン。

 遺伝子自体には異変はないんだけど、”遺伝子の働き方”に影響を与えるナニカが、子孫の健康に影響を与えるよと。
 まだその機序は十分解明しきれてはいないけれど、健康が三代たたる、いや、それ以上の世代までたたる恐れがありまして。

...以下つづき...

〓〓〓 EP 〓〓〓

●epigenetic, epigenomeとか、日本ではエピジェネティック(後生学または後成的遺伝学)と言われているらしいけれど、”遺伝子自体”の変化ではなく、環境や成分などの何かが遺伝子の”働き”に影響を与える、そういう現象はいろいろとありまして。

●いまどき流行りのいわゆる 「遺伝子スイッチ」
 遺伝子自体に異変がなくても、その遺伝子のスイッチが入るか否か、遺伝子がタンパク質生産に使われるか否か、(環境要因はDNAのメチル化を変化させうる)で、細胞の活動〜全身の健康状態が変わってきたりする。
 で、その「遺伝子スイッチ」の入り具合が、子孫に伝わるのだと。
 何かが遺伝子の働きを変えた、それが子や孫にまで影響していくと。

●両親からもらう遺伝子の中で、父さん由来の遺伝子がでしゃばるか、母さん由来の遺伝子がでしゃばるか、で、結果がえらい違うことがある。
 どっちの遺伝子がでしゃばるか、その決定をゲノム・インプリンティング=遺伝子刷り込みと呼んだりする。
本ミニ「一目でわかる臨床遺伝学」 ドリアン J.プリチャード/ブルース R.コルフ著; メディカル・サイエンス・インターナショナル 2004/10 p.39
ゲノムインプリンティング
 インプリンティングは,染色体のある領域で,父親あるいは母親に由来する遺伝子群だけが発現する現象を指す.

本ミニ「X染色体 男と女を決めるもの」 デイヴィッド・ベインブリッジ著; 青土社 2004/10 p.234
卵子や精子の遺伝子のうちのあるものには、標識のようなものがついていて、どちらの親からもらったかが子供にわかるようになっているらしい。親を特定する化学的な「刷り込み」のようなものがこれらの遺伝子に施されていることから、この過程の全体は、「遺伝子刷り込み/インプリンティング/」とよばれている。
 ネット ゲノムインプリンティング
 父さん経由でばかり出てくる性質とか、母さん経由でばかり出てくる性質とか、このへんが関係してくる。

 おそらく「父方の遺伝子」がでしゃばる(遺伝子スイッチがオンになる)ようにゲノム・インプリンティングが働いた結果が、こちらの三代たたり。
●NEWS祖父のお食事孫までたたる  思春期までの栄養状態が三世代後の糖尿病リスクに相関
2002/10 New Scientist Grandad's diet affects descendants' health
  おたくのおぼっちゃまは肥満児ではありませんか?
  豊富な食糧に恵まれていた「男の子」の孫は、糖尿病で死ぬ率が4倍です!
  影響が与えるのはじいちゃんだけ。ばあちゃん無関係。
  でも、影響は女孫も男孫も受けてしまうのです。

●NEWSおじいさんの食生活で子孫が迷惑?
 ゲノムインプリンティングによって次世代に伝えるという考え方
2002/11 【日本語記事】 ネイチャーバイオニュース
  豊富な食糧に恵まれていた「男の子」の孫は、心臓病で死ぬ率も、高め。
●NEWS幼いときの栄養状態や副流煙、「男」は三代たたります
2006/01 New Scientist Men inherit hidden cost of dad's vices
  栄養状態や、毒によって起きた体内の微妙な化学的変化が、
  遺伝子インプリンティングで子孫にまでひびいていく。
  ひいては、「現代っ子」の暮らしぶりが
  それこそさらに将来世代にひびいていくこともありえるわけで、
  ちょっとこりゃ考えたほうがいいんじゃないですかと。


追記:

遺伝以上に孫子に引き継がれる獲得汚染のナゾ
2006/10 ScienCentral Inherited Pollution

母さんの食べ物三代祟る
2006/11 New Scientist You are what your grandmother ate


ライン

 ところでところで。

 糖尿病だの心臓病だの、これまで「成人病」と呼びならわされてきた病気群は、いまどきは「生活習慣病」と改名されまして。
 「成人病」なのに子どももかかることがあるのはなぜなのか、というこっけいな違和感はおかげさまでなくなりましたが。
 でも。
 「生活習慣病」と呼ばれると、今度は「その病気になるのは本人が悪い生活習慣を重ねたせい」みたいな意味がかぶさってくる。
 「生活習慣」が悪くなくても、それら「生活習慣病」になることはある。
 「性的放蕩」をしてなくてもエイズには罹ってしまうことはあるのに、「エイズ=ふしだら」という偏見のまつわりつきが患者を苦しめる、(ちょっと例として不適切かもしれないけれど)それと似た失礼を感じてしまう。

 とか思っていたりするけれど、じいちゃん世代の「生活習慣」が、子孫の健康に影響を与えることがあるのであれば、これもりっぱに「生活習慣病」なのか…?

ライン

 上は、「じいちゃん」の若いときの食糧事情が、子孫の「男女」にたたる例で。

 こちらは、環境ホルモンが、代々「男」にたたる例。
●NEWS祖父母の代の化学物質汚染、孫の代までたたります
2005/06 BBC News Toxins 'pass down generations'
   子宮で受けた化学物質汚染の影響、四世代(!)もひきずります@ネズミ実験。
   いわゆる環境ホルモンで「精子が少なくなる」障害が代々のオスに引き継がれる。
   問題のないメスとの間にできた子であっても、オスからオスに伝わっていく。
   遺伝子自体には問題はないので、これもエピジェネティックなものだと思われ。


 「ばあちゃん」が、子孫の男女にたたる例はこちら。
●NEWS喫煙の害は三代たたる
 タバコの煙にさらされた妊婦、お孫さんが喘息になる率が高い
2005/04 BBC NEWS | Health | Gran's smoking 'can cause asthma'
2005/04 EurekAlert Grandmothers' smoking linked to grandchildren's asthma decades later
2005/04 EurekAlert Childhood asthma may be linked to grandmother's smoking
   ばあちゃんだけが妊娠中に喫煙していた結果もそうだけれど、
   ばあちゃんも母ちゃんも妊娠中に喫煙していた場合、
   それこそ発病率はぐっとあがってしまうわけで。

●NEWS妊婦に良かれと与えられている薬、孫の代にまで影響をひきずるかも@モルモット
2005/11 EurekAlert Pregnancy drugs can affect grandkids
2005/12 New Scientist Pregnancy drug can affect grandkids too

ライン

 その仕組みはどうあれ、じいちゃんばあちゃんの所業や経験、健康状態は、
   遺伝はしないけれども子孫に影響を与える 
 おおっ! tamage
 しろうとさんにとっては、それが遺伝とどこがどう違うのかわかりづらい事態だけれども、結果は実際考慮したいしろもの。

 報告されているのは三世代が多く。
 それは、調査できる範囲が、人間では今のところ三世代止まりだからであるからかもしれず。
 もしかしたら、もっと代々ひきずるのかもしれず。
 (実際「獲得形質の遺伝!?」「新たな進化要因?」みたいな話もちらほらあったりしてね)

追記:

毒にやられた父さんは代々たたる
2008/02 EurekAlert AAAS symposium to address significant effects of the male parent in reproductive success
 父が被った汚染は、子の発達に悪い上、その後の世代にも影響を残しうる
2008/02 BBC News Sperm damage 'passed to children'


 生活習慣病や喘息、アレルギーに見舞われている人、たまにはじいちゃんばあちゃんに話を聞きに行ってみますか。

〓ジェム〓

 続きのエントリを書きました(2006/02) → 『ゲノムインプリンティング』


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