[ EP: 科学に佇む心と身体 ]

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宗教と社会、中景編:人の集まるお寺のつくり方

カテゴリ[科学に佇む2006年] 2006/01/07
ごめんなさい。
うさんくさいノウハウ本のたぐいかと思っておりました。
たいへん失礼いたしました。
とてもよい本です。
ぜひご覧下さい。(でもとても高価なので衆生には図書館経由がオススメ)

左サムネイル
「人の集まるお寺のつくり方
 檀家の帰属意識をどう高めるか、新しい人々をどう惹きつけるか」

 薄井秀夫/鎌倉新書編集部
 鎌倉新書 2005/03

 [bk1]


 これはお寺の関係者だけに読ませているのはもったいない。
  (お寺向けの専門誌に載った連載が元になっている)
 「人の集まるお寺のつくり方」ではなく、「地域コミュニティの作り方」と読み替えれば、すごく使える本になりそう。

 宗派問わず、「利用者を増やすことに成功したお寺」の実例ノウハウと住職インタビューがいっぱい収録されている。
 新たに都心で立ち上げたお寺も、うまく地域のニーズを掘り起こしてにぎわっている。
「人の集まるお寺のつくり方」 p.10-11
 そもそも江戸時代に始まって現代まで、純粋に仏教への信仰のみで、寺院を支えていこうと考えていた「檀家」がどれだけいたろうか。おそらくその数は、江戸時代、明治時代であっても1割に満たないであろう。まして現代では言わずもがなである。寺院は、仏教を核に、先祖供養・文化・芸能・医療などあらゆるものの中心で、それを基本にしたコミュニティがあったから、人々に支えられてきたのである。純粋な信仰だけじゃなくて、いろんな夾雑物があることで、寺檀関係は多様性のある豊かな関係となる。この夾雑物があるからこそ、多様性があるからこそ、寺院は地域に定着することができたのだ。
 ところが現代の檀家制度には、そうした夾雑物は無い。あるのは、先祖供養だけである。
 帰属意識を深めるのは、まず第一に、住職との人間的な交流であり、その次に寺院を通して得た仲間との交流である。
 もとより、地域には人間のつながりがあり、そのつながりをスムーズにする蝶番として「寺社」は需要を満たしていた。
 その蝶番に対する需要は、今も、都会でも、なくなっていはしない。
「人の集まるお寺のつくり方」 p.11
 きっかけさえあれば、お寺に行こうと考える人は多いのだ。
「知らしむべからず、依/よ/らしむべし」。
 信仰や説教よりは、地域の寄り合いがなによりの処方箋。
 集める、すなわち、人のためとお互いさま。
 地域社会のレベルダウンは、希薄な地域住人の関係性に原因の一端がある。
 社会不安は地域つながりの崩壊から。

 地域コミュニティや、近隣とのお互いさまおかげさま関係がうまく機能していないのならば、古来からコミュニティの寄り場としての機能を担ってきていた「お寺」を利用するのも妙案で。
「人の集まるお寺のつくり方」 p.13
 地域コミュニティの崩壊による問題が表面化している現代で、それを再生していくことには大きな社会的ニーズがある。そして現代で、それができるのは寺院をおいて他には無い。寺院は、緑豊かな境内、大きな伽藍、神聖な雰囲気などハードの面でも優れているし、何よりも人々に安心を与えることのできる仏教というソフトもある。寺院が本来の力を発揮すれば、地域社会をもっと生きやすいところにしていけるのである。


...以下つづき...

〓〓〓 EP 〓〓〓

●祭を催す。
●イベントを行う。
●場所を提供する。

 地域の寄り合いは、お寺側が音頭をとらなくても、地域のリーダー格さんにまかせて自発的に運営してもらったほうが円滑にいくらしい。
 お子さんがたなんか大喜びだったりするし。子供同士で企画するのも楽しいわけで。
 うまく需要を掘り起こせているわけだ。

●オープンなお寺にする
●檀家より気軽な「会員制」も採ってみる。

 大きな通りに面して、看板を掲げ、誰でも気軽に訪れることができるようなたたずまいにこしらえられればなおベター。
 都会でも、「そこにある」ことがわかれば、地方出身者から地元の人から門をくぐってみようと思う人はけっこういるもので。
 地域コミュニティ・地域つながりが円滑に作動するようになれば、犯罪率も下がりますし。

●地元の相談に乗る。

 檀家に「お金のかからない葬儀」の方法を指南してあげる。
(でも旧来の檀家的には”安い葬儀”は違和感があったりするらしいけど) [p.55-56 浄土宗宗仲寺(神奈川県座間市)のご住職談]

●転勤・転居先やお子さんにも便りをお届けする。

 転居先で、実家の宗派を確認せずに別の宗派で葬儀をあげてしまったという悲劇。 [p.82-83 高野山真日宗別格本山金剛院(東京都八王子市)のご住職談]
 年1〜2回でもいい、お寺からの便りは、心の命綱たりえることを念じつつ。

挿画


 仏の道、心の救い。

左◆表紙
 今回いっしょに読み合わせたかったのだけれど、残念ながら入手が間に合わなかった一冊はこれ。

『僧侶のための仏教カウンセリング入門』
 奈倉道隆, 譲西賢, 林幹男, 友久久雄
 四季社 (2005/10)
 えええっ? 仏教でカウンセリング!?
 すごい違和感あるけれど、まあ人生相談をお坊さんが引き受ける、それを職業的職人的に言い表すと今どきはこうなるのか…?
 お坊さんは人生相談を受けることも、というか、生き方の指南をなさる機会も多いと思われ、であるならば、心理職と同等の学問・職業的知識は、今どきは仏法に加えて習得しておくにこしたことはないのかもしれない。

左◆表紙
 そんなこんなで『僧侶のための仏教カウンセリング入門』の代わりに持ち帰ったのはこちら。

 「よくわかるカウンセリング倫理」
 水野修次郎著
 河出書房新社 2005/10 

 これお坊さんにお勧めです。goo
 いや、しろうとにもわかりやすいので一般の方々にもオススメ。
 心を癒す上で、やってはいけないこと、自戒すべきこと、想定される困難難問が、いろいろ紹介されている。
 ツボ鋭く、実際的。
 著者は米国のカウンセリング倫理を下敷きにしているため、ややアメリカンな事例記述が目につくところもあるけれど、日米の比較点として扱えばそれなりに参考にも勉強にもなる。
 カウンセリングの機能機序は、宗教のベネフィットに通じる部分も多々。

BG箱

 心に良い何かに触れることができれば、それが地元で気軽に可能であるならば、それにこしたことはない。

左サムネイル「心理学化する社会 なぜ、トラウマと癒しが求められるのか」
 斎藤環著
 PHPエディターズ・グループ
 PHP研究所 2003/10
p.118-119
 要するに、もう僕たちは、後戻りはできないのだ。これは「心の専門家」に限った問題ではない。医療全般、さらにいえば、多少なりとも対人交渉を必要とするすべての市場において言えることだ。上の世代の医師たちの中には「われわれは職人なのだ」といった表現をする人が
まだいる。それがプライドなのか謙遜なのかは措くとしても、僕にはそれがノスタルジーにしか聞こえない。関係性の面から「職人」を一言でいうなら、それは消費者に対して「知らしむべからず、依/よ/らしむべし」という姿勢を貫くことだ。

 楽しいご近所をよみがえらせる。
 子どもの遊び場をさしだしてあげる。

 信仰を抜きにして考えれば、「適切なモラル」をきっちり軸にした世界観を持てるか否かは、人生においても、社会にとっても、重要な要素。
  → 『信仰心は非行児童を変えうるか』  信仰で減る犯罪率。
 きっちり「適切なモラル」を軸にした世界観に接することができるか否かは、家庭においても、地域にとっても、肝要な条件。
  → 『ニートと物語 ゲームと世界観』  おのれを左右する世界観の刷り込み

 苦しいときの**だのみには、実効性がある。
  → 『苦難を乗り越える力を与えてくれる信仰』
 ただし、苦し紛れに困った目に陥ったりしないためには、ふだんから万が一のときにすがれる何かに親しんでおくほうが安全。

 心の健康における儀式(葬儀慣習)の効用は見逃せない。
  → 『日本人が共有する死の物語』
 葬儀慣習は人心に、救済に、適応的だからこそ培われてきたもの。
「人の集まるお寺のつくり方」 p.31
最近では、人間の葬儀で泣く人は少ないが、ペットの葬儀ではほとんどのひとが涙を見せる。 [真言宗豊山派宝蔵寺(茨城県三和町)ご住職のお話]
 …たまさか今日、隣の住人が半日大声で号泣しっぱなしで。
 ペットの座敷犬ちゃんがお亡くなりになったと思われ。ase2

 葬儀などの儀式を経ない死別は、ものすごいしんどい傷を人心に残すことがある。
 たといそれが犬猫魚であったとしても。
 人死にと同じように、儀式の手順を踏むことは、心理的にはたいへん道理にかなっているわけで。
 「何かをしてなんとかしたいけれども、すべがない」そのすべを適切に与えること、そういう、救い。

BG箱

 ご近所の復権。
本ミニ斎藤環著「心理学化する社会 なぜ、トラウマと癒しが求められるのか」
p.185-186
 例えば劇作家の別役実は、現代における「中景」の喪失について語っている。「中景」とは、家族や地域社会といった共同体的な対人距離で構成される世界のことだ。これに対して「近景」は身近な対人関係などを指し、信仰や占いなどは「遠景」とされる。いまや近景と遠景を媒介する「中景」が欠落し、近景と遠景とがネットワークを通じていきなり接続されることになる。
 「中景」。
 私的には、家族など身近な個人関係/金銭関係が近景、地域社会やマナーが中景、政治や理念が遠景、っていう感じがするなぁ。
 ということで、今回は
  → 『宗教と社会、近景編:お寺の経済学』
  → 『宗教と社会、中景編:人の集まるお寺のつくり方』
  → 『宗教と社会、遠景編:宗教常識の嘘』
と分けてみたのでした。

BG箱

 色目かもしれないけれど、この「人の集まるお寺のつくり方」は、「企み」や「商法」ではなく、人間味あふれた「反省、自戒」と「衆生のための在り方の模索」が感じられて、心あたたまるいいお話も豊富だし、好感持てる意外なオトク本でありました。(価格は別にして)

 だいたいが、金儲けを前に出したうさんくさいノウハウ本かと思っていたもので…。

 …あれ?
 出版社の ネット鎌倉新書 のサイトがうさんくささ全開になっているのは… ナゼ!?

      うわ〜ん、信じらんな〜い tear_flow




ついでに、こんな記事はいかが?
仏の力
 仏教徒は幸福度が高く、性根も穏やかです@米国
 瞑想が扁桃核を制御する 〜 ポール・エクマン
2003/05 BBC News Buddhists 'really are happier'
 Scientists say they have evidence to show that Buddhists really are happier and calmer than other people.
2003/05 Ananova Buddhists lead scientists to 'seat of happiness'
2003/05 Independent Can Buddhists transcend mental reservations?


メタル



[カテゴリ 科学に佇む2006年] : 2006年01月07日 
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