女性から卵子を採取する。 女性が卵子を提供する。男性から精子を採取する。 男性が精子を提供する。
うっかりさん(想像力の乏しい男性にありがち?)は、卵子の採取を「射精」程度にみなして云々してしまうことがある。
そりゃちょっと殺生なことでっせ。

男の体は、精子を外に出すようにできている。
もとより精子も、外に出ることを前提にこしらえられている。
女の体は、基本的に卵子を外に出すようにはできてない。
卵子だって、お外に出る仕様にはなってはおりません。
人間の体にとって、えらい異様&無理なことを強いてしまうわけで。
「授かる 不妊治療と子どもをもつこと」
堤治著
朝日出版社 2004/10
p.26
体外受精、顕微授精になると、女性のからだにかかる負担は、ぐっと重くなります。
卵子を採取するというのは、精液を採るのとはわけが違います。おなかの奥の、卵巣にいる卵子を無理やり採るのですから、並大抵の苦労ではありません。
その無理なことを、どうやってやっちゃうんだろう。
簡単じゃないよ。
体内の卵子を成熟させるために、一ヶ月もかけて、毎日ホルモン剤を注射し続けて(気分や体調に変調をきたすこともある)、いよいよ卵子を取り出す際には腹に穴を開けて、吸い出す(おっそろしく痛い)。一種の外科手術。
『Woman 女性のからだの不思議 上』には、毎日自分でホルモン剤を注射し続けて卵子提供をはたした女性の話が紹介されている。
たいがいの本やウェブではなにやら無機的事務的に記して済ませてあることが多い卵子採取の手順&過程が、この『Woman 女性のからだの不思議 上』では、妙にリアルに生々しく詳述されている。(省略した”中略”部分にさらなるリアルが…)『Woman 女性のからだの不思議 上』
ナタリー・アンジェ著; 綜合社 / 集英社 2005/05
p.17-19
デロケアは三週間前から、ルプロンという人工のゴナドトロピン放出ホルモンの注射を始めていた。脳に強力な化学物質を与え、排卵周期を速めるのである。彼女は糖尿病患者が使うような細い針で一週間続けて太腿に自分で注射した。
[〜中略〜]
たいへんなのはルプロン注射の後だ。パーゴナルとメトロジンという二種類の注射に変えるのだ。卵巣のはたらきを活発にするための卵胞刺激ホルモンの混合剤である[〜中略〜]。こちらは皮下注射器に液体を吸い入れるときに、気泡が入らないようにしなければいけないので集中力が必要だ。また、ルプロン注射より太くて痛い。しかも、二週間にわたって毎晩お尻に注射する。 [〜中略〜] それに続いて胎盤の絨毛膜からつくられる絨毛性ゴナドトロピンを、これまた不気味なほど巨大な皮下注射器を使って自分で注射し、排卵の最終段階を刺激しなくてはならない。 [〜中略〜]
デロケアが手術台に横になると、酸素吸入と麻酔がおこなわれる。 [〜中略〜] 助手が足を台に固定し、性器にヨードチンキをたっぷり塗ると、[〜中略〜] 超音波診断装置を手術台のほうに移動させ、張形みたいな形の超音波プローブを手渡す。[〜中略〜] そこに針を装着する。それで準備のできた卵を卵巣から吸いとるのである。
[〜中略〜]膣に挿入し、子宮頸部をとりまいているふたつの膣円蓋の片方、すなわち膣の突きあたりまで差しこむ。針は膣円蓋の壁を突きぬけ、骨盤腹膜[〜中略〜]を横切って、卵巣に到達する。[〜中略〜]
麻酔なしにしてほしいという女性もときどきいるそうだが、結局は後悔し、ある時点で叫びだすという。
...以下つづき...

フィンレージの会
卵子の採取は、排卵誘発の副作用(死亡例や卵巣摘出例もあります)、採卵など、女性にとって多大なリスクをともなうものです。
副作用。
どんなものがあるんだろう。
いや、腹に穴を開けるだけでもえらいこっちゃと思うのだが、それ以上に、いったいどんなことになるんだろう。
卵巣過剰刺激症候群 (OHSS) う〜む。
あらぬホルモン浸しの目に遭った卵巣が、こう、えらいことになってしまうことがあるらしい。
Dr.Someyaの不妊症勉強室
卵巣過剰刺激症候群(OHSS)は排卵誘発剤とくに注射剤で問題になる最も恐ろしい副作用です。
ひどい場合には卵巣はすいか大くらいになり、痛みや食欲・便通に異常が出たりすることもあります。胸に水がたまるほどですと更に危険で、呼吸困難を起こすこともあります。
しかし本当に恐いのは血液の濃縮です。
重症化は命に関わることもあります。
血液ドロドロ。OHSS(卵巣過剰刺激症候群)・体験記録
卵巣が過剰に反応して腫れたり、腹水や胸水がたまる・血液がドロドロになる・呼吸が困難になる
下腹部の引きつれ・痛みがある・お腹が異常に張る・尿量が減る、息苦しい
今どき流行りのキーワードを打ち出すとよりわかりやすい?
卵巣とその周辺に、体内の水分が異常に集まってきてしまい、卵巣は水膨れに腫れあがるわ、腹ぱんぱんに水溜まるわ、おしっこ激減するわ、しまいには血管が詰まって組織が死に始めたり!
10人に一人は、採卵に挑戦するとこの状態に足を踏み入れると。
かなりの高率でないかい。
でもって、100人に一人は、入院せねばならないほどの重症に見舞われかねないのだと。
…今月の
脳梗塞。排卵誘発剤の副作用について @信州大の玉井真理子さんとこ
*死亡例*
1995年 30歳代前半 メーグス症候群
1995年 20歳代後半 腹水、卵巣腫大、脳梗塞
1996年 20歳代後半 脳梗塞、卵巣過剰症候群
1996年 20歳代後半 脳梗塞、卵巣過剰症候群
1999年 30歳代前半 脳梗塞、卵巣過剰症候群
血液が濃くなりすぎて、脳の血管が詰まり、死んでしまったと。
若いみそらで。

さらには、その後の卵子の出来具合を悪くしてしまう副作用に見舞われたりすることもあるらしい。
悪くすると、卵子採取のせいで、不妊になってしまうことも。

女性の体から卵子を出そうとすると、こんなリスクを覚悟しなければならない。
男の精子出しと同じレベルで語られたら、これは失礼極まりない話になりかねないのであって。
ねぇ、奥さん。

「授かる 不妊治療と子どもをもつこと」堤治著; 朝日出版社 2004/10
[bk1]
「リアル」さ「ナマ」さはさほどないけれど、抑えた平易な筆致で丁寧に説明してあって、聞き手と語り手の対話形式で進むところも絶妙に好感度高い一品。
個人的には後半の「子宮内膜症」のナゾがいろいろ面白く。
先鋭的治療法である「出生前治療」(お腹の中の赤ちゃんに投薬や手術をほどこす)についても述べられていて、大変興趣深く拝読いたしました。

![[ EP: 科学に佇む心と身体 ]](http://homepage1.nifty.com/NewSphere/transparent.gif)







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