


『水害の世紀 日本列島で何が起こっているのか』 森野美徳 監修, 日経コンストラクション編集 日経BP社 (2005/07)
『ジェミニの方舟 東京大洪水』 高嶋哲夫 著 集英社 (2008/7/25)
上掲書拝読。
紀伊半島の水害にあわせて読み始めたわけじゃないんだけど、たまたま水害騒ぎと重なってしまった。
先月末に、内閣府発表の『首都圏水没』レポートがスゴイと紹介して、
その際に拾った「水害関係書籍」数冊に目を通したしだい。

ほかに『都市水害対応ハンドブック』もゲットしたんだけど、これに関しては中身があまりにも最初から最後まで「箇条書き」すぎて、ろくに頭に入らなかった。.

まず、日経コンストラクションがまとめたこれ行きます。

『水害の世紀 日本列島で何が起こっているのか』
森野美徳 監修, 日経コンストラクション編集
日経BP社 (2005/07)
たまたま同時に別の日経コンストラクション編の本と日経アーキテクチュア編の本を拝読しているのだけれど、まー日経の土木・建築関係のムックは面白いわ!!

出版は2005年。内容は2004年の大きな水害をメインに、日本および世界の水害の状況、データ、メカニズム、治水の歴史、地域で行う防災&復旧などについて、カラー写真満載の大判ムックでこれでもかと繰り広げてくれる。かなりお腹いっぱいになります。
●日本の降水量は、世界平均の2倍!しかも梅雨と台風に集中する!
●日本の川は流量の変化が超激しい。利根川は洪水時には1000倍に!
洪水騒ぎになる流量は、イギリスのテムズ川で流量8倍、欧州ドナウ川4倍、アメリカのミシシッピ川で3倍。
日本の利根川は、平気で多いときに流量1000倍まで膨れ上がる。
ナニコレ全然次元が違う。

●市街地化が進み、洪水時ピークの水量も増水の速さも段違いに!
●都市部の川は天井川が多すぎる!
居住区より河床が高い「天井川」。無理やりばかでかい堤防を作って、屋根より高いところを流す「天井川」。
で、世界の主要都市と比較しているんですが、「天井川」がこんなにたくさん通っているような都市は日本だけだ!的な調子になってます。
天井川に関しては、もう一冊の『東京大洪水』のほうで、こんなくだりまで拾えたりしてます。
『ジェミニの方舟 東京大洪水』
p7
この辺りは海抜ゼロメートル地帯で、町は川の流れよりも低い位置に広がっている。小学校に入るまで、川は地面より高いところを流れるものだと信じていた。
いったん決壊すると、強制的にポンプで排水しない限り、何ヶ月でも住宅街は水没したまんまになってしまう、それが今の東京。

●日本の治水は進み、水害の面積自体は減ってきている
●ところが、水害面積あたりの被害金額は近年うなぎのぼり!
あ、このうなぎのぼりで掲載されているモノと同じグラフが国土交通省のサイトに上がってる。
┗水害被害額および水害密度等の推移
農地や山野より、都市部や宅地などの金かかってる地域に洪水が来てる。
被災者の実体験を報告する声も数々収載されています。
●耐火金庫の電子ロックが水にやられ、ようやく開けられたのは半月後。中身グシャグシャ。
●かんじんの排水ポンプ自体が水没して機能せず!
... 以下つづき...
●土砂崩れ、堤防決壊、住宅被災の写真の数々!
●堤防決壊のメカニズムも図解!
土建専門の月刊誌を出版し続けてきた日経コンストラクションですから、頼もしい土建視点が写真にも図面にもビシビシあらわれます。
堤防決壊シミュレーション、ダムの防災機能分析、「内水による被害」が特に大きくなる東京都・・・
●線路の下を洗堀され、コロリ転げて脱線した電車車両の現場写真
●みごとに落橋してしまった北海道神恵内(かもえない)の大森大橋
ネット上ではあまり良い写真が拾えない 大森大橋の悲惨な落橋状況 についても、本書では巨大な見開き写真で拝見することができます。
平成16年の 台風21号による高速道路の大規模な土砂災害 も見ごたえのある写真が大判で載っています。
●94年~03年の10年間に水害・土砂災害が発生しなかった日本の市町村は、わずか3%!
97%は被災している。
でもって、半数以上は10年間に10回以上被災!
見開きで日本地図が掲載されているんですが、被災地域だらけで全国まっかっかです。

●日本列島は80年代から急速に温暖化が顕著になった
ゲリラ豪雨の多発にしても、単なる都市部のヒートアイランド現象とかにとどまらず、気温の上昇で「気象が熱帯地方化」した中のマジ「スコール」みたいなもんなのかと思えてくる。
●最近、年毎の年間降水量の変動が大きい
干ばつが来たかと思えば、翌年は大雨被害。
昔のゲームで『シムアース』好きだったけど、ちょっとでも地球の気温を上げすぎてしまうとバンバン巨大台風が発生してワヤだったもんな・・・

当時のシンプルな『シムアース』を始めとして、災害図上訓練みたいな、非常時に備える知識になるようなシンプルゲームは、どしどしふつうに携帯機やモバイルゲームでプレイできる/させるようになっていればいいのにね。

●地元の古地図をチェックして、水害を受けそうな地域を洗い出せ!
転入転勤新築移転で、先祖が暮らした土地ではない場所に住む人が急増している日本。その場所はかつてはどのような場所だったのか、古地図を見ておくのが吉だそうですよ。
かつて水田だった地域は水害を受けやすい。
神社や仏閣は水害を受けにくい場所に祀られる。
地名も古地図を見ずして安易に信じてはなりませぬ。
「希望が丘」という名で売りだされた造成地の隣が「沼間」という地名で、実は「希望が丘」は昔は沼だった、なんてなオチも実在します。
●地域の水防団は機能しているか!?
転入転勤新築移転で、地元共同体が弱体化していく中、「水防団」の弱体化も著しい旨、指摘されています。
健康にせよ防災にせよ、お上ばかりに依存していたら、確実に死亡率上がります。自助努力が必要。その自助努力部分を発揮すべき地域防護ボランティア「水防団」の人員が減り続けている。
平成22年版 防災白書 ~内閣府・防災情報
最近の水防そのものに対する認識の低下と相まって減少傾向にあることに加え,大都市周辺における団員の地域外勤務による昼間不在,あるいは季節的地域外勤務による長期不在のため,現実には出動できない団員の増加等が進んでいる。
●水害の戦後史
●水害キーワード集
スーパー堤防とは何か、捷水路、地下調節池、湿舌そのほかについても、ぬかりなく基礎知識解説掲載。
大判ムックでカラー写真満載、お腹いっぱいの日経コンストラクション編『水害の世紀 日本列島で何が起こっているのか』でした。

でね、でね、内閣府発表の『首都圏水没』レポート や、上で紹介した『水害の世紀 日本列島で何が起こっているのか』を踏まえた上で、こちらの災害小説を読むとこれまた面白いんだ!

『ジェミニの方舟 東京大洪水』
高嶋哲夫 著
集英社 (2008/7/25).
p69
「自然災害は、”想定外の塊”です。いやむしろ、想定できることのほうが少ない。様々な要素が重なり合って、想像できないほどの大惨事を引き起こすものなのです」
想定外! 東日本地震災害よりはるか以前にこのフレーズ!
p254
一歩外に出て、玉城は立ち止まった。と言うより、身体が強ばり動くことが出来ない。横殴りの雨が顔を打ち、痛くて呼吸も満足にできない。数時間前より、風は明らかに強くなっている。風速は40メートルを超えているだろう。天から降ってくる海水混じりの雨と、防風で巻き上げられる地上に溜まった泥水とで、視界はゼロに近い。
設定は、東京の間近でいきなり二つの台風が合体、超巨大台風となって東京直撃!荒川決壊!
スーパー堤防上の建設途中の巨大マンションや、洪水に飲まれる民家で人々はいかにこの危機を乗り切るか!
p10
スーパー堤防とは、土手幅を町側に約百五十メートル延ばし、なだらかな丘に造成してある地区だ。増水による水流が土手を破壊して、街中まで流れ込むのを防ぐものだ。しかし工事は大規模になり、百メートルにつき三十億円の工事費がかかるともいわれ、まだほんの一部しかできていない。
スーパー堤防に発生する液状化現象!
地盤の液状化は地震でだけ発生するわけじゃない。巨大マンションが強風で振動し、その揺れが直近の地盤をユルユルにしてしまう!
洗掘が進む足元、そして、強風にあおられ大きく回転する巨大クレーンジブの恐怖!
p351
「東京駅や上野駅と同じ現象が起こるということ。東京駅は、建設時より地下水位が上昇したのよ。だから、駅舎が浮き上がるのを防ぐために二百キロのアンカーを百三十本も埋め込んでいるの。上野駅は三万三千トンの鉄板を敷いてるって、聞いたことがあるでしょ」
おおっ。土建心をくすぐるフレーズもあちこちに散りばめられております。
江東区や荒川区の人、ご近所の天井川が決壊するとこんなことになっちゃいますよ!
深夜の強風&大雨で視界も定かでない中、どこに避難できますか!?
もひとつ言うと、この小説、参考資料の中の一冊として、前半に紹介した日経コンストラクション『水害の世紀 日本列島で何が起こっているのか』を挙げているんですよね。そりゃ『水害の世紀』を読んでからこの小説読めば、面白いに決まってる!

※ なお、この小説、台風の規模を大きく想定しすぎかもしれない・・・ありえない台風感が、ちょっと(ry 水害の規模自体はあり得るんだけど。

さても、少し追記をしておくと、上掲書籍らは、2010年より前に出版されています。
今般話題になっている大規模土砂崩れの「深層崩壊(しんそうほうかい)」は、まとまった調査が初めて報告されたのが去年、2010年。つまり、2010年より前の記述である上掲書籍らには、深層崩壊についての情報は含まれていません。
それと昨日、NHKスペシャルで「深層崩壊」を含めた紀伊半島の『緊急報告 記録的豪雨の衝撃』も放送されていました。
ということで、補足の意味も込めて、少しだけ「深層崩壊」+αについて、以下に付記しておきます。
■ 深層崩壊
┗ 表土層だけでなく、深層の風化した岩盤も崩れ落ちる現象
■NHKスペシャル
「NHKスペシャル牛山先生:災害への備えは、避難訓練をすることや、非常持ち出し袋の準備をすることばかりではない。それよりも、まず、自分の住んでいるところがどんな場所なのか、どんな災害が起こりうるのかを知ることが重要。」
■国土交通省

2011/04 EurekAlert Some people's climate beliefs shift with weather
地球温暖化を信じるか信じないかは最近の暖かさしだい
地球温暖化とやらは、いつもより暑いときに限って実感するものであるらしい。
実際は、地球温暖化は、暑くなるだけじゃなく、気候全般が乱調になるわけで、干ばつもあれば寒波も来る。そしてトンデモない豪雨もやってくる。
2011/04 Climate change poses major risks for unprepared cities
気候変動によって、対策ができていていない都市は危険にさらされる
2011/04 EurekAlert Unprepared cities vulnerable to climate change
世界の何十億人もの都会の住人が、熱波、海面上昇などの異変でヤバいことに
世界的なスケールで集計すると、世界の水害は80年代以降に急増している。(~『水害の世紀』)
日本では、水害を受ける「面積」のほうは減ってきているけれど、都市型水害でこうむる被害額のほうは、うなぎのぼり。
気候は乱調化し、国土のいたるところに土砂災害フラグの乱立。
備えあれ。
過剰じゃなくていいから、最低限できる自助努力だけでも、備えあればあるだけ、憂いなし。


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