[ EP: 科学に佇む心と身体 ]

進化心理学,生物学,基礎,サイエンス,利他行動,事例研究 サイトマップPt.1 旧科学ブログPt.3 楽屋のブログ twitter
用語・記事・情報庫 無料翻訳掲示板 昨日: 今日:

ゴリラを呑み込む異文化確執

カテゴリ[科学に佇む2005年] 2005/12/04
ゴリラ
 『ゴリラ』 山極寿一著
 東京大学出版会 2005/05


 この中で述べられている”日本と西欧とで霊長類研究のアプローチが異なっていること”については
  → 『異文化の科学、科学の異文化、価値観の併存』
のほうで少し。

 それより、そしてこの本のメインの霊長類研究自体より、強く私が興味を惹かれたのは、後半に記された「国立公園のゴリラたちを狩り殺してしまった現地民の、彼らの側の理屈」

 カフジ・ビエガ国立公園@コンゴで、観光資源としてヒト慣れ&餌付けした貴重なゴリラの群が、ただでさえ絶滅の危惧で保護すべきゴリラの群が、内乱のどさくさの間に、現地民によって勝手に狩り殺されてしまったと。
 密猟。
 しかも、それは我々部外者が想像しがちな
  ・金目当てで
  ・ならずものたちが
  ・無垢な動物たちを
というような浅薄なものではなく、実に異文化間交渉の悪しき事例、現地民の自然な”状況解釈”が、ほかならぬゴリラ殲滅を招くことになってしまっていたという…。

...以下つづき...

〓〓〓 EP 〓〓〓

●国立公園は、以前は狩猟採集民のバトゥワの人々が住む土地だった。
●国立公園ができたせいで、彼らは突然、補償もないまま長年住んでいた土地を追いだされる。
●はじめのうちは、公園周辺の慣れぬ土地で慣れぬ畑仕事の手伝いをするなどして暮らしていた。
●不況でその仕事もなくなると、いきおい密猟で食いつなぐようになる。
 (彼らにしてみれば昔の仕事に戻っただけ)
●国立公園の意味も、追い出されたわけも、猟をしてはいけない理由も、
 彼らにはじゅうぶん伝わっておらず、理解・和解の努力もなされぬままに、
 現地民はつぎつぎと、密猟のみならず薬草取りで公園に入った者まで逮捕投獄されていく。
●内乱で、監視体制がボロボロになったとき、まっさきにゾウが皆殺しにされたのは、
 「いつも公園内からゾウが我々の畑を荒らしに来るのに、公園はシカトで放置していたから」
●内乱で、監視体制がボロボロになったとき、現地民たちがゴリラを目の敵にしたのは、
 「観光の目玉になっているゴリラを抹殺すれば、公園がつぶれて昔のように暮らせるだろう」
 と考えたから。
●動物保護をウリにする公園が、その姿勢ゆえに密猟行為を招いていた、
 地元との折り合いを全然成立させていなかったゆえの、当然の帰結。
●加えて法律改正による部分的な猟の解禁が、「昔どおりの猟」をさらに誘発し…。

 いろいろな政治的・社会的要因が、互いに食い違う理解のまま、稀少動物の命を踏みにじっていく…。

暗BG〓〓〓〓〓〓〓〓

 この事件について、リファレンスというか、顛末をよりじっくり紹介してくれている日本語文献はどこかにないだろうか。
ネット カフジ・ビエガ国立公園(京都大学人類進化論研究室)
美しい自然に生きるゴリラを見せようと、1970年代からゴリラ・ツアーが行われてきました。初代保護官のアドリアン・ディスクリベールがはじめ、今でも2つの人慣れしたゴリラ集団が観光客の訪問を受け入れています。

 「今でも」。
 内乱当時、わずか1つのグループ、それもあまり人に慣れていないグループ以外は、密猟の犠牲になった。「今でも」のゴリラたちは、その生き延びたグループと、新しく人慣れにしたもう一つだったと思う。

 あ、あった。
 当該書『ゴリラ』の著者・山極寿一氏@京都大学も寄稿している。
ネット ポポフニュース2号 1997年(京都大学人類進化論研究室)
10月の中頃になると東ザイールに内戦が勃発し、戦火は南のタンガニーカ湖周辺から急速に北へ飛び火して、ポポフの活動拠点に迫りました。 {中略} ルワンダにもどるわけにもいかない難民たちは、一斉に国立公園内へ逃げ込むことになったのです。 {中略} すでにゾウが34頭殺害されたという報告も出ています。

ネット ポポフニュース3号 1998年(京都大学人類進化論研究室)
内乱勃発後の半年で150頭以上のゾウが殺され、他の野生動物の被害も甚大な規模に上っています。国立公園の標高の高い山地林では各地でゴリラが殺されており、長年観光客に親しまれてきた有名なシルバーバックのムシャムカも不遇の最後をとげました。

ネット ポポフHP


暗BG〓〓〓〓〓〓〓〓

 ゴリラをはじめとする、人間近縁種はのきなみ絶滅の危機にさらされている。

右画2005/09 BBC News Apes 'extinct in a generation'
大型類人猿が絶滅の危機 国連環境計画が警告
2005/09 ヤフージャパン(共同通信)

中央アフリカのゴリラやチンパンジーを脅す密猟、伐採及びエボラの発生
2005/08 EurekAlert Poaching, logging, and outbreaks of Ebola threaten central African gorillas and chimpanzees

類人猿を絶滅から救え 生息国が保護計画作り
2005/08 【日本語記事】  京都新聞 (共同通信)

類人猿保護に協力を 保護組織作り、募金集め
2005/06 【日本語記事】 山陰中央新報(共同通信)
ネット GRASP-Japan:大型類人猿保全計画日本委員会

2割以上の霊長類が絶滅するぞ 現存625種中
2005/04 BBC NEWS | Science/Nature | Quarter of primates face abyss
最も危うい25種はこれ
2005/04 EurekAlert Primates on the brink

密猟がボノボの社会生態を破壊していく
2005/02 New Scientist Bonobos dying as they flee hunters

コンゴ内戦後の希少種ゴリラ、なんぼか殖えているかも
2005/01 EurekAlert Population of rare gorillas may be increasing in war-torn Congo

人間に喰われるボノボ 絶滅するぞ
2004/12 BBC News Congo poachers leave bonobo at risk

右画失われた霊長類 絶滅してしまったらしいウォルドロンの赤コロブス
 大規模な生態系崩壊の予兆@西アフリカ
2004/08 スミソニアン動物園 Requiem for a Primate

ラングールモンキーの危機
2004/08 BBC News Vietnam monkey faces extinction
The Delacour's langur (Trachypithecus delacouri)はもう300匹しか残ってない
 まもなく絶滅するだろう
2004/08 EurekAlert Critically endangered monkey species plummets more than 50 percent since 1994

エボラでゴリラが死に絶えたのか
2004/08 EurekAlert Scientists fear new Ebola outbreak may explain sudden gorilla disappearance

チンパンジーに「予想上回る」危機 50年後に絶滅か
2004/06 cnn.co.jp/ロイター

霊長類の絶滅は時間の問題
 フェンスの設置で霊長類を絶滅の危機から救え 〜リチャード・リーキー
2004/05 BBC News Fences 'can help apes' survival'
2004/05 Wired Great Apes Up Against Great Odds
2004/05 Independent Online World's Great Apes are running out of time

ローランドゴリラの生息数、5000頭を割りました 10年で7割減ってます
2004/03 BBC News Lowland gorilla numbers plummet
2004/03 EurekAlert Eastern lowland gorilla population plummets 70 percent since 1994

オランウータン絶滅まであと20年
2004/01 BBC News Orang-utans 'may die out by 2025'

類人猿保護で政府間組織 アフリカで閣僚級会合へ
 対象は越国境分布するゴリラ、オランウータン、チンパンジー、ボノボの4種類
2004/01 ヤフージャパン(共同通信)


挿画


日本と西欧とでは、文化的にサルの位置・意味合いは異なる。
 → 『里のサルとつきあうには』
  ●野生動物の中でも住民にとっては特別な位置を占めるニホンザル
 → 『めぐりめぐってブッシュ・チンパンジー』
  ●合衆国や欧州にはネイティブのサルがいない
  ●地元のサルとともに発展してきた中国や日本とはサル観がかなり違うらしい
 → 『異文化の科学、科学の異文化、価値観の併存』
  ●社会の定義と見方において、日本の霊長類学と欧米の霊長類学の間には根本的なちがいがある。

その差が、相互補完的にいい方向に働けばいいのだけれど。
でも、自然破壊と生態系崩壊の勢いにはとうてい及びようもなく…



メタル


TwitterへTwitterへ「読んだよ!!」とつぶやく [カテゴリ 科学に佇む2005年] : 2005年12月04日 
* * *

→ 上掲のお話についてのコメント

→コメントを送りますか?

 → コメント送信ページに進む

 → Twitterもあります:Twitter iTatazm [たたずむ]

  コメントするときは、お話の日付を考慮に入れましょう。
  突進したのに相手は古い日付の記述だった、みたいな食い違いがたまに発生しています。

★START-POINT

筆者:雨崎良未
XML RSSフィード
→ ブログ新着通知(RSS)の見方

→ 併設ブログ 楽屋【Dorm B】
→ 併設ブログ 旧【科学ブログ】
→ Twitter:iTatazm [たたずむ]

進化心理学 併設サイト
【巨大記事庫】
→ 記事庫の新着・更新情報

→ 最近の主なコメント
→ トラックバック類
→ 科学なポッドキャスト

お気に入られ記事

etc.

amasakiさんの読書メーター
なかのひと
フィードメーター
科学学問