
『二本指の法則 あなたの健康状態からセックスまでを語る秘密の数字』
ジョン・マニング (著)
早川書房 (2008/11/21)
[ Amazon ] [bk1]
この本は、関係する分野の研究者には、シンパシーを持って読んでもらえる内容なんだろうと思う。が、一般向けのような、ポップサイエンスのような、お手軽い装丁で出すのはいかがなものかと感じてしまう。ハードカバーで、大衆に媚びない専門書の堅さを持ったデザインのほうが(売れ行きをあげねばならないという採算上のしがらみを考慮に入れなければ)ふさわしかったんじゃないだろうか。
記述されている内容が専門的すぎて一般向けではない、という意味ではない。書きようは丁寧で真摯、訳文も読みやすいし、科学ファンに向けた書き物として質も高い。
でも、いざ大衆向けのデザインで出版されるとなると、「そうかぁ?」と疑問を持ってしまう。
著者のスタンスが、そこらにある科学本の中でもかなり異色なんだ。
この異色さは、前に紹介した
に近いものがあるような気がする。
自分が抱えている研究者としての現状と思いを、読み手にべったり押し付けるような。言わば 嘆願系 とでも言うか・・・。
「これはこうなっていたのだ!」「こう見なすべきである」「〜〜を明らかにするべく我々はこの研究を行った結果・・・」みたいな、テストステロン多めの科学者がよくやる大上段に振りかぶったエライゾ啓蒙サイエンス的な物言いではなく、ただひたすらに、「見てみたところ、こんな結果が出てしまった」「これらから、こう推察するしかないような気がする」「この結果は、どう考えればいいのだろうか」ただひたすらに、これでもかこれでもかこれでもかと、ありたけの資料と問いを並べ立てて、見てくれよと読み手にすがってくる。
著者前書きより:
私の主張のなかには、議論を呼んでいるものもある。正式な検証を行なっていないので、時期尚早だという人もいる。けれども、私がこの全体像の枠組みをしめそうと思ったのには、二つの理由がある。まず、私がただ単に既成事実や状況証拠、直観からわき出てくる考えの流れに逆らうことができないからということ。もうひとつは、あなたを事実と着想、そして情熱でできた殿堂にいざない、あなた自身の意見をまとめてもらいたいからだ。
読者に丸投げしているんですよ。
マジ珍しい書きようだ。 「二本指の科学でセックスがわかる!?」とおもしろサイエンスチップスを期待して手に取ったポップサイエンス好き読者なんかはキツネにつままれまくって感想書けないんじゃないか、みたいな。だからアマゾンの『二本指の法則』にはカスタマーレビューが一個もないままなんじゃないか、とか。
ありたけの資料と問いを並べ立ててくれても、邦訳書の装丁は「あなた自身の意見をまとめ」られるほどの高レベルな読者が勇んで手に取る感じにはなっていないので、残念なミスマッチがいろいろあったんじゃないかと妄想してしまう。
ここしばらく「科学に基づく教育を」とうたういろいろな本で「自分に都合の良い話ばかり並べたてて、偏向した自説の中に読者を塗り込めようとする」厚顔無恥事例が目に余っていただけに、教育系とは全く逆の、このジョン・マニング『二本指の法則』の、「すべてをお見せしますから」的な、開放系で読者に判断を丸投げする甘えきったとでもいうか、無防備な正直さはやたら新鮮。

本書『二本指の法則』の内容は、基本的に、先月紹介した
周辺の研究や知見、そしてさらなる詳報の列挙になる。
●体躯のシンメトリー度合いと、指比率の関係
●発端となるトリヴァースとの研究の話
●男性の生殖能力を測る指標としての指比率 ・・・
... 以下つづき...


乙だったのは、指の比率タイプを指す言葉として、著者マニングは「男型」「女型」と性別呼称ではなく「カサノヴァ型」と「メングス型」という呼称をベースにしていた点。いずれの型も、男にも女にも見られうるわけで、バロン=コーエンが「男脳」「女脳」ではなく「システム脳」「共感脳」という呼称を選んだ経緯に近しい気配を感じる。
そういえば、
『二本指の法則』p.22
指をそろえて、手のひらを見てほしい。注意するのは、二番目と四番目の指(一番目の指は親指、二番目が人差し指。四番目が薬指)だ。人差し指と薬指の付け根に、横じわがあるだろう。人差し指には一本の横じわ、薬指には数本の横じわが入っていると思う。手のひらにいちばん近いしわを選んだら、指の幅のちょうど真ん中の地点を決める。ペンで印をつけてもいい。そこから指の先端までを測って、ミリ単位で数値を出す。これを、右手と左手の両方の人差し指と薬指で行なう
これに準じて自分の指比率を見てみたところ、薬指が人差し指より数ミリ長めだった。
普通に指そろえてパーにしただけでは、自分の薬指と人差し指はほぼ同じ長さに見えていたので、へぇ〜だった。
そしてさらに彼の指話は広がっていく●各民族における指比率の比較と性差の調査
●東アジアの民族では胎内のテストステロン濃度が高いっぽい
●カサノヴァ型の女性は男の子を生みやすい
●カサノヴァ型の女性は人を信頼しやすく、協力的
●テストステロンは自閉症とどう関係するのか
●カサノヴァ型は風疹の発症率が高い
●色白の女性はメングス型に多い
●カサノヴァ型は、徒競走が得意かもしれない
●薬指は、クジャクの尾羽のような機能を果たしてはいないか
●同性愛者では指の比率はどうなるのか
これでもかと多岐多方面からのありたけの情報を列挙していく。
・もっと調査が必要だ。研究してくれ。
・これらのデータからどのようなことがわかるのだろう。
・意見を聞かせてくれ・・・・
火山学者の岡田 弘氏が、
その伝で行けば、この『二本指の法則』は、指の比率というワンダーに見初められ、困惑しながらもワンダーに取り憑かれ熱に浮かされた男の独り語り、とも見える。ほんとに、熱に浮かされたような、とめどもない、依存的な・・・
読むほうにしてみれば、「だからどうせいと言うんじゃ
」的な迷惑を感じたりもするのだけれど、しかし、マニング氏の体当たり的な書きようは、一人のひたすらな科学者の生きざまとして、いい味を出しているのかもしれない。
とりあえず、この本は、これから先何かできることを探している人にはオススメ。
クラスメートやクィアのお友だちの指の長さを調べてみるのも面白いし、研究の課題として取り上げることができるツボもたくさん紹介されている。
これから何かを発見できるかもしれない、そんなルートがいろいろ見えてくる。
指の比率とその科学については:
研究者の立場から本書について述べられている感想文:

【追記】薬指が長い男は危険運転したり違法駐車したり・・・? 〜ドイツ
2009/09 Ananova Men with long ring fingers drive faster
Men with long ring fingers are more likely to drive too fast, overtake dangerously and park illegally, according to new research.

![[ EP: 科学に佇む心と身体 ]](http://homepage1.nifty.com/NewSphere/transparent.gif)







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