シリーズ『女と男』最新科学が読み解く性
第1回「惹(ひ)かれあう二人 すれ違う二人」
前半はこちら。
今回はこの番組の「後半」についてです。
「前半」は、ヒトにおける恋のお熱は数年経つと冷めてしまうんだよ、という「恋わずらい」の科学のお話でした。
番組後半:
こうした恋のメカニズムは、大昔は良かったかもしれないが、現代人にとっては今や障害になってきている。
夫婦となる目的は子作りだけであるとは限らない。
現代では、男女で安定した対を形成しつづけるほうが有利だったりする社会状況だもんね(少なくとも今までは)。
関連記事:
心のきずな、盆に戻らず 離婚すりゃいいってもんじゃない
離婚後の幸福度はけして離婚前のレベルには戻らない
2005/12 EurekAlert After divorce happiness levels decrease and may never completely rebound
仲良きことは幸福かな 人間は、つくしつくされる関係で、より幸せになれる
2005/12 EurekAlert People in committed relationships are happier
資産の確保、社会的信頼の構築、子孫への伝承・継承など、安定したステータスにあるほうが、管理しやすいし、管理されやすい、等々。でも、そういう細かい要件をいろいろ説明している余裕はない。さっさとはしょって次のテーマに走ってしまう。
■なぜすれ違う? 女と男
離婚大国アメリカ。
【ワシントン州立大学名誉教授 ジョン・ゴットマン(心理学)】登場
35年に渡って夫婦がすれ違う原因を科学的に分析している研究者。
3000組の夫婦を分析したところ、すれ違いの原因は会話のパターンにあると見た。
ゴッドマン曰く、15分の夫婦間会話を分析するだけで、その夫婦が4年以内に離婚するか85%の確率で予測できますよ
日頃の不満を口にしても、喧嘩になる夫婦とならない夫婦がある
その違いこそが、夫婦関係が長続きするか否かの鍵となる
相手に対する批判を口にするのはまずいパターン
自分の不安を伝えて援助を乞えば問題ないのに相手への攻撃を行ってしまう
批判(攻撃)されれば防御(反撃)するしかない 協力に向かわない
しまいには相手を見下す発言をする展開になってしまう>不毛な口喧嘩
批判・防御・見下しの繰り返しで、お互いを避けるようになる
この John Gottman 先生は、2004年論文の先生ですね。
2004/02 New Scientist Mathematical formula 'predicts marriage breakdown'
将来離婚するか否か、計算でずばりあててご覧にいれます
2004/02 Nature Science Update Maths predicts chance of divorce
汚い批評を無視することは、長期にわたる愛の秘訣なのである。
Ignoring nasty comments is secret to long-lasting love.
番組では予測率85%になってましたが、4年前の記事では94%(!)とおっしゃってました。修正入ったのかな。で、適切な対応を指南すれば、離婚の危機にあるカップルの半数以上は、よりをもどせるんだそうな。
離婚しなくてすむ方法がある!というわけですね。
... 以下つづき...

■なぜ繰り返すのか? 夫婦げんか
お互い良い関係を保ちたいと思っているのに繰り返し喧嘩に陥るのはなぜか
会話をしているときの心拍数を見てみると・・・
男の心拍数は口論のヒートアップとともにうなぎ登り!
しかし、女のほうの心拍数は、口調とは裏腹に平常のまま
心拍数から見る限りでは、男のほうが感情的になっている
いやー、しろうと夫婦さんがふつうに会話するだけでいきなり口喧嘩に陥ってしまうのが、異様になまなましくてたまんないですね。実験協力者の夫婦は、旦那が家計を握っている関係で、奥さんのクレジットカードの使い方にキレてしまった、というパターン。米国では財布の紐は旦那が握っていることが多いのです。
で、このシーンの中、「一般に、男より女のほうが感情的だと思われているが、実際には喧嘩で激高するのは男である。女は子供ができると感情を抑えることに長けてくる」みたいな簡単な説明があったと思います。
どっちかというと、「論理が通じなくて激高するのが男」「気持ちが通じなくて取り乱すのが女」のような気もしますが。それはそれとして。
基本的に進化心理学をベースにヒトの恋愛を読み解く図式にしている関係で、番組ではゴットマン氏の研究の細かいところや進化心理学を語る上で傍系になる部分とかは、ばっさばっさ省略してます。ほんの一部しか紹介していない。
ここでまた木偶人形CGを使ったヒトご先祖さんの話にシフトする
育児に携わる女は、ホルモンの関係でストレスに強くなり気持ちを抑える能力も高まる
狩りが担当の男は、ささいな刺激でも感情的テンションが高まるようになっている
男が批判(攻撃)的な言葉を受けとると、戦闘態勢用のスイッチが入ってしまう
口論を一方的に打ち切る場合は、85%が男側が打ち切っている
戦闘モードが行くところまで行きかけると、本能的に会話を打ち切る
男は理性が保てなくなる間際で、会話を打ち切り離脱するのだ
男は女に比べて心拍数が早く上がり、落ち着くまでにも時間がかかる
進化で獲得したこうした違いが、すれ違いの原因となっていることが意外と多いのです
これは、「理性が保てなくなる」一歩手前で、離脱_できる_男の話。「これ以上はもう***」と感じた線を越えてもなお離脱せず、喧嘩を続けると、それはすなわち「手を出してしまう」ことになる。言語機能が吹っ飛んで会話できなくなり、抑制機能も吹っ飛んで、暴力。「抑えられない」。つまり、一歩手前で踏みとどまることができない男は、家庭内暴力をやめられないことになる。
「本能的に会話を打ち切る」なんて表現が使われていましたが、ふつうに「打ち切れない/突っ走る」男もいますので・・・ねぇ。
ちなみに、我が家は一方が何も不満さえも要求しなさすぎ、目標さえもない、喧嘩も状況改善も期待できないという地縛霊状態です。戦闘モードにさえもたどりつかない。
■男女関係を阻む 2つの要因
男が女の気持ちを読み違え、よけいなことをする
男は、女に比べて感情を察知するのがへたくそ
【ペンシルバニア大】 表情読み取りテスト
感情を判断しにくい表情について、女性のほうが他者の感情を早く正確にあてることができる
表情を読み取っている脳の性差を見ると、女は脳の一箇所(左脳側のみ)、男は脳の二箇所(左脳と右脳のパート)を用いている
男は脳を2倍使っても、女にかなわないのだ
女を選ぶときには男の視覚情報感度はアップするのに、日常の感情に関わる視覚情報には、男は鈍感だというわけですね。
もとより、感情の識別能力が鈍いという点は、「男脳/システム脳」や、男子に多い「自閉症」の特徴であるとも言われています。
男女で識別能力が異なるという話には、このようなものもあったりします。
女性は、赤ちゃんのかわいさを敏感に識別する
2009/01 PhysOrg Women know bonnie babies best
女性は、まるまる太った頬、大きい額、大きい丸い眼とボタン鼻の「かわいい」赤ちゃんを的確に選び出すことが本能的にできる。
しかし、男はどれが最もかわいい赤ちゃんなのか識別するのが下手くそなのである
番組では、男の性向の由来として取り上げるのはもっぱら「狩猟行動」だけに絞っていました。ほかの性淘汰とか、配偶者獲得競争とか、サル山争奪戦とか、いろいろな視点・切り口はすべて省略。大胆なほどシンプルな戯画でまとめています。
ここでいきなり「集団営巣シチュエーション」の木偶人形CGシーンにになる
女は部族のほかの女性と行動を共にし、会話を絶やさなかった
仲間のきずなを保つためには感情察知・感情開示が大事だった
男の会話様式は、狩猟用の問題解決型
ゴッドマン曰く、進化の結果、女は人間関係に積極的な性質を持つようになった
女は感情の共有を求める
男は問題解決の作業に必要な会話以外はしたがらない
んー、自分としては、その「感情共有/問題解決」の切り口の男女間の会話分析ならデボラ・タネンで決まりじゃないかーとか期待していたんですが、登場したのはゴットマン氏だったわけで、もう時代が違うのかなー。


『どうして男は、そんな言い方 なんで女は、あんな話し方 男と女の会話スタイル9TO5』 デボラ タネン (著) 講談社 (2001/02)
『わかりあえる理由(わけ) わかりあえない理由(わけ) 男と女が傷つけあわないための口のきき方8章』 講談社プラスアルファ文庫 デボラ タネン (著) 講談社 (2003/11)
┗原書は20年くらい前

さて、ここで番組は、実生活で役立つ情報の紹介に入ります。
■よりよいコミュニケーション そのコツは?
ゴッドマン曰く、男が会話じょうずになれ
全米各地で行っている講習会
社会の厳しい競争を生き抜くため自分を磨いてきた男にとっては、相手の気持ちを受けとめたり、敏感に感情を察したりするのは容易なことではない
まずは、妻に質問をしろ 相手を分析するな 批判も厳禁
ストレートに気持ちを尋ねるのだ
訓練の締めくくりには「あなたの夢は?成し遂げたいことは?」と問え
このくだりに関しては、別途あらためて丸一本番組を作ったほうがいいんじゃないかと思うほど、さわり部分しか紹介されていない。詳しく紹介すれば人生救われる夫婦が世の中たくさんいるだろうに、もったいない。
琴線に何かひっかかりを感じる方は、どうぞタネン氏やゴットマン氏の著作を覗いてみて下さい。




『夫が妻に暴力をふるうとき ドメスティック・バイオレンスの真実』 ニール・S. ジェイコブソン (著), ジョン・M. ゴットマン (著) 講談社 (1999/11)
『愛する二人別れる二人 結婚生活を成功させる七つの原則』 ジョン・M. ゴットマン (著), ナン シルバー (著) 第三文明社 (2000/03)
新装版『結婚生活を成功させる七つの原則』 ジョン・M. ゴットマン (著), ナン シルバー (著) 第三文明社 (2007/11)
『「感情シグナル」がわかる心理学 人間関係の悩みを解決する5つのステップ』 ジョン・ゴットマン ダイヤモンド社 (2004/2/20)

ここでちょっと、番組には関係ありませんが離婚がらみの記事をはさんでおきます。
離婚するのも遺伝子のせい? 双子研究から
2001/07 BBC News Genes 'determine divorce risk'
2001/07 New Scientist Divorce is written in the DNA
2008/09 【日本語記事】時事通信 遺伝子の個人差で離婚危機2倍=スウェーデン男性900人調査
2008/09 【日本語記事】読売新聞 男性の“離婚遺伝子”発見、「破たん」か「危機」が2倍
遺伝子「AVPR1A」は、脳内でバソプレッシンを受け止める物質をつくる
2008/09 【日本語記事】ワイアードビジョン 「男性の離婚遺伝子」は存在するか
2008/09 【日本語記事】スラッシュドット ジャパン 特定の遺伝子が結婚生活に影響を及ぼす?
アルギニン・バソプレシン(AVP)受容体を生成する遺伝子をヒト男性で調査
Commitment phobia gene 責任恐怖症遺伝子
結婚への男性の抵抗、遺伝子『欠陥』である可能性
2008/09 Discovery Your Cheatin' Heart: It's Genetic
2008/09 【日本語記事】Dr赤ひげ.COM 男性の結婚生活への向き不向きを決める遺伝子
無責任男の元ですね。

はい、閑話休題。

で、番組ですが、なんかね、前半は若いカップル向けの「恋わずらい」話で、後半は熟年夫婦/倦怠期夫婦向け、みたいな内容になってるんですね。
そして、番組はラスト、おもいきし未来の話で締めくくらます。
男女のパートナーシップ研究は、最新の宇宙開発でも注目を集めている
NASAが計画している火星有人飛行は片道500日!
どんなチーム編成が適切なのか、シミュレーション実験が繰り返されている
男だけだと競争心発揮しすぎでリスクが高まる
女だけだとリスクを避けすぎ
最強チームは男女混合だった!
女のコミュニケーション力と、男の目的遂行力が、良いコンビネーションを作り出す
男女の会話様式、もしくはどんな会話を求めているかの違いは、端的に医療現場なんかでもよく問題になります。
→ 男は実際的なアドバイスや最新医療情報を求める
→ 女は心の支えを探す
だもんで、病気の告知の現場とか治療判断の際に、タイプを読み違えて対処してしまうとトラブルになる。システム脳の人は「同情するより情報をよこせ!」、共感脳の人は「仕事より気持ちを考えて!」なんだよね。
相手の会話様式はどのタイプなのか、敏感に察知して切り替える。性差別にさえならなければ、ヒトの多様性理解の第一歩として、有効な知恵として生きていくのではないかと。

で、以上が
第1回「惹(ひ)かれあう二人 すれ違う二人」 シリーズ『女と男』最新科学が読み解く性
の後半でした。
シリーズ『女と男』は第1回から第3回まで、3本作られています。
次は、シリーズ『女と男』 第2回「何が違う?なぜ違う?」(性差医療/脳性差/学習や選択の性差)についてとりあげます。
つづく。
![[ EP: 科学に佇む心と身体 ]](http://homepage1.nifty.com/NewSphere/transparent.gif)







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