[ EP: 科学に佇む心と身体 ]

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恋わずらいの科学「女と男 1-a」NHKスペシャル

カテゴリ[科学に佇む2009年] 2009/01/30
やっとシリーズ3本ぶん録画を拝見できましたんで、以下何本か続けてアップいたします。



■NHKスペシャル 2009年1月11日放送
 シリーズ『女と男』最新科学が読み解く性 
 第1回「惹(ひ)かれあう二人 すれ違う二人」

●右画
・恋する女と男の脳では同じ場所が活発に働いていることがわかってきた
・同じように愛し合っているのに、違う場所が活動している事実も判明した
・こうした女と男の違いが、不幸なすれ違いを生む原因となっている

第1回は男女関係の秘密 「惹かれあう二人 すれ違う二人」

 なぜヒトはヒトを好きになるのか
 なぜ恋は三年で冷めるのか
 なぜ多くの夫婦は4年で離婚してしまうのか
 その謎を解く鍵は、頭の中の脳にあるのです
 実はこうしたことがわかるようになったのは、この10年ほどのこと


 おおっ。フィッシャー女史が登場するのか!? その手の話なら、まっさき彼女だよなー。

 番組は、妙な昼メロレベルの三文ドラマがはさまれる構成で、基本的に「科学的」すぎる印象を与えないように意図している。いきなり つぶやきシローさんがフィーチャーされてるし。
 お互い見知らぬ男女が、エレベーターの不具合で閉じこめられるというシチュエーションから始まる。
 ・・・この設定は、「不安や恐怖でドキドキする状況におかれると恋が芽生えやすい」という説を使うための伏線かと思いきや、全然そのへんとは関係はないままドラマは進行した。

この箇所へのリンク【ヘレン・フィッシャー】


■恋する脳 何が起きているのか?
・恋とは何か 脳の中を覗いてみましょう

【ラトガーズ大 ヘレン・フィッシャー】
 男女の恋愛の仕組みについて、30年に渡って研究しているフィッシャー
 研究協力者として、熱愛中の若いカップル登場
 MRIにかけられ、恋人の写真と無関係な異性の写真を見せられる
 恋人の画像に反応する脳部位を探るのだ
 反応は男女とも同じ箇所「腹側被蓋野(ふくそくひがいや)」に見られる
フィッシャー曰く、これは万国共通であり、これこそが恋の中枢なのである
 腹側被蓋野は「ドーパミン」を分泌 >喜びと快感が生じる >同じ状況を求めるようになる
 相手に夢中になる恋わずらいはドーパミンあってこそ


 やたっ! やっぱりフィッシャーさん登場!
  この先生はEvolutionary Psychology メーリングリストの老舗アクティブさんでもあります。
>Dr. Helen Fisher, Research Professor
>Dept. Anthropology, Rutgers U.
 日本でも彼女の書籍は大変有名ですね。今どきの恋愛科学の潮流を作った草分けの科学者さんだとも言える。下手な大衆向けポップ恋愛科学本を何冊も漁られるよりは、彼女の本をきっちり読んでおいてもらうほうが安心だ。これまでに「性の科学」に対して申し立てられたさまざまな異議や疑義に対して、彼女は長年応酬をこなしてきているベテランさんなんだ。しかと言うべきことや言うべきでない表現について、ひととおり心得た上で敢えてやっていなさる。

フィッシャーさんの「恋愛研究」については、別のページにまとめました。
 → 『 恋愛科学の世界ヘレン・フィッシャーHelen Fisher 』

〓〓〓 EP 〓〓〓

 さて、番組の内容に戻って。さきほどは恋愛で「活発になる」脳部位の話だった。お次は恋愛で「働かなくなる」脳部位があることが紹介される。

... 以下つづき...

〓〓〓 EP 〓〓〓

この箇所へのリンク【セミール・ゼキ】


【ロンドン大 セミール・ゼキ】と
【マックスプランク研 アンドレアス・バーテルス】登場
 恋をしていると、活動が抑えられてしまう脳部位がある。
 恋人の顔を見たときに活動が低くなる箇所は複数確認された。
 それは、扁桃体(へんとうたい)、頭頂側頭結合部(とうちょうそくとうけつごうぶ)など、ネガティブなものの見方や批判をを司る部位だった


 ゼキ図体ちっちゃ! こんな味わいのあるキャラの人だったとは。o
 ゼキさんは、ヒトの脳が「見える物」に対してどう反応するかを研究している人。

◆脳は美をいかに感じるか ピカソやモネが見た世界◆芸術と脳科学の対話 バルテュスとゼキによる本質的なものの探求
 『脳は美をいかに感じるか ピカソやモネが見た世界』 セミール・ゼキ著 日本経済新聞社 2002年(原書1999)
 『芸術と脳科学の対話 バルテュスとゼキによる本質的なものの探求』 バルテュス, セミール・ゼキ (著) 青土社 (2007/05)

●右画
愛、それはマジに盲目 〜アンドレアス・バーテル&セミール・ゼキ
2004/06 Telegraph Love really is blind...
 なぜ恋人や愛児の悪行を許してしまえるのか
 愛は前頭葉の理性回路をオフにしてくれます
 愛情の冷徹なる進化心理学
 なお、恋愛と子愛はほぼ同じ脳部位が反応する
 違いは顔認識部位、視床下部、心の理論
→ 2004/06 【日本語記事】『 愛を盲目にする脳の科学 』

審美性を生み出す脳機能に関する神経生理学的研究
2006/07 Mixing Memory : The Cognitive Science of Art: Beauty and the Brain
  川畑秀明 & セミール・ゼキ 2001-2004
 美しいモノ それなりのモノ 醜いモノ を見た脳のスキャン画像比較

憎しみの神経系 セミール・ゼキ 〜 Semir Zeki, John Paul Romaya
2008/10 PLoS One Neural Correlates of Hate
2008/10 WorldScience Thin line between love, hate? Science explains why
 脳スキャンで見ると、愛も憎しみも紙一重


 セミール・ゼキとヘレン・フィッシャー、両方をフィーチャーしていた記事もございます。

恋する心と脳神経 ヘレン・フィッシャーとセミール・ゼキ
2003/01 Sun-Sentinel Studies show that matters of heart do affect mind


〓〓〓 EP 〓〓〓

 はい、閑話休題。番組再開。

 恋人に対しては批判心が働かなくなる=つまり恋は盲目

 快感によって相手に夢中にさせるドーパミンのシステム、相手に対する否定的な気持ちを抑え込むシステム
 この二つのシステムによって、ヒトは恋愛相手を受け入れずにはいられなくなる。

■恋のメカニズム なぜ生まれた?

 なぜ脳にそのような仕組みが備わっているのかは、脳に潜む男女の違いを見ればわかる恋愛で活性化する脳部位には性差もあるのだ。

男は島皮質(とうひしつ)の一部が活性化する
 島皮質は視覚に関与する脳部位だ
 つまり、恋する男は特に視覚が敏感になる
 これは相手の女が健康な子を産みそうかどうかの鑑識眼なのだ


 基本的に、番組は正確さよりは「わかりやすさ」を出すように努めている。つまり、正確なところはわからないように、詳しくは述べないように、番組を作っている。それは番組の尺の問題もあるし、細かい話をしていたらそれこそ番組として成り立たなくなってしまうほど話が散漫になってしまうからでもあるだろう。正確さを出すことは番組では無理だとして、番組の目的は恋愛の科学が存在し進行していることを伝えることだから、・・・その妥協点として、カリカチュア的に単純化した路線にすることにした。それゆえに、カリカチュア的三文ドラマや木偶人形CGをもあしらってみた。全然この方面の研究事情に詳しくない人が、真に受けすぎないように、「こんな形で投げているんです」という暗示めいた宣言として、あのような味付けにしていた、まあ、そう考えていいだろう。

 ただ、もう少し表現として、PC的な配慮はできんかったんかいなase2・・・とは思ったけれど、「ダーウィンが来た!」とかでもけっこう平気でうかつな表現をしているNHKだ、あれでしゃーないんだろう。

 文化によって、美醜やかっこよさの基準はなんぼか違ってくる。その差異をよっこしてもなお、これだけは万国共通にモテる要素、というものは、ある。
 その代表的なものが、 「ウェスト=ヒップ比(レイシオ)」だ。

●画
【テキサス大 テファンドラ・シン(進化生物学)】
 腰のくびれの好みの世界的調査 ウェスト=ヒップ比
 黄金比は7:10
 女性の体を表した世界各地の美術品でも多くはウェストがくびれており、その平均は7:10
 比率は健康状態や妊娠のしやすさの目安である
シン曰く、昔から男性が女性を選ぶ際に役に立ったに違いない
 女性は初潮を迎える頃からウェストが細くなり、閉経を迎える頃から太くなる
 つまり、7:10は出産適齢期のサイン
 男性は女を一瞥しただけで評価をするようプログラムされている


 男は性的な物を「見る」だけで、たまんねーほど欲情が沸いてしまうようになっているからこそ、この世の男性向けポルノグラフィ産業は成り立つことができている。
 なぜくびれが”孕みやすいボディ”ってことになっているのかは、細いぶん腹部に妊娠による腹ボテを受け入れる余裕があるからじゃないかとか言われていたりするけれど、これは単に「妊娠していない」確率が高い指標ではないかと思われ。
 妊娠適齢期に、妊娠していなさそうなほど、かつ健康そうなほど、ウェストがくびれるような体質の人間が「選ばれると」ヒトは繁殖率が高まり、その性質が受け継がれる。
 妊娠していなさそうなほど、かつ健康そうなほど、ウェストがくびれている個体を好む性質の人間がその相手を孕ませると、そういう性質の人間が増えていく、と同時に、適度なくびれを好むおのれの性向を自画自賛する屁理屈も普及していく。

 男の性欲は、男の判断力を停止させ、あれこれ欲望解消の工夫をしまくってしまうように作用する。前段の話で「恋は盲目/批判脳が停止する」ってのがあったよね。その影響もあって、自分の性的嗜好を一人勝手に正当化したがる傾向がよく観察される。
 極端な例ではこれとか。
 リンク ■風呂で精子飲んでるの妹にばれた
 18禁レベルの話なので注意、このスレの 312,328,356 自己正当化っぷり無敵hyaaa

 で、性的嗜好の結果、繁殖してしまうようであれば、その嗜好は周囲や子孫に伝えられる方向になっていく。その嗜好の結果、マトモに繁殖できないようであれば、その嗜好は変態とか異常とか言われて忌み嫌われたりする。ミョーな性癖であっても、性欲で”批判脳”が停止しているからには本人的には「これは素晴らしくてたいへん高尚な趣味で・・・」などの幸せな妄想にひたることができていたりする。

 ああ、すまん、また閑話休題。

 男では視覚が敏感になるのだが、女は違う。
 女では脳の帯状回(たいじょうかい)が活性化する
 帯状回は記憶に関与する部位。
ヘレン・フィッシャー曰く、相手がいい父親になるかどうかは、見た目よりも記憶が判断材料になる
 その男は信頼できる言動をしているかどうか

 恋する男女の脳の違いは、子育てにふさわしい相手の選別のために生じてき
 子育てこそが、生物として人間が恋愛システムを進化させた理由なのである


 はい、ここで、ヒト祖先が木偶人形のような造形のCGで描かれて登場します。
 ものすごいおおざっぱ、・・・というよりテキトーなシナリオと表現で、ほぼ「絵本」状態です。正確さを期してはいないんだよ、とこれで宣言しているように見える。実際、CGで表現されるくだりは、話の都合によって、集団営巣していただろう生物が「核家族」として描かれたり、場面によっては「メスだけ」「オスだけ」の集団行動生物として描かれたり。あんのじょう一部の視聴者は、「狩猟採集民のこじつけに依拠しすぎ」と拒否反応を示していたりいる。
 この「視覚」と「信頼度」の性選択性差は、人類の起源近くの「半ばこじつけ」にまでさかのぼらなくても、「現代でも有効に作用している」ことを示せばけっこうじゅうぶんなんじゃないだろうか。でも、それだと番組の尺におさまらないような複雑な話になりかねない。「わかりやすく、NHK的な、まじめなポップサイエンス」を目指すと、ご先祖さん話に頼るほうが手っ取り早いのかな。

●右画
フィッシャー曰く、哺乳類の中でつがいで子育てをする動物はわずか3%
 子育てがたいへんだから、男と女が協力する
 そのために、恋愛システムが進化した

 「恋愛システムが進化した」とかいう表現を使うからややこしいことにもなるんだけれど。
 セックスを成立させるだけの求愛システムが、ちょい長めに作用したら子どもがよく育って繁殖率が高まった、というだけの話なんだけどね。で、そのヒト存続上、抜きがたい求愛現象が、”批判脳力”の低下のおかげで「恋愛は素晴らしい!!」というバラ色な自画自賛妄想に文化的にごちゃまんと修飾されて、今の時代に至っている。

 フィッシャーさんの話に関しては、詳しいことは彼女の本をいずれか一冊お読みいただければ、いろいろこの方面の論拠や研究が紹介されていますんで。このたびのNHKスペシャルはものすごい話をハショってますんで、番組だけで鵜呑みや拒否して済ませないよう、どうぞ。

フィッシャーの報告: 恋は18ヶ月から3年しかもたない
 ヒトの子は、3〜4歳になるとつききりの親の世話がなくても生きていけるようになる
 男と女のきずなは、子の成長が一段落するまでの期間限定仕様
 狩猟採集社会では、出産は4年ごとに起きる 恋はこの間だけは保たれるように進化した可能性
 そしてまた次の相手を捜し、遺伝的に多様な子孫を残したのかもしれない

世界58の地域のデータを調べたフィッシャー
 離婚は4年目がピーク

 恋には賞味期限があったのだ

 この「恋の賞味期限」話は、おもきしフィッシャーさんの十八番です。

この箇所へのリンク【追記&警告】

★ 注意して欲しいのは、恋わずらいは生理的に短期間しかもたないからといって、それで「別れていい」という話にはならないということ。
 例えば、生理的にウンチをしたくなったからといって、ところかまわずウンチしていいということにはならない。
 例えば、生理的にゴーカンしたくなったからといって、生理的に殴り殺したくなったからといって、思う気ままにフジョ陵辱や殺人をやっていいということにはならない。

 ヒトには原始的で哀れな性質がいくつも残っているが、そんなヒトでもいままでこの世でやってこれたのは、「やってはいけない」という文化的な歯止めがあったからこそなんだ。
 貧弱な理性で生理的な性質を甘やかしてしまうと、そのヒトは破滅する。
 破滅しないように、文化的な歯止めを我々は作ってきたんだ。

 子どもができたら責任を持つ。
 誓い合った仲は長く幸せを保つようにする。
 暴力はいけないし、裏切りや不貞も社会的に不適切な行為だ。
 文化的な歯止めをないがしろにするような人間は、信用できないし社会的にも破滅していくだろう。

 逆にいえば、文化的な歯止めがあるからこそ、原始的で哀れな性質がいくつも残ってしまっているのだが。

 そこを考えずに、「なんだ、3年で別れるのはアタリマエなのか」と受け取る者は、人生呪われるゾ。


〓〓〓 EP 〓〓〓

 で、以上が 
 第1回「惹(ひ)かれあう二人 すれ違う二人」 シリーズ『女と男』最新科学が読み解く性
の前半です。

 後半では、女と男の会話分析、コミュニケーション様式の性差、夫婦げんかを減らして幸せな夫婦生活を送るコツ、などが紹介されます。

 つづきます。






メタル


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筆者:雨崎良未
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