[ EP: 科学に佇む心と身体 ]

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高齢者が昔をバラ色に見がちであるその理由

カテゴリ[科学に佇む2009年] 2009/01/02
ヒトは、晩年になるといやな思い出から開放されていく。

その点に関して、具体的に脳の働きを見たレポートが出ていました。

「昔は良かった」
2008/12 EurekAlert Aging brains allow negative memories to fade
老いた脳は、ネガティブな記憶を薄れさせる
 高齢者が過去をバラ色に見がちであるその理由
 若い者より「いやな思い出」は記憶しなくなっていく

加齢に伴って変わりゆく脳
2008/12 EurekAlert Old and young brains rely on different systems to remember emotional content
歳を経た脳と若い脳とでは、感情的な記憶で用いる脳内システムが違ってくる
 特に、ネガティブな感情と関連する記憶を保存する際に、その違いが顕著
 高齢者は、感情脳と記憶学習とのつながりは薄いが、判断をつかさどる前頭葉とのつながりが強いクールな脳をお持ちです


 高齢者はクール。これは「平均して」の話です。

... 以下つづき...

〓〓〓 EP 〓〓〓

 高齢者や老後に対して、
  きたない
  とろい
  飲み込みが悪い
  使えない ・・・・
そして、「歳をとると不幸になる」などという差別的なものの見方が、巷には横行している。

 お年寄りは、不幸せな暮らしをしているだろうか?
(ここでは高齢者「心理」の話なので「今の経済的負担」がどうのという時代状況のファクターは脇へ置いておきます)

●右画
若人にありがちな、人生に対する大誤解
2008/02 Older People Are Happy: Life Begins At 40 And 50 And 60
 実際は、年寄りはみじめな存在ではございません
 幸福なその後の人生をご覧じろ

お付き合いが少なくても、幸せな老後
2008/06 EurekAlert UQ research finds aging is satisfying
 若い大人は、社会的活動がお盛んだけれど、高齢者より不幸せだね

老いたくない? 老後は悲惨という間違い
2006/06 EurekAlert Hope I die before I get old?
 Study finds attitudes about aging contradict reality
 若人は老後が不幸だと思い込み、老人は過去の思い出を過大評価
 実際は、幸福度計測でハッピーなのは高齢期!

2001/09 琉球新報  長寿は「物事にこだわらない」/新100歳の実態調査
2001/09 読売新聞 100歳以上 ハイペースで増加  1907人調査
 「毎日気分いい」8割 楽しみ持って生き生き

●右画
人は、歳とともに楽天的になる
 高齢者にとって孤独、憂鬱、退屈は、さしたる重荷ではなくなるのです
2001/01 news.excite.com Negative Emotions Fade with Age: Study
歳とってハッピー
 お年寄りは気分が落ち込んでも回復が早い
 身体は加齢とともに衰えるが、情緒面は歳とともにより健康になっていく
2000/10 Washington Post Emotional Health Increases With Age


〓〓〓 EP 〓〓〓

●右画
 単純に言えば、高齢者は、若いもんより幸福のコストパフォーマンスが良くなる。同じ経験でも、マイナス感情を伴う思い出が少なくすむのが高齢者。
 そんな心身に、熟していく。

 若いもんたちは、この世での存在歴が短く浅い。
 多様な経験はないもんで応用が効かないけれど、むやみなバイタリティには恵まれている。
 何か異変(感情がテンパるようなイベント)があった場合、若いもんたちは、学習意欲なんざそこのけの過剰に強い「感情記憶」を自動的に、強制的に、心に刻んでしまうようにできている。ケンカ上等キレ反抗。理屈や道理が無意味になるような好き嫌いや復讐心をいだいて若気の人生右往左往。
 しかられて悔しいから、学ぶ。失敗して悲しいから、心に刻む。
 少々バカやってもなんぼか取り返しのつく余裕がある年頃だからこそ、新しい経験と感情の記憶にかられてあっちへブレこっちへ揺らぎ、自動的に試行錯誤をなさる。

 高齢者は、すでに長いことこの世にいらっしゃる。
 ということは、新しい経験にむやみに右往左往させられるような身体であるよりは、今まで生き延びてこられたのだから、今までの経験の蓄積と記憶にウェイトを置くほうがコストパフォーマンスがいいし、理にかなっている。
 新奇な記憶を感情でむやみに刻んでも、そこまでするほど役に立つ記憶になってくれる確率は低い。昔ながらの経験のほうが役立つし(そういう社会のほうが多かった)、新しいいやな記憶は高齢期の暮らしには邪魔なことが多いだろう。

 そんなこんなで、概して幸福度は、高齢者のほうが高くなるものであるらしい。

(ここまでは、今の時代状況を抜いた、基本的な高齢者「心理」の話です)

〓〓〓 EP 〓〓〓

 より良い思い出を持って生きられるような身体にちゃんと熟していくはずなのに、なんで今、高齢者がえらいことになっている感があふれかえっているんだろう。
 政府のせいだけだろうか?

 年をとると「きたない・とろい・飲み込みが悪い・使えない・不幸になる」はずだと、みんなが思い込んでいるせいだったりするかな。
 → 『 老人差別の基礎知識 』 :世界の三大差別は、人種差別、性差別と、高齢者差別
 消費をしない保守的な生活は、マーケット的にはゴミですか?

 世間が「記憶能力偏重」価値観に侵されているからかな。
 加齢に伴う感情記憶の減少は、実際、記憶力の低下にかぶる部分がある。
●● 『感情と記憶:覚えておくなら興奮せよ!』
 そこに持ってきて、「老人はボケるのがアタリマエ」と受け取られかねないほどの認知症フォビアがメディアから大量に流されていたりしているし。
 でもね。頭が良くなれば、幸福になれるとは限らないんだ。
 幸福は、知能の高低とは直結していないんだ。頭が悪くても幸福はゲットできる。
 → 『 幸福になる科学的方法 』

 「新しいもの」をありがたがる社会になったからかな。
 変化の激しい社会環境では、長生きする者は邪険にされるんだ。
 → 2008/03 『高齢期のステータス:老いの人類学』:社会変化が少ない社会では、老人の威信はでかくなる
 将来の自分を不幸にするために、次々入れ替わる流行をありがたがっているのかな。

 「移り変わりが激しい世界」では、幸福になれる人の割合は減るだろうか。
 幸福の格差が広がるんだろうか。
 基本ベースは不幸でも、太く短くチヤホヤされて生きて早く死ぬ方が、長く苦労して生きて邪険にされるよりは、トクな人生になるような社会になってるんだろうか。

 それとも。
 人生で大切なものは幸福以外だったろうか。

〓〓〓 EP 〓〓〓

 「高齢者が昔をバラ色に見がちであるその理由」。
 このお題は、ご覧のように2つの解にかけてあるのでした。
  ●冒頭の「いやな思い出は記憶しなくなっていく」研究
  ●くくりの「昔は高齢者に尊厳があったこともある」話

 前に書いた話の一部→ 『 老後の幸福感:高齢者心理学 』 を加筆更改して、この一本にまとめました。
 追ってまた、高齢期と幸福感に関する記事が拾えましたら、たぶんその都度この話に追記していきます。

◆高齢者心理学

 『朝倉心理学講座 15 高齢者心理学』






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