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科学に佇む2008年]
2008/12/10
そういえば、「遺伝子組み換えコムギ」って、とんと耳にしないではないか。
「遺伝子組み換えトウモロコシ」や「遺伝子組み換え大豆」の生産はあちこちで推進されているのに、「遺伝子組み換えコムギ」は全然騒がれない。というか、作られてない。
「彼ら」が「遺伝子組み換えコムギ」を商業生産に乗せないでいるのは、トウモロコシや大豆は動物のエサだけれど、コムギは人間の食べ物だからなのだそうだ。
人間が食べるものの遺伝子を組み替えるのはまだ、時期尚早なのだそうだ!

というような実態にビックリしたよという話を、別のエントリのコメント欄に書き流していたのだけれど、これはもしかして改めて独立したエントリに書き起こしておいたほうがいいのかなと思いまして、仕切り直してここに置きなおします。
アメリカは、コムギは、遺伝子組み換えしてません。
なぜなら、ムギは人間の食べ物だからです。



●これまでのあらすじ:
とある本に 、ヨーロッパでは、コーンと言えば普通はコムギを指すのであり、コーンフレークの原料がトウモロコシだというと驚く者がけっこういる、というエピソードが記してあった。
そのくだりに対して「コーンはコーンちゃうんかい!」とブログに書いたら、ヨーロッパからコメントいただきました。
ドイツ在住の のっち さん 現地ではトウモロコシはコーンではなくマイスであり(マイス Mais:独語、メイズ maize:英語)、コーンの語は、普通はムギ類を指すものである、とのこと。感覚的には、
トウモロコシは人間の食べ物ではなく、家畜のエサ扱いになっているのだそうな。
ウミユスリカさんからも 補強の視座をいただく。ヨーロッパ文化においては、比較的歴史が浅い新しい作物であるトウモロコシや大豆については、どうも「本来そういうものはヒトが食べるものではない」という感覚が根強いらしい。
●そしてこないだの日曜日:
テレビ朝日『サンデープロジェクト』でアメリカの穀物政策関係者が、
「遺伝子組み換え小麦を作らないのは、小麦は人間の食べ物ですが、トウモロコシや大豆は家畜のエサだからです」との旨、明言なさっていて

。
...
以下つづき...

録画はしていなかったので、正確なところを確認しておかねば・・・と検索してみたら、なんだなんだ、モロに、そのシーンが『サンデープロジェクト』のサイトに載っているではないかい!

12月7日放送 テレビ朝日 サンデープロジェクト
「穀物輸出大国アメリカ“農業覇権” 自給率40% 翻弄される日本」 問題の発言者の肩書きは「アメリカ穀物協会幹部」。
まさにその問題発言シーンがキャプチャされて公式サイトに掲示されているわけで、取材側的にもこれはさすがにギョッとさせられた目玉の発言だったのだろう。

そして、今回のエントリ冒頭のリフレイン。
そういえば、「遺伝子組み換えコムギ」って、無い。
『 遺伝子操作情報庫 』 「彼ら」は、「遺伝子組み換えトウモロコシ」や「遺伝子組み換え大豆」「Bt綿」「GMパパイヤ」・・・の生産は世界中で押し進めているのに、最もポピュラーな作物であろうムギ類については、とんと遺伝子組み換え品種の話は出てこない。
ムギ類は遺伝子組み換えが難しいわけではない、実際近縁のコメではいろいろな遺伝子組み換え品種が試行されている。
「彼ら」が、「遺伝子組み換えコムギ」の商業生産を現状スルーしているのは、ありていに言えば、ムギは人間の食べ物だけれど、トウモロコシや大豆は動物に食わせるものだからなのだそうだ。
ムギは、ヒトの食べ物。
『サンデープロジェクト』で、「アメリカ穀物協会幹部」のおじさんが明言なさっていたんだ。これは立派。
”人間が食べるもの”は、遺伝子組み替えにするにはまだ、時期尚早なのだそうだ!

トウキビや大豆は、ヒトの主食ではないと。
そしておそらく、コメさえも、ヒト(彼ら)にとっては食べ物ではない。
”コーンの文化差”は、遺伝子組み換え問題にあからさまに顕現していた!!!
・・・いやー、推進派や研究者にとっては、かなり迷惑なご発言だし、反対派や忌避者にとっては、どないしたろかなインパクトです。
この件に関しては
ウミユスリカさんからも一言 いただいております。


【追記】
zerosetさんから「はてブ」コメント入りました。
「全然騒がれない。というか、作られてない」というのは言いすぎで、実際にはモンサント社他が開発を試みてて、反発を恐れて市場に投入できない状況。反対運動もあった
当該エントリの表題「遺伝子組み換えコムギは恐い」の「恐い」は、実際の危険性がどうのと言う点以上に、推進派が消費者のリアクションをコントロールしきれないことを懸念している部分が大きいような印象を受けているがゆえの、「恐い」です。

『バイテクの支配者 遺伝子組換えはなぜ悪者になったのか』
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2008年12月10日
上掲のお話についてのコメント
0131
#ec/VABik
ウミユスリカ さんのコメント
【2008/12/10】
もうひとつ似たような話なんですが、油糧作物でもそういう感覚があるみたいですね。
アフリカ原産のアブラヤシは、西アフリカでは伝統的な食用油糧作物で、あの辺りの熱帯雨林地帯の食文化ではアブラヤシの油は欠かせないものみたいですね。
ところが、ちょっとうろ覚えで申し訳ないんですが、食品添加物問題の告発の草分けだった郡司篤孝氏の著作辺りだったと思うんですが、ある加工食品に使われている油脂がアブラヤシのヤシ油で、日本人に馴染み深いココヤシのものではないと述べてから、アブラヤシの油なんていうものは本来は工業原料で人間が食べるものなんかじゃないんだと批判しているのを読んで、ずっこけそうになったことがあります。確か1980年代半ばぐらいのことだったと思うのですが。
0854
#MJWiGxv6
雨崎 さんのコメント
【2008/12/10】
昔勤めていた会社の社長がトリニク嫌いで、「鶏は人間が食べるものなんかじゃないんだ!」と言い放っていたのを思い出す。w
下手すると、一見さんたちが食文化の差だけを見て済ませてしまいそうな話になっちゃったかな。
今『脳神経倫理学の展望』などを読んでも思わされるのですが、読むときに語るときに、何層のレイヤーを踏まえた上で語ることができるか、で痛さが大きく違ってきますね。 その問題について重なる多くの層(種々の立場や観点)についての、知悉とまでは行かなくてもおおむね「どんなレイヤーがあるのか」の状況はひととおり把握しておかないと、読めるものも読めないし、何を語っても語るに落ちることになる。一種「極貧なエンジョイアビリティ」めいた話になるかな。
アブラヤシのケースは、まあ20年前の話なので、マジに極貧レイヤーからの狭視野視点発言だったのかもしれませんね。
『脳神経倫理学の展望』という本は、十分及第点の猛者論者もいれば、文化研究や異分野の視点に関する踏まえが欠落した論者もいて、力が入った総括本なのに結果は玉石混淆レベルになってしまうという、日本国内の人材払底具合が痛い。
「アメリカ穀物協会幹部」さんは、単に異文化の視点が欠落しているドキュンなのか、敢えて戦略的に異なる食文化のウェイトを下げるよう操作に踏み切っているのか、テレ朝側が放送上なんらかの曲げを加えてしまったか、いずれか。
でもビキニ環礁や中東での政策やなんやを考え合わせると、米国の非情な「自国利益至上主義」のキモさはいやおうなく倍増してしまうのだった。
1138
#MJWiGxv6
雨崎 さんのコメント
【2008/12/10】
foxさんから伝言です。スパムよけにはばまれて、直接書き込めなかったとのこと、すみませんでした。
-=-=-=-=-=-=-=-= 以下伝言
2008/12/10 11:24:15
【 お名前 】:foxさん
上記記事ですが、「くみかえ」の表記が混乱してますね。広大の芦田教授によると、「くみかえ」をどう書くかでその人の立場がわかるそうで、
組換え:科学者、役所、法律用語
組み換え:マスコミ、市民運動家
組み替え:素人
だそうです。「組換え」と「組み換え」は誤差の範囲ですが、「換える(既存のものと交換する)」と「替える(新しい人と交替する)」ではニュアンスも違ってくるので。
詳しくは芦田教授の著書、『やさしいバイオテクノロジー(サイエンス・アイ新書)』のp.180をご覧ください。また、芦田教授のブログでは「くみかえの法則」について、各種文献を調査した実証的な解説もされています。
http://yoshibero.at.webry.info/200808/article_6.html
-=-=-=-=-=-=-=-= 以上伝言
1144
#MJWiGxv6
雨崎 さんのコメント
【2008/12/10】
>foxさん
該当するスパムよけは解除しておきました。
そんな話を聞いたことはあるのですが、IMの変換の際にアラートも出ないし、書くときも検索するときも「えーどれだっけ」と毎度混乱しながらも放置しております。
「脳神経」と書いていたら「脳神経と脳・神経は違うのだ!」と突っ込んできた脳科学者とか、「子どもを子供と表記するとはけしからん!」と文句を言ってきた高校教師とか、「女子割礼とFGMでは政治的立場が違います!」と不快感をぶつけてきなさった女性とか、「レズビアンは失礼です! ビアンなら許せます」とおっしゃるクィアとか、思い出します。
この場で云々するぶんにはあまり実害はないエラーだと認識しているんですが。
気になりますか? 気になるならひととおり浚って修正しておきますが。
1155
#-
相馬 さんのコメント
【2008/12/10】
組み換えと組み替えは両方使ったほうがいいですよ。
両方使うほうが、SEO対策になって検索ヒット率がアップします。
僕は、GMについて書くときには関連する言葉を何種類も混在させるようにしています。些細な正しさより、読まれてなんぼの世界ですから。
1301
#a8h1Tw1o
木戸孝紀 さんのコメント
【2008/12/10】
本題とずれますが、SEOと表記揺れ問題は面白いですね。
私も最近は意図して揺らすことがありますよ。
「組み換え」みたいなのは漢字とひらがな交互になるのが
見づらいのでできるだけ使いませんが。
1826
#ec/VABik
ウミユスリカ さんのコメント
【2008/12/10】
確か、アメリカ穀物協会って穀物の生産者団体じゃなかったでしょうか。アメリカの農業って、1862年成立の自営農地法(連邦公有地を開墾した小農民に無償で譲与することなどを定めた法律)以来、ヨーロッパの人口膨張を支える国際市場向け農業として発展してきているんですよね。
この時代以降のアメリカ農業って、「自分も食ってるものをより豊かに生活するためによそ様にも売る」の要素よりも、「自分は別に食おうが食うまいがどっちでもいいけど、売り物になるから栽培して売る」の要素がものすごく拡大してしまっているように感じるのです。
ちなみに、私が九州から北海道に来て、あちらとこちらの経済のニュアンスがずいぶん違うように感じてしまったんですね。九州の経済って、九州の中での需要と供給のリンクがまずあって、さらにより豊かになるために日本の九州以外の地域とか国外とも需要と供給のリンクを作っていくという感じ。ところが、北海道の経済って、北海道が食っていくために、まずは北海道外の需要に応じる供給をつくりだし、そこで生じた利潤で域内での需要と供給の経済がはじめて回りだすというニュアンスを感じてしまうんですよ。
こっち来てから中年大学院生をやっていたり、難病で寝込んでしまったりと社会との接点が九州時代と比べて極端に狭くなってしまっているので、誤認しているものも大きいかもしれませんが。
2038
#MJWiGxv6
雨崎 さんのコメント
【2008/12/10】
んー、自分は九州についての知識は極貧なので(行ったことないんだ)、関西や関東との比較になってしまうかもしれませんが、ご指摘の差は確実にあると思います。長いことかけて熟した藩の中の閉じた系がまずあって、という世界ではなく、この北海道は本州各地の文化的にバラバラな民が”新たな地にのりこんで”ランダムに形成した開放系の世界。
・”何もない”場所を拓くためにヨソからやってきた
・通商相手として視野を占めているのは”地元”ではなくルーツの”本家”
もとより、アメリカと北海道は、文化心理学的にも構造的にもよく似ている点があると(一部で)指摘されているので、この流れでの「売り物になるから栽培して売る」傾向の指摘はたいへんツボに感じます。
数年前、遺伝子組み換えジャガイモを栽培しようとした北海道の農家が、北海道農業全体のイメージダウンになるからと各方面からツキアゲを喰らって栽培を断念した経緯が思い出されます。
アメリカでの遺伝子組み換えムギの栽培は、ヨーロッパなど輸出市場との兼ね合いで難しいということなのかな。「アメリカ穀物協会」のおじさんは、欧州向けのコメントをペロッと出してしまっただけなのかもしれないのか。遺伝子組み換えに無頓着なアメリカ国内ではGMムギでも普通に食べちゃうと思うんだけど。