[ EP: 科学に佇む心と身体 ]

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美しき日本の残像:祖谷(いや)の里・今昔

カテゴリ[科学に佇む2008年] 2008/10/30
 今日はまったりと、祖谷の里へバーチャルトリップしてみる。

■「大歩危(おおぼけ)小歩危(こぼけ)」

 昔、幼い頃に、吉野川の「大歩危(おおぼけ)小歩危(こぼけ)」に観光に行ったことがある。
 四国山中の奇岩連なる渓流で、上流に大歩危(おおぼけ)、下流に小歩危(こぼけ)がある。もしかしたら、コボケには行かずにオオボケにだけ立ち寄ったのだったかもしれない、大昔すぎてよく覚えていない。
 そのときは「大股で歩くと危ない大歩危、小股で歩いても危ない小歩危」と習ったんだが、さっき検索してみると「石の間隔が狭く大股歩きでは危ない大歩危、石の間隔が広くて小股歩きでは危ない小歩危」とする説もあるらしい。
 当時は、ただただそのオオボケコボケというネーミングにバカウケしていた。

 その「大歩危小歩危(おおぼけ・こぼけ)」からさほど遠くない深山に、「祖谷(いや)」という山村があるという。昔だったら、「おおぼけ・こぼけ」ノリの延長で「イヤ〜ン」とかふざけとばしていた可能性が大きいが。orz

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この箇所へのリンク【日本三大秘境のひとつ 祖谷(いや)】


 日本三大秘境とは、岐阜県 白川郷、徳島県 祖谷、宮崎県 椎葉村 だそうです。
 書籍 『美しき日本の残像』には、1970年代初期の祖谷の様子が記されています。

◆美しき日本の残像
  『美しき日本の残像』
 アレックス・カー (著) 新潮社 (1993/07)
  『美しき日本の残像』
 アレックス・カー (著) 朝日文庫 朝日新聞社 (2000/09)


『美しき日本の残像』p.14  魅力的な四国の秘境
 「祖谷」谷は徳島県と高知県の境にあって、祖谷峡は日本で一番深い峡谷です。この日みた景色は、日本の自然の中でも最もファンタスティックで、子供の時にあこがれた中国の山を想いおこしました。丁度、宋時代の山水画に描かれた山々に似ていました。
 川は青い「阿波石」のためエメラルド色にそまり、そびえ立つ岩壁は「玉」のよう。そして谷の向うの山からは白い滝が、まるで筆で書いたように真すぐに流れ落ちていました。その自然の中に、茅葺屋根が山腹に点在している様子は、仙人の住み家を見るようでした。

 ファンタスティックに最も深い峡谷とな。
 当時は、通れる道路が一本だけ。大正時代に20年以上の歳月をかけて築かれた「祖谷街道」のみが、交通の便だったらしい。それ以前はまさに陸の孤島。

今の峡谷の写真 → リンク 徳島の山奥の秘湯「祖谷温泉」

『美しき日本の残像』p.14
四国の山奥の場合、家は川と谷間をさけて、高い山の中に建てられました。川の近くは険しく、暗く、家を建てるにはふさわしくないのですが、一方、山の中腹には泉が湧き出ているので、人が住むのにはむしろ山の中の方が適していたという理由があったのです。
 その上、岩だらけの畑は稲作には不向きで、田んぼは少なく、人々は田んぼを管理する「村」に集中して住む必要もありませんでした。その結果、一軒一軒の家は独立して、山の上に点在するようになったのです。


 「仙人の住み家」のように、「茅葺屋根が山腹に点在している」・・・
 そんな、昔の、古き良き(?)当時の祖谷の姿をとどめた写真がネット上のどこかにないかしばらく彷徨(さまよ)ってみたのだけれど、どうもみつからない、記録がない。
 あいかわらず、日本人みたいに 健忘症だ、日本のネットは

古き良き祖谷世界の想像図、作ってみた。
■深山の集落
こんなだったのかな。
【ここに画像が表示されない場合は】


... 以下つづき...

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◆美しき日本の残像

[[ ちいおり の漢字表記を表した画像]] (ちいおり:この漢字は変換で出てこないので、画像で失礼)

 『美しき日本の残像』 の著者 アレックス・カー氏は、祖谷の旧家を買い取り、[[ ちいおり の漢字表記を表した画像]](ち・いおり)と名付けて、住まいとして大事にメンテナンスする顛末を、本書に記している。屋敷の奥から戦後間もない頃の住人の日記が出てきたよとか、日本家屋に最適な照明のコツとか、屋根の茅葺き(かやぶき)にたいへんな金額がかかったんだよとか、茅(かや)を調達できる茅場は植林でつぶされてしまった、これが最後の茅葺きになるだろう・・・などなど。

[[ ちいおり の漢字表記を表した画像]]は今も保存されているらしい。


リンク [[ ちいおり の漢字表記を表した画像]] トラスト
>築300年の古民家。
>奥祖谷は日本のチベットともいわれ、標高が高く、峡谷になっている。
>東洋文化研究者のアレックス・カー氏が購入し「[[ ちいおり の漢字表記を表した画像]]」と命名。

三好市観光サイトより:
 リンク アレックス・カー氏ご本人 [[ ちいおり の漢字表記を表した画像]]にて
 リンク [[ ちいおり の漢字表記を表した画像]]からの絶景
 リンク 雪の[[ ちいおり の漢字表記を表した画像]]

 いずれも幽玄な風景。

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・・・リフォームいいかも。

◆茅の家 雪国の古民家◆温故知新のリフォーム 木の家を未来に活かす技
 『茅の家 雪国の古民家』 桜庭文男・写真 安藤邦廣・対談 丸善 (2008/11/1)
 『温故知新のリフォーム 木の家を未来に活かす技』 旧家再生研究所編 住友林業ホームテック株式会社監修  ネオ書房 (2008/10)

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この箇所へのリンク【祖谷の暮らし】


 昔の祖谷の風景をまとめた写真集はないのだろうか。

 ネットを検索しても、気配はない。 昔話を収録した古書が少し拾えるだけだ。
●本 『日本昔話記録〈8〉徳島県祖谷山地方昔話集』  三省堂 (1973)
●本 『全国昔話資料集成〈10〉東祖谷昔話集』  岩崎美術社 (1975)

 さても、なんで行ったこともない祖谷(いや)の話をわざわざ書く気になったかというと、『美しき日本の残像』 を読んでいるときに、古い録画を整理していて、たまたまこんな番組の記録を掘り出したからなんだ。

リンク NHK教育テレビ
 ふるさとの伝承『山の斜面に家ありて 徳島県祖谷の女たち』
 放送日 1996年9月1日


 1990年代当時の、祖谷の人々、祖谷の風景、祖谷民家の室内、祭、農作・・・祖谷の年中行事が、ていねいに記録紹介されているんだ。
 古風で素朴な民家の室内で行う日々の神事、祖谷のお雑煮は豆腐が主役です(米がとれないんだ)、お正月には大事に若水を汲みに行きます、埋葬は土葬のふせ墓です・・・
 祖谷の里は昔から蕎麦の栽培が盛んで(土地が急峻すぎて稲作が無理なんだ)、ソバ打ち道具はどのお宅にもあるのです・・・
 リンク そばの花 :満開の祖谷ソバ畑の写真

 ああ祖谷!! ここか!! カー氏はここの話をしていたのか!!

 ということで、書きたくなってしまった。

 番組『ふるさとの伝承』は、 NHKアーカイブス で拝見できるようになっているらしい。(各地のNHK放送局にまで出向けば視聴できる)
 とりあえず、手元には10年以上まえのビデオ録画からmpgに落とした動画が残っている。これは大事にしよう。

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この箇所へのリンク【祖谷のかずら橋】


◆祖谷かずら橋
 『祖谷かずら橋』
高橋毅写真集 (大型本)
 高橋 毅 (著)
 大阪東方出版 (2007/11)

祖谷は落人の里であるがゆえに、外部との境界をつかさどる「橋」には、重要な意味が託されているんだそうな。
・慣れた渡り方をするか否かで、ヨソモノ(侵入者)を判別する
・橋を渡って侵入する敵は、葛(かずら)を切って橋ごと落とす

リンク 画像集 祖谷 かずら橋

 そんな大歩危小歩危紙一重の危険な橋も、今では観光用にワイヤーでがっしり補強されている。

リンク 金刀比羅宮、大歩危・小歩危,祖谷の旅
>祖谷渓には13の橋があったが、現在は二橋のみ。
>どちらもワイヤーで補強されている。
>かずらはシラクチカズラといい、1000m以上の高度から採取する。

 リンク 武家屋敷旧喜多家
 リンク 東祖谷歴史民俗資料館
 リンク 平家屋敷民俗資料館  江戸時代の民家をそのまま保存した館内

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 時代は変わる。
 1970年代のカー氏、1990年代の『ふるさとの伝承』、そして、いまや21世紀だ。
 超高齢化と超過疎化と、そして超観光地化によって、祖谷は”新しい”祖谷に塗り替えられていく。

この箇所へのリンク【村はもうない】


 東祖谷山村(ひがしいややまそん)、西祖谷山村(にしいややまそん)は、もう存在しない。
 今世紀に入って、2006年3月1日に、祖谷は「三好市」に合併されてしまった。
 今は、「祖谷の里」が、徳島県三好市の観光の目玉になっている。

 リンク 三好市観光サイトの 祖谷 画像集

 リンク 日本三大秘境「祖谷」が市内になる。
>手前が「かずら橋」
>その向こう側が「コンクリート橋」
>背景に見える巨大な建造物が「夢舞台」と呼ばれる駐車場と物産館とレストランの複合施設。
>これが三好市西祖谷山村かずら橋の現在である。
>年間数十万人という観光客を受け入れねばならぬという必要性はあるものの、悲しくなる風景ではないか!
   (写真あり

 そう、そちらこちらに、なにか祖谷ではないものが、必要悪として(?)祖谷に染みわたっていくありさま。

この箇所へのリンク【追記】:人口動態比較
●● 2009/01 『札幌市北区と徳島県三好市の人口推移予測』


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この箇所へのリンク【古いものと新しいものの混在】


リンク 『癒しの温泉郷』周辺カタログ
 ・旧小采(こうね)家住宅:祖谷の小規模な民家の代表的な遺構。国の重要文化財。
 ・奥祖谷周遊モノレール

 新しいものは、古き良きものであるべき観光資源を損なってはいないか。

 何かが作られていく・・・
リンク 祖谷美人の挑戦1
リンク 祖谷美人の挑戦2
リンク 祖谷美人の挑戦3

リンク 祖谷の小便狸 pachikri

 リンク 祖谷温泉巡り その?
 「なんで合掌造りなんだ? 祖谷地方の隠れ里はこんな造りじゃなかったよね?」 写真あり

   ↑
 的確なツッコミ。
 祖谷とは関係のない仕様の建築物が、「昔の祖谷」の風情を騙っているんだ。「茅葺きの旧家=合掌造り」という安直な誤謬だね。伝統に倣(なら)って観光を盛り立てているつもりが、逆に伝統のツラに泥を塗ってしまっているわけだ。
 合掌造り本家の白川郷にしても、似たような「文化にそぐうよう、それっぽく作ったのだが、知識やセンスが不適切で、文化を損なう結果になってしまう例」が問題になっていたんだよね。

挿画挿画挿画


 ・・・日本全国各地、総テーマパーク化、とも思える。
 実際の伝統ではなく、「そのテーマっぽければなんでもあり、ゆるキャラ必須」みたいな。本質的に、日本はもう、実際の日本古来の伝統には用はなくなっているのだと思う。伝統は、自民族(現代人)のものではなく、異文化(否定すべき旧来の文化)なのだから、(グリュック王国やハウステンボスみたいに)観光用記号の資源として利用できる範囲でしか、存在意義を認めない。
 そんな強い断絶感が、闇にまぎれて住民の延髄を切りに来る。

挿画


 日本の田舎がテーマパーク化している話については
●● 『ふるさと資源という国策は罠か』

 カー氏の著作については
●● 『これは怖いぞ「犬と鬼」知られざる日本の肖像』
●● 『社会心理学の信頼は裁判員制度を救えるか』

 最もなつかしい風景は、どのようなものだろう。
 自分は、暗い座敷から緑深い築山のある庭と独り正対して坐す、それが原風景だったりしている。
 そこ以外、考えられない。

■座敷


 原風景も、ヒトに刷り込まれ、人生を送る上での世界観に大きく影響を与える環境要素の一つだ。

 もどりたい原風景にある住まいは、
   日本家屋ですか、
     団地ですか、
       洋間ですか、
              それともRPGのお屋敷ですか。

◆温故知新のリフォーム 木の家を未来に活かす技 ◆茅の家 雪国の古民家

この箇所へのリンク【追記】

2009/09 【日本語ブログ】 デイリーポータルZ:奥祖谷、高低差390mの斜面集落




メタル


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