[ EP: 科学に佇む心と身体 ]

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男脳、女脳、自閉症:共感脳システム脳とバロン=コーエン

カテゴリ[科学に佇む2005年] 2005/10/24

2008/04 追記:
このエントリは「共感脳」「システム脳」の話です。

●「共感脳」は、他者の気持ちを(一方的に)想定して思い入れをする傾向が強い、感情的な反応が強い脳です。さらには他者の感情的反応に自分の思考が左右されやすく、相手が喜ぶと自分の感情もそれを反映して喜びにふれてしまう(悪く言えば流される)人たちです。

●「システム脳」は、論理的な展開に強く反応する脳です。喜びであれ怒りであれ、感情的な展開は、論理的な思考を導く妨げになるのでうざく感じたりします。相手のご機嫌を読んで共感を求めるよりは、推理して解決、分類整理して決着、筋道が通るような、すっきりした展開の気持ちよさを尊びます。(悪く言えばガンコとか、依怙地とか)

「■」


左◆表紙

『共感する女脳、システム化する男脳』

 サイモン・バロン=コーエン著
 日本放送出版協会 2005/05
 原書とその書評:2003; The Essential Difference


 原題は「本質的な違い 脳の性差についての真実」
 The Essential Difference: The Truth about the Male and Female Brain

 最近、妙に男脳女脳流行りがにわか再燃していたみたいだけれど、どこから盛り上がっていたのやら。 →脳の男女差、心の男女差
 そのにわか再燃の影響かどうか定かではないけれど、
暮らしWORLD・からだ百科:男脳と女脳
2005/10 【日本語記事】 毎日新聞
も流れていたり。

 当該書の著者バロン=コーエンは「男女差を書き立てて商売」している流行りライターのたぐいではなく、自閉症をメインに追っている心理学・精神医学の教授。
    →自閉症、アスペルガー
左サムネイル
「自閉症とマインドブラインドネス」

 バロン=コーエン著
 青土社 2002年 [bk1]
(原書:1995年 Mindblindness)
 自閉症者は対人関係構築能力(他人の心の推察:心の理論)に障害があるようだ、という点を中心に


●このバロン=コーエンさん、なんやいつのまにかうち左のようなおっさんかと思い込んでいたけど、実物は全然違って右みたいな やさいあんちゃんでした。
Simon Baron-Cohen

●当該書(2003年)の前年あたりから、自閉症と脳性差の関係について、バロン=コーエンは自分の路線を打ち出しはじめている。
地図が読めない女 自閉症が多い男 バロン=コーエンの超男性化脳仮説
2002/12  The Spectator.co.uk Why women can't read maps The high incidence of male autism reveals basic mental differences between the sexes
テストステロンレベルと自閉症 バロン=コーエン
2002/05  Guardian Testosterone levels may cause autism
2002/06  Trends in Cognitive Sciences Vol. 6, No. 6 The extreme male brain theory of autism

 それ以前の前世紀末などは、→心の理論をもっぱら中心にして自閉症を論じていたと思う。

去年あたりはこんな盛り上がりにもなっている。
バロン=コーエンの「自閉症は男脳の極端バージョン」説をめぐる論争
 盲目の自閉症や自閉症知能の高低でも性比は異なる、脳性差のみに帰するのは無理では
2004/04 Newsday.com Autism Theory on Brains Sparks Debate
2004/02 Psychology Today Autism: What's Sex Got to do With It
胎児の段階で自閉症かどうかの確認が可能に?
 妊娠中絶を助長するとの懸念の声も
 自閉症は男性ホルモンの過剰分泌、遺伝の可能性も 〜バロン=コーエン
2004/04 ▲日本語記事 JAPAN JOURNALS LTD.
2004/04 BBC News Autism link to male sex hormones


...以下つづき...

〓〓〓 EP 〓〓〓

 で、いまのところ世間的にはなんか自閉症超男脳説はバロン=コーエンの専売特許みたいな感じになっているけれど、当該書の中では彼はこの説の提唱者はそも自分ではなく、アスペルガー症候群の名の由来であるアスペルガーその人だったと紹介している。
p.260
自閉症とは極端な男性型の脳(EMB)によるものである、とする説を非公式ながら最初に提唱したのはオーストリアの小児科医ハンス・アスペルガーだった。


 さても。
▲アンカー 当該書の末尾には
  「システム化指数 SQ(いわゆる男脳)」
  「共感指数 EQ(いわゆる女脳)」
  「自閉症スペクトラム指数 AQ(アスペルガー症候群っぽさ)」
についての簡単な検査チャートが添えられている。テスト結果を「日本人の平均」と比較することができるという気配りつき。
 巷にはもうかなり「男脳・女脳検査ごっこ」が増殖しているので目新しさはないかもしれないが、そこにAQも並べられているとなると、ちょっとぎょっとするやらある意味グッジョブやら。
 うちは SQ31, EQ10, AQ37。naha
 まあ、それゆえに数年前佐倉さんからの誘いを断ったのであり(ごめん)、それゆえに私は今ここにいるのであり、それゆえにハーディうざいし(?)。
 ハーディ。一個前のエントリの→ 『マザー・ネイチャー』 の著者。
 もしかしたらあの『マザー・ネイチャー』の押しつけがましい書きようは、女脳の人ばらには心地よいものなのだろうかな、などといぶかってみることしばし。

あなたの「自閉症指数」を測りましょう 〜バロン=コーエン
2004/02 Boston.com The Autism Quotient
 A researcher wants to help you measure your AQ

バロン=コーエンが語る男女脳の違い
2003/04 Guardian They just can't help it
あなたの脳はどんな脳? テストしてみよう
2003/04 Guardian How male or female is your brain?
テスト結果が出た方はこちら
2003/04 Guardian What type of brain do you have?


 『共感する女脳、システム化する男脳』の中で、男は進化心理学的に共感力が低めゆえに(相手の気持ちがわからないゆえに)争い・のしあがりがしやすくなっている、云々という話を出しているが、ちょうどこんな記事も流れていたり…
精神的に未熟な10代の母親の子供は暴力的になる可能性大
2005/10 【日本語記事】  UK Today (JAPAN JOURNALS LTD.)
 教育関係組織の「the Wave Trust」曰く、暴れん坊な子どもは相手への「共感」力がつけばイイコになりますよ。「共感」力が低いからひどいふるまいをするのです。

 ハーディが『マザー・ネイチャー』の中で記す「母性と子どもの性格の関係(子どものデキはどこまでが親の責任か)」についての講釈と読み合わせるとよけい政治的にややこしくていいだろう。

 あと、男脳女脳や共感力について興味がある向きは、ぜひこの話もチェックしておいて欲しい。
  → 『介護殺人や安楽死、実は男が女を死なせてる』
 共感力の多寡が、殺人率の差、さらには「慈悲(?)の心を持って殺す率」になって表れているという話になりうるわけで。

 で。
 忘れてならないのは
    男でも女脳の人がいる(オカマという意味ではない)
    女でも男脳の人がいる(オナベという意味ではない)
    男にも女にも、中間の脳の人はいる。
 男脳=男じゃないし、女脳=女でもない。
 ゆえに、誤解誤用や偏見(性差別)を避けるためにも、バロン=コーエンは「共感」と「システム」という対比で行こうとしているのであり。

 もとより、男脳女脳テストは「あなたはどちらかです」と出すテストではなく、多くは
   「あなたの脳は●●%くらいどっちか脳です」
と示してくれる、男女二元論の区切りが「あいまいなグラデーション」であることを受け手に教えてくれるテスト。

 人の向き不向きは千差万別万華鏡。
 脳の女度、男度も、ひとそれぞれ。
 「女だから」これをしろ、「男だから」これが得意なはず、みたいな論法は、正しく脳性差の意味を知っているならばうかつには使えやしないはず
 わかるね。chitchit

暗BG

 当該書『共感する女脳、システム化する男脳』の後半で、高機能自閉症(共感力・社交力は低いが専門分野や分析力で長ける)の実例がいくつか挙げられている。
  アスペルガー症例:
    マイケル・ヴェントリス
    アインシュタイン
    ニュートン
    ポール・ディラック(の海)
    ヘレンカ・プシシェズニャク
    リチャード・ボーチャーズ
    ウィリアム・ショックレー
 手元にある類似記事は以下。
 なんだかんだいって、結局バロン=コーエンがらみの記事が多い。
ニュートンとアインシュタインはアスペルガー症候群  〜バロン=コーエンら
2003/04  New Scientist Einstein and Newton showed signs of autism
2003/05  Telegraph Great physicists 'had Asperger's'

天才ってどっかこっかアスペルガーが入っているかも
2001/12  Autism Today / The Times Why a dash of autism may be key to success

ヘンリー・キャベンディシュはアスペルガーだったんじゃない?
 オリヴァー・サックス、18世紀の学者について語る
2001/10  American Academy of Neurology  Oliver Sacks Reaches into History for Latest Diagnosis

科学で成果を挙げるアスペルガーたち  眼を合わさない、低い社交性、単調なしゃべり
 ビル・ゲイツもアスペルガーっぽい
2000/12  GUARDIAN  The high-flying obsessives

アスペルガー症候群を持ち、かつ数学者、物理学者、コンピューター科学者として成功している3人
 〜バロン=コーエン
2000/02 Neurocase Volume 05, Issue 6, pp. 475-483
 A Mathematician, a Physicist and a Computer Scientist with Asperger Syndrome

ネット 自閉症スペクトラムの(もしくはそれっぽい)著名人たち一覧
 ダン・エイクロイド(あらー!)
 ゲイリー・ニューマン(おおー!)
 ミケランジェロ
 ウィトゲンシュタイン ほか大勢


 え〜とね、うちの仕事先担当のM女史もきっぱりアスペだと思うし、ケンカ別れした昔の取引先のとんちんかんM氏もアスペだと思う。(なんでうちの取引先は頭文字Mの人が多いんだ?) うちの業界はアスペでもフツーにやっていける業界だからなぁ。
 知人の**さんもかなりアスペしてると思う、奥さん偉いわよく耐えてるわ。
 社交より腕の業界ってこうLDというか、アスペな人って多めなんだろうか。
 かといって、アスペ同士だと仲良くつきあえるって話でもないしさ。
 なんだかなぁ。

クール

この箇所へのリンク【追記】

自閉症が「超男脳」である証拠をさらにどうぞ
 サイモン・バロン=コーエン Simon Baron-Cohen
 脳梁がおぼつかない 過剰な扁桃核
2005/11 BBC News Autism 'extreme male brain' clue
脳と自閉症に見られる性差:Sex Differences in the Brain and Autism
2005/11 【日本語記事】 Science日本版
 これで押していった場合、自閉症の我が子を抱えて人間の遺伝子改変を奨励する二重らせんワトソンさん的にはこれどうなんだろか…

バロン=コーエン、自閉症児の親御さんがソレっぽいことについて語る
 似たものどうしが惹かれ合う、いきおいシステム志向も濃縮される
2006/11 Seed: When Two Minds Think Alike

「想像力の生物学」 サイモン・バロン=コーエン
2007/06 The Biology of the Imaginationi by Simon Baron-Cohen [entelechy]

2007/09 news@nature.com Foetal testosterone linked to autistic traits
自閉症の特性と胎児のテストステロン
Male hormone in the womb linked to kids with more autistic-like behaviours.
子宮における男性ホルモン量は、自閉症っぽい児童の産まれとつながった。

2009/01 news@nature.com What is the link between autism and testosterone?
Controversial theory of autism makes headlines, but leaves scientific community unconvinced.
自閉症はテストステロンと関係しているのか?
 自閉症の物議をかもすような理論がよく取り沙汰されるが、科学的なコミュニティは納得していない
 子宮で高テストステロンレベルにさらされた子は、心理テストで自閉症に類似した結果を示す。
 発見は、自閉症の原因についての論議における、サポートを提供する





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