
『生物の科学遺伝 vol.61 no.4(2007-7月)
特集「生物多様性を読み解く」』
エヌ・ティー・エス (2007/07)
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この中に、
鈴木誠(北海道大学)
『生命を実感! 新しい授業法
解剖実習用ドライラボの教育的効果
「マイ・ガエル」の作製で別次元の実習・観察を』
という記事がありまして。
生命を実感できる新しい授業法?
「ドライラボ」。「マイ・ガエル」。解剖実習用。 別次元の実習・観察・・・?
はいはい、これから何を想像します?
どんなもの?
解剖実習に使う「ドライラボ」というものがあるわけですね。
ではなぜ「マイ・ガエル」?
しかも「マイ・ガエル」を「作製」する?
なんと、実際の解剖の前に、自分で自分用の「カエルを作る」んですね!
自分で作ったバーチャルカエルで、解剖の予行演習をやる。
その予行演習でカエルの中身のなんたるかをアタマに叩き込んでから、実際のカエル様の解剖を行うのです。
「マイ・ガエル」の作り方は簡単!
紙と絵の具とノリがあればいい!
... 以下つづき...

※【ここの左にカエルの画像が表示されない場合は】 画用紙を複数枚用意して、カエルの皮膚の層、カエルの皮膚を剥いだ層、浅い層の臓器、深い層の臓器、腹腔の奥の壁、それぞれを描いた紙をこしらえる。
臓器の位置を自分で調べて描き込むんだよ。いい勉強になるね。
それぞれの紙を、リアルカエルの身体と同じ順番に重ねて、手足頭の部分を張り合わせる。(腹部にはノリは付けないように)
その張り合わせた紙カエルを、輪郭に沿ってカエルの姿に切り抜けば、「マイガエル」の完成だ。
「マイガエル」には皮膚も腹膜も内臓もそろっている。
その「マイガエル」を解剖台に置いて、実際の解剖道具も使いながら、チョキチョキと解剖の予行演習をやるんだ。
紙の皮膚を切り裂いて。
紙の腹膜や腹筋を切り開いて。
紙に描かれた(自分で描いた)心臓や胃袋を、慎重に紙から切り取って、解剖皿の上に並べていく。
ナマモノじゃないから、「ドライラボ」。
こぉれは勉強になるよね。
心構えもできる。
このあと、実際のリアルカエルさんを解剖することになるんだけれど、ぶっつけ本番に比べたら絶対じょうずに解剖できるよね。 ぐじゃぐじゃなみっともない解剖でカエルさんの命を貶めてしまったり、トラウマ悪夢になったりするような事態は、かなり防げるんじゃないか。
【解剖実習当日は,模擬解剖が終了したこの「マイ・ガエル」のみを持たせて実験室に入れるようにしている。】 『生物の科学遺伝』2007年7月号p.79
自分で「マイガエル」を作ったからには、それなりに愛着というか、一連の実験・実技に対する思い入れも育まれそうだよね。
雨崎: 自分は学校でフナの解剖をやらされた覚えがあるけれど、班6人につき一尾で、複数人でごちゃごちゃなお祭り泥沼状態の解剖になってしまっていた。 「マイ・フナ」で事前に各自一回ゆっくり解剖の試行ができていたならば、もうちょっと事態が飲み込める感じの解剖ができていたんじゃないかと。フナさん、ごめん。

解剖実習用ドライラボ&「マイガエル」のススメを説いていなさるのは、北大で『「学ぶ意欲」の研究』をなさっている鈴木誠氏。
1956年東京生まれ。
協和発酵工業株式会社、公立中学校・高等学校教諭を経て、北海道大学大学院教授。教育学博士。
専門は理科教育学、教育評価、解剖学(両棲類)。
学ぶ意欲の測定と意欲を引き出す授業デザインを研究している。
2003年日本理科教育学会賞受賞
看板はカエル学、「蛙学(あがく)への招待」。
著書は・・・あ、こないだ出たばかりなのか! 読まねば!

『意欲を引き出す授業デザイン 人をやる気にするには何が必要か』
鈴木 誠 (著)
東洋館出版社 (2008/07)
・・・この装丁、怖くね?

鈴木誠氏はフィンランドの理科教育を下敷きにして、北大で試行錯誤と啓蒙を進めていなさるんだね。

『フィンランドの理科教育 高度な学びと教員養成』
池田 文人, 鈴木 誠 (編さん)
明石書店 (2007/10)
こちらのご本は専門的すぎて、フツーに読むにはつらいらしい。
フィンランドってすごいのか。
2005年 日本科学教育学会第29回年会
テーマ:社会に提案し社会と協働する科学教育研究を求めて
自主企画課題研究: 「フィンランドの教育から何を学ぶか:科学教育を中心に」
オーガナイザー:鈴木誠(北海道大学)
●日本の六三制をモデルにした北欧の教育大国フィンランド。
●「学力低下」や「学習意欲の喪失」に直面する日本が、フィンランドに学ぶべきことは。
同じく2005年には「北海道大学関西エルム会新聞」にこのような寄稿もなさっている。
北海道大学関西エルム会新聞 VOl.55
>教育の重要性は、我らのボス、クラーク博士の理念でもあります。そこで、左のスライドが示すように、我が北大は、専門が本格的に始まる前までの1、2年次に、これらの資質を具備できるよう、組織的に学生を鍛える科目群が設定されているのです。それが「北大式コア・カリキュラム」と呼ばれるものです。
●徹底した問題解決能力の育成。
●ずばり問題解決能力や学ぶ意欲を徹底的に磨く演習形式で進める。
●自ら接し、体験から学ぶ、まさに北大精神(パイオニア・スピリッツ)を感じてもらう。
●ホンモノとの出会いが今の学生には必要。授業の最後に全員にカエル料理を振る舞う。徹底的にやることが大切!
おわあああ。 いいなぁ。大学行ってみたいなぁ。

2004年・読売新聞のこの連載も面白いよー!
「こんなちっぽけな生き物のことで、ここまで深く学べるなんて、すごい」
「達成感でいっぱい。一つのことを掘り下げるおもしろさを学んだ」
「ここまで面倒を見てくれる先生はほかにいない」
「タダで手に入り、生徒の関心を引ける教材があるじゃないか」
「どうせ言うことを聞かないなら、生徒に授業をやらせてみよう」
「1人1人に何らかの主役を演じさせ、学生をのせている」
すごいね。ヨイショしすぎかと思うほどの記事になっている。じゅうぶん体験してみたくなる感じ。
「タダで手に入り、生徒の関心を引ける教材があるじゃないか」
そも、学生は自分で野生のカエルをつかまえてこなきゃならないんだね。生息地、生態、捕まえ方、飼い方、そこからして徹底的に調べなきゃならないわけだ。最後には食っちゃうわけだし。
All Aboutサイトにも、この「蛙学」授業の紹介記事があります。
「蛙学」授業について、より詳しくウェブで読んでみたい方には、こちらの【PDF】がおすすめかな。
けっこうなボリュームがあります。
2004 高等教育ジャーナル12号 HUSCAP
鈴木 誠『学ぶ意欲を引き出す授業とは何か:北大一般教育演習「蛙学への招待」の授業デザイン』
【 PDF】

【ドライラボと解体新書の解剖図】
「マイ・ガエル」の話に戻るけれど。
ドライ・ラボ(dry laboratory)という言葉は、1960年代からあるらしい。
【通常の実験(wet laboratory)に対し,机上で条件設定や仮想実験を行いながら探究の過程やスキルを学ぶことから,思考実験とも呼ばれている。】 『生物の科学遺伝』2007年7月号p.78
ドライ・ラボで予行演習をしておくと、
・生徒が抱く恐怖心や嫌悪感を軽減することができる
・本番の切開や剖出の手際がよくなる(うまくやれた経験を積める/苦い思い出になることを防ぐ)
・事前にスキルを積んでおける、想定しておける
・教育的価値や意義を浸透させるために有意義 (同書p.78)
ちょっと話がずれるけれど、ここで雨崎が思い出すのは、大昔、解体新書が日本に登場した前後の頃の、「解剖図」の話だ。
2008/05 『 解剖存真図と日本人の健康観 』
北澤一利「健康の誕生」より:
●日本での解剖事始めの頃は、死体からリアルに臓器が垂れ下がる、臓器の区別が判然としない状態の、まんま実写模写的な解剖図になっていた。
●それらとは大きく異なって、西欧の解剖図や、西洋医学の知識を持った杉田玄白の解剖図では、臓器が一つ一つはっきり描かれている。
●この違いは、内臓の構造、形や位置や大きさに関して、事前に知識を持って解剖に取りかかることができたかいなか、にあるのだと思われる。
●ぶっつけ本番で事物を忠実に観察するだけでは、西洋的解剖図にはならない。ある種の知識と先入観を持って、ことに挑むことが必要なのだ。
「マイガエル」に命を吹き込み、自分に知識を植え付ける。
江戸時代の解剖図のお話に、ドライラボの効用がオーバーラップして見えてきます。
実験や実習を行うにふさわしい事前の知識を、身につける、身につけさせる。
そこに気を配れば、めちゃめちゃ面白い科学のイベントに出くわすことができるんだね。
命に対する心構えも、刻むチャンスが大きくなるね。
・・・授業で解剖を体験なさった人、悪夢でしたか? 貴重な体験でしたか?
※ 鈴木誠先生、 自サイトの入口がフラッシュだけ&音付き というのはちょっと考え直してもらえませんか。
追記:

![[ EP: 科学に佇む心と身体 ]](http://homepage1.nifty.com/NewSphere/transparent.gif)







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