[ EP: 科学に佇む心と身体 ]

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方言の進化と古い日本語の痕跡を見る2冊

カテゴリ[科学に佇む2008年] 2008/08/26
この箇所へのリンク【方言から推理する日本語の歴史】


◆方言が明かす日本語の歴史

『方言が明かす日本語の歴史 もっと知りたい!日本語』
 小林隆(著)
 岩波書店 (2006/02)
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 『方言の形成 シリーズ方言学1』で、「方言形成における中央語の再生」の章を担当なさっていた研究者さんによる一冊。
 社会学的な面や文化面を抜いた、方言変遷と由来の歴史研究を、コレクターっぽいウンチク含めて初学者にもわかりやすく講釈して下さいます。
 方言に残る古語要素の掘り出し、分析。方言が持つ独特の「文法」を解析してみると、それぞれの地方の方言に、それなりになんらかの古語の要素や構造が見て取れる。数百年以上前の言語体系の痕跡は、いまだに元気にばりばり生き残って活用されているという事実。
 さらには、特定の言葉が、競合する似た発音の語句が存在するか否かによって(「相補分布」と「同音衝突」)、予測可能な範囲内で栄枯盛衰や変遷をしているという実例の発見。
 それなりに論理的な謎解きの楽しさもあって、宝の地図を読み解くような楽しさが味わえます。

 少し難しめの論考にも踏み込んでみたいという向きは、下記の『方言の形成 シリーズ方言学1』との併読がオススメ。

〓〓〓 EP 〓〓〓

この箇所へのリンク【方言の形成 ダニエル・ネトルと方言進化】


◆方言の形成

 『方言の形成 シリーズ方言学1』
 小林 隆、木部 暢子、高橋 顕志、安部 清哉、熊谷 康雄著
 岩波書店 (2008/03)
 [ Amazon ] [bk1]

小林 隆:方言形成における中央語の再生
木部暢子:内的変化による方言の誕生
高橋顕志:接触変化から見た方言の形成
安部清哉:アジアの中の日本語方言
熊谷康雄:方言形成研究の方法としてのシミュレーション


●安部清哉:アジアの中の日本語方言
 日本国内だけの中央語と地方語、という狭い分類ではなく、アジア全体から見た特徴区分が「南北方言境界線」を日本列島上で形成し、「日本語南北方言の音韻とアジア方言との共通性」が見て取れる、という風通しの良い視点が気持ちよい。

●熊谷康雄:方言形成研究の方法としてのシミュレーション
 ここの考察のメインにダニエル・ネトルによる「方言発生シミュレーションの研究」が取り上げられている。
 ダニエル・ネトルは、現在は進化心理学の分野で研究を繰り広げている研究者であり、雨崎は彼のファン。
 → 『 進化心理学的相対主義者が語る「目からウロコの幸福学」 』 ダニエル・ネトルの幸福の進化心理学
 → 『 言語消滅=思考の貧弱画一化 』 ダニエル・ネトルの文化相対主義
 ネトルが前世紀に言語研究を進めていたときの論考が、本書ではその後を含めて子細に検討されているわけで、かなり興味深い。

... 以下つづき...

〓〓〓 EP 〓〓〓

p.178
 Nettle(1999a)は7×7の格子上でシミュレーションを行った.この7×7の格子の上に人工的な社会が作られる.各セル(マス目)には空間的座標で識別される個体のグループが置かれている.この個体グループはそれぞれ各20人で構成されている.各個体は年齢層1-5の年齢をもち,シミュレーションのステップごとに年齢層を一つずつ上がっていき,そして,年齢層5を過ぎると個体は死んで新たな個体が生まれる.したがって,このシミュレーションではグループの人口は不変であり,各グループ内では常に各年齢層に4人の個体がいる.なお,Nettleは,現実の世界では,この各グループを構成する20人という数字は,採集狩猟民の生活集団の平均的な数であることを付言している.
 シミュレーションは,この年齢層,すなわちライフステージ(life stage)を一つの時間ステップとして進行する.年齢層1にあるすべての個体の学習が終了すると,一つのライフステージが終了し,各年齢層の個体は,一つずつ年齢層を上がる.年齢層5にある個体は死に,新たな個体が年齢層1に生まれる.シミュレーションでは,時間の経過はこのライフステージをいくつ進めたかということになる.

Nettle, Daniel (1999a) Linguistic Diversity. Oxford University Press
Nettle, Daniel (1999b) Using Social Impact Theory to Simulate Language Change, Lingua 108
Nettle, Daniel (1999c) Is the Rate of Linguistic Change Constant? Lingua 108

cover
Linguistic Diversity
(Oxford Linguistics)
 by Daniel Nettle (Author)
 Oxford University Press, USA (July 10, 1999)
書籍情報と書評:アマゾン     .

 言語の伝播、保持、分岐を、パソコン上でシミュレーションしてしまうわけだ。
 自分的にはこれ縁遠めの分野なので、「言語進化はMacintoshの中で動かしてしまえる!」めいた展開にめちゃ面白がってしまいますよ。
 シミュレーションの実際を含め(パワポで動画を示しながらとかさ)、研究者による講演の動画があったらたいへん拝見したく思います。





メタル


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