[ EP: 科学に佇む心と身体 ]

進化心理学,生物学,基礎,サイエンス,利他行動,事例研究 サイトマップPt.1 旧科学ブログPt.3 楽屋のブログ twitter
用語・記事・情報庫 無料翻訳掲示板 昨日: 今日:

オランウータンの文化、絶滅はいつ?

カテゴリ[科学に佇む2008年] 2008/07/08
オランウータンたちが危ない!
あと10年で絶滅してしまうかもしれない!
オランウータン激減中 あと10年で絶滅してしまうかもしれない
2001/02 EurekAlert  Organgutan numbers plummeting worldwide; species may vanish in ten years, study says
2001/02 毎日新聞「オランウータン、10年以内に絶滅の恐れ 不法伐採や密猟が横行 米団体が警告」

 ・・・と騒いでいたのが7年前の2001年。
 2003年には「絶滅まであと20年だ!」という説も流れた。
2003/10 cnn.co.jp オランウータン、20年以内に絶滅の恐れ
2003/10 共同通信 オランウータン20年で絶滅 違法伐採で米学者ら警告
オランウータンの絶滅まであと20年
2004/01 BBC News Orang-utans 'may die out by 2025'

 あれ? じゃあ、絶滅するのはいつなの?

 そうやって、危機感を煽って注目を集めて、だんだん保護が手厚くなっていき、危ない期日がやがて順々に伸びていき・・・、いつしか「もう絶滅の危機は去ったね」となればいいのだけれど、中には絶滅予定日が延びていくことに対して「科学者はいいかげんだ」と罵る者もいたりする。

●旭山動物園のオランウータン

 オランウータンはマジ危ない状態に置かれている。一族がこの世から抹殺されてしまいそうなんだ。
 それを救えるなら、科学者の予測がはずれてくれるなら、それは喜ぶべきことであるはずだね。

遺伝子プールに刻まれた悲劇
 ヒトによる森林破壊と同時に発生したオランウータンの激減
2006/01 BBC News Genes record orangutans' decline
2006/01 EurekAlert Genetic evidence shows colonialists pushed orang-utans to brink of extinction

栄養に恵まれないオランウータン、脳が縮む フロレス原人みたいだね
2007/01 Journal of Human Evolution Volume 52, Issue 1
doi:10.1016/j.jhevol.2006.07.010 Variation in brain size and ecology in Pongo

2007/02 BBC News Orangutans 'face greater threat'
オランウータン、違法伐採で『より大きい脅威に直面』
 懸念されたよりはるかに急速な東南アジアの森林破壊
2007/02 Discovery Orangutans Threatened by Corporate Logging
企業の伐採によって危機にさらされているオランウータン

2008/07 cnn.co.jp オランウータン生息数が激減、緊急対策なければ絶滅もと
2008/07 EurekAlert Great Ape Trust's Wich lead author of Oryx paper on continuing orangutan population declines


... 以下つづき...

〓〓〓 EP 〓〓〓

 「オランウータンって何?どんな状況に置かれているの?」については、世界自然保護基金のページに詳しく記されていて便利。
 リンク 「オランウータンについて」WWFの活動/WWFジャパン

 しかし、オランウータンは、メディア的にはチンパンジーやゴリラよりもマイナーな扱われ方をしている印象が強いのだけれど、これはなんでだろう。
 個体数が少ないから? 見た目がイマイチだから? 扱いが難しいから? それともマジ絶滅危惧度が高いからテレビ映りのいい番組さえ作れない?

 野生のオランウータンたちは、それぞれの森で独自の文化を育んで暮らしている。でも、森が切り開かれ、野火に追われ、ハンターや商人に狩られて、文化の伝承どころか、家族の形成さえおぼつかない状態に陥ってしまった。
2003/01 時事通信 オランウータンにも文化
 道具使用、1400万年前から 国際研究グループ
2003/01 朝日新聞 舌出し「ブー」は「お休み」
 オランウータンにも文化 棲む地域ごとに
2003/01 New Scientist Orangutans swinging culture revealed
2003/01 CNN Study reveals complex orangutan culture
2003/01 New York Times Orangutans Said to Exhibit Hallmarks of Culture
2003/01 BBC News Ape culture hints at earlier evolution
2003/01 EurekAlert! Evidence for orangutan culture
2003/01 New York Times Scientists Say Orangutans Can Exhibit 'Culture'
2003/01 National Geographic Orangutans Show Signs of Culture, Study Says

動物の知性 オランウータンの文化 発明と社会的学習の共進化
2006/03 Scientific American Why Are Some Animals So Smart?

文化の伝承、言語の萌芽、道具を作り替えるオランウータン、お人形さん遊びをする「パンパンジー」
2006/09 Science News Mental Leap
 類人猿は、道具を用いるという計画を作りさえする。
 実際、計画技能の発祥は1400万年前の類人猿・人類の祖先にまでさかのぼりうるのだと調査は示唆する

イソップの寓話を地で行くオランウータン
 深い容器の中のナッツは、容器に水を吐き入れれば手が届くようになりますね
2007/07 PhysOrg Clever orangutans confirm Aesop's fable
賢い類人猿はつばを吐く
2007/07 news@nature.com Smart apes spit
 ピーナッツのパズルを解決するために水を用いるオランウータン

『ジェスチャーゲーム』で話すオランウータン
2007/08 BBC News Orangutans use 'charades' to talk
 メッセージを伝えようと、意図的に身ぶりを繰り返したり部分修正したりしてみます
2007/08 National Geographic Orangutans "Play Charades" to Communicate With People
人々とコミュニケートするために「ジェスチャーゲームをする」オランウータン
2007/07 news@nature.com Orang-utans are cunning communicators


新記事追加:
野性のオランウータンは、自然界の抗炎症薬によって痛みを治療する
2008/07 New Scientist Wild orangutans treat pain with natural anti-inflammatory
 4頭のオランウータンが手足にバルサムをこすりつけるさまを観察
 霊長類がこのような薬の使い方をすることが確認されたのは初めて
 なお、同じ薬草は地元の人々も鎮痛に用いている


●旭山動物園のオランウータン

 オランウータンの状況に関して詳しい身分ではないのだけれど、とりあえず手元にはご紹介のような記事が溜まっているわけで。
 ゴリラも殺されまくっている。チンパンジーも若いもんが繁殖できてない。
2004/01 共同通信  類人猿保護で政府間組織 アフリカで閣僚級会合へ
 対象は越国境分布するゴリラ、オランウータン、チンパンジー、ボノボの4種類

2007/12 【日本語ブログ】NHK解説委員室ブログ「アジアの霊長類に迫る危機」
オランウータンを含むアジアに生息する11種が危機的な状況

「たくさん見る動物はたくさんいるに違いない」
 チンパンジーはあまり絶滅危惧種だとは思われていない 〜ジェーン・グドール
 こんなによくテレビに出ている動物が、個体数激減しているとは思えないから
2008/03 New Scientist  Chimps in hats are endangered too

2008/05 【日本語ブログ】NHK解説委員室ブログ
 視点・論点 「気候変動:チンパンジーからのメッセージ」
 京都大学霊長類研究所所長 アイとアユムの松沢哲郎氏


◆ Thinkers of the Jungle◆ オランウータンの不思議社会◆ オランウータンの森
 『Thinkers of the Jungle』 by Gerd Schuster, Willie Smits, Jay Ullal (Authors) Publisher: h.f. ullmann (April 7, 2008)
 『オランウータンの不思議社会』 (岩波ジュニア新書)  鈴木 晃 (著)  岩波書店 (2003/9/20)
 『オランウータンの森』 鈴木 南水子, 鈴木 晃 国土社 (2004/03)

 あれれ・・・チンパンジーやゴリラに比べて、出版物でもオランウータンは影が薄いみたいだぞ。主役の本が少ないや。uhee

〓ライン〓

 努力して、保護に成功すれば、予測された「絶滅してしまう日」は、ハズレることになる。ハズレにするべき日程なんだ。

 もしかして、地球温暖化の問題にしても、さんざ努力して危機を回避できた場合、「地球は温暖化していない、人間のせいじゃない」と論ずる人たちに「ほら、やっぱり地球温暖化と人間は関係なかったじゃないか!」と言われてしまったりするんだろうか。
 自然保護は、成功すると、ウソツキ呼ばわりされちゃうんだろうか。

 自然保護が思考停止のカルト化してしまうのもキモいんだけど、自然保護に反対する「環境ニート」がうまい汁吸いっぱなしという図になるのも、腑に落ちなくて、だちかんねなのでした。

〓〓〓 EP 〓〓〓

追記:
オランウータン研究者の久世さんのブログも合わせてご参照下さい。
 リンク 2008/07/10:Orangutan Blog

追記:同月の新刊の表紙がオランウータンだ。
◆新刊 『絶滅危機動物図鑑 消えゆく野生動物たち』 ジョージ・マクガヴァン著 ランダムハウス講談社 (2008/7/17)




メタル
TwitterへTwitterへ「読んだよ!!」とつぶやく [カテゴリ 科学に佇む2008年] : 2008年07月08日 
* * *

→ 上掲のお話についてのコメント

2022 #a8h1Tw1o コメントアンカー 木戸孝紀 さんのコメント 【2008/07/08】

>自然保護は、成功すると、ウソツキ呼ばわりされちゃうんだろうか。

されるんじゃないでしょうか。古くから曲突徙薪(きょくとつししん)と言いまして、こういう問題が常に抱えるジレンマですな。

0833 #cKjIa1.Y コメントアンカー amasaki さんのコメント 【2008/07/09】

おお、未知の単語が。
φ(・_・ )... 曲突徙薪 「予防原則」にからむのかな。
言葉といえば、予防したのに「ほら予防は不要だった」と言われてしまうような状況を言い表せる言葉があったらいいなと思うのですが、そういうのってありましたっけ。

そういえば、うちには毎月アフタヌーンを買っている者がおりますが、厚い割に読む連載は僅少で、コストパフォーマンスも含めなんとなく非エコしている気分なのでした。

1926 #1q3HOKPM コメントアンカー 久世濃子 さんのコメント 【2008/07/10】

京都大学でオランウータンの研究をしています。
オランウータンの本は本当に少ないので、私のHPのQ & A(http://jinrui.zool.kyoto-u.ac.jp/kuze/Q_and_A.html)も紹介させて下さい。
一応、最新の知見も交えて、オランウータンの生態や行動に関する情報を掲載しています。

>「絶滅してしまう日」は、ハズレることになる

これは保護が成功しているというより、森林の劣化によって、今まで人の目に触れていなかったオランウータンがカウントできるようになった、という一面があると思います。
例えばマレーシアのサバ州では1980年代には、州全体でのオランウータンの生息数は3000頭と見積もられていましたが、2004年に行われた初の大規模調査によって、州全体の生息数は11000頭と推定されました。
これはオランウータンが増えたわけではなく、1980年代には、まだ広大な地域が深い森に覆われていて、オランウータン(正確にはオランウータンが作ったベッド)を探すのが難しかった為に、生息数が実際より低く見積もられていた可能性が高いと言われています。

しかし昨年行われた小規模な調査で、2004年の時点では1000頭生息していると推定されていた場所で、全く同じ方法で調査して800頭という数値が出てきたそうです(3年で20%減)。これから州全体の生息数の再調査をするということですが、減少している可能性が高いのでは、と言われています。

おそらくこれはオランウータンに限ったことではなく、多くの野生動物が生息環境が悪化したことによって、人の目に触れやすくなっていると思います。
本来、目にすることが難しかった野生動物を容易に見られるようになってくるのは、絶滅へのカウントダウンが急加速する時なのかもしれません。

長文、失礼しました。

2120 #cKjIa1.Y コメントアンカー amasaki さんのコメント 【2008/07/10】

>保護が成功しているというより、森林の劣化によって、
>今まで人の目に触れていなかったオランウータンがカウントできるようになった

あああ、そうかそうですよね。保護以前の、保護のための調査さえ完遂できていない状態であったと。世の中、調査されていない事象が多すぎる。

Q&Aのご紹介ありがとうございます!
ひとつお願いがあります。そのページのタイトルは、「Orangutan Lab. : Q and A」ではなく
 「オランウータンQ&A」
のような「オランウータン」という日本語を入れたものにしていただけませんでしょうか。
 検索訪問なされる人々にとっての便がアップすると思います。
 できればご掲載のタイトルなど画像イメージにも「art="オランウータン"」タグを使うなど手配すれば、より役立つ機会が多くなるでしょう。
 もっと検索結果で上のほうに来るべき大事な内容のページなのに、今のままではたいへんもったいないかもです。

2200 #1q3HOKPM コメントアンカー 久世濃子 さんのコメント 【2008/07/10】

アドバイスありがとうございます。
近日中に修正したいと思います。

それから、おくればせながらオランウータンに関する記事をご紹介いただきありがとうございました。
今後ともどうぞよろしくお願いします。m(__)m

→コメントを送りますか?

 → コメント送信ページに進む

 → Twitterもあります:Twitter iTatazm [たたずむ]

  コメントするときは、お話の日付を考慮に入れましょう。
  突進したのに相手は古い日付の記述だった、みたいな食い違いがたまに発生しています。

★START-POINT

筆者:雨崎良未
XML RSSフィード
→ ブログ新着通知(RSS)の見方

→ 併設ブログ 楽屋【Dorm B】
→ 併設ブログ 旧【科学ブログ】
→ Twitter:iTatazm [たたずむ]

進化心理学 併設サイト
【巨大記事庫】
→ 記事庫の新着・更新情報

→ 最近の主なコメント
→ トラックバック類
→ 科学なポッドキャスト

お気に入られ記事

etc.

amasakiさんの読書メーター
なかのひと
フィードメーター
科学学問