当初、妻を撲殺した上、無垢な我が子をも川に投げ捨てて殺すとは、これはいったい何事か、とローカル地元中心にどよめきが走った。
北海道 倶知安(くっちゃん)町 5月6日未明:
カレー店を経営する女性(29)が殺害された事件
死体の頭部に3カ所の外傷 ネパール国籍の夫(25)を逮捕
「離婚話を切り出されカッとなった」
長女、ジュヌちゃん(6カ月)が行方不明
その後、逮捕された男は「娘は事故で死んだのだ、自分は娘を水葬したのだ」との旨、語っていることが伝えられる。
妻殺害容疑のネパール人夫、「娘を水葬した」と供述
「死んでいたので川に流した」
北海道警察は尻別(しりべつ)川を捜索
5月20日 赤ちゃんの遺体発見:倶知安町・尻別川
「ジュヌちゃんを流した」比羅夫(ひらふ)橋の下流で
6月9日 長女の死体遺棄容疑などで、ネパール国籍の夫を再逮捕
ジュヌちゃんの遺体は損傷が激しく、死因は特定できず

犯行当時、具体的な状況を覚えていないほど、男は激高し暴れたらしい。妻はともかく、娘に関しては妻の体の下敷きになるかどうかして、ぐったりしてしまった。
取り乱したまま、男は娘を病院に連れていこうとして車を走らせ、路外に脱輪。
そのときに。
娘が死んでいることに。
気がついたらしい。
彼は、近くの川に行き、死んだ娘の体を、流れの中に遺棄した。
水葬した。
・・・水葬?
そういえば、古代中国由来の「流」という漢字は、「赤ちゃんを流水に流し遺棄する」さまを現した表意文字だったなぁ・・・
と思い出して、むちゃむちゃタイミング遅きに失しているけれど、昨日「ネパールの水葬」などについて少しウェブをぐぐってみた。
ぐぐった結果、死やジェンダーにまつわる、なつかしい異文化が立ち現れてきた。
... 以下つづき...

ネパールには、土葬、火葬、水葬、鳥葬(遺体を鳥に食わせる)、風葬など、さまざまな埋葬方法があります。『 精神世界の鉄人 』
宗教上、子供・妊婦・自殺者・犯罪者・蛇に噛まれた人などは、火葬にはできない決まりで、水葬されるそうです。『 旅するTimmy.Bagus!! 』
子どもなど、一生を生きられなかった人は、火葬されずに輪廻転生の教えからそのまま水葬されるという。『 旅行記 』
10歳以下の子供であれば、まだ水葬や鳥葬を行っているところもあるという。
死後、生まれ変わるために、墓はない。『 ネパール・ブータン旅行6日目 』
土葬の場合は土に埋めてその上に石を積み上げるだけで墓碑銘もなにもありません。
10歳以下の子供たちが死んだときは、 水葬にします。 川に死体を小さく刻んで捨てるのです。
墓という発想、 墓という単語もネパール語にはありません。『 10sa008 』

輪廻転生の観念が染みわたっている。
死者の魂は、あの世の者としてとどまることはなく、すみやかに次の生誕に向けて旅立っていくので、死体や死者をまるで生前の本人であるかのように大事に扱うなどという今どきの日本的慣習はナンセンスな場だ。
墓を作ったり遺影を飾って語りかけたりするような、去った者(死者)に執着する行為は、去った者の未来(つまり次の新たな生命への転生)に対する障害でしかない。
在りし者はすみやかに自然な形で自然に還元させ、転生をうながすのが、自然にかなっている。墓というイコンをこさえて執着してしまうのは、彼我ともに障害にしかならない不幸な行為。
日本でも、赤ちゃんの死体は特別な扱いで「あの世」に送られていた。
日本では、7才未満(以下?)の子が亡くなったときは、まだヒトとして成立していなかったとみなすのか、大人とは異なる葬送をすることが多かった。
死体を川に流したり、家の入口や軒下に埋めたりして、墓を作らない。
日本で言う「水子」は、水に返す/帰る死者儀礼の存在を指していたんだものね。
●旧来の「豊穣・生産=水」観念は、裏を返せば「生まれきたものを返す先=水」となる。
水に返せば、再び産まれ戻ることも可能になる。
仏に返すのではなく、水に、返す。
水子とは、「死を承認すると同時に、ある種の再生を信じる表現」。
2006/12 『 日本的死:水子 胞衣 間引き 』
当時の日本は(今のネパール僻地も?)幼子の死亡率はたいへん高かった。
生まれた子が幸薄くはかなく死んでいくさまがあたりまえだった。
「ものごころ」つくまでは、いつ死んでも、いつ「転生前の世界」に出戻ってもおかしくない「半人前」の世界。「成人」前の、ヒトになる前の姿。それが童子。
赤子は、あの世から胞衣(えな)に守られて届けられてくる転生体。
うまくこの世に着地できなかった者は、キリスト教のように「それきり」になるのではなく、すみやかにあの世に戻って仕切り直して「出直す」ことになる。
また、迎える側としても「今この世に来られては困る」ときには、すみやかに赤子に「あの世に戻ってもらった」。もっといいタイミングのときに出直してくれよと、我が子に詫びながら行う。そんな嬰児殺し。
詳しくは
かつての日本人が普通に行っていたように、かのネパール人男性も、死んでしまった我が子の「将来」の安寧を願って、最もふさわしい扱いを我が子にほどこした。
日本語がほとんどしゃべれない、理解できない、日本の慣習も知らない孤立ネパール人の彼。
異国の地での唯一の血縁者が、我が子が死んだ。
日本の法律に従って我が子が埋葬されてしまうと、それは、ネパール的には我が子を邪険に扱うことになってしまう。
きれいな川の水に流してやる。
それが、彼が選んだせめてもの、「自然な」正しい答だった。

「水葬」だけに絞れば、そこにはなにやら美しげな翳りと思いの重なりが見て取れて、イイ話かもしれない。
でも、事件は妻の殺害なのだ。
けしてきれいな話ではない。


殺害された被害者は、エスニックアクセサリーの仕入れで過去に数回ネパールを訪問していたのだそうだ。
2年ほど前に現地で容疑者と知り合い、昨年3月に結婚。
去年の暮れから、倶知安でカレー店を経営。
今年4月、売上げがのびないことなどでいさかいに。
そして5月、離婚話を切り出されて、殺害。
あまりに速く、劇的な(安易な)展開。
日本語ができない容疑者。
日本を知らないまま、完全孤立に追い込まれ・・・
ネットでは、事件夫婦が経営していたペンションのサイトに対して「そんな料理じゃダメだ」「経営難になるのも無理もない」「商才の無さ丸出しだ」とのような評が投げかわされていた。
さらには、ネパール人との結婚生活には多大な異文化的困難があるのだという点も、強く指摘されていた。
男尊女卑、一夫多妻、そして外貨稼ぎ目的の安易な結婚詐欺・・・
(自分ではウラがとれない。なんぼかまゆつばで読む必要はあるだろうけれど。)
日本のフェミには理解できんだろうが
ネパールでは夫じゃなくて主人なんだよ
旦那は生活苦になったら妻子の生殺与奪権がある。
つまりネパール人の家に嫁ぐと言うことは
夫に命を預けると言うことを理解して欲しい。 ★
ネパール人にとって妻は所有物であり、長男を産むための機械。
夫に反逆するなんてとんでもない ★
ネパールはものすごい男尊女卑だからな
結婚する日本人はよくよく考えたほうがいいよ ★
自分が2人目の妻(一夫多妻)であることを知らずに結婚し、家族の生活費のためにネパールで働く女性などなど。
ちなみに、結婚から3年以内で離婚する確率は、90%を超えるという。『 ネパール人との結婚 』
ニセの結婚をしてまで日本に来たがる彼らの考え方『 調子のよい宿のおやじ&軽率な旅人 』
ただ、「ネパール」というくくりはおおざっぱすぎて不適切ではあるだろう。
上でも記したように、一言でネパールといっても、都市部と地方、そして各部族それぞれで大きく規範は異なっている。
ネパールのタルー族
女は「主人」で女からは離婚できるが男からは離婚できない。
男は再婚出来ない。
朝、男は掃除をしてから、米の脱穀をする。女はアクセサリーを磨く。
食事をする順番は子ども>女性>男性
女性は家の中で寝て、男性は外で寝る。
女性が生まれたら家長として自立出来るように育てる。
夫は妻をとても愛しているし 幸せだといっている。
「女性の生き方を考える」 フェミニストカウンセリングの立場から
資源の発展可能性が乏しく過酷な環境風土においては、女性の地位が高い文化規範が形成されやすい。
ネパールという便宜的な国境の中にも、男尊女卑ありいの、かかあ天下ありいの、一夫多妻もありいの、さまざまに異なる文化規範の民がおしくらまんじゅうしているのだろう。
それっぽい記事の追記:
2008/06 【日本語記事】JanJan ネパール:共和国での生活
ネパールが共和国宣言をしてから1週間が過ぎた。
首都カトマンズから30kmほど離れた静かな田舎町レレ。「この辺りではネパールが共和国になったと 知っているものは少なく、知っていてもその意味は分かっていない」

これを機会に、下記の2冊も読んでみようと思います。
王族内の殺しあいがあり、王権が倒され、北海道での日本人妻殺害に至り、中国におもねてチベット暴動を排斥しにかかっている、ネパールの本。


『ネパール王制解体 国王と民衆の確執が生んだマオイスト』(NHKブックス) 小倉 清子 (著) 日本放送出版協会 (2007/01)
『ネパールを知るための60章』(エリア・スタディーズ) 日本ネパール協会 (編集) 明石書店 (2000/09)
エリア・スタディーズは、情報の濃さとまとまりで定評がある社会派シリーズです。
ネパールは、ブータンやチベット自治区などとはまただいぶ違ったお国なんだろうなぁ。
たまに札幌でも、貴石・化石の販売会などでラピスラズリ売りのネパール人おじさんとか、ネパール製のチベットグッズを売るネパール人おじさんとか、見かけるんだよね。
(あ。ネパール人女性には遭遇したことがないのか!)

※
ここで指摘されている「日本での嬰児殺しの多さ」、これは比較対象に含まれる東アジア圏の国は日本だけなのだろうか? 中国や韓国、ベトナム、マレーシアなどはなくて欧米と日本だけを比較して「日本の多さ」を結論している? 死観念の文化差の部分を「剥奪度合い」で処理しすぎていることはない?
いや、女性差別が凝り固まっている国だということは言うまでもない ★ のだけれど。
追記:
2009/03 倶知安で妻殺害のネパール人に懲役15年 札幌地裁

![[ EP: 科学に佇む心と身体 ]](http://homepage1.nifty.com/NewSphere/transparent.gif)







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