[ EP: 科学に佇む心と身体 ]

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世界が見たかつての日本の写真集

カテゴリ[科学に佇む2008年] 2008/06/22
ちょっと生まれる時代がずれていたら、自分はここにいたのかもしれない。
ちょっと昔の日本の写真集。

◆ 世界が見た懐かしい日本の風景◆ 世界が見たひたむきな日本人◆ GHQの見たニッポン
『世界が見た懐かしい日本の風景』 日経ナショナルジオグラフィック社 (2007/12/20)  [bk1]
『世界が見たひたむきな日本人』 日経ナショナルジオグラフィック社 (2007/12/20)  [bk1]
『GHQの見たニッポン 開封された秘蔵写真』 秦郁彦, 森山真弓, 竹前栄治, 佐木隆三, 鴨下信一 (著) 世界文化社 (2007/7/20)  [bk1]

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■まずはナショナルジオグラフィックの2冊

 ナショナルジオグラフィックの2冊には、幅広く明治〜大正〜昭和時代の、日本各地・各世代の日常リアルを撮影した貴重な写真がずらり収録されている。
 いや、「そこに産まれていたら」という仮想設定は、日本でなくても未来のアメリカでも先史時代のカンボジアでもなんでもありの好き勝手しほうだいだけれど、その中でも「数十年前の日本」「百年前の日本」という設定は、一世代前の血縁親族が実際に生きていた世界であり、彼らがいた時代の「数十年後」「数百年後」は今まさにこの現在の日本であるのであり、

 今と直結しているパラレルワールドの「実写」

という風情なんだよね。 否定も何もしようがない「実写」。 ビシビシ迫ってくる。

... 以下つづき...

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 『世界が見た懐かしい日本の風景』には「都市の風景/野山の景色/美しい景観」が。
 『世界が見たひたむきな日本人』には「働く日本人/学ぶ・遊ぶ/子供と家族」でくくられる写真が、収録されている。
 そういえば、東アジアの国々では「勤勉を旨とすれば成功できる/働くことは良いことだ」という観念が支配しがちなのだそうで。

 大正時代に、ふつうに「ちょんまげ」姿で働いている親方。
 大きなタライに子供4人を入れて、それを頭に乗せて(!)運んでいる母さん。
 東南アジアの市場のような山盛りワンダーランド的様相を呈している八百屋さん。
 胸まで泥に埋もれて田植えをするおばちゃん。
 無粋な道路に貫かれる前の、無垢な富士山麓の風景。
 大正時代の桜島大噴火に襲われた人々のありさま。
 頭上に葦簀(よしず)がかけられている銀座の街並み。
 80年前の浅草寺! 並ぶ80年前の露天商たち、何を売っていたんだろう!
 浅草の映画館街にひるがえるたくさんのあざやかな幟(のぼり)たち。

 絶望先生の時代っぽい感じ?

 中には、60年前に逗子を走っていた湘南バスの車内を撮した写真もある。
 運転席の後ろに張ってあるチラシには
映画と舞踏の会
 北支上海事変 爆裂線上 解禁ニュース封切一挙上映
 勇壮無敵皇軍 輝け少年日本
 新舞踏 軍国子守歌
午後六時より 逗子常設館
前売り券は車掌にお申し付け下さい

と記してある。(「逗子 ずし」は湘南の町、鎌倉の隣)
 世の中にテレビが登場する前の当時は、ニュースの映像は映画館で封切られていたんだ。ニュースは映画館で「見る」ものだった。映画館でニュース映像を映写するという形式は、テレビが普及したのちも残り、昭和30年代いっぱいくらいは続いていたと思う。ていうか、当時うちは映画館に住んでいたんでね。
 その後、30〜20年前頃は、自分は戦後の逗子に移り住んでいたわけで、この写真集に登場する「戦中の逗子」というリアルは、かなりなインパクトを持って迫ってくる。

 百年前の、祭の風景も収録されている。
 白黒の印画紙に手着色を施した写真だという部分をよっこしても、この明治時代の祭の隊列は、やけに「土着臭く」見える。チベット仏教の祭列めいた、土臭さだ。
 以前、別の書籍で見た「明治時代の祇園祭の写真」も、祭列は、やはりこのような泥臭く土着呪術っぽい重さにまみれた印象をかもしていた。
 → 『 イエズス会宣教師が教えてくれる400年前の日本 』  明治時代の祇園祭の写真が載っている
 今どきは、祭列をただの祝祭/カーニバル/扱いして御輿(みこし)に安易に飛び乗るようなイタい若造が跋扈(ばっこ)するありさまだけれど、かつては、「調伏 ちょうぶく」「畏敬 いけい」「異形 いぎょうの懐柔 かいじゅう」・・・場の支配力を誇示する、力を持った百鬼夜行を実演していた、そんなリアルが見て取れる。

 この、はるかに遠く見える実在の異世界から、わずか数十年で今のような日本になってしまった。
 「何が正しいのか」「この変化を各人はどう解釈するのか」
 オリンピックを迎える中国と、東京オリンピックはどう違うのか。
 良いリトマス試験紙というか、踏み絵のようなきわどい匂いを発する貴重な書籍になっている。

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『GHQの見たニッポン』

 『GHQの見たニッポン』のほうは、進駐軍がいた当時、進駐軍が見た範囲、に限定された写真が収録されている。ナショジオの2冊を合わせたぶんよりボリュームがある、たっぷりした一冊。
 特定の時代と視点に絞られているぶん、さまざまな立場と時代を比較して相対的に見ていきたいむきには、少々もの足りないかもしれない。
 進駐軍時代に関しては、現存する当時を知る者たちが、当時優勢だった観念や規範をがっちり抱え込んだまま今に至っていることが少なくないので、高齢者と対峙する機会がある者は、この写真集を広げて「異なる日本」を語らせ、旧世界をしかと実体験してみると良いと思う。

 今般、高齢者との交流を欠いたまま浅薄な エイジズム(高齢者差別) を振りまきなさるイタいアルファブロガーさんもいたりなんかして、まあ、いろいろ実際に試してみて欲しいなぁ などと思いめぐらしてみたりする今日このごろなのでした。

 特定の時代と視点に限らず、過去を広く見ていきたいむきは、ナショジオの2冊のほうを手に取ってみて欲しい。



メタル


[カテゴリ 科学に佇む2008年] : 2008年06月22日 
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