[ EP: 科学に佇む心と身体 ]

進化心理学,生物学,基礎,サイエンス,利他行動,事例研究 サイトマップPt.1 旧科学ブログPt.3 楽屋のブログ twitter
用語・記事・情報庫 無料翻訳掲示板 昨日: 今日:

病の起源 骨と皮膚の病:皮膚色の世界地図

カテゴリ[科学に佇む2008年] 2008/04/21
 きれいな「ヒト皮膚色の世界地図」が登場していましたね。

4月20日(日) NHKスペシャル
リンク 病の起源 第2集 骨と皮膚の病 〜それは“出アフリカ”に始まった〜 (決定前の仮副題=「太陽光との長き闘いの果てに」)
再放送は明日。
 2008年4月22日 火曜深夜【水曜午前】0時55分〜1時44分 NHK総合

 世界地図を、太陽光の照射量が多い地域を濃いブラウンに、日照量が少ない地域を淡い色に塗り分ける。
 実際にその地域にお住まいであったネイティブ(先住民)たちの皮膚色と照らし合わせてみると、日照量地図とよくあてはまる結果になる。
 日照量がてんこ盛りのエリアには黒人が、光が少ない地方には、色白の白人さんたちが住んでいらっしゃる。
 日光量に比例するように、ヒトの肌色の濃淡も分布している(もしくは本来分布していた)という図。

 もう一回あの世界地図を見ます?wink

... 以下、黄色人種のうしろで白人が誕生したのかな...

〓〓〓 EP 〓〓〓

ヒト皮膚色の世界地図 【ヒト皮膚色の世界地図を表示する】
 チベット高原が、ちゃんと濃い色になっているのがナイスですね。
 色黒のアボリジニの大地である、オーストラリアはもとより日照量がてんこもり。
 日付としては、これは2001年以前に作製された地図らしい。

 この世界地図をこさえなさったのは、ペンシルバニア州立大学のニーナ・ジャブロンスキーさん。

●彼女のラボ。
 リンク Nina G. Jablonski  Department of Anthropology at Penn State
●皮膚色に関するインタビュー。
 2007/01 New York Times  Always Revealing, Human Skin Is an Anthropologist's Map

●ジャブロンスキーさんの2004年の論文
 リンク THE EVOLUTION OF HUMAN SKIN AND SKIN COLOR
 Annual Review of Anthropology Vol. 33: 585-623
 (doi:10.1146/annurev.anthro.33.070203.143955)

●皮膚色の英語ウィキ
 リンク Human skin color - Wikipedia, the free encyclopedia

Skin: A Natural History
Skin: A Natural History

●皮膚の自然史
 Nina G. Jablonski (著)  ニーナ・ジャブロンスキー
 Univ of California Pr (2006/10/5)
書籍情報と書評:アマゾン     .


〓〓〓 EP 〓〓〓

 なぜ、日照量が多い地域には黒い皮膚の民族が住まい、日照が少ないエリアには色の白い民族が分布しているのか。
 「日焼けしたから」ではなく、黒人、黄色人種、白人の分布が、日照量とリンクしている。

 番組の中では、
・日光不足だと骨の病気になって命に関わる
・日光過多だと皮膚ガンになって命に関わる
・日光不足の生活では、皮膚が白いほうが光を取り込みやすいので健康
・日光過多の地域では、皮膚が黒いほうが光を遮断できるので安全
という方向で説明が展開していく。

アンカー【ビタミンD欠乏症】


 日光不足な暮らしをすると、身体の中でのカルシウムの処理がうまく行かず、「くる病(ビタミンD欠乏症:骨が曲がってしまう)」になってしまう。 …と説明を展開するくだりでは、スモッグひどかりし頃のイギリスの事例が紹介されていた。
 どっちかというと、うち的には昔の教科書に載っていた「新潟のくる病」の写真がいまだにインパクト強く記憶に残っているんですが。冬の日本海側は曇天で日照が少なく、子どもが「くる病」になりやすかった、という説明の脇に載っていた、足曲がって立っている子どもの白黒写真。「くる病」を減らそうと、進駐軍さんとかがビタミンDの摂取や日光浴を奨励したんですよ、みたいな。
 「ビタミンが欠乏するとどんな病気になるか」のくだりで登場するビタミンD欠乏症としての「くる病」事例。
 リンク 『くる病ってどんな病気?』

 番組中では、日照の少ない地方(イギリス)に移住したインド系の色黒なお子さんが、ビタミンD欠乏症でカルシウム不足になってしまい、1歳半になってもまだ「歯が生えない!」という異常事態に陥っている、そんな例が紹介されていた。(イギリスの人は医療制度のせいもあって、なかなかお医者に行かないんだよね)

 そういえば、うちの近所の誰かさんは、歯がない。あるときボロボロッと抜けてしまったらしい。歯周病が原因だったのかもしれないけれど、どうも夜勤続きの暮らしをしていたときのことだというから、これ、もしかしたら、日光浴不足による影響があったのかもしれない。

 えーと、「一日10分小指を直射日光に当てるだけで必要なビタミンDはゲットできる」という話を聞いたことがあります。ソースは確認できない話なので論拠にするのは控えてほしいですが、よほどのひきこもり生活をしていない限り、普通は骨は大丈夫です。
※ それより、外で日光を浴びる遊びをしないとお子さんの視力が悪くなる、という報告があって、個人的にはそっちのほうを気にしたい気分。

 あ、こんな記事が。先月の日本。ma
 ●NEWS 2008/03 赤ちゃんの2割がビタミンD不足気味 京大講師が1120人調査
>赤ちゃんに短い日光浴をさせるなど配慮が必要
>日照が少ない時期に妊娠期間を過ごした4、5月生まれの新生児は、30%前後と高かった。


 とりあえず、短時間でいいから、日光浴の機会は必要。
 ヒトの身体はそうなってるんです。

 日光浴が全然できてないと、骨が折れやすくなる、足がマトモに成長しない、歯がダメになる…
 特に、昔々のハードな暮らしの中では、それらの障害は致命的になりやすかった。
 骨の障害があまりに多発すると、その民族は死に絶えてしまう。
 生き残れるのは、日光不足にも日光過多にもならない、地元の日照に適した皮膚色を持つ人々。

〓〓〓 EP 〓〓〓

アンカー【皮膚色進化の見解いろいろ】


 この5000年間だけでも、かなりの量のヒト性質変化があった気配なんだよね。

 → 2007/02 【日本語記事】『 ヒトは今も進化しているわけで 』
 ヒト遺伝子、ごく最近進化したものけっこうあります
 代謝、皮色、脳機能、生殖で必要とされる人類遺伝子は、最近の環境の変化に応じて進化した


 今もヒトは進化(遺伝的性質の浮動)しつづけている。
 その遺伝的性質の浮動が起きる原因は何なのか。

 元は、ヒトの肌色は黒かった。
 皮膚の色が違う人間が発生した原因は何なのか。
 男は「色白の女」が好きだから、だんだん白い子が増えていった?
 そういう「男と女の選び方」のせいで肌色が白く進化したという説も、けっこう人気があるんですが、最近は旗色が微妙なのかな。
 関連 2006/02 → 『女性の色白は進化する:ヒト皮膚色の性淘汰』

〓〓〓 EP 〓〓〓

●白人の発生は最近のこと

 先週の記事、→ 『 今日の科学メモ:農業が白人を生んだ説 』 でも紹介したけれど、今回のエントリにも再録しておきます。
 (「今日の科学メモ」の記事は後日消える可能性大です。)

●右画
●NEWSヨーロッパ人における皮膚色の進化、そして、社会的皮膚色とプエルトリコ人における病気の関係
2008/04 Dienekes' Anthropology Blog: Skin color evolution in Europeans and Social skin color vs Disease in Puerto Ricans
 皮膚色遺伝子(SLC24A5)はアジア系以外のおおかたのヨーロッパ人において、明白に皮膚色を淡くさせる。
 SLC24A5 の進化研究からすると、欧州人の皮膚色が青白くなったのは、かなり最近の12,000〜6,000年前あたりであるらしい。つまりそれまでは、ヨーロッパの人々は浅黒かった。
 約6000年前からの農耕の台頭で、食品に含有されるビタミンD量が少なくなり、ビタミンD欠乏症になりにくい点で有利な白い皮膚が広まったのではないか。
 欧州に到着してからずいぶん後に、皮膚色の変化が現れたわけで、人類の遺伝的進化がごく最近活発になってきた証拠というか。
 皮膚色が白く、ビタミンD生産がアップすれば、厚い衣服の着用も可能になるし。


 農耕の開始が、白人を生んだという話ですね。
 ごく最近の遺伝子解析からまた新しく割り出された証拠。
 文化と遺伝的性質の共進化。

●右画
 そして、この皮膚色遺伝子は、黄色人種ではあまり効果を発揮しない。

 ということは、黄色人種では皮膚色のバリエーションができにくい?
 番組 『NHKスペシャル:病の起源 骨と皮膚の病』 では、白人エリアなみに日照が少ない地域に住んでいる黄色人種(イヌイット:旧エスキモー)を取りあげ、ビタミンDの多い食品を多量に摂取する文化であったからゆえ、白人のような白肌でなくても生き抜いて来られた、と紹介している。日照不足に耐える栄養を持つ伝統食あってこそのイヌイットであり、現代食(異文化食品)を食べるようになった今どきの世代では健康に支障をきたす例がある、というシーケンス。
 なお、黒人エリアなみにめちゃ日照量が多いチベット高原に住んでいるチベット人は、黄色人種。これは、日照が強くても寒冷地なので彼らが厚い衣服を着用して肌を隠していられる、そんな関係なのかな。(チベット人は空気の薄い高度にも適応した特殊な体質を持っているんだよね)

 これら黄色人種では、皮膚色のバリエーションが発生しにくいぶん、文化と環境の条件合致がある場合にのみ、異境に進出できたということだろうか。
 いや、考えてみると、黒人や白人よりも、「日焼けで皮膚色が変化する」度合いが顕著なのは黄色人種が一番?
 どうなんだろ、日照量のバリエーションに最も柔軟性が高く適応する(日焼けしやすい:メラニン濃度が短時間で変化する)のは黄色人種である、それゆえに、みたいな見解を提示した話はどこかにあるだろうか。

 上の記事では「欧州人の皮膚色が青白くなったのは、かなり最近の12,000〜6,000年前あたり」とされる。
 それ以前に、黄色人種は15000年前にはとうにアジアの端まで到達してアメリカ大陸に向かっていた。
 とすると、具体的にはどんな絵が描けるんだ?
 アジアに広がる黄色人種の後ろで、ぽこっと白人が誕生した?

縄文人


 とりあえず、日照量がちょっと過不足するだけで、死亡率や子孫の皮膚色に大きくのしかかってくる…
日光が少ない地域では黒人は死に絶えた(大昔の話)
日光が強い地域では白人は繁殖成功度が激減する(大昔の話)

という、過去のヒト進化のつたない経緯は、ヒト進化的にけっこうよいインパクトをお持ちなのでした。

 なお、番組中、アウストラロピテクス・ガルヒなどのヒト先祖の目に白目がない、という設定は、前回と同じでございます。
 ●● 『NHK病の起源(1):石器が生んだ病の白目と黒目』

●●●○●●●

追記:
ヒト進化の「雑記帳」さんが、番組内容に関するツッコミや補足を記していらっしゃいます。

2008/04/21 【日本語ブログ】雑記帳
 リンク NHKスペシャル『病の起源第2集 骨と皮膚の病〜それは“出アフリカ”に始まった〜』



[カテゴリ 科学に佇む2008年] : 2008年04月21日 
* * *

→ 上掲のお話についてのコメント

→コメントを送りますか?

 → コメント送信ページに進む

 → Twitterもあります:Twitter iTatazm [たたずむ]

  コメントするときは、お話の日付を考慮に入れましょう。
  突進したのに相手は古い日付の記述だった、みたいな食い違いがたまに発生しています。

★START-POINT

筆者:雨崎良未
XML RSSフィード
→ ブログ新着通知(RSS)の見方

→ 併設ブログ 楽屋【Dorm B】
→ 併設ブログ 旧【科学ブログ】
→ Twitter:iTatazm [たたずむ]

進化心理学 併設サイト
【巨大記事庫】
→ 記事庫の新着・更新情報

→ 最近の主なコメント
→ トラックバック類
→ 科学なポッドキャスト

お気に入られ記事

etc.

amasakiさんの読書メーター
なかのひと
フィードメーター
科学学問